幹事クリタのコーカイ日誌2002

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7月21日 ● 知性の差。

 かつて僕がまだ学生だった頃、新潮文庫の広告で「知性の差が顔に出るらしいよ。困ったね。」というコピーがありました。だから新潮文庫を読んで知性を磨きましょう、ということなのですが、当時は確かに「知性の差」が顔に出るのはカッコ悪い、と素直に思わせる時代だったし、「知的」というのはどこからも文句のつけようのない誉め言葉でした。そして、そのためには難しくて硬い真面目な本を読んだりしなくてはならないと思われていました。

 ところが、現代の若者にこの広告コピーを見せても、「じゃあ新潮文庫を買って読もう」と思ってもらえるかどうかは極めて怪しいと思います。と言うのも、「知的」な人というのは今や決してプラスなイメージだけではなく、ややこしくて面倒な理屈をこねそうな奴、カッコつけていて気取っている奴、ユーモアセンスのないつまらない奴、と思われてしまう可能性があるからです。

 当然「知性の差」が顔に出ているよりも、一見お笑い芸人の如く面白くて親しみやすくて笑わせてくれる方が受けが良いのです。下手に「知性の差」が顔に出てしまったら、「ダサイ」奴として認知されてしまい、かえって「困ったね」ということになってしまいそうです。

 もちろん、若い世代とて「頭が悪い」のはカッコ悪いことくらいは認識しています。ただそれをひけらかすのではなく、秘かに隠しておいて「実は頭も良い」というギャップがあった方がずっと上等なのです。そして、頭は悪くても面白い奴の方が、頭が良くても笑わせてくれない人よりもマシだと思われています。なぜなら、笑わせることができる人間は「本当は頭が良い」人だから、という理屈なのです。それは単に頭の回転が早いだけで、深い洞察力は欠片もないのかも知れないのに、そこまでは考えが及ばないあたりが、「知性の差」でしょうか。

 と言うことで、今の世の中で一番モテるのは「お笑い芸人」になってしまいました。彼らが美人女優と付き合ったり結婚したりすることは、もはや意外でもなんでもなく、また若い女性に好きなタレントを聞くと、二枚目俳優よりもお笑い芸人の名前が挙がることが多くなりました。

 知的であろうとして新潮文庫を若い頃から読んできたオジサンにとっては、本当に「困ったね」という状況です。ただ、「知性」は下がっても「ユーモアセンス」とか「場の空気を読むチカラ」とか「コミュニケーション能力」は上がっているとも考えられるので、一概に困ったことばかりではないのでしょう。と言うか、オジサンたちだって「困ったね」の人が多いですから、若い連中のことをとやかく言えたもんじゃありません。


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