THE GUITAR ARTISTRY OF CHARLIE BYRD (RIVERSIDE)

CHARLIE BYRD (1960)

THE GUITAR ARTISTRY OF CHARLIE BYRD


【パーソネル】

CHARLIE BYRD (g) KETET BETTS (b) BUDDY DEPPENSCHMIDT (ds)

【収録曲】

(01-03) TAKING A CHANCE ON LOVE / MOONLIGHT IN VERMONT / SPEAK LOW
(04-06) NUAGES / EVERYTHING I'VE GOT BELONGS TO YOU / MAKIN' WHOOPEE
(07-09) DJANGO / NICE WORK IF YOU CAN GET IT / THE HOUSE OF THE RISING SUN
(10-12) RING THEM HARMONICS / TABOO / TO GINNY

【解説】 (2008年02月24日更新)

 君は花見が好きかな?僕はですね、けっこう好きです。学生時代に長島温泉のホテル花水木でバイトをしてた頃は、それほど花見好きではなかったんですが、大人になって鼻毛が伸びるようになってから、わりと花見が好きになりました。僕の場合、花見と言っても酒を飲んでドンチャン騒ぎをしたり、トンチャンを焼いてドンチャン騒ぎをしたりするのはあまり好きではなくて、鮭のチャンチャン焼きというのもそれほど好きではなくて、ひとり、心静かに花を愛でるというのが好きです。タイプで言うと、メデルスキー型の花見好きということになろうかと思いますが、で、鑑賞場所としてはけっこう有名処が好きだったりします。観光客がわんさと押しかけて、ごった返しているようなところではなく、地元の人しか知らないような隠れた穴場に行くのが、本当の花見好きというものだよ。…という意見もあろうかとは思いますが、地元の人しか知らないような隠れた穴場というのは、隠れている上に穴だったりもするので、余所者の僕が探し出すのは非常に困難だったりする上、ようやくそこに辿り着いたと思ったら、ズボっと穴に落ちたりもします。ま、地元の穴場なら何とかなるかも知れませんが、そう言えば桑名の隣の東員町には “穴太(あのう)” というところがあったりして、ちょっぴり太めの穴場という気がしないでもありません。これはもう、行ってみるしかありません。

 ということで、行ってきました。その結果、東員町の穴太というところは、別に穴子が獲れるわけでなければ、アナコンダが棲息しているわけでもなく、その上、桜もぜんぜん咲いていなくて、別段 “穴場” と呼べるような場所ではないということが判明したんですが、ま、3つめに関しては、訪れたのが10月だったという点をある程度は考慮しないといけないような気もするんですけど。秋でしたからねー。桜の花を見るにはちょっと季節を間違えていたのかも知れません。ここはひとつ、秋桜に頭を切り替えたほうがいいかも知れませんが、ここ東員町にはコスモスのちょっとした穴場と言えるポイントがあったりするんですよね。これはもう、行ってみるしかありません。

<秋桜(東員編)> (←クリックすると写真ページに飛びます。)

 ということで、行ってきました。2月の現時点で紹介するのは季節外れもいいところなんですが、僕はけっこう好きなんですよね、コスモス。 ま、詳しいことは 秋桜(羽島編) のところを見て貰うとして、東員町のほうはですね、三岐鉄道北勢線の東員駅のすぐ南のところにたくさんのコスモスが咲いているとのことでありました。西桑名駅からだと穴太駅よりひとつ向こうの駅ということになります。カーナビでだいたいの当たりをつけて会場と思しき地点に行ってみると…、おおっ! いや、まったく咲いておりませんなぁ。。。 少々時期尚早だったものと判断して、その日は引き上げることにして、1週間後にもう一度来てみたんですが、やはりコスモスなど、どこにも咲いてはくれておりません。 もしかして、当たりをつけた場所が大ハズレだったのではないか?…という可能性に思い当たったわけなんですが、ここのコスモスは休耕田を利用して植えられているものなので、今までサボっていた田んぼが急にヤル気を出して働き出したりすると、彷徨える湖・ロプノールのように祭りの会場が毎年移動するというのは十分に考えられる話です。そこで念のため、東員町役場の北側あたりの田んぼまで足をのばしてみたところ、そこにはやはり何も咲いてなかったんですが、ほとんど諦めモードで更に車を流していると、おおっ、あったあった!コスモス、めっちゃ咲いてるっ♪ どうやら2007年度のコスモスまつりは中部公園の東側が会場ということになったようです。地図でいうと、このあたり ということになりますか。総合文化センターに車をとめようと思ったら満車だったので、会場の南の野球場のところに勝手にとめることにしました。ここの会場は羽島とは違って、コスモス畑の中に入り込んで蹂躙するような行為が憚られる雰囲気が漂っていたんですが、方向に寄っては鈴鹿山脈をバックに咲き乱れる花をファインダーに納めることが出来るので、全体を風景写真みたいに捉えるにはいいかも知れません。 ま、すぐ裏手にプチ林のようなものがあったりして、出来上がった写真を見たら、さほどでもなかったりしたんですけど。邪魔や、林っ!…と思わずにはいられませんが、コスモスに関してはお花のコーナーで語りつくしてしまったので、今回はこれくらいにしておいて。


