TOUGH! (PRESTIGE)

PUCHO & THE LATIN SOUL BROTHERS (1966/2/15)

TOUGH!


【パーソネル】

VINCENT McEWAN (tp) CLAUDE BARTEE (ts) WILLIAM BIVENS (vib)
JOHN SPRUILL (p) JON HART (b) PUCHO (timb)
RICHARD LANDRUM (conga) NORBERTO APELLANIZ (bongo)

【収録曲】

(01-03) CANTELOPE ISLAND / WALK ON BY / JUST FOR KICKS
(04-06) AND I LOVE HER / VIETNAM MAMBO / THE SHADOW OF YOUR SMILE
(07-09) STRANGE THING MAMBO / GOLDFINGER / YESTERDAY

【解説】 (2008年03月30日更新)

 このところ、めっきり暖かくなりましたな。爪切りにはいい季節になりました。ま、爪というのは暑くても寒くても伸びるので、どの季節にも切らなければならないんですが、やはり春というのが爪切りには一番よく似合うような気がします。縁側に腰をかけてふと外に目をやると、ほころびはじめた梅の花には1羽の鶯が、そして庭には2羽ニワトリが。ホーケコッコー。鶯の声は後半、ニワトリの鳴き声にかき消されてしまいましたが、冬の間はコタツの中に潜り込んでいたニャン太郎 (雑種・8歳オス) も次第に活動的になってきて、今は縁側の隅っこでのんびりと日向ぼっこをしております。この頃は “黒缶・気まグルメ(野菜入りかつお)” の食べっぷりもよく、元気で何よりなんですが、かつおの血合肉をゼリーで包み、人気の具材をトッピング。170g×4缶・価格228円 (税込) という、そういう商品なんですけど。人気の具材というのは何なのかと思ったら、どうやら、にんじんとヤングコーンのようなんですが、そんなものが猫たちの間では人気になってたんですな。ま、わがままで気まぐれな猫のことなので、ヤングコーンは嫌いにゃ。僕はベビーコーンのほうがいいにゃ♪…とか、わがまま言ってる猫も中にはいると思うんですが、ニャン太郎も8歳になったので、そろそろ “7歳からの黒缶 サーモンのせかつおそぼろ仕立て” に変えてみたほうがいいかも知れません。サーモンの背カツオって、何や?…と思ったら、どうやら “サーモン乗せカツオ” で区切るのが正解のようなんですが、カツオの上にサーモンを乗っけてあるわけなんですな。なかなか凝ってます。個人的には “焼魚定食 まぐろに焼きさばのせ” という缶詰のほうがいいかな?…という気もするんですが、ま、僕が食べるわけではないですからね。 寝そべっていたニャン太郎が急に起き上がり、縁側の隅に置いてある “ヤマヒサ つめみがき (またたび付) ” に上って爪を研ぎ始めましたが、そういえば最近、あまり爪を切ってなかったような?…という事を思い出し、自分の爪に目をやると、果たしてかなり伸びております。僕は爪切りを探すべく、立ち上がって隣の四畳半へと向かうことになるんですが、んーと、どこにしまったんだっけ?

 …といったシチュエーションが日本の正しい “春の爪切り” ではないかと思うんですが、残念ながら、うちの庭には梅の木がありません。ナンシー梅木のレコードもありません。鶯がやってくることもなければ、庭には1羽のニワトリもいなくて、猫のほうも去年の夏、クロコが19歳で逝ってしまって以来、空席になっております。せっかく春がやって来たというのに、正しく爪切りが出来なくて残念至極なんですが、ではどのように爪切りをしているのかというとですね、風呂上りが多いですね。風呂で髪の毛を洗う時に爪がちょっと引っ掛かったりして、そういえば爪、めっちゃ伸びてるやん。…ということに気付くというパターンが多いんですが、風呂上りの爪切りというのは正しくありません。これはもう、圧倒的に正しくありません。何故かというと爪が湯でふやけてしまっているからなんですが、通常ならパチパチといった爽快な乾燥音を奏でることになる爪切りが、ハニャフニャとした “はに丸くん” と “ひんべえ” のコンビみたいになってしまいます。そして必ずといっていいほど、深爪します。痛いやん! 深爪してしまうと根本的な治療法がなくて、ただ自然に爪が伸びてくるのを待つしかないわけなんですが、爪というのはなかなか伸びませんよね。髪の毛、爪、ヒゲ、鼻毛の中でも、いちばん成長が遅いような気がするんですが、爪が短いと伸びてきた鼻毛を抜くのにも不便なので、困ります。そもそも人間の髪の毛と爪とヒゲと鼻毛は、1日でどれくらい伸びるものなんでしょうか?

