かつて紅白歌合戦がまだ国民的行事だった頃、美空ひばりが紅白に出るの出ないのと揉めていました。最初のきっかけは、ひばりの弟が事件を起こしたせいでNHKがひばりを出さなかったのですが、その遺恨が尾を引いて、今度はひばりが「紅白卒業」宣言をしたのだと思います。ちょっとあやふやなのは、かなり古い話でまだ僕も子どもだったので、事件の経過を正確には思い出せないからですが、概略はそんなところでした。

　次に思い出すのは全盛期のピンクレディーが紅白の裏番組に出るために出場辞退をした時です。すでに時代は昭和50年代、僕も生意気盛りの高校生でしたから、「権力」「体制」の象徴である紅白への反発心も強く、ピンクレディーの行動に快哉を叫んだ記憶があります。

　また昭和50年頃から、テレビに出ないフォーク・ロック系の歌手が増えてきて、当然彼らは紅白にも出ませんから、僕たちのような若者は紅白に興味を失っていきました。あの頃、矢沢永吉や井上陽水や荒井由実や中島みゆきが紅白に出ていたら、全然紅白に対する印象が違っていたと思います。

　現代の紅白不出場歌手は、当時のような思想的背景があったり、意地のつっぱり合いで出ないわけではなく、もっとマーケティング的な考え方から出ないのだと思います。つまり広く全国民にアピールするのではなく、自分たちの音楽を受け容れてくれる層にだけ届けば良いという発想が根底にあるため、客層が違う紅白にあまり価値を認めていないのでしょう。

　以下は今年の主な不出場歌手です。こんなにも有力歌手が出ないのでは、紅白に出る歌手達と比べて、どっちが豪華で、どっちが今年を象徴しているかわかりません。

　宇多田ヒカル、倉木麻衣、椎名林檎、ZARD、MISIA、矢井田瞳、サザンオールスターズ、ゆず、KinKi Kids、GLAY、福山雅治、B'Z、MR.CHILDREN、布袋寅泰、V6、 T.M.Revolution、LUNA SEA、嵐、イエローモンキー
　

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