LATIN SOUL (PRESTIGE)

THE LATIN JAZZ QUINTET (1960/12/6,1961/5/23)

LATIN SOUL


【パーソネル】

WILLIE COLEMAN (vib,melodica) BILL ELLINGTON (b) JUAN AMALBERT (conga)
PHIL NEWSOM (ds,timb) BOBBY CAPERS (as) <#1,2,4-6> ARTIE JENKINS (p) <#1-6>
JOSE RICCI (p) <#7,8>

【収録曲】

(01-03) BLUES WALTZ / MILESTONES / SUNDAY GO MEETIN'
(04-06) MAMBO BOBBIE / RIP A DIP / MONKS BREAD
(07-08) RED TOP / DILLY DALI

【解説】 (2008年03月23日更新)

 君は珍獣が好きかな?僕はですね、さほど好きではありません。珍獣よりもチンジャオロースーのほうがいいかな?…という気がするんですが、ただ珍しいだけで、さほど可愛くはなかったりしますからね。そもそも僕は珍獣とか、珍味とか、チン (←犬。) とか、頭に “チン” の付くチン系のものがあまり好きではなかったりします。ま、 “ちんすこう” とかチンゲン菜なんかは別に嫌いではないんですが、珍品の収集などというのは正直、ちょっぴり理解に苦しむものがあります。珍奇なだけでまったく何の役にも立たないものより、ヨードチンキのほうが傷口の消毒にはよほど便利だと思うんですが、世の中に珍品好きの人というのは、決して少なくは無いようです。その証拠に養老町にある 古今珍品情報流通センター 、ここは建物が城のような形をしているので、世間では通称 “珍品城” と呼ばれているんですが、前を通るといつも、かなりの数の車が止まっていたりします。僕が外から見た限りでは、ただ珍しいというだけで別に面白くも何ともないものやら、珍しいという事すら怪しいようなモノしか置いてなさそうな感じなんですが、それでも業績は好調なようで、 “月見の里・南濃” という道の駅に支店まで出したりしております。いや、道の駅にある店が珍品城資本なのかどうか確認したわけではないんですが、 “品が珍か?値が珍か?” というキャッチコピーが共通なので、恐らく何らかの関わりがあるのではないかと思われます。 “値が珍” というのは何となくネガティブなイメージがあって、宣伝文句としてはどうか?…という気がしないでもないんですが、 “品が珍か?” と疑問文になっているところにも珍品としての自信の無さが窺われて、マイナスだと思います。大して珍しくもない品を、とんでもない値段で売っているのではないかという疑念が広がるわけでありますが、それが災いしたのか、道の駅のほうは先日、店じまいしてしまいました。ま、ドライブの途中で休憩に立ち寄って、ちょっと珍品でも買ってみるぅ?…という気になる人はさほど多くはないと思われるので、販売戦略そのものが根本的なところで間違っていたのではないかという気がしないでもありません。