 伸びる早さということでランク付けをするなら、ヒゲ、鼻毛、髪の毛、爪という順序になるのではないかと思うんですが、ヒゲというのは毎日剃りますからね。髪の毛のほうはというと、僕の場合、おおよそ35日くらいの周期で床屋に行くことになります。前髪をナチュラルに垂らしているので、ちょっと伸びてくると目にかかってウザったくなってしまいます。また、髪の毛の横の部分がボサっとしてくると、ヘルメットを被った際に段々が出来てしまって、脱いだ後、かなりカッコ悪いことになります。何だか、“逆土星の輪” みたいになっちゃうんですよね。この逆土星、どうせいちゅうねん?…というと、ま、早めに床屋にいく事くらいしか手立てがなかったりします。で、床屋に行ってどれくらい髪の毛を切られるのかというと、ま、2センチくらいではないかと思うんですが、それが約35日で元の長さに戻るので、1日あたり 0.5714ミリずつ伸びるという計算になりますか。てん・ごーなないちよん。ちょっと覚えにくい数字なので、引田天功、内視鏡を飲む。…という語呂あわせで記憶するといいと思うんですが、胃の調子が悪いんですかね、プリンセス・テンコー。ストレス溜まりそうですもんね、イリュージョン。 で、実際、髪の毛が伸びる速度というのはどれくらいなのかと思って調べてみたら、1日に約0.35ミリということらしいんですが、となると僕の計算は間違っていたことになるので、せっかく覚えた数字もまったく無意味だったことになってしまいます。どこがいけなかったんでしょうね?あるいは、床屋で切られる髪の毛の長さを適当に2センチと決めちゃったところに問題があったのかも知れませんが、ちなみに爪のほうは1日で約0.1ミリ伸びるんだそうです。やはり、かなり遅いですな。深爪の苦労が偲ばれる数字であると言えそうです。

 ではヒゲはどうなのかというと、髪の毛よりも伸びるのが早いような気がします。1日剃らないだけで、かなり伸びてウザったくなりますからね、ヒゲ。 ハゲの人でもヒゲだけは伸びるのがちょっと不思議なんですが、ハゲて髷の結えない相撲取りは、ヒゲを伸ばして髷にするというのもアリかも知れません。そうすればハゲてることで自分を卑下する必要もなくなるし、見た目上、IOCのロゲ会長のようなロン毛にすることだって可能なんですが、いや、もしかしたら全然ロン毛では無かったりするのかも知れませんけど、ジャック・ロゲ。 とまあ、かように便利なヒゲでありますが、1日にどれくらい伸びるのかと思ったら約0.4ミリなんだそうで、思ったほど頭髪との差はありませんでした。あまり大したヤツではなかったんですな、ヒゲ。ちなみに僕はヒゲもハゲもロン毛もあまり好きではなくて、韓国のチゲ鍋もさほど好きではないんですが、語尾に “ゲ” の付く系で好きなものと言えば、油揚げくらいでしょうか?美味しいですよね、揚げ。そのまま火で炙って醤油を垂らして食べても美味しいし、あげ寿司 (いなり寿司) も絶品だし、味噌汁の具では大根の千六本と油揚げというのが最強のタッグだと思います。サワラの西京焼きよりも最強です。サワラの西京焼きというのもそれなりに美味しいんですが、味噌汁の具にするにはどうか?…という気がしますからね。 とまあ、かように優れた食品である油揚げなんですが、敢えて問題点を挙げるとすれば、そのネーミングでありましょうか?豆腐を薄くスライスして油で揚げたから、油揚げ!…って、発想があまりにもストレート過ぎますよね。それはあくまでも製造方法であって、肝心の主題が欠如しているんですが、豆腐を普通の油揚げよりも厚く切って油で揚げたから、厚揚げ!…なんてのもあって、命名の安易さは豆腐業界が根源的に抱えている、物事をあまり深く考えないという体質に依存しているのではないかと思われます。

