今から10年以上前、僕がまだ20代だった時に、僕の会社の先輩Ｕ沢さんが「シルバーマーケット」について研究していました。「クリタくん、老後を楽しむために必要なものは何かわかる？」と聞かれました。僕は、「お金と健康ですか」と言ったら、Ｕ沢さんは「それに加えて趣味と友達だよ」と言いました。お金と健康は最低限必要なもので、さらに楽しく生きるためには趣味と友達が必要だということです。

　Ｕ沢さんは続けます。「ただね、その四つ全てかなり前から準備が必要なんだよ。だから若いからと言って、老後のことなんて関係ないと思っていたらダメだよ」と。確かにお金は老後を考えてきちんと貯蓄しないといけないですし、健康も若い頃に無茶して年をとってからガタガタになってしまっては困ります。

　でも趣味と友達は何とかなるんじゃないのかな、と思ったら「いやいや、友達なんてね、年を取ってからは簡単にはできないよ。それに趣味と言うのは、付け焼き刃ではダメなんだ。本当に趣味と呼べるほどのものにするには20年はかかるね」と言うのです。つまり、60才の時点で「趣味を持っている」と言うには、少なくとも40才くらいから始めていなければならないということになります。

　なるほど、確かに付け焼き刃の底の浅い趣味なんて趣味とは言えないよな、やはり生き甲斐になるくらいの趣味と言うには、ある程度年季が必要だろうなぁ、と思った僕は、内心「よーし、40才になるまでには何か生涯の趣味を見つけるぞ」と思いましたが、今になって振り返れば所詮は20代です。全く切迫感がありませんでした。当たり前と言えば当たり前ですけどね。

　それから10有余年。いつの間にか40才を越えてしまった今、僕は生涯の趣味と呼べるほどのものはテニスしかありません。18才の時に遊びで始めて以来、ずっと遊びのままながら23年も続けてきましたから、もうＵ沢さんの定義でも趣味と呼んでいいでしょう。ただテニスはカラダが動かなくなったらそれまでです。腕を怪我した、足が動かなくなった、腰がダメになった、そんあ事故があればもうできません。テニス以外、スポーツ以外の趣味も何か持ちたいものだと思っていますが、果たして何があるのか、ちょっとまだ迷っているところです。