今年もこの時期恒例の郵便局のＣＭが流れています。年賀状発売とともに始まるこのＣＭ、この数年、ずっとキャラクターは中島みゆき。年賀状と中島みゆきという取り合わせも、最初はなんかミスマッチな感じがしていましたが、続けば「まあそういうものか」と思えてくるから不思議です。

　ところでこのＣＭで中島みゆきが年賀状の文面を考えていて、次々と「年」を「世紀」に変えていきます。「新世紀あけましておめでとう」「今世紀もよろしく」「A HAPPY NEW CENTURY」など、多分来年正月に溢れかえるであろうフレーズを、ことごとく彼女に言われてしまいます。

　僕たち広告屋の感覚からすると、こうしてＣＭで言われてしまった以上、この手のフレーズはもう年賀状には使えないな、という気がします。恐らくこのＣＭを考えた奴も「どうせ来年の年賀状はこんなフレーズばかりになるのだろうから、今のうちに使えなくしてやれ」という意地悪な気持ちが入っているのではないかと思います。クライアントはともかく、制作者は絶対そう考えているに違いありません。

　人と同じじゃイヤだ、後追いは恥ずかしい、というのは広告制作者の抜きがたい性癖のようです。職業柄ってやつです。僕たちはレストランや喫茶店での注文ですら、自分の注文しようと思っていたものを人に先に言われると「取られたぁ」と思います。別にひとつしかないわけではないのに、つい先に言われたことが悔しくてそう思うのです。で、急にまだ注文されていないメニューに変えたりするので、結果として6人いれば6種類のメニューを頼んでしまい、ウェイトレスを混乱させ、間違った品を持ってこられる羽目になります。バカみたいです。

　せっかく今年の正月にすでに来年は「旧世紀中はお世話になりました。今世紀もよろしくお願い申し上げます」という文面を使おうと考えていたのに、中島みゆきのせいでそれもパーです。年末までに何か新しいフレーズを考えないとなぁ。 　

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