 かと思うと、いきなり “飛竜頭” なんてのも登場します。ひりゅうず、ひりうず、ひろうす、桑名のあたりではシンプルに “ひろず” と呼ばれているような気がするんですが、もしかしたらサバ家だけで通用する局所的方言なのかも知れませんけど。東京では “がんもどき” と呼ばれているらしいこの食品は、水気をしぼった豆腐に、すったヤマイモ、ニンジン、ゴボウ、シイタケ、コンブ、ギンナンなどを混ぜ合わせて丸く成型し、油で揚げたもの。…ということなので、やはり油揚げの一種ということになろうかと思うんですが、よりによって飛ぶ竜の頭とは大きくでましたな。この食い物の一体どこが飛ぶ竜の頭なのかと思ったら、ポルトガル語のフィリョース (filhos、小麦粉と卵を混ぜ合わせて油で揚げたお菓子) というのが語源になっているそうなんですが、フィリョース、ヒロース、ズロース、ひりょうず、飛竜頭♪…ということで、いや、途中のズロースは別になくてもよかったような気がするんですが、外国語の読みをそのまま音訳したものなので、使う漢字は別に何でもよかったんですな。でもまあ、 “肥料図” とかだと肥溜めの図解説明みたいで、あまり美味しそうな感じがしないので、何となく強そうな漢字を当て嵌めてみたのだと思うんですが、味噌汁の具として油揚げと非常に相性のいい大根の千六本の “千六本” というのも、やはり元は外国語だったそうですな。こちらは中国が期限なんですが、中国語で大根を表す “蘿蔔 (ろふ) ” という言葉に、細かく切ることを意味する “繊 (せん) ” という字が付いて、 “繊蘿蔔 (せんろふ) ” 。 これが元になって、せんろふ、せんろっぷ、せんろっぽーん、ズロース、千六本♪…と変化を遂げたそうなんですが、いや、今度こそ本格的にズロースは余計だったような気もするんですけど。 “千切り” というのも本来は “繊切り” と書くのが正しいようですが、なるほど、千六本などという数字はあまりにも中途半端で、血液型がA型で根が几帳面な僕としては、どうしても許すことが出来なかったんですが、六本の部分がダイコンということであるなら、これは甘んじて受け入れなければならないのかも知れません。

