幹事クリタのコーカイ日誌2002

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9月10日 ● サンプラスの復活劇。

 1990年代の男子テニスのチャンピオンと言えばサンプラスとアガシです。一度どん底に落ちて復活したアガシは凄いし人気もありますが、一度も落ちることなくトップを守り続けたサンプラスは、現役ながらすでに「伝説のチャンピオン」と化しています。

 歴代最多の13個のグランドスラムタイトルを持つサンプラスも31才。グランドスラムはおろか一般の大会でも優勝から遠ざかるようになり、限界説が声高に囁かれ、引退のカウントダウンが始まっていると思われていました。

 対するアガシは32才。サンプラスほどの落ち込みは見せていませんが、それでも力の衰えは否めません。愛妻グラフとの間に子どもも生まれ、闘争心も失われつつあるのではないかと見られています。

 しかも男子テニスは新旧交代の波に洗われてもいます。ヒューイット、サフィン、ロディック、フェデラーなど、指を何本も折ることができるほど才能溢れる20代前半の若い選手達がいます。ラケットの改良が進み、新しいタイプのオールラウンダーでなければ勝てないと言われる昨今の男子テニス界で、サンプラスのようなサーブ&ボレーヤーはともすれば旧スタイルと見られかねません。

 こんな状況の中で行われた全米オープン。女子は予想通りグランドスラム3大会連続のウィリアムズ姉妹による「シスターズ・ファイナル」になり、またまたまた妹の勝利に終わりました。そして男子はファンが熱望するアメリカの伝説サンプラスとアガシのファイナルになったのです。グランドスラムでは5回目の決勝対決です。

 僕の予想ではアガシ有利かと思っていました。サンプラスは今回屈辱的な第17シード。ロディックなどかなりタフな相手を破って決勝まで勝ち上がってきたものの、それゆえにもはや体力が残っていないのではないかと思われました。アガシは第1シードのヒューイットを破り勢いがあります。

 サンプラスが勝てなくなった原因は、かつて絶対とも言えたサービスキープができなくなったからです。ラケットの改良で全体にリターン力があがり、サンプラスのビッグサーブ&巧みなボレーをもってしても、必ずしもキープができなくなったのです。今はヒューイットのようにリターンを中心に組み立てられる新しいオールラウンダーの時代であり、そしてアガシのリターンは今でも世界トップクラスです。

 ところが今回のサンプラスは違いました。かつての王者だった頃のように、抜群のサービスキープ力を見せたのです。セカンドサーブでも果敢にエースを狙い、ネットについた時の動きも全盛期に近い切れがありました。これが2年2ヶ月ぶりの優勝でしたが、そんなにも長い間優勝できなかったのが不思議なくらい充実したプレーぶりでした。

 もっとも最後の方ではかなり疲れたのか、ミスも目立ち動きも若干悪くなりましたが、相手が同じように体力の衰えているアガシだったのが幸いして、なんとか前半のリードを生かして逃げ切ることができました。ファイナルセットに持ち込まれていたら危なかったでしょう。そういう意味では、決勝の相手がヒューイットでなくアガシだったのがサンプラスにとって幸いだったと思います。

 これで史上最多14度目のグランドスラムタイトルを獲得したサンプラスですが、これが復活の狼煙となるかどうかは疑問です。かつてのチャンピオンたちも、一度は這い上がってタイトルを獲得したことがあります。近くでは1999年のグラフが突然全仏でヒンギスを破って優勝、復活したことがありました。しかし、グラフはその1ヶ月後のウィンブルドン決勝でダベンポートに破れてそのまま引退してしまいました。燃え尽きる前の最後の煌めきでした。

 「このままでは終われない」と思い、這い上がった末に獲得したタイトルは、チャンピオンにとって引退への花道となることがあります。サンプラスは優勝したとは言え、かつのてサンプラスではありません。ライバルアガシを破って獲得したこの全米のタイトルで満足して来年には引退するということも十分あり得ると思います。むろんファンとしては寂しい限りですが。


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