<セイタカアワダチソウ> (←クリックすると写真ページに飛びます。)

 邪魔と言えばこの季節 (←秋) 、いたるところに蔓延っていて、とっても邪魔くさくて目障りなのが、セイタカアワダチソウ。背が高い上に泡立ったりもしているので、始末が悪いです。アメリカからやってきた帰化植物なんですが、アメリカ人…というか、アメリカ草だけにやる事がけっこう強引で、根っこの部分から他の植物の成長を阻害する妖しい化学物質を放出するんだそうです。おかげで日本古来の可愛い待宵草ちゃんや、渋いススキくんなどが、すっかり成長を阻害されて元気がなくなってしまったんですが、なんてことするんだ、この泡立ち野郎! おまけにコイツは花粉症の元凶とも言われて、ますます嫌われることになって、嫌われると面白くないものだから気分がやさぐれて、暗い暗い目をしてすねていた内藤やす子の弟のようなキャラになってしまいました。悪くなるのはもうやめて、あなたを捨てたわけじゃない♪…と、諭したいところではあるんですが、僕の場合、すっかり彼のことを捨ててしまっております。邪魔なだけやもん、あんなヤツ。 と、嫌われているうちは虚勢を張っていた彼も、無視されて誰からも相手にされないようになると、次第に元気をなくしていくワケなんですが、それもそのはず、泡立ち野郎が根っこから放出した植物の成長を阻害する物質は、自らの成長をも阻害してしまうことになるんですよね。 ま、自業自得と言えばそれまでなんですが、諸刃の剣と言うか、モロ見えの鶴瓶というか、かなり捨て鉢な戦術を撃って出るまで追い詰められていたのかも知れません。考えてみれば、ちょっと可哀想なところもありますよね。昔はあれほど幅を利かせていたのに、最近ではちょっと背も低くなってしまって、泡立ち加減も控えめになってきているようです。どうやらこれまでの半生を深く反省しているようなんですが、おまけにアレルギーの元凶だと思われてたの、あれ、違った!実はあれ、ブタクサの仕業やった!…ということが判明して、いや、とんだ濡れ衣を着せられたものでありますな、アワダチくんも。 そうと分かれば花粉症の僕も、これから仲良く一緒に遊ぶにヤブサカでないわけなんですが、よく見るとセイタカアワダチソウの花って、黄色くてけっこう綺麗だったりしますよね。秋の澄んだ青空をバックにすると、そのコントラストが鮮やかです。 一方、暗いところでジメっと咲いているのも、これはこれで悪くありません。山に咲いていれば立派な山野草として愛でられることになるアキノキリンソウと同じ仲間ということで、今まで辛くあたったりして、ゴメンなぁ!


<彼岸花> (←クリックすると写真ページに飛びます。)

 秋を代表する “陽の花” がコスモスだとすれば、 “陰” の代表はヒガンバナでありましょう。コイツはあれです。めっちゃ暗いです。墓場の隅にぽつんと咲いていたりして、めっちゃ不気味です。曼珠沙華という別名もよくありません。法事の席で饅頭が出て、後で食べようと思って鞄の中に入れたのをすっかり忘れて、ひしゃげてしまったような印象を与えてしまいます。アンコ、はみ出してるやん!…みたいな。 その点、桑名の 都饅頭 は最初からひしゃげたような形をしてるし、アンコもわりとパサパサしていて、はみ出しにくいように出来ているので、なるほど、法事の席で重用される一因はそこにあるわけですな。ちなみに平塚あたりでは こんなん が “都まんじゅう” と称されて売られているようなんですが、こんなん、都饅頭ちゃうやん!ただの小さいドラ焼きやん!漢字表記の “都饅頭” と平仮名の “都まんじゅう” は、まったくの別物であるようなんですが、ついでにいうとサバ家では大判焼きや今川焼きみたいなヤツのことを “ドラ焼き” と呼んだりしてたんですけどね。おかげで、ドラえもんに出てくるドラ焼きには違和感アリアリで、こんなんドラ焼きちゃうやん!両口屋是清の “千なり” やん!…とか思っておりました。 とまあそんなことはどうでもよくて、ヒガンバナ。  僕はこの花があまり好きではないんですが、家の近くに群生地があるとなると、これは押さえておかなければなりません。海津市(旧・南濃町)の津屋川堤防。そこが目的地であります。