 とまあそんなことはどうでもよくて、何の話でしたっけ?ヒゲと鼻毛では、どちらが早く伸びるか?…という話でしたか。僕は今までヒゲ、鼻毛、髪の毛、爪という順で早く伸びるものだと思っていたんですが、ヒゲと髪の毛の伸び具合にさほどの差異がないことが判明した今となっては、鼻毛を第一位に推挙したい気分が高まって来ております。よく伸びますからね、鼻毛。僕は朝、車で会社に向かう途中、ふと鼻毛が伸びていることが気になって、指でつまんで引っこ抜いたりすることがあるんですが、そんなことが可能なのかと言うと、意外と大丈夫だったりするんですよね、これがまた。親指と人差し指ではなく、親指と薬指の2本でつまむのがポイントなんですが、薬指なんて薬を塗る時にも特に使うことはないし、もし今後、粗相を犯して指を詰めるようなことになったら、まず最初に左手の薬指から詰めて貰おうと思っていたんですが、意外なところで役に立つものなんですな。ちょっぴり見直しました。ただ、いくら鼻毛が伸びていても、指の爪がある程度は伸びていないとうまくつまめないので、この点でも深爪には注意が必要なんですが、鼻毛なんか引っこ抜いて痛くはないのかというと、これはもう、痛いです。かなり痛いです。時には、今ので鼻血出たんとちゃうか?…と思ってしまうほどの痛みに襲われたりもするんですが、その後、痛痒いような、こそばいような独特の感覚が訪れることになって、それを一度経験してしまうと、やみつきになってしまいます。鼻毛を抜くと、きまって連続してくしゃみが出たりもするんですが、それも結構、快感♪…だったりします。片手ハンドルの上に前方不注意も重なって、車を運転する上では危険極まりないんですが、もしそれで事故って死んじゃったとしても諦めがつく程、鼻毛抜きには不思議な魅力があります。 そのように根こそぎ抜き取って、もう金輪際、鼻の穴から毛なんか生えてこない!…と言い切っても大丈夫なほど、僕は徹底的に鼻毛の処理を行なっているんですが、にもかかわらず3日ほどすると、親指と薬指の爪でつまめるほど伸びてきたりするんですよね。鼻毛の生命力、恐るべし!

 そもそも鼻毛と言うのは何のために生えてくるのかと思ったら、鼻から息を吸う際にフィルターの役目をするものだったんですな。それと同時に鼻呼吸の際、空気に含まれる水蒸気の量を調節するという役割を担っているようなんですが、そのような大切な毛であるため、むやみやたらと抜いたりするのは、あまり体にはよくないようです。なるほど、だから抜いても抜いても生えてくるんですな。フィルターの役目があるので、空気が悪いところに住んでいると鼻毛の成長も早くなるそうですが、調べてみたら鼻毛の伸びる早さはそれなりにクリーンな環境のもとでは1日0.15〜0.20ミリ程度なんだそうで、いや、意外とぜんぜん大したことなかったんですな。ヒゲ以下やん!もっとしっかりせえ、鼻毛!…と叱咤激励せずにはいられませんが、引っこ抜いた鼻毛は6ミリくらいの長さがあったりするので、2日とか3日といった単位でそこまで成長するとはちょっと考えられません。3日前、自分では根こそぎ抜いて根絶した気分でいたのに、まだまだ、ぜんぜん甘かった!…というのが実情のようですが、外部からの塵や埃を遮断する役割があるとするなら、鼻毛を粗末にするのはちょっと考え物ですよね。特に花粉に苦しめられるこの時期、鼻毛を思う存分に伸ばしてやれば、そのうち鼻マスクの “ピット” も必要が無くなるかも知れません。先生、俺、今日から鼻毛を伸ばすよ!来年の春はもう、花粉症とはおさらばだよ!鼻毛の成長を早めるために汚い空気をどんどん吸ってやれば、1日で0.223ミリくらい伸ばすことは可能ですかね?来年の春先まで315日として、約7センチ。41歳の春、僕はきっと天才バカボンのパパみたいになっているに違いありません。乞うご期待!

