幹事クリタのコーカイ日誌2002

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10月18日 ● 手柄を独り占め。

 ノーベル賞を貰った田中耕一さんの研究は、個人で行ったものではなく実はチーム作業でした。企業の研究室でのことですから、それも当然のことでしょう。もちろん田中さんのチームには上司にあたる人、同僚にあたる人がいて、論文も田中さん一人の名前ではなくチームで書かれていました。

 特に最初に発表された時には田中さんの上司の名前が論文のトップに書かれていたそうですから、本来ノーベル賞を貰うなら、田中さんではなくこの上司が貰ってもおかしくなかったのです。ところが、その後論文を英訳して発表した時に、田中さんの名前がトップにあったため、ドイツチームも「田中の研究による」として紹介し、ノーベル賞も田中さんに贈られることになったわけです。

 田中さんは受賞が決まった当初から、「わたしひとりで貰うものではない」と語っていましたが、これは田中さんが単に謙虚な人柄だったわけではなく、本当にそうだったのです。手柄を独り占めにしたカタチになっているわけですから、田中さんとしても落ち着かない気分でしょうし、逆に言えば、田中さんに手柄を譲った上司は実に素晴らしい「上司の鏡」だということになります。いま内心どう思っているかはわかりませんが。

 島津製作所は、田中さんに対しては役員待遇にし、1000万円の報奨金や、田中さんの名前を冠した研究室を作ったりして、最高級の扱いで報いようとしていますが、この上司を始め他のメンバーには一切なにも考えていないそうです。

 同じ仕事をしたチームのメンバーにも関わらず、一人だけ歴史に名を残し、会社では最高ランクの手厚い扱いを受け、一生食うに困らない名士となったのに対し、他のメンバーは相変わらず「普通の名もないサラリーマン」です。単に英訳した時に論文のトップに名前を置いたばかりに、この差。宝くじで一番違いで3億円が当たった人と外れた人のようです。自分がチーム作業で同じようなことになったら、やはり“当たった人”になりたいものですが、なったらなったで他のメンバーの視線が気になることでしょう。まあノーベル賞を貰えることに比べれば、他人の視線など痛くも痒くもないかも知れませんが。

 それにしても田中さん、本当にドラマがありすぎです。面白いです。


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