全国的には大して報道されていないかも知れませんが、ここ数日、愛知大学野球連盟が揉めに揉めていました。事の発端は愛知大、愛工大、名城大、中京大、名古屋大の5大学が、連盟を脱退して新連盟設立を表明したことからでした。ところが当然連盟側はこれを認めず、またこの連盟分裂の動きに対し全日本大学野球連盟も新連盟の加入に難色を示したところから、いきなり新連盟は暗礁に乗り上げてしまいました。

　そもそも5大学が新連盟の設立を目指したのは、大学野球の人気挽回を目指してということだそうです。なにせ野球全体の人気が長期低落傾向にあるところへもってきて、大学野球というのはプロ野球と高校野球に挟まれて全く目立たない存在になってしまいました。職業野球誕生以前は早慶戦を筆頭に大学野球こそ野球の花形でした。戦後その人気は衰えたとは言え、それでもまだ江川が法政で投げていた頃までは、ある程度の注目は集めていましたが、最近ではスポーツニュースでもほとんど取り上げられることはなくなってしまいました。最後に注目された大学野球のニュースは高橋由伸が田淵の本塁打記録を更新した時でしょうか。

　人気も伝統もある東京六大学ですらそうした状況なのですから、所詮は地方リーグである愛知大学野球なんて歯牙にもかけられていません。現役だけでも西崎（西武）、大豊（阪神）、岩瀬（中日）ら有力選手を輩出している割には、地元の高校生ですら有力選手は東京の大学に進んでしまいます。そこで危機感を強めていた5大学が、東京や関西の6大学リーグにならって、名古屋にも伝統校だけによる1リーグ制の連盟を設立して愛知大学野球の活性化を図ろうと考えたようです。国立の名古屋大がこれに加わっているのは、6大学の東大人気と同様なものを狙って私大側が強く勧誘したということです。

　しかしやり方があまりにも稚拙でした。そもそもなぜ6大学ではなく5大学なのか？恐らくは伝統校でありながら愛知学院大が加わらなかったせいでしょう。なにせ現在の愛知大学野球連盟の会長は愛知学院大の学長です。ここを根回しでうまく説得できずに、敵に回してしまっては新連盟の勝算は薄いです。1リーグなのに奇数校しか参加していないなんて、いかにも裏工作に失敗しましたと言わんばかりです。

　また全日本大学野球連盟への根回しもちゃんとされていなかったとしか思えません。新連盟設立を表明したら即座に「全日本大学野球選手権には出場枠を与えない」と申し渡されてしまいました。東京6大学なら「うちの方が格上だ」と突っ張ることもできるでしょうが、所詮は愛知大学野球。これでは単なる非公認組織にしか過ぎなくなってしまいます。結局は、この全日本選手権に出られないということがトドメとなりました。5大学は連盟脱退を撤回し陳謝しました。あまりにもみっともない結末です。

　しかし反乱軍にどういうペナルティを与えることになるかわかりませんが、クーデターを押さえ込んだ連盟側も単にこれで安堵していれば良いということではありません。なにせ大学野球の人気がどん底まで落ちていることは間違いのない事実ですし、なんらかの手を打たなければ、このままじり貧なのも明らかです。そもそもこうしたクーデターというのは、起こされる方にも問題があるもの。連盟の運営を巡って以前から内紛があったであろうことは想像に難くありません。

　私立大学はどこもかしこも経営難です。かつては学生集めのために野球部をはじめ各スポーツ部を宣伝塔にしてきたわけですから、この不景気な時こそ何とか人気を盛り返したいという気持ちもわからないではありません。しかし、本来大学の部活動は学生のためにあるもので大学の宣伝のために存在するものではありません。所詮は大学の野球部です。人気があろうが無かろうが学生が楽しくスポーツができれば問題ないはず。本末転倒していることに大人たちが気づくべきでしょう。

　それにしても名古屋大学。私立大のつまらない綱引きに巻き込まれるなんて、どうにも人が良いというか考えが浅いと言うか。苦しい経営のために何とか知恵を絞っている私大はともかく、東海地区の中心となるべき国立大が何をやっているのでしょう。そもそも1部の大学ばかりなのに3部の自分たちが一緒に入ろうなんて考えるところが浅はかです。個人的には最も猛省を促したいですね。

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追記
その後の報道で知ったところによると、連盟の会長だけではなく実際の運営にあたっている理事会の理事長も愛知学院大の野球部長。しかも7年もの長期政権。つまり長年にわたる愛知学院大主導の運営に対する反発が今回の騒動の根底にあるようです。したがって理事会からの制裁も厳しいものになることもあり得るそうです。ただ、こんなことで出場停止等、野球部員たちがプレーできないというようなことが起きないようにして欲しいと思います。 　

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