 とまあそんなことはどうでもよくて、話を本題の “珍獣” に戻そうと思いますが、珍獣界の重鎮と言えばこれはもう、 “ジャイアントパンダ” ということになろうかと思います。世界三大珍獣のひとつにも数えられるくらい大きくて珍しいケモノであるわけですが、ただ珍しいだけでなくて可愛いというのは、珍獣としてはちょっと珍しいです。珍獣でありながら珍重される理由がそこにあるんですが、パンダ系のキャラというのも数多く作られております。例えばえーと、 “たれぱんだ” とか “伊集院パンダバ” とか、あとはえーと…、ま、それくらいですか?数多くと言っておきながら、たったの2つしか思い浮かびませんでしたが、ちなみに伊集院パンダバの誕生日は8月8日なんだそうで。サバ兄やシナたんと同じですな。シナたんというのが一体ナニモノなのか、説明すると話が長くなるので今日のところは割愛させて貰いますが、とまあそんなことで、次の珍獣に行きたいと思います。 “コビトカバ”。 こいつもですね、上野動物園にいました。その話は ここのところ に書いてあるんですが、当時、ただの小さなカバだと思ってバカにしてたら、こいつも立派な珍獣だったんですな。申し訳ないことをしました。申し訳ないことをしたと言えば、その時の記事に写真付きで紹介したバアちゃんに対しても僕は謝らなければならないんですが、ジローとサツキ、カバの名前はそれで間違いなかったようです。 ここ にその観察日記があるんですが、もしかしてけっこう有名なんすかね?そうとも知らずに心の中で、バアさん、ちょっとボケてるのか?…と思ったりして、ホントに申し訳ないことをしました。 それはそうと、僕がジローくんとサツキちゃんを見たのは今から9年も前の事になるんですが、2007年02月25日の時点では2匹ともまだ元気に生きていたようですな。その後、お亡くなりになったという話も聞かないので、今でも元気に生きているのではないでしょうか。調べてみたらサツキちゃんは1971年5月20日生まれということなので、現在36歳ですかね?学年で言うと僕の4つ下ということになろうかと思いますが、ということは、陽和中学校に同じ時期に通ってたという実績はなくても、日進小学校では一緒だった可能性があります。僕の家が火事で燃えたのは5年生の時のことなので、同じ学校に通う1年生として、お見舞いに使い古しの消しゴムとかを貰っている可能性もあります。いや、その節はお世話になりました。ただ当時、同じ学校にカバが通っているという噂は一度も聞いたことがないので、あるいはその節、特にお世話にはなってないのかも知れませんけど。

 そもそもカバというのはどれくらい生きるものなのかと思ったら、どうやら平均寿命は40歳くらいらしいですな。もし僕がサバではなくてカバだったら、いつ死んでもおかしくないということになりますが、カバの年を人間に換算するなら、ざっと2倍で計算すればいいという事になりますかね?となると、サツキちゃんは今年で74歳。そろそろボケが出始めても不思議ではないお年頃であります。上野動物園で飼育されてる動物の中では2007年の時点で、ガラパゴスゾウガメのタロウくん(78歳以上)、マナヅルのヅルくん(42歳)、ケープペンギンのハチちゃん(39歳)に次ぐ第4位の長寿ということになるようです。鶴は千年、亀は万年とはよく言ったもので、多少…というか、かなりの誇張はあるものの、やはりかなり長生きをするものなんですな、ツルとカメ。何でもいいけどマナヅルの名前が “ズル” であるというのは、あまりにもやっつけ仕事ではないかという気がするんですが、ちょっと意外だったのはケープペンギンで、そんなに長生きするものだとは知りませんでした。もっとも、ケープペンギンは20歳でも十分に長生きらしいので、このハチちゃんがちょっと異常とも言えるわけなんですけど。平均寿命の倍近いということは、人間で言うと150歳超?もはや仙人の域に達している仙ケープペンギンと言わざるを得ませんが、 この記事 にサツキちゃんの名前が出てないのがちょっと気になるところではなります。もしかして、死んじゃったとか?数年前までは敬老の日のお祝いに好物の “おから” をプレゼントされてたみたいなんですけどね。好物が “おから” というところが何とも微笑ましいところなんですが、もしこれが、カバの好物は鰻のカバ焼きとかだったりすると、カバの癖に生意気や!…と、世間からバッシングされることにも成りかねないんですけど。