 ということで、今日はプーチョです。本コーナー初登場にして、今までの過去の歴史の中で、最もキュートな名前の持ち主なのではないかと思います。ぷーちょ♪ 平仮名で書いて後ろに音符を付けると、より一層ラブリーさが際立つことになるんですが、当の本人はまったくラブリーでなければキュートでもなくて、最初、アントニオ猪木か?…と思ってしまったほどであります。プーチョ部長。後ろに役職名を付けると、幾分エラそうな感じが強まって、プーチョ課長だと、幾分エラそうな感じが弱まったりもするんですが、今日はそんなプーチョがラテン魂な兄弟たちと作ったプーチョ&ザ・ラテン・ソウル・ブラザースというバンドの 『タフ!』 というアルバムを紹介したいと思います。タフ。いかにも顔がアントニオ猪木なプーチョらしいタイトルだと思いますが、個人的には 「タフ」 よりも 「パフ」 、それも平仮名で書いて後ろに音符を付けて 「ぱふ♪」 にしたほうがラブリーでよかったかな?…という気もするんですが、本人の意図するところの僕の希望との間に若干のズレがあるようです。 ちなみにこのプーチョくんの担当楽器はティンバレスなんですが、これはアレです。前回の ラテン・ジャズ・クインテット のところにも登場しておりました。面倒なので敢えて詳しい説明はしなかったんですが、今日は他にあまり書くこともないのでとりあえず簡単に触れておくと、 こんな楽器 であるようです。要は2個セットの小タイコですな。タイコの類もドラムスのように複数系になると、なかなか叩くのが大変そうなんですが、2個だったら何とかなりそうな気もします。右手と左手で1個づつ叩けばいいわけですからね。簡単ぢゃん♪もし僕がこの先、楽器を演奏することになったりしたらコレを選ばせてもらって、名前もサバッチョとかにしようと思うんですが、右手で4拍子を叩きながら左手で2拍子を叩き出すくらいの芸当は僕にも出来ますからね。4拍子と3拍子というのはちょっと無理なんですが、左手の指で丸の形を描きながら、右手で三角を描くことだって出来ます。左手でドラえもんを描きながら、右手でオバQというのはまだちょっと無理なので、僕の両手使い検定の実力は、ま、8級くらいのレベルではないかと思うんですが、で、一方、ラテン魂な兄弟たちの内訳はというと、テナーサックス、トランペットの2管にヴァイブとピアノとベースが入って、更にはコンガとボンゴというラテンなパーカッションも加味されることになります。拡大版L.J.Q. と言ってもよさそうな編成なんですが、とまあそんなことで、では1曲目から聴いてみることにしましょうか。

 まずはハービー・ハンコックの人気曲、 「カンタロープ・アイランド」 なんですが、 “CANTELOPE” というのがいったい何なのかというのは、以前、このコーナーでも取り上げたことがあります。それも、つい最近のことだったと思います。が、その答がいったい何だったのか、忘れました。きっぱりと忘れました。えーと、確か、簡単ロープ亀甲縛りの略…とかではなくて、あ、そうそう!思い出しました。メロンの品種でしたよね。グラント・グリーンのアルバムの中に、ハービーの 「ウォーターメロン・マン」 に対抗して作られた 「カンタロープ・ウーマン」 とかいうのが、その絡みでこの話が出てきたのではなかったかと思うんですが、スイカ男とメロン女。2人の間には恐らく、ウリ坊のような子供が生まれるのではないかと思うんですが、となると 「カンタロープ・アイランド」 は 「メロン島」 ということになるわけですね。 個人的には平仮名で書いて後ろに音符を付けて、 「めろん島♪」 にしたほうがラブリーでいいかな?…という気がするんですが、いや、僕も今年で40歳になったので、何でもかんでも平仮名で書いて後ろに音符を付けるというのは、そろそろ卒業したほうがいいのかも知れませんけど。 で、演奏のほうはアレです。ピアノによるイントロは、ハービーのバージョンと似たようなパターン。ただオリジナルに比べて音符が半個分ほど多い感じで、ちょっともたつくところがあって、一瞬、ん?…と思ってしまうんですが、でも大丈夫です。すぐに慣れます。で、テーマ部は2管+ヴァイブ+ピアノ・トリオ+ラテン・パーカッションのフル・メンバーで演奏されていて、なかなか派手目の仕上がりとなっております。で、ソロ先発はクロード・バーティーという人のテナーなんですが、この人、フレッド・ジャクソンやハロルド・ヴィックのようなソウル風テナーのようで、コルトレーンの影響が感じられる瞬間もあったりして、なかなかスタイルを特定しにくいんですが、ここではもっぱらコテコテの、こてっちゃん風の味付けのほうが濃いでしょうか? で、続くヴィンセント・マクイーワンという人のトランペットもなかなか表現が難しいところがあって、ファンキー色はわりと薄めで、その分、ヤンキー色が強いというか。とりあえず、リー・モーガンがリー・モーガソになった感じとでも言っておきますが、 “りー・もーがそ” などというパチもん臭い名前を出されたところで、全然イメージが沸かないとは思うんですけど。 とまあそんなことで、テーマに戻って、おしまい。アルバムの最初にノリのいいお馴染みの曲を持って来たというのは、戦略として、なかなか的を得たところではないかと思います。

