幹事クリタのコーカイ日誌2002

 
 2月18日 ● 炭坑のカナリア。

 いつもネタにしている同僚のMっちゃんは、実は我が社の社員ではありません。プロダクションから出向というカタチで在籍している契約社員で、毎年3月に契約更改をしています。だから特に管理者が社内にはおらず、我々社員のように行動を管理されていないので、昼間からデートしようが好き勝手していようが大目に見られていたわけです。

 逆に言えば、そんなMっちゃんを放し飼いにしておけるということは、我が社はまだ少し余裕があるという証拠です。もしMっちゃんがクビを切られるということになったら、いよいよ我が社も危ないと考えられるわけで、いわばMっちゃんは我々にとって「炭坑のカナリア」です。カナリアは空気のキレイさに敏感で、そのために炭坑で働く人は、炭坑の一番奥にカナリアを連れていって、いち早くガスなどの危険を察知したということですから。

 ところが、そのカナリアが、今年は契約を延長せずにフリーランスになるというのでビックリしてしまいました。いよいよ我が社も切羽詰まってきたか、と思ったら、そうではなくて自らフリーになると決めたそうです。これはこれでビックリしました。この御時世に折角安定した立場を捨てて敢えてフリーになるというのは、なかなか勇気があるというか、ほとんど蛮勇に近い行為です。なにせフリーになれば保証はなくなり、収入は恐らく減り、仕事は厳しくなるだろうと思われるからです。メリットは組織に縛られずに済むということだけですが、先に書いたように、昼間からラブホにしけこめるMっちゃんがさほど束縛されているとは思えません。

 「どうしてフリーになるの?」と本人に聞いたら、「やりたいことがあって、そのための時間が欲しい」んだそうです。そのやりたいこと、というのはまだ教えてくれないのですが、どうも友人と二人で事業のようなことを始めたいみたいです。元手はそれほどいらないということなので、借金まみれになる心配は無さそうですが、ただ世間のことを全然知らないMっちゃんが、フリーになって、さらに全く別の仕事を始めるなんて、到底うまくいくとは思えません。

 なにせ恐ろしいことに、本人はフリーになって仕事をしながら事業も始めて、なおかつ失業保険を貰うつもりでいたのです。いくらフリーランスと言っても、中学生のアルバイトではありませんから、きちんとそれなりの額の取引があります。当然失業保険が貰えるような訳はありません。なのに本人は会社を辞めさえすれば、自動的に失業保険が貰えるものだと思っていたようです。それで月額10数万円入ってくるから、フリーになって収入が半減しても大丈夫、なんて計算をしていたようで、「そんなもの貰えるはずないじゃん」と指摘されて真っ青になっていました。

 フリーになれば確定申告もしなければならないし、税金や保険、年金も自分で払わなければなりません。健康保険も知らなかったMっちゃんが、ちゃんと国民年金を払うかどうかも心配です。もっとも、僕たちにいろいろと指摘されて、Mっちゃん本人が一番心配しているのは「失業保険が入ってこないと女の子と遊ぶ軍資金がなくなる」ということだったようです。まあ運と勘だけは人並みはずれて良いMっちゃんのことですから、あまり心配する必要はないのかも知れません。

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