幹事クリタのコーカイ日誌2003

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1月21日 ● ドラマ・貴乃花の終劇。

 誰もが予感していた通り、貴乃花が引退しました。もはや引き際としてはここしかないというタイミングだっただけに、北の湖理事長の談話のように「立派な引き際」と言えるのかも知れませんが、結果としてはもっと早くに引退した方が良かったと思います。まだ若かっただけに、怪我さえ治ればという気持ちもわからなくもないですが、一代年寄を与えられる大横綱としては少々「晩節を汚した」感は拭えません。

 ただ、この引退劇も含めて、貴乃花の土俵人生はずっとドラマそのものでした。貴乃花は入門当時から目標とする力士を「親方=父・貴ノ花」と言い続けてきました。その頃のまだ“貴花田”だった彼は、まさに角界のプリンスとして順風満帆、マンガのようなヒーローぶりでした。

 親方でもある父は昭和一の美男人気大関、母は美人の元女優、伯父は名横綱にして角界の最高実力者、優しい兄とともに角界入りし、異形で大柄なライバルの外国人力士とともに3人しての出世争い、最年少記録を次々と更新して幕内に入り、稀代の大横綱を引退に追い込む時の天運、部屋には個性的な実力派力士が揃って彼の出世をサポートし、人気絶頂の美人女優との婚約、当時の親友は人気スポーツ・サッカー界最高のスター、人間性も成長し大横綱への道をまっしぐらに進む。

 ここまでで終わっていれば、文句のつけようがないヒーロー物語だったのですが、ここから先は舞台が暗転してしまいました。ヒーローにも陰が生まれ、人間くさいドラマが始まったのです。けちのつき始めは宮沢りえとの婚約破棄くらいからでしょうか?それとも河野景子との結婚か?僕にはちょうど貴乃花が目標を「親方」から「双葉山」に変えた頃から後半のストーリーが始まったようにも思えました。

 兄や父との確執がスキャンダラスに報道され、怪我を繰り返して休場することも増え、あれだけ隆盛を誇った部屋の勢いも翳り、脱税問題も発覚、ついには母は離婚して部屋を飛び出しヌードまで披露、兄は引退後角界を去ってタレントへの道も歩むも鳴かず飛ばず、相撲人気もすっかり下火になり、挙げ句に怪我を押して無理した結果の優勝後は7場所連続休場、そしていろいろな批判も飛び出す中での引退。

 貴乃花のこの10数年は、まさにドラマそのものでした。前半のサクセスストーリーと後半のどろどろした人生劇場、ともに脚本があったのかと思うほどドラマッチクであり、またキャラの立った脇役にも恵まれました。過去の大横綱・名横綱たちには、土俵上のドラマなら貴乃花に劣らないくらいあっても、土俵外でのドラマはありません。いや、過去の日本のどのスポーツ選手と比べても、これほど人生そのものがドラマチックだった人はいないことでしょう。

 貴乃花は大鵬、北の湖、千代の富士と比べたら、記録的には見劣りします。「平凡な大横綱」という表現がおかしいとすれば、「未完の大横綱」だったと思います。ポテンシャルを秘めながら、不完全燃焼の引退という感は拭えません。しかし、スター性という意味では、これだけの土俵外も含めたドラマを生み出せた不世出の大スターでした。引退は誰しもあることであり必然だったとは言え、これほどのスターを失った相撲界の人気回復への道は、まだまだ手探り状態が続くことでしょう。


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