幹事クリタのコーカイ日誌2001

 
 11月29日 ● 賞取り。

 先頃ノーベル賞を貰った野依名大教授が小泉首相に向かって「ノーベル賞を30人取るなんて目標を立てるのは、はしたない」と強く批判したそうです。野依教授はノーベル賞決定後、ことあるごとにこの「30人計画」を批判していました。賞というものは結果としてついてくるものであって、狙って取るものではない、という主張は非の打ち所がない正論です。

 我々広告業界でも「賞取り」というのは頻繁に行われています。広告業界には大小さまざまな広告賞があります。企業の経済活動である広告に対して、芸術のように賞を贈るということ自体が、考えようによっては奇妙なのですが、実際のところは広告主に対して「たくさん広告を出稿してくれてありがとう、これからももっと出してね」というご挨拶代わりのようなものが大半です。

 そんなお歳暮のような広告賞を狙って取りに行くとは、どういう目的があるかと言うと、ひとつは広告制作者の自己満足もしくは営業活動のためです。「こんな賞を貰えるほど世間的に評価されているんですよ」という自己アピールのための実績として賞が欲しいわけです。

 もうひとつの場合は、広告主の宣伝広告担当が社内的に自分の仕事ぶりをアピールするためです。広告効果というのはなかなか測り方が難しいので、その代わりに「こんなすごい賞を貰った、だから私の広告政策は間違っていなかった」という具合に彼らの仕事の実績として広告賞を用いたいから、狙って取りにいこうというわけです。

 実際、僕も広告主から言われて賞取り原稿を作ったこともあります。そして、狙って作ればかなりの確率で賞は取ることができます。しかし、賞は貰ってもその広告の実際の効果はゼロのようなものです。なにせ向いているのが消費者でも広告主でもなく、賞の選考をする審査員だからです。そんな賞に何の意味があると言うのでしょう?

 ノーベル賞と国内の広告賞、比べるべくもありませんが、通じる心は一緒です。仕事が先にあって、結果として賞が後からついてくるというのが理想に決まっています。ま、理想というものは、なかなか簡単には実現しないものですけどね。

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