最初に聞いた時は「絶対ない」と思った阪神監督に星野仙一という報道。しかし、その後の展開ではかなり可能性が高くなってきたようで、びっくりしています。中日ファンは皆複雑な心境でしょう。

　星野が中日の監督を退いた時は、なかなか鮮やかな去り方でした。後釜をきちんと作って自らの意思で勇退したのですから、中日ファンとしては惜別の情はありましたが、その決断に拍手を送ったものです。

　しかし、勇退した翌年からいきなりライバルチームの監督になるというのでは話が違います。もちろん、中日にとっては相手が全ての自チームの情報を握っているのですから、それだけでも大変です。ただ、それとは別に、阪神のようなチームに行って星野がボロボロになるのではないか、という心配もファンはしています。名古屋の人は身内に対して情が厚いですから、ついつい星野の身を案じてしまうのです。

　野村は阪神ＯＢではないとは言え、京都出身で南海ホークスですから大阪の人間でした。ところが星野は岡山出身で明大-中日と、関西の匂いがしない完全なる外様です。だからこそどん底の阪神を変えることができるという見方も確かにありますが、失敗した時の叩かれ方は阪神ＯＢの比ではないでしょう。

　しかも、今の阪神には岡田彰布、木戸克彦という若手生え抜きの監督候補がいます。彼らを差し置いて強面の星野が指揮をとることに、本当に大阪のファンは納得するのか、そして阪神というチームのためになるのか、という問題もあります。日産のカルロス・ゴーンのような「外圧」的リーダーも時には必要でしょうが、理想は内部からきちんと指導者が育つようなシステムを作ることのはずです。

　これは本来、野村がやるべきはずだったのですが、見事に失敗をしてしまいました。だからこそ星野なのでしょうし、確かに星野なら阪神再生計画を任せられるかも知れません。ただ、野村の二の舞になる可能性だって十分にあるし、そんな星野は見たくない、という中日ファンにとっては、やはり複雑な心境にならざるを得ないのです。

　それにしても久万オーナー、これでもしも星野に断られたら、へそを曲げた岡田を監督に据えるのは大変だと思うけど、そのあたりわかっているのですかねぇ。

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