夏ドラマは『ウォーターボーイズ』『Dr.コトー診療所』と結構楽しく見ることができました。プロ野球も終わりクリスマスがラストに控える秋ドラマは各局とも力が入るクールですが、注目すべき作品はあるでしょうか？

　まず話題作りでリードしたのは“月９”。なんとヒロインを公募しました。朝のテレビ小説じゃあるまいし、この枠でヒロインに全くの新人とは勇気があります。フジ系月曜夜9時『ビギナー』は、司法修習生8人の群像劇。脚本はベテラン水橋文美江、ヒロインの新人ミムラをフォローすべく、周りはオダギリジョー、堤真一、松雪泰子、奧菜恵、横山めぐみ、北村総一郎、もたいまさこと豪華なキャストで固めました。これで主演が深津絵里クラスだったら手堅くヒット間違いなしだと思いますが、果たして公募ヒロインが吉と出るか凶と出るか、ちょっと楽しみです。

　その深津絵里はＴＢＳ系日曜夜9時『末っ子長男姉三人』に。いかにもこの枠らしい大家族ホームコメディドラマ。深津絵里と結婚する相手が岡田准一、その母が岸恵子、姉が賀来千香子、原田知世、小雪。うーん、フカッちゃんはいいけど、後のキャストが微妙。多分見ません。

　もうひとつ話題性十分なのがフジ系木曜夜10時『白い巨塔』。ご存知山崎豊子原作の社会派医療ドラマ。25年前に亡き田宮二郎が主演した日本のドラマ史に残る傑作のリメイクです。今回の主演は唐沢寿明、江口洋介。脇も豪華で、黒木瞳、矢田亜希子、西田敏行、石坂浩二、伊武雅刀、伊藤英明、水野真紀と大河ドラマのように主演級及び大ベテランがしっかり固めています。脚本も社会派ドラマに強い井上由美子ですから、かなり期待できそう。ただ前作の偉大さに堅くなって、妙な小手先芸に走らないで欲しいと思います。

　今クールはこの3本が金かかってるぞ、という作品で、後はちょっとショボイです。キャスト的にはＴＢＳ系木曜夜9時『エ・アロール』が豊川悦司、木村佳乃、そして、緒形拳、津川雅彦、草笛光子、吉行和子と大ベテラン共演で目を引きますが、なにせ渡辺淳一の話題作が原作ですから僕の好みに合いそうもありません。

　好みに合わないという意味ではフジ系水曜夜10時『恋文・私たちが愛した男』も思いっ切り趣味ではないのですが、ある一定の女性ファンには受けそうです。原作連城三紀彦、脚本岡田恵和、主演渡部篤朗、水野美紀、和久井映見。どこかで見たような恋愛ドラマになりそうです。

　まだこれらに比べれば興味がわく学園ドラマが、日テレ系月曜夜10時『ライオン先生』。竹中直人主演のヒューマンコメディ。西村雅彦、岡本綾、今田耕司、小池栄子、要潤、渡辺いっけい、段田安則、原千晶、山下真司というキャストは、なかなか面白い癖のあるところを揃えています。問題はこの読売テレビ制作枠で面白いドラマは過去にほとんどなかったということです。

　最後に本来なら大注目作品なのですが、ちょっと腰が引けているのがＴＢＳ系木曜夜10時『マンハッタンラブストーリー』。脚本が今をときめく宮藤官九郎。喫茶店を舞台に8人の男女が片想いの連鎖を繰り広げる恋愛劇なんて、企画としては面白そうです。出演も小泉今日子、及川光博、酒井若菜、森下愛子、船越英一郎、塚本高史、尾美としのり、遠山景織子、松尾スズキと個性的な俳優陣が揃っています。なのに腰が引けているのは主演が松岡昌宏だから。

　どうしてこだわりの純喫茶のマスターが松岡“小次郎”クンなわけ？ジャニーズならせめて東山紀之くらいにしてください。と言うか、阿部寛（今回『トリック』の3弾目があるからダメだけど）とか永瀬正敏とかこだわってそうな役者や、何なら森本レオ、西村雅彦、小林薫とか、いかにも喫茶店のマスターっぽい役者がいるじゃん。主演としての華が欲しいなら福山雅治とか椎名桔平、いっそ松本幸四郎とか。どう考えても松岡クンじゃミスキャストっぽいんだけど、そこのところどうよ、って感じです。あ、これ『白い巨塔』の裏じゃん。うーん、どっち見ようかな。