いつもなら気合いの入る秋ドラマ。プロ野球も終わり、ラストはクリスマスということで、秋のドラマは各局とも豪華キャストをラインアップするものですが、今年はどうでしょうか。

　まず注目の月９（フジ系月曜夜9時）ですが、中山美穂主演のロードムービー『ホーム＆アウェイ』。脚本に君塚良一を起用していますし、なかなか異色の企画として楽しみですが、難点は共演に西田尚美、小泉孝太郎、酒井若菜といういかにも力が入っていないところ。主演女優と脚本家だけで大丈夫か不安になります。

　キャストの豪華さでピカイチなのはTBS系日曜夜9時『おとうさん』。主演に田村正和、その4人の娘に飯島直子、中谷美紀、広末涼子、深田恭子と主演級女優陣を並べて見せました。これだけ豪華なキャスティングも久々ですが、問題はそれだけで終わってしまいそうなところ。企画自体、どこかで見たことがあるものですし、なにより娘役の4人がランク的に甲乙つけがたいだけに、それぞれに見せ場を作っていると散漫になりかねません。

　深田恭子は今季は掛け持ちで、もう1本出ています。日本テレビ系土曜夜9時『リモート』。共演はこの枠でお馴染みの堂本光一。さらに伊武雅刀、KONISHIKI、名倉潤など個性的な脇役を揃えています。内容も平凡な婦警が引きこもりの天才警視に携帯電話でリモート操作されて事件を解決するというマンガチックなもの。まさに「土９」ならではのお子さま向け企画です。

　マンガチックと言えば、マンガ原作の日本テレビ系水曜夜10時『サイコドクター』。主演に竹野内豊、共演に西村雅彦、羽田美智子、柴咲コウ、市川実日子。しかし原作もさほど面白いとは言えないマンガだけに、どこまで職業ものとして掘り下げられるかは疑問です。

　同じマンガ原作ならフジ系水曜夜9時『天才柳沢教授の生活』に期待したいと思います。もちろん、これは原作の面白さの差です。ただ原作が良いだけに、どれだけドラマ化された時の落差があるかが心配です。なにせ主役の柳沢教授に松本幸四郎というのが、そもそも「違うなぁ」という感じですからね。ただ共演が国仲涼子、松原智恵子、戸田恵子、川原亜矢子、山口智充、小日向文世と地味ながら達者そうな役者が揃っているだけに面白くなる芽は十分にあると思います。

　同じく著名な原作という意味で注目は、フジ系火曜夜10時『アルジャーノンに花束を』。ダニエル・キイスのベストセラー小説で、映画化もされた名作だけに、果たしてどこまでファンを裏切らないドラマ化ができるか、脚本・岡田恵和の腕の見せ所です。ユースケ・サンタマリア、菅野美穂というキャスティングは、一応合格ラインかなと僕は思っています。

　で、企画面からもキャスト面からもこの秋ドラマで一番期待できそうなのは、TBS系木曜夜10時『真夜中の雨』。ヒールな外科医に織田裕二、トラウマを持つ刑事に松雪泰子というはまり役。阿部寛、石黒賢、長塚京三という助演陣に演出も若松節朗と確かですから、サスペンスとしては見応えがありそうです。

　さらに大穴はフジ系水曜夜11時からの30分ドラマ『ＨＲ』。三谷幸喜演出・脚本の定時制高校を舞台にしたシチュエーション・コメディで、観客を入れた舞台形式で収録を行うという実験的作品です。主演に香取慎吾、共演は戸田恵子、小野武彦、白井晃など三谷ドラマ常連が固めています。

　以上ざっと見てきた感じでは、さすがに秋ドラマは力が入っているな、という印象ですが、冒険作・意欲作が少なく、手堅くきているなという感じはします。もう少し新機軸を打ち出してくれればという気はしてしまいます。まあ最近目立つパート2もののオンパレードよりはマシですけどね。