 2曲目の 「ウォーク・オン・バイ」 はバカラックのナンバーです。 いいですよね、バカラック。もしかしたらバカボンのパパよりも作曲の才能があるんじゃないか?…と思ったりもするほどなんですが、アーマド・バシーアという人の書いた原文ライナーでは、風変わりなメロディーを持った印象的な曲などと記載されております。ただ僕が聴く限りではまったく風変わりではなくて、アンタの名前のほうがよっぽど変だと思ったりもするんですが、何だかインドっぽい感じがしますよね、バシーア。 演奏のほうはとってもラテンなリズムに乗って、ウィリアム・ビヴェンスという人がヴァイヴでテーマを演奏するという形で進められていくんですが、何でもいいけどこのラテン魂な兄弟たちというのは、覚えにくい名前の人たちばかりでありますな。せっかくリーダーがプーチョで覚えやすいんだから、他の人もパンチョとか、ポンチョとか、ガバチョといった簡単な名前にして欲しかったところなんですが、で、これはアレです。管楽器の2人は登場しなくて、テーマの後、アドリブらしいアドリブも出てこないうちに、またテーマに戻ってしまったりして、ジャズとして聴くには正直、ちょっと物足りないものがあります。どうした、プーチョ?…と、問い質したい思いでいっぱいでありますが、とりあえず次の曲に行きましょう。 「ジャスト・フォー・キックス」 は、その緊張感とメロディー・ラインとが、彼らの感情表現の幅広さを披露するのに一役買っている (バーティーとスプルーイルのソロからもおわかりのとおり) 。…と、ライナーノートでバシーア君が書いている通りの作品でありまして、フル・メンバーで演奏されるテーマは非常に日本人好みのマイナーな作りとなっていて、良好です。 ソロ先発のバーティーのテナーはかなりモーダルなものとなっていて、この人が単なるイケイケ系ではなくて、ヌマヌマとした沼っぽいプレイも可能であることが分かるんですが、続くピアノのスプルーイルは、これまた極めて覚えにくい名前の持ち主だったりしますよね。もし僕がジャズ検定の問題を作る立場になったとしたら、是非、プーチョ&ザ・ラテン・ソウル・ブラザーズのアルバム 『タフ!』 のパーソネルを記載せよ。…というのを出してやろうと思うんですが (←超嫌がらせ) 、名前はややこしくても演奏自体は極めてシンプルで、嫌なところなどみじんも感じられない、分かりやすいソロが展開されております。  とまあそんなことで、テーマに戻って、おしまい。

