かつて僕は少しだけパソコン好きでした。と言っても、単にMS-DOS時代からパソコンをいじり、CONFIG.SYSやAUTOEXEC.BATくらいなら理解できていて、簡単なBATファイル程度は書けたというくらいのものですから、それほど大したものではありません。

　ただパソコン通信には早くから結構のめり込んでいた方なので、本当の「業が深い」パソコン好き、いわゆる「オタク」な人たちがどんなものかは知っています。まだ初期の98ノートをオフ会に抱えてやってきて、音響カプラーを電話にくくりつけてネットにつなぐような、そんな人たちとも友人でしたから、それなりに黎明期のパソコン文化の息吹くらいは感じていました。

　パソコンが普及するにつれて、僕も周りの人間から「詳しい人」「ちょっとオタク入っている人」として、いろいろ相談をされることも増えました。僕自身、98全盛期からWindows3.1、Windows95が登場する頃までは、熱心にパソコン誌を読み漁り、大須に通っては最新情報を集めていましたし、周囲の数少ないパソコン好きとも熱く語り合っていたものです。

　その興味が徐々に薄れてきたのは、パソコンの主流が98からDOS/V機に移り、どのパソコンでも結局全部一緒、という時代になったからです。かつてはメーカーが違えば全然違うパソコン、という世の中でしたから、情報を集めて比較検討するのも気合いが入りました。選び間違えれば、動かないアプリ、つながらない周辺機器の山となって、折角の高価なパソコンも、ただの箱になりかねなかったからです。

　しかし、今となってはどのパソコンを買おうが問題なし、予算に合わせて選べばいいんじゃないの、という時代です。性能がぐんぐん向上していき、パソコンを使って次々と新しいことができるようになったあの頃に比べ、ちょっと古いマシンでもスピードを少し我慢すればできることは同じというのでは気の入り方も違います。パソコンはかつての趣味の対象から、すっかり実用の道具になってしまったのです。

　一応まだパソコン誌を2誌定期購読してはいますが、それも3ヶ月分くらい読まずにたまっています。テレビや冷蔵庫と同じ実用品と考えてしまうと、とてもその情報を毎月熱心に集めようとも思えません。ま、実用品にしては、未だに不可思議な動き方（止まり方というべきかも）をするところもありますから、少し可愛い気は残っていますけどね。

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