幹事クリタのコーカイ日誌2001

 
 10月1日 ● 記録と勝負。

 ベルリンで高橋尚子が狙った通りのレースをして見事に2時間20分を切る世界最高記録を作りました。あれだけ前から「世界最高を狙います」と言い、メディアもそれを盛り上げ、その言葉通りに記録を作ってしまう高橋の有言実行ぶりは驚嘆すべきものです。これまでの日本人にはないメンタリティを感じてしまいました。

 それにしても最近のマラソンは、同じ競技の中で種目が分かれてしまったような印象を受けます。今回のベルリンのように記録が出やすいようにコースを設定し、ラビットやガードのランナーがついて、ひたすらペース配分に気を配って走るタイムトライアル的なレースと、オリンピックや世界陸上のように暑い時期にスタミナを消耗しながらも駆け引きを駆使して勝負をかけて走るレースは、同じ42.195kmを走っていても全く別物です。

 元々マラソンというのは、そのコースによって条件が違うので記録よりも勝ち負けに重きを置かれてきました。しかし、やはり数字のインパクトは強いようで、最近の特にヨーロッパのレースではタイムが重視される傾向にあります。今回の高橋も、あれでは「競走」ではなく一人で走っているのも同じことです。あんなレースをするのなら、スキーの距離競技のように、順番にタイム差をつけて出発していった方がお互いに邪魔にならずに良いのではないかと思うくらいです。

 もちろん選手の実力を測る上で、記録というのは重要でしょう。しかしマラソンの醍醐味はやはりレースの駆け引き、心理戦にこそあると僕は思います。だからこそ、シドニー五輪で高橋がサングラスを捨ててスパートをかけた場面が強くいつまでも印象に残るのです。まず勝つこと、次に記録ではないでしょうか。

 日本の男子マラソンだって、記録がいくら塗り替えられようとも、未だに瀬古利彦を超える選手は現れていないと僕は思います。それは瀬古が一番速いランナーではなくても、一番強いランナーだったからです。もちろん、瀬古と対極にあった中山の気っぷの良い走りっぷりもまた好きでしたが。

 2時間10分台に突入した世界最高記録はもちろん素晴らしいことですが、高橋が初マラソンを除く全ての大会で優勝を続けていることも、同じくらいに称賛されて良いでしょう。「速さ」と「強さ」を兼ね備えているところにこそ、高橋の真価はあるのです。もうすぐ30才になる高橋ですが、選手寿命が長いマラソンのことですから、もっともっと連勝記録を伸ばして欲しいと願っています。

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