 4曲目の 「アンド・アイ・ラヴ・ハー」 はビートルズのナンバーですな。ジャズでビートルズをやるというのは、どうか?…という気がしないでもないんですが、ラテンのリズムに乗せて、ホーン抜きでヴァイブ中心に演奏されるこのナンバーは、なかなか悪くない仕上がりとなっております。寂しげな雰囲気がヴァイブとピアノ、どちらの音色にも非常によくマッチしておりまして、ただアドリブらしいアドリブが最後まで出てこなくて、ジャズとして聴くには正直、ちょっと物足りないものがります。…という、2曲目と同じような感じの仕上がりになっております。どうやらプーチョ君、1曲おきに軽めの物をはさむという “ねぎま方式” を貫く方針のようでありますが、鶏肉だけでは味にしても歯応えにしても変化に乏しい嫌いがあるので、その間にネギを挟むというのはアイデアとしては悪くないとは思うんですよね。で、その法則からすると、続く 「ベトナム・マンボ」 は肉の順ということになろうかと思いますが、果たしてこの曲はフル・メンバーで演奏されておりまして、なかなかボリュームのある仕上がりとなっておりました。ベトナムという国とマンボという音楽ジャンルとは、あまり関係が深くないと思われるかもしれませんが、実はこの2者には強い共通点があります。ベトコンズボンとマンボズボン、どちらもズボンになるところが同じだったりするんですが、ただ岐阜や一宮にベトコンラーメンというのはあっても、マンボラーメンというのは聞いたことがないので、まったく同一であるとは言えないようです。 で、この 「ベトナム・マンボ」 という曲は、その微妙なズレ感覚が楽しめる作品に仕上がっているんですが、東洋風なエキゾチックなメロディとラテンなリズムとの取り合わせが絶妙です。2管主導のテーマ部に続いて、まず最初にピアノのソロがフィーチャーされるんですが、…と思わせておいて、実はもう一度テーマが出てきたりするんですが、1回目と2回目とでは主旋律に微妙な差異を持たせてあったりして、ラテン系とは思えないような知性を感じさせる凝った作りになっていたりします。いや別にラテン系がアホで単純とか、そのように思っていたわけではないんですが、それはその、えーと…、で、ソロ先発はクロード・バーティーのテナーでありますか。このクロードくんはさすがに玄人なだけあって、素人とは一線を隠したすぐれたプレイを披露してくれるんですが、特にここでの彼はなかなか気合が入っておりますな。おそらくベトコンラーメンのニンニクが彼を熱くしてしまったのではないかと思われるんですが、ベトコンにしろ台湾ラーメンにしろ、名古屋近辺で考えられたラーメンというのは、どうにも下品でいけません。上品な桑名人である僕としては、お上品に “はまぐりラーメン” あたりを食べてみたいところなんですが、いや、あまり好きではないんですけどね、ハマグリとかアサリとかシジミといった貝の類。 で、テナー・ソロの後半、トランペットが絡んでくるなどして大いに盛り上がったところで、うまい具合にテーマに戻って、おしまい。いや、なかなかファイアーでありました。

 で、6曲目は 「ザ・シャドウ・オブ・ユア・スマイル」 。日本ではもっぱら 「いそしぎ」 という名前で親しまれている曲です。1965年に公開された映画 『いそしぎ』 の主題歌ではないかと思うんですが、ちなみに映画のほうの原題は 「The Sandpiper」 となっております。サイドパイパーというのが日本では “いそしぎ” という、磯に棲息する鴫 (しぎ) の仲間といことになるようです。鴫というのは漢字だけ見ていると、いかにも田んぼにいる鳥やな。…といった感じがするんですが、それの磯バージョンというのがいるんでしょう。 しみじみとした、これぞ哀愁といった感じの曲調でありまして、哀愁モノとしては桑名正博の 「哀愁トゥナイト」 よりも上なんだけど、田原俊彦の 「哀愁でいと」 には負けるという、そういう位置につけているのではないかと思われます。なかなか手ごわいんですよね、トシちゃん。敏いとうでさえ、トシちゃんと寄る年波には勝てないと嘆いておりましたが、で、演奏のほうはというと、順番からすると今度はホーン抜きの地味バージョンということになりますか。…と思っていたら、今度はちょっと違っていたんですが、前半こそ確かにヴァイブをフィーチャーしたものになっているんですが、後半はそこにトランペッターのヴィンセント・マクイーワンが加わって、見事なミュート・プレイを披露することになります。マクイーワンという人は何となく、真桑瓜、いいわーん♪…とか、そういうしょうもない事しか言わないキャラなんだとばかり思っていたんですが、バラードもいけるんですな。ちょっぴり見直しました。 で、7曲目、 「ストレンジ・シング・マンボ」 。ベトナムに続いて今度はストレンジ・シングをマンボにしましたか。ストレンジ・シングというのはズボンにもラーメンにもなりそうもなくて、もし仮に作ったとしても妙な寝具みたいなズボンやラーメンになって、売り上げはあまり期待出来そうにもありませんが、曲そのものは別に妙でも寝具でもありません。普通のマンボです。2管のユニゾンにヴァイブが絡むテーマ部はなかなか派手でありまして、続くテナーのソロも相変わらず熱いですな。 とまあそんなことで、間にアンサンブル・パートを挟んで短いヴァイブのソロがあって、でもって、テーマに戻って、おしまい。 演奏時間が2分30秒と短く、なんだかあっという間に終わってしまうところがネックではあるんですが、ま、概ねそれなりの出来だと評価していいのではなかろうかと。

