日本女子テニスのエース杉山愛が5年ぶりにツアータイトルを獲得しました（通算4勝目）。杉山は1996年の伊達公子引退後、長年にわたり一人で日本女子テニスを牽引してきました。しかし、ダブルスではグランドスラムを制し世界ランキング1位になるなど、世界のトッププロとして活躍しているものの、シングルスでは残念ながら中堅どまり。上位の壁を破れずランキングも20〜30位を上下している状況です。

　年齢的にもそろそろ先が見えてきたかと思った矢先の今回の優勝は、だから実に快挙です。しかも過去に優勝した大会よりもグレードの高い大会ですから、杉山にとっても日本女子にとってもより大きな励みになるタイトルだと思います。素晴らしい雛祭りになりました。

　さらに今回の優勝が素晴らしいのは倒した相手の凄さです。2回戦でかつての世界ナンバー1のリンゼイ・ダベンポート（現在7位）、準々決勝でエレニ・ダリニデゥー（16位）、準決勝では、アレクサンドラ・スティーブンソン（26位）をファイナルタイブレーク、3本のマッチポイントを逃れて9-7で勝利。そして決勝では現在一番ウィリアムズ姉妹に実力的に接近していると考えられている世界3位・ベルギーのキム・クライシュテルスを破って、1998年の「ジャパンオープン」以来のシングルス優勝を果たしました。

　特にダベンポートとクライシュテルスの2人を同じ大会で破ったというのは大きいです。ウィリアムズ姉妹にも真っ向から打ち合えるパワーヒッターのこの2人を相手に、小柄で非力な杉山が勝てたということは、ますますパワー化する女子テニスにおいて、杉山の前に開けてきた可能性の大きさを予感させます。

　ウィリアムズ姉妹がダントツに強い今の女子テニスはつまらないと言われますが、彼女たちの壁が大きいからこそ、それを倒すために他の選手がレベルアップを果たすわけです。杉山がその一人になれたらと思うと心が躍ります。