 で、一方、コビトカバ。これはその名のとおり、大きくなっても小さいままのカバ…というか、大きくならない種類のカバらしいんですが、ただコイツはあくまでもカバであってヒトではないワケなので、コビトカバという名称はちょっと変だと思うんですけど。正確に “コカバカバ” という名前にしておいたほうが、ちょっぴりボサノヴァの名曲 「コパカバーナ」 みたいでいいと思うんですが、このカバは一体どれくらい大きくならないのかというと、大きくなっても体長は180cm、体重は270kg程度なんだそうで。それで小人を名乗るのはちょっと無理があるような気もするんですが、小人ではない普通の大カバは体長4m、体重は2.7tくらいまで大きくなるようなので、ま、それに比べれば確かにかなりの小カバと言えそうです。ただ、いくら珍獣と言われても、見た目的にはただカバが小さくなっているだけの話なので、インパクトが弱かったりするんですが、その昔はただのカバの子供だと思われていたみたいですしね。どうせなら体長18mmくらいまで小さくなっておいたほうがラブリーで人気も出たと思うんですが、もう一工夫が求められる珍獣であると言えましょう。日本でコイツが見られるのは、上野動物園の他には名古屋の東山動物園と南紀白浜のアドベンチャーワールドしかないらしいので、かなり珍しいのは間違いないようなんですけど。 で、世界三大珍獣のもうひとつはですね、 “オカピ” でありますか。変な名前ですな。頭に “おか” の付く3文字の言葉は、岡田クンちのおかずは、おからと、オカカと、お菓子と、おかきだった。…という例文の中にいくつか出てくるわけなんですが、よりによって単語の最後にいちばん付けてはいけない “” を文字を持ってきてしまいましたかぁ。これはちょっと問題です。岡田クンちの食生活と同じくらい問題です。 “おから” は庶民的で値段も安くて栄養もあるし、温かいご飯に醤油を垂らしたオカカをのっけて食べるのは非常に美味しいものであるわけなんですが、お菓子と “おかき” をおかずにするというのは、どうかという気がします。それと同じくらい、オカピという名前はおかピーよね?…という気がするんですが、イカピー、エビピー、オカピー。 中にピーナッツが入った豆菓子であれば、なかなかナイスなネーミングだとは思うんですが、動物の名前としてはちょっと違和感があります。ポンカン、キンカン、伊予柑、イカ缶と、柑橘類の中にひとつだけ海産物の加工食品が混入したかのような違和感があります。 そもそも、オカピというのは一体どんな動物なのかと思ったら、 こんなヤツ なんですな。 見た目、何かわりとフツー。ウマとシマウマが過ちを犯しちゃうと、何となくこんな子供が生まれてきそうな気がするんですが、ウマ科ではなくてキリン科の動物のようです。別に首が長いわけでもなく、これなら普通のキリンや、ろくろ首のほうがよほど珍しいケモノのように思えるんですが、日本で見れるのは上野動物園と横浜のズーラシアの2箇所だけなんだそうです。ただ、珍獣のわりには今ひとつ地味なので、さほど人気は高くなく、ワカコ先生の漫画 『キャプテンぎんざる君!!』 にも登場しません。いや、もしかしたら登場したことがあるのかも知れませんが、少なくとも単行本には出てきません。

