幹事クリタのコーカイ日誌2000

 
 3月27日 ● 二子山vs武蔵川最終対決。

 大相撲春場所は「荒れる春場所」という言葉通り、史上初の幕尻力士の優勝で幕を閉じました。もっとも貴闘力は幕尻まで下がったとは言えかつては優勝決定戦まで残ったこともある実力者。全くのまぐれとも言えないのですが、4横綱3大関に大関昇進を目前にした充実した関脇もいる豪華な番付の中での優勝ですから、運もあったことは間違いありません。

 もっとも協会やファンの期待は、優勝決定戦にあったことも確かです。千秋楽で貴闘力が土俵際の逆転劇で優勝を決めなければ、史上2度目の5人による、しかも2つの有力部屋の力士同士の対決となる決定戦の可能性が高かったからです。特に武蔵丸vs武双山vs雅山の武蔵川対決は、一体誰が一番強いのか、ファン垂涎の対決だっただけに落胆も大きかったことでしょう。

 それにしても決定戦こそ実現しなかったとは言え、今場所はまさに二子山王朝から武蔵川王朝へのバトンタッチとなる節目の場所でした。もちろん、すでに武蔵川部屋は武蔵丸、出島、武双山によって連覇を続け角界トップクラスにいることは間違いないのですが、落ちたりとは言え二子山部屋も2横綱1大関を擁する大部屋。格的番付的には一歩譲っていました。しかし、今場所若乃花は引退、貴乃花もかつての力を取り戻せずに11勝止まり、貴ノ浪は大関復帰にも関わらず負け越し、そして安芸乃島も力の衰えをはっきりと示して5勝10敗で終わりました。

 貴闘力の優勝は唯一の救いですが、それとて十両に落ちてまで相撲を取りたくないという背水の陣と、連勝してもなかなか上にぶつけなかった審判部の割のまずさに救われたもので、来場所上位陣と当たって活躍できるとはとても思えません。実際、場所終盤に当たった上位力士には全く太刀打ちできていませんでした。武双山や雅山に勝った相撲も辛うじて拾った星です。夢だった幕内優勝を達成した貴闘力は、かえってすっきり引退できるというものです。

 それに比べて武蔵川部屋勢は武双山12勝、武蔵丸、出島、雅山は11勝、和歌乃山だって初めての前頭筆頭で6勝は健闘でしょう。来場所武双山が大関昇進し、雅山が大関取り。名古屋場所では1横綱3大関ということも十分に考えられます。今場所、部屋の連続優勝記録こそ途絶えたものの、今場所の活躍によって当分武蔵川部屋の天下は安泰だと思われます。

 いつもテニスの話で恐縮ですが、1987年、当時破竹の勢いで勝ちまくっていた若きグラフは全豪、全仏オープンも制しグランドスラム達成かと期待されながらウィンブルドンに乗り込みました。しかし、そこで旧女王ナブラチロワに決勝で敗れ、さらに全米オープンでも同じく苦杯を喫しました。ナブラチロワは「一番大きな大会で勝てなければ女王ではないわ」と語って意地を見せたものです。結局この年の2敗がバネになって、翌年グラフは4大タイトルにソウル五輪の金メダルまで獲得する「ゴールデンスラム」を達成、真の女王の座につきました。

 今場所の貴闘力の優勝と涙は、まさに落日のナブラチロワのグラフに対する最後の抵抗を思い出させます。グラフは昨年新女王ヒンギスを全仏オープン決勝で破り、かつて自分がナブラチロワにされた同じことを後輩にして引退しました。新旧勢力のせめぎ合いがドラマを生み、そして新たな伝説のプロローグとなります。

 ところで今場所こんな混戦になった要因のひとつに審判部の割(取組編成)の失敗があります。貴闘力の連勝を軽視していつまでも上位陣に当てなかったために、終盤慌てて横綱戦を組み込むことになってしまいました。そのために横綱同士の曙-武蔵丸戦、さらに横綱大関対決の曙-出島戦がはじき飛ばされてしまったのです。看板である横綱対決がないなんて信じられない失態です。

 上位との対戦が少なかった貴闘力はもとより、前半星を落としていた曙もかなり得をしてしまいました。これで曙が優勝決定戦で勝っていたら(実際12勝を上げたわけですから可能性はありました)、何を言われたことか想像がつくというものです。結果として審判部は貴闘力に失態を救われたカタチになりましたが、本当は責任問題だと思います。
 
とりあえず、読むたびに(1日1回)


を押してください。 日記猿人という人気ランキングに投票されます。
初めての方は、初回のみ投票者登録画面に飛びます。
結構更新の励みにしていますので、押していってくださると嬉しいです。


この日記をマイ日記猿人に登録してみる

前日翌日最新今月