幹事クリタのコーカイ日誌2001

 
 6月13日 ● 「思い込み史観」の歴史教科書。

 各方面で話題の「新しい歴史教科書をつくる会」が編集した中学歴史教科書の市販本がバカ売れしているとか。『チーズはどこへ消えた?』に続くベストセラーに、版元の扶桑社は大儲けでしょうが、それにしても例え教科書として採択されなくても元は取るという商魂の逞しさは、さすがフジサンケイグループと言わざるを得ません。

 僕は扶桑社を儲けさせたくなかったので、この歴史教科書を書店で小一時間かけて立ち読みしてきたのですが、僕は歴史については素人ですが、それでも内容はひどいものだと感じました。これは教科書ではなくプロパガンダ(政治的宣伝文)であり、敢えてセンセーショナルな話題を呼び起こすためにわざと挑発的に書いているのではないかとさえ思いました。

 マスコミなどでしばしば取り上げられている南京大虐殺や東京裁判、憲法制定などの記述はもちろんプロパガンダの色が濃いのですが、それ以外にもびっくりするような箇所がいくつかあります。例えば与謝野晶子の有名な「君死に給ふことなかれ」をわざわざコラム的に取り上げて、あれは巷間伝えられるような反戦の気持ちを歌ったものではなく、弟が家を守るように願って書いたもので、晶子は奔放な恋愛に生きた情熱的歌人などではなく、家を守った従順で立派な女性であった、というようなことが記述されているのです。

 しかし、「君死に給ふことなかれ」は、反戦歌であるからこそ歴史教科書で取り上げる意味があるわけで、単に家に帰ってこない弟を心配しただけだったら、国語の教科書で扱っておけば十分です。それを敢えて取り上げているのは、明らかにこの著者が戦前の天皇を中心とする家父長制を肯定していて、戦後の個人や女性の自立を「けしからん」と怒っているからです。僕には「最近の軟弱な若い奴らは徴兵制にして軍隊に放り込んで鍛え直すべきだ」と憤っている近所の時代錯誤の爺さまとしか思えません。

 歴史を今の尺度で裁いてはいけない、とこの教科書では主張していますが、この著者自身も、自分の尺度、自分の思い込みで歴史を裁いているようにしか読めませんでした。こういうのは「思い込み史観」とでも呼べば良いと思いますが。  

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