 この本、登場人物…というか、登場珍獣のミニ解説がイラスト付きで書かれていて、とても親切なんですが、キンシコウ、オコジョ、カンガルーといったおなじみのケモノのほか、スウェインハーテヴィストなどといった聞いたことのないような生き物も登場しております。どんなヤツなのかと思ってググってみたところ、この本の紹介ページが1件ヒットしただけだったので、あるいは細かいところで片仮名の一部が間違っているのではないかという気もするんですが、その他にはえーと、ツチノコ、ムリキ、ムササビ、インパラでありますかぁ。あ、 インパラ 、個人的にはけっこう好きだったりするんですよね。 「竪琴の角」 と称される角と、素晴らしい跳躍力と優美で華奢な容姿を併せ持つ 「アフリカの王子」 。…と解説にもあるように、見た目、かなりイケてます。ただ、立派な角と優れた跳躍力を持ってるわりには今ひとつ弱っちく、よくライオンやヒョウに食べられたりしております。王子だけに甘やかされて育てられたので、ひ弱になってしまったのでありましょう。ウシ科だけに、食べると意外に美味しかったりするところもネックでありまして、肉食動物から我が身を守るには、角を生やすとか、足腰を鍛えるとか、そういうことではなくて、肉をめっちゃ不味くするというのが最善の策だと思うんですが、果たしてどんなものでしょうか? で、インパラというのは何といっても、そのネーミングが素晴らしいですよね。インゲンとアスパラ、略してインパラ?…といった感じで、バターで炒めて食べると美味しそうなところがいいと思います。インパラステーキの付け合せに、インゲンとアスパラのソテー。これはもう、ライオンやヒョウでなくても、思わずヨダレが出てきちゃいそうです。いや、ライオンはインゲンとかアスパラとか、そういう植物系の食材はあまり喜ばないような気もするんですけど。 で、動物園で飼われているインパラというのは今ひとつ人気がないのが実情でありまして、そこのところがちょっと残念だったりします。ここはひとつ、新たな市場を求めて秘宝館あたりにも業務拡大したほうがいいのではないですかね?伊勢でやってた 「ウマのマル秘ショー」 は残念ながら、元祖・国際秘宝館そのものが潰れてしまいましたが、熱海の秘宝館あたりでインパラのマル秘ショーをやってみるというのはどうでしょう?名付けて “インパラの淫乱パラダイス♪” …って、ちょっとイイかも?

 ということで今日はザ・ラテン・ジャズ・クインテットなんですが、いや、こんなコンボ、あったんですな。名前からしてとってもラテンなジャズを演奏する5人組なのではないかと思われるんですが、このコーナーでもかつて、密かに登場していたことがあります。 ここ です。L.J.Q. という略称で書かれているのがこのラテン・ジャズ・クインテットです。今回、このアルバムのライナーノートによって、彼らの全貌が明らかになったわけなんですが、えーと、ホアン・アマルバートという人が保安部門とリーダーという役割を担っているんですな。で、この人は楽器でいうとコンガを担当しているようですね。コンガというのは大村崑が叩くものだと思っていたんですが、このグループでは違うようです。で、この人がリーダーであるというのは名目上の話で、実際には参加者全員が対等な立場でタイトーのインベーダーをするという、そういう方針が打ち出されているようですが、コンガの他、ヴァイブにピアノにベースにドラムス、もしくはティンバレスという打楽器を加えて、それで5人組が形成されているようです。アルトのボビー・ケイパーズは入って、クインテットではなく、セクステットになることも多いようなんですが、ちなみにジャケットで小さなタイコを2つ、太股に挟んで叩いているお姉さんはグループの一員ではないと思うんですが、果たしてどんなものでしょうか? とまあそんなことで、では1曲目から聴いてみることにしましょうか。

 まず最初は 「ブルース・ワルツ」 という曲です。 「子犬のワルツ」 、 「スケーターズ・ワルツ」 、 「芸者ワルツ」 と、日本ではワルツという音楽が大変に人気だったりするわけですが、このブルースで3拍子な作品はですね、レイ・チャールズの曲なんですな。いいですよね、レイ・チャールズ。背後霊、守護霊と並ぶ、 “世界三大レイ” のひとつに数えられるほどの才人なんですが、そんな彼が一体どんな素敵な曲を作ってくれたのかと思ったら、ま、わりと普通な感じでありました。コンガのリズムも軽快に、アーティー・ジェンキンスがブルーなピアノを聴かせてくれるイントロに続いて、ボビー・ケイパーズのアルトが高らかにブルースでワルツなテーマを歌い上げます。で、そのまま、アルトのソロへと流れていくわけなんですが、ラテンのジャズというのでどんなキワモノなのかと思ったら、意外と真っ当なハード・バップでありますな。珍品城で売られていそうな雰囲気というのはあまり強くは感じられません。タイプで言うと、ハーマン・フォスターのピアノとコンガの入ったルー・ドナルドソンといったところ?ややベタではあるんですが明るくハッピーで、それでいてフレーズはしっかりとパーカー派してたりして、なかなか侮れない才能の持ち主であるものとお見受けしました、ボビ・ケイ。少なくとも唄啓よりはジャズのセンスがあると思います。続くアーティー・ジェンキンスのピアノ・ソロもなかなか快調で、これなら十分、曽我ひとみさんの旦那が勤まるのではないかという気がします。それとはまた違うジェンキンスさんなのかも知れませんけど。タイプで言うと、先ほどもちょっと名前を出したハーマン・フォスター系ということになりましょうか? 青井黒板製作所 のようなブルージーさを感じさせるスタイルの持ち主であるようです。ちゃんと黒い黒板を作っているのか、間違えて青い黒板を作ったりしていないか、ちょっぴり心配なところではあるんですけどね、青井黒板製作所。黒板クリーナーロボなどという、子供の頃、こんなんあったらエエのにな。…と思っていた夢のような装置も作っているみたいなんですけどね。手が真っ白になって大変でしたからね、授業の後で黒板を消すという日直の仕事。 で、その後、コンガとベースの絡みという、なかなか渋いパートがあったりして、でもって、テーマに戻って、おしまい。のっけから良好な演奏が繰り広げられているのでありました。曲そのものは、さほど日本人ウケするタイプのものではなかったりするんですけど。