 8曲目、 「ゴールドファインガー」 。 「みんなスパイには興味深々だから、 <ゴールドフィンガー> を取り上げたのさ」 とプーチョは冗談めかして言うが…と、原文ライナーに書いてあるところを見ると、どうやらスパイに関連する曲のようなんですが、確かにいいですよね、スパイ。僕は酸っぱいのはあまり得意ではないんですが、子供の頃からスパイにはちょっと興味があって、大きくなったらスパイになるんだ!…とか思っていたんですが、結局スパイになることがないまま、大人になってしまいました。…って、まったく何のひねりもない話になってしまいましたが、演奏のほうはアレです。ホーン抜きの、ヴァイブをフィーチャーしたほうのアレだったりします。ゆったりしたテンポで始まって、途中でコンカコンカコンカッカとコンガが出て、ボンゴボンゴボコボコボンゴとボンゴも出てきて、急に賑やかになるわけなんですが、あとはえーと、概ねピアノのソロということになるんですかね?アミーゴ!…とか、テキーラ!…とか、そんな掛け声が大向こうから飛んできても不思議ではなさそうな雰囲気になりかけて、結局はそのまま萎んでしまって、何だか地味なラテン系のアンドリュー・ヒルみたいな感じになっちゃいましたが、とまあそんなことで、ラストです。今日の僕は今ひとつヤル気がないので、曲解説がおざなりにして穴守稲荷だったりするんですが、アルバムの最後を飾るのは 「イエスタデイ」 でありますか。9曲目に究極のビートルズ・ナンバーを持ってきたな。…という感じなんですが、正直、この曲はちょっと聞き飽きた感があります。僕はジェローム・カーンの 「イエスタデイズ」 という曲がけっこう好きで、そっちかと思って楽しみにしていたら、こっちのほうだったので、ちょっとガックリしたというのもあるんですが、ただ、あまりにもポピュラリティがあり過ぎる素材だということはプーチョも自覚しているようで、ヴァイブ中心にお馴染みのメロディが演奏されたのに続いて、今度はまったくお馴染みでないラテン系のメロディと歌が飛び出してきたりもして、それなりに工夫が凝らされているところは評価していいと思うんですけど。 が、最後にまたお馴染みの曲に戻ってしまって、最終的にはやっぱり 「イエスタデイ」 やったな。…という思いだけが残ることになります。 …とまあ、だいたいそんな感じのアルバムだったんですが、とまあそんなことで、今日のところは以上です。

【総合評価】

  メンバー全員、素性がまったくよく分からないという、購入する際にはかなりのリスクが伴うアルバムだったんですが、…という点では前回のL.J.Q. と同じなんですが、当初の予想と違って意外とまともだった 『ラテン・ソウル』 に比べると、今回のザ・ラテン・ソウルなブラザースによる演奏は、かなり軽めであるという印象は否めません。もう、カルメ焼き並みに軽め? クロード・バーティーのテナー・ソロなど、随所に聴き所もあるんですが、2曲に1曲くらいの割合で登場するホーン抜きのセッションがどうにもぬるくて、全体の温度を下げてしまっているのが残念です。 “ねぎま方式” というのは決して悪いアイデアは無かったと思うんですが、最後に 「イエスタデイ」 を持って来たことで、鶏肉→ネギ→鶏肉→ネギと来て、最後はきっちり肉で締めてくれるのかと思ったら、〆サバかい!…みたいな。そんな焼き鳥は、ちょっと嫌です。


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