幹事クリタのコーカイ日誌2003

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2月16日 ● 山下と斉藤。

 昨晩NHKで1984年に放送されたNHK特集「オリンピックの群像 不敗の勇者 山下泰裕」を紹介していました。いまNHKはテレビ放送50年ということで、ずっと思い出のスポーツドキュメンタリーを再放送しているのですが、これもそのうちの1本です。

 僕は高校時代に柔道部だったので、山下泰裕は憧れのヒーローでした。僕より3才年上。僕が柔道を始めた頃に全日本選手権において最年少18才10ヶ月で初優勝。その後全日本を前人未踏の9連覇、ロス五輪でもあの肉離れをおこしながらのラシュワンとの死闘を制して金メダルを獲得して、国民栄誉賞を貰い、引退まで公式戦203連勝という前人未踏の大記録を残した日本柔道界が生んだ最強の柔道家です。

 番組はロス五輪直前の山下を追います。その前の全日本まで何と194連勝し、五輪に向け猛特訓を積み重ねる山下の強さを様々な角度から分析していきます。1984年には僕は会社に入って2年目。あの頃はNHK特集を見ることも滅多にありませんでしたが、この時だけはなぜか見た覚えがあります。やはりかつて柔道少年だっただけに、見逃してはならないと思ったのでしょう。

 この番組では山下のライバルと言われたロス五輪金メダリストの斉藤仁も登場して、山下の強さを語っていました。山下より3才年下ということは、斉藤は僕と同い年です。

 当時の斉藤は山下よりも体が大きく、また態度もどことなく不遜な感じを受けたので、あまり人気がありませんでした。ヒーロー山下に対していわばヒールの役回りだったのです。斉藤は全日本でなんと7回山下に挑み7回敗れました。そして山下は不敗のまま引退してしまったのです。

 さすがにこの時は僕も「そりゃないだろう」と思いました。負けないままに引退する山下は気持ちが良いかも知れませんが、斉藤にしてみればやり切れないことでしょう。大鵬が貴ノ花に、貴ノ花が千代の富士に、そして千代の富士が貴花田に負けて引退していったように、山下も後を託すべき男に負けて引退するのが筋であり、またそれが王者の義務でもあります。空位の王座についても真の王者とは認められないのが辛いところです。

 引退後の山下と斉藤は、日本柔道を指導する立場として、時折マスコミにも登場しますが、山下が立派なんだけど、どことなく近づきがたい印象を受けるのに比べて、斉藤は親しみやすい人柄の良さを感じさせます。選手時代に負けないままに終わってしまったエリート山下と、何回も挫折を経験した斉藤の差が、ここにきて滲み出ているような気がします。負けたことがない人生は、中年以降に苦労するかも。挫折や失敗や苦労はキャリアとして考える時代になったのかも知れません。


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