 2曲目はマイルス・デイビスのオリジナル、 「マイルストーンズ」 です。ラテンでやるにはやや意外な選曲なんですが、曲そのものも決して日本人ウケするタイプのものでは無いですしね。ただ、シンプルな作りであるだけに、ジャム・セッションの素材としては悪くない選択でありまして、ここではアルトとヴァイブのユニゾンによって、なかなかいい感じの仕上がりとなっております。けれん味のないケイパーズのアルト、レッド・ガーランドを彷彿させるキュートなタッチのジェンキンスのピアノ、ボビー・ハッチャーソン的な新主流派風ヴァイブを聴かせるウィリー・コールマンと、各自のソロも出色の出来でありまして、ま、唯一の欠点といえば、一体これのどこがラテンなんや?…と言いたくなることくらいなんですが、今ひとつ書くことがなかったりするのも、僕としてはちょっと辛いところではあります。ま、いずれにせよ、マイルの石 (マイル・ストーン=一里塚) と、マイルスの音 (マイルス・トーン) とを引っ掛けた曲のタイトルが何とも言えずに洒落ているし、マイルスには参るっす。…と言いたくなる、そんな1曲であることだけは間違いありません。 ということで、次。3曲目、 「サンデイ・ゴー・ミーティン」 「日曜日には集会に行こう」 という呼び掛けでありましょうか?僕は嫌ですけどね。日曜日は家でゆっくりしていたいです。集会なんかに行ってたらこの原稿を書く暇がなくなって困るし、そもそも集会というもの自体に、まったくソソられるものが感じられません。ま、朝、学校の校庭で行なわれる全校集会とかであれば、貧血を起こして倒れるギャルとかが、ちょっぴり可愛くてよかったりするんですが、保健室に連れて行ってあげたのがきっかけになって愛が芽生えたりすることも、まったく無いとは言い切れません。僕の経験上、そういうことはただの一度もなかったんですけど。 で、ここで言う集会というのは恐らく、教会に行って説教を受けるという、まったく気の進まない企画なのではないかと推測されるんですが、作曲したのがジーン・ケイシーという人だけに、軽視出来ないようなジーンと感動する作品に仕上がっていることは期待が持てるかも知れません。恐らくゴスペル系の作風ではないかと思われるんですが、聴いてみたらさほどベタではなく、M.J.Q. がちょっぴりラテンがかったような感じで、いや、これは悪くありません。いや、どちらかと言うと、ウォルト・ディッカーソン風ということになりましょうか?いずれにせよ、ヴァイブ好きの僕にとってこのL.J.Q. というグループは、かなりポイントが高かったりするわけなんですが、コールマンのヴァイブ、ジェンキンズのピアノと良好なソロが続いて、とまあそんなことで、テーマに戻って、おしまい。アルト抜きのクインテット演奏になっているところも、チェンジ・オブ・ペーストして、効果的です。