 場所はですね、堀田建設の近くです。 と言われても、普通の人はまったくピンとこないかも知れませんが、地図で言うと このあたり 。 国道258号線を桑名方面から北上して養老町に入ってから1500mほど走ると “瑞穂” という交差点があるんですが、そこを “おちょぼ稲荷” とは逆方向に、左折することになります。 “竹中鯉釣池” があるところです。 しばらくレジャー気分が希薄な陰気くさい道を走ると、やがて小さな橋の上に出るんですが、それを渡って右に曲がるとゲートボール場のような小さなグラウンドがあって、そこが臨時駐車場になっていたりするので、そこに車を止めましょう。ヒガンバナの群生地は、そこからちょっと川を遡ったあたりが中心となります。 ほどよい幅の川が流れていて、周囲は長閑な田園風景。でもって、向こうのほうには養老山地が見えてきて、たとえヒガンバナが咲いていなかったとしても、なかなかの散歩スポットでありますな。この日は時おり小雨のそぼ降る生憎の空模様だったんですが、陰気な曼珠沙華にはこういう陰鬱な風情も悪くありません。 で、肝心のお花のほうはと言うと…、おお、咲いてる咲いてる♪ 僕は1年前に始めてここを訪れて、堤防を埋め尽くす真っ赤な花の群れに圧倒されて、以来、ヒガンバナのことをちょっぴり見直したりもしたんですが、2007年度はその咲き乱れ具合に若干の物足りなさがあるようにも思われました。どうやら夏の猛暑の影響で、あまり綺麗に咲きそろわなかったようなんですが、そこはフレーミングで何とか誤魔化すとして。

 群生している様を遠くから見ていると、ただ、赤いな。…としか思わないんですが、近くに寄ってアップで見ると、彼岸花というのは何とも不思議な植物ですよね。 まず、葉がありません。葉が無くては話にならんと思うんですが、どうやって光合成してるんですかね? あるいは根っこから死体の養分を吸い上げるなどして、それで生きているのかも知れませんが、 “葉は花知らず、花は葉知らず” という言葉もあるんだそうで、花が咲いた後で、ちゃんと葉っぱも出てくるんだそうですけど。 でまた、花の形も変わってますよね。普通、ヒラヒラの花びらが周囲にあって、その真ん中の部分に “おしべ” と “めしべ” が伸びているんですが、この花は逆です。花びらの外側に “しべ” があります。 が、よくよく見るとこれ、1つの茎にいくつかの花がまとまって咲いているという、そういう構造になっていたりするんですな。1つの花だけに着目してみると、花びら6枚 (正確には花びら3枚+がく3枚) が放射状に開いていて、その真ん中から “おしべ” が6本、 “めしべ” が1本伸びているということになるようです。普通、花びらと “しべ” とでは色を違えて咲かせるものなんですが、このお花の場合はどちらも赤。 “めしべ” と比べると “おしべ” のほうがちょっとだけ短くて、先っちょに黄色い花粉が付いております。でもって、鱗茎や芽など、草全体にわたって毒があります。なるほど、だからこんな毒々しい赤色をしているんですな。毒を持っているか、もしくは死体から血ィでも吸い上げたりしない限り、なかなかこういう色の花は咲かせられませんもんね。 で、どうして墓場の隅によく咲いていたりするのかと言うと、死体がモグラなどの小動物に荒らされるのを防ぐため、毒々しいこの植物を人為的に植えたことによるものなんだそうですが、この津屋川の堤防にはちょっとした梅林のようなものもあったので、これからの季節に訪れてみるというのもいいかも知れません。

    

<梅の花 ('08)> (←クリックすると写真ページに飛びます。)

 ということで、最後はです。津屋川のほうにはまだ行ってないんですが、昨日、安八百梅園をちょっと覗いてきました。ここを覗くのは3年連続ということになって、僕のちょっとしたお気に入りスポットだったりするんですが、過去2年間の様子は ここここ を見て貰うとして。 去年の今頃はまだ脚の骨折が完治してなくて、片松葉をついた状態での撮影でありましたなぁ。…という事を思い出したりもしたんですが、その時とほぼ同時期の訪問だったにも関わらず、今年の開花状況は、まだ今ひとつでありました。ちらほらという感じ? ここは梅の種類が多彩なので、品種によってはかなり咲いてるものもあったんですけどね。 で、安八百梅園の梅を撮るのもこれが3回目ということで、今回はちょっと違った視点の作品を掲載しておこうと思うんですが、題して、“梅ちゃんヌレヌレ裏写真♪” 淫靡な響きに何だか心が時めきます。 どうしてヌレヌレなのかと言うと、朝方まで小雨がぱらついていたからなんですが、でもって今回は花びらを真正面から捉えるのではなく、裏側から見たり、横顔に着目したりといった、そういうのばかりを集めてみました。今回の撮影機材は “Nikon D-50”+ “SIGMA MACRO 50mm F2.8 EX DG ” で、梅林という、かなり被写体に近付くことの出来る状況ではなかなか重宝なレンズです。 今まで梅の花を裏から見る機会と言うのはあまりなかったんですが、こうして見るとアレですな。梅ちゃんの裏の顔というのは意外と地味だったりするんですな。 “がく” の部分がこんな濃い色をしているとは、学のない僕は今の今まで知らなかったんですが、なるほど、この色の部分がそのまま丸く固まって梅の実になるわけですな。いや、もしかしたら違うかも知れませんけど。 とかく、お花見というと桜に