幹事クリタのコーカイ日誌2003

[ 前日翌日最新今月 ]


 
6月3日 ● 寿限無。

 久しぶりにMっちゃんとランチを一緒に食べました。最近はすっかり落ち着いてしまったというか、女性に対するモチベーションが下がっていて、話を聞いていても楽しくないMっちゃんですが、常識の欠落ぶりは相変わらずでした。

 話の流れで「寿限無」の話題になった時に、Mっちゃんがいきなり「前から聞きたかったんだけどさ、ジュゲムってなに?」というではありませんか。一瞬彼が何を聞きたいのかすらわからなかった僕たちですが、どうやらMっちゃんは本気で何にも知識がないみたいなのです。

 「最近2チャンネルでもジュゲムって名前の奴が出てくるんだけど、何かわからなくてさ」と言うのです。20代の若者ならともかく、40代半ばにしてこの無知ぶりはさすがMっちゃん。で、何だと思うわけ?と聞くと「ギリシャ神話に出てくるやつかなんかかと思ってるんだけど」というのです。うーん、確かに言葉の響きからわからないでもないけど、全然違う。

 「じゃあさ、ゲームじゃないの?ジュゲームって言う」って、そりゃ単なる駄洒落でしょ。何だよ、ジュゲームって。フランス語か?「うーん、じゃあ名前だ、名前。なんに出てくるのかわかんないけど」ってことで、とうとう勘の良いMっちゃんも降参。カタカナで「ジュゲム」と思っているみたいで、日本語とは考えられないらしいのです。融通の利かない頭です。

 仕方ないので教えてあげました。「へ?落語?知らない。落語なんて全然知らないもの。有名なの?ふーん」って、本当に古典落語をひとつも知らないし、落語家もほとんど知らないみたいです。「落語家なんて知らないよ。笑点に出てる奴ら?さんまって落語できるの?」だって。まあ寿限無を全く知らないと言い切る人ですから、落語家の名前が出てこないのは仕方ないかも知れませんが、それにしてもよく今まで落語にそこまで触れないで生活できてきたものです。

 今でこそ少なくなりましたが、僕たちが子どもの頃にはよくテレビで寄席中継をやっていました。当時はまだ志ん生や文楽という大看板も元気でしたし、小さんとか米朝もよくテレビで落語をやっていました。また林家三平とか歌奴とか円鏡とかがお茶の間の人気者で、落語家が今よりずっと注目を浴びていました。漫才はあくまでも色物で、やはり王道は落語だよね、という雰囲気の時代でした。

 僕らが大学生くらいになると、円楽、談志、志ん朝、枝雀、仁鶴といったあたりが勢いがあって面白い落語を聞かせてくれていました。しかし、その後すぐにマンザイブームが起こり、続いて「ひょうきん族」がヒットするにいたって、落語はすっかり「古い」マイナー芸能になってしまいました。テレビの寄席中継は減る一方だし、さんまのような落語をしない落語家もタレントとして人気が出ましたから、今の若者が寿限無を知らなくてもそれは仕方ないと思います。

 でも逆に言えば、それまでは落語はメジャーだったのです。だから我々の世代は古典落語のひとつやふたつはどんな噺か知っていますし、落語家に対しても親近感を持っています。Mっちゃんの家だって家族揃って落語好きで、よく子ども時代に見ていたらしいのです。なのにMっちゃんが全く落語を知らないと言うのは、やはり子どもの頃の記憶を丸ごとどこかに落としてきたとしか思えません。

 なにか子どもの頃にトラウマがあるんじゃないの?だから記憶が飛んでしまっているんじゃない?と聞いたら「そうそう、お袋に聞いたんだけど、僕が生まれたばかりの赤ん坊の頃に、2つ上の姉貴がやきもち焼いて僕の目を指で突っついていたんだって。多分、その恐怖がなにかのトラウマになっているんだよ」だって。そんなまだ目がちゃんと開いてもいない0歳児の頃のことは、何の傷にもなっていないと思いますけどね。そもそも、だったら記憶がないのは0歳当時のことで、その後の子ども時代の記憶はあっていいはずです。

 僕はMっちゃんが小学生くらいの頃に、どこかで強く頭をぶっつけたことがあるんじゃないかな、と思っていますが、なにせ本人が何も覚えていないので確かめようがないのが残念です。


とりあえず、読むたびに(1日1回)

を押してください。 日記才人という人気ランキングに投票されます。
初めての方は、初回のみ投票者登録画面に飛びます。
結構更新の励みにしていますので、押していってくださると嬉しいです。