 4曲目の 「マンボ・ボビー」 はマンボ風の賑やかな作品です。いいですよね、マンボ。僕はヤン坊とマー坊とでは、マーボー豆腐が好きな関係で、どちらかというとマー坊派だったりするんですが、マンボと田んぼでは、断然マンボのほうが好きです。田んぼというのはグジャグジャしてるし、たまに蛭なんかも出没したりして、決して爽快ではなかったりしますからね。一方、マンボのほうはというと、具体的に何がどのようにいいのかとか、そういう次元の話ではなくて、少なくとも田んぼよりはマシやよな?…という気がするわけなんですが、この曲はコンガ担当のホアン・アマルバート君のオリジナルなんですね。マンボと言えば確かにマンボなリズムに乗って、アルトとヴァイブの絡みで演奏されるテーマ部がなかなかいい感じだったりします。ソロ先発はコールマンのヴァイブなんですが、バックで聴かれるピアノのコンピングがちょっぴりアンドリュー・ヒルだったりします。大の蛭嫌いである僕も、ヒル君の演奏はわりとよく聴いたりするんですが、6カ国協議のアメリカ主席代表、ヒル次官補にも頑張って欲しいところでありますな。ソロ2番手はジェンキンスのピアノなんですが、アドリブ・パートではさほどヒル的な要素はなくて、わりとシンプルだったりします。続くケイパーズのアルトは、始まりこそややリラックスしたムードなんですが、中盤意向は次第にテンションが高まっていって、その “みなぎり感” は、オダギリジョーにも匹敵するものがあります。とまあそんなことで、テーマに戻って、おしまい。最初と最後のテーマとではちょっぴりパターンを変えてあったりして、フィギュアスケートのサーシャ・コーエンの演技にも匹敵する、なかなかの好演であると言えると思います。

 続いてはヴァイブ奏者ウィリー・コールマンのオリジナル、 「リップ・ア・ディップ」 。曲のタイトルで韻を踏んでいるところが僕好みであるわけですが、手作りのお菓子と韻、僕はこの2つに弱いですからね。曲名同様、メロディのほうもマイナー調で哀感に満ちた、いかにも日本人好みのものに仕上がっているんですが、で、ここでは何やら、ちょっと変わった楽器の音色も聞かれたりもします。ハーモニカとよく似た感じなんですが、クレジットを見ると “melodica” などと書かれております。調べてみたらどうやら、ピアニカみたいな楽器のようなんですが、ヤマハが作っているのがピアニカで、スズキがメロディオン、でもって、ホーナーというメーカーが出しているのがメロディカということになるようです。小学生の頃、音楽の授業で習いましたよね、ピアニカ。わざわざ音楽室にあるオルガンを使わなくても、どこでも気軽に鍵盤の指遣いの練習が出来るなかなかのスグレ物でありましたが、すぐに唾が溜まって臭くなっちゃうところが玉に瑕でありました。家に忘れてきちゃったとしても、他人のピアニカを借りるというのは、かなりの勇気が必要でありましたが、大好きな女の子が吹いてるピアニカなら、ちょっと吹いてみたいような気もするんですけど。天才ニワ君とか、粗暴なヤナガワ兄弟とか、そういう人たちのピアニカは絶対に嫌です。 で、あのチープな感じのする楽器で、これほどジャジーな表現が出来るというのはちょっと意外でありましたが、テーマに続いてちゃんとソロまで取ってますもんね。ホースを使わずに直接楽器を咥えれば管楽器的にも使えるという、なかなか優れた特徴を持ち合わせているので、こうして自在に吹くことが出来れば、かなり気持ちがいいかも知れません。ま、あまり調子に乗って吹いてると床が唾でベタベタになって、かなり気持ち悪かったりすることになるんですけど。 で、メロディカに続いてアルトの流麗なソロがあって、ピアノのブルージーなソロがあって、最後はベースとコンガの地味な絡みがあって、でもって、テーマに戻って、おしまい。いや、よかったっす。

