個人情報保護法案とセットになってこその住民基本台帳ネットワークだという基本的な原則を放り出して、さっさと住基ネットがスタートしてしまいました。

　各自治体は住基ネットのためのイニシャルコスト、ランニングコストともに結構な負担になるということですが、その割には住民にとって大したメリットもないこのシステム。これだけの反対の中で強行する政府の思惑はどこにあるのでしょうか。多分どこかの誰かがまた儲かるのかな、というくらいしか思いつきません。

　住基ネットを国民総背番号制だと言って、近未来小説のような危険なファシズム的管理システムをイメージさせるような論調が一部マスコミであるようですが、僕は現時点では、そんな妄想的心配はしていません。そこまで日本の政府が強かったら、もう少し小泉の改革もサクサクと進んでいることでしょう。

　ただ、個人情報をネットワーク化することの利便性と危険性についての論議を、いとも簡単にクリアして実用化してしまったように感じられる今回の住基ネット導入は、少々拙速に過ぎたのではないかと思います。例によって「やったもん勝ち」のパターンで、とにかく始めてしまえば、国民は最初は騒いでもすぐに忘れるから、後は楽々だぜ、という政府と官僚の思惑が見え見えです。

　敷居を低くして導入し、後は運用の方法で少しずつ意味をずらしていく手口は、自衛隊から消費税までいつも同じです。現時点では大したネットワークではなくても、今後は確かにＳＦ小説じみた展開にならないとも限りません。とりあえず横浜市のように、全員の意思確認をしてからでも遅くはないと思います。