最近ＭっちゃんはＮＨＫの『プロジェクトＸ』がお気に入りです。高度経済成長時代の日本を支えたお父さんたちに「あの頃は良かった」と振り返らせてジーンと感涙を絞らせようとするＮＨＫ的な泣かせ番組で、僕の周りでも40代以上にファンが多いのが特徴です。最近テレビ番組にはますます醒めた目で見てしまう僕には、ちょっとその作りは臭いんじゃないの、という気がしてしまうんですけどね。

　で、そのＭっちゃんが先日自らの『プロジェクトＸ』体験を滔々と語ってくれました。まだほんの半月ほど前のこと、Ｍっちゃんは例によってｉモードの出会い系サイトで、20代後半の女性6人と合コンの約束を取り付けました。Ｍっちゃんには合コン専用のいつもの「チーム」がいますから、彼らとこの合コンに臨もうと考えたのですが、なんとその時に限ってそのチームのメンバーが皆都合が悪かったのです。

　ピンチです。まさに『プロジェクトＸ』的危機です。焦ったＭっちゃんは非常手段に出ました。なんと出会い系サイトに合コンメンバー募集の案内を出したのです。なんという無謀、なんという恐れ知らず。どんな危ない奴が来るかもわからないのに、よくぞそんな募集をかけたものです。

　メンバーは集まりました。当然のことながら彼らもまたＭっちゃんのことを怪しいオヤジではないかと疑っているので、Ｍっちゃんは彼らに運転免許証を示して危険人物ではないと説明したのだそうです。それが果たして何かの証明になっているのか、僕にはただ免許証の本人であることしか示していないと思うのですが、それで信じる方も信じさせる方も凄い人たちです。実際、Ｍっちゃんは彼らにも嘘の勤務先を教えていますし。

　ともあれ傭兵部隊は結成されました。6人の侍だ、とＭっちゃんは思ったそうです。もちろんＭっちゃんは志村喬です。訳がわかりません。でも気持ちの高ぶりは伝わってきます。打ち合わせのために合コン30分前に集まった傭兵部隊は、とりあえず仕事仲間という設定にしたそうです。もちろん仕切るのはＭっちゃんですから、Ｍっちゃんがいつものように某広告代理店のコピーライター、医療関係の営業マンはカメラマン、Ｍ自動車の工場勤務の2人は、Ｍっちゃんがパジェロのカタログ制作のために取材して知り合ったＭ自動車の設計マンになったそうです。ただし、お互いあまり仕事の話にしないように気を付ける、という取り決めはしておきました。

　合コンは盛り上がったそうです。お互いに初めて顔を合わせた同士、決して自分が足を引っ張ってはいけない、と感じてみんなが「良い仕事」をしたとか。Ｍっちゃんは、この合コン部隊が全て嘘で塗り固められていることが女性陣にバレないように、そればかりが気になって目の前の女の子を口説く元気もなかったそうです。

　ともあれ合コンは無事終わりました。女の子たちは満足し、中には電話番号を交換したり2次会に消えた連中もいたそうですが、Ｍっちゃんはそれよりも早くこの場を立ち去って楽になりたい、と思ったそうです。そこまでストレスになるのなら、こんなことを企画しなければいいのに、合コンと聞けば体が動いてしまうあたりがＭっちゃんらしいところです。

　僕たちにこの話を語り終えたＭっちゃんに質問しました。「で、Ｍっちゃんに何か良いことはあったわけ？」Ｍっちゃんは考えて答えました。「いや、良いことはなんにもない。残ったのは、やり遂げた、という達成感だけかな」。うーん、まさに『プロジェクトＸ』、なのでしょう、少なくともＭっちゃんにとっては。

---

とりあえず、読むたびに（１日１回）

を押してください。 日記才人という人気ランキングに投票されます。
初めての方は、初回のみ投票者登録画面に飛びます。
結構更新の励みにしていますので、押していってくださると嬉しいです。

この日記をマイ日記才人に登録する