 続いてはベーシストのビル・エリントンのオリジナルで、 「モンクス・ブレッド」 という曲です。アルトとヴァイブのユニゾンで演奏されるテーマ・メロディはかなり変だったりするんですが、タイトルからもわかる通りセロニアス・モンクに捧げられたものらしいので、ま、それもやむを得ないところではなかろうかと。モンクっぽさは必要以上にうまく表現されてますもんね。ソロはヴァイブ、アルト、ピアノという順番なんですが、いずれもちょっと変な感じになってしまっているのは、ま、ご愛嬌ということで。 で、次。  「レッド・トップ」 はジーン・アモンズのオリジナルでありますか。 ボス・テナーと呼ばれるアモンズ君は、顔がヤーさんにしか見えないことで有名なんですが、コンガ入りのアルバムもたくさん作ってますからね。ラテンとの相性は意外に悪くないかも知れません。  このアルバム、最後の2曲はアルト抜きのクインテット編成で演奏されるんですが、ゆったりとしたテンポの能天気な曲調が、なんとも “ぬるま湯” で悪くないですよね。冬場の露天風呂がぬるま湯だったりすると間違いなく風邪をひくことになるんですが、これからの季節なら大丈夫。ヴァイブ、ピアノの順でソロ・パートが演奏された後、セカンド・テーマのようなメロディを演奏するヴァイブにコンガが絡むパートがあったりするんですが、そういうところもなかなかよく考えられていると思います。ラテンのノリとしてはやや地味なんですが、いいですよね、打楽器。打楽器が決して駄楽器ではないことを改めて認識させられた思いでありますが、ということで、最後の曲です。 「ディリー・ダリ」 。モンク物と同じ、ベースのビル・エリントンのオリジナルなんですが、ちなみにこの人はかのデューク・エリントンとは親戚の間柄なんだそうで。花柄、蕎麦殻、間柄。パンツにするならやっぱり花柄がベストだと思うんですが、間柄のパンツというのは何だかよく分からないし、蕎麦殻のパンツというのはチクチクとした刺激があって、ちょっといいかも?…という気がしないでもないんですが、モンクに捧げるという余分な縛りがない分だけ、普通にいい感じの佳曲に仕上がっていたりします。全体の雰囲気としては、ちょっぴり御陽気なウォルト・ディッカーソンですかね? テーマの後、ヴァイブ、ピアノとソロが続いて、テーマに戻って、おしまい。…という、極めてシンプルでオーソドックスな構成なんですが、ま、あまり気を衒い過ぎたりすると、テラテラの寺井クンみたいになっちゃいますからね。 『こちら葛飾区亀有公園前派出所』 に出てくる寺井巡査は、ぜんぜんテラテラなキャラではなかったりするんですけど。 あ、そうそう。最後の2曲だけ録音日がちょっと早くなっていて、ピアノがジェンキンスからホセ・リッキーという人に代わったりもしてるんですが、そういう細かいことはあまり気にしなくてもいいかぁ。…と思ってしまうほど、サウンド的にほとんど変化はありません。強いて言えば、ホセくんのほうがちょうっと線が細ぇような気がしないでもないんですが、その分、ホセくんのほうがより品行方正であるということが言えるかも知れません。何よりだと思います。 とまあそんなことで、今日のところはおしまい。

【総合評価】

  メンバー全員、素性がまったくよく分からないという、購入する際にはかなりのリスクが伴うアルバムだったんですが、予想を遥かに上回る出来のよさでありました。ジャズ界の出来杉くんと言っていいかも知れません。あとはえーと…、特に書くことを思いつかないんですが、買って損はない、そんな1枚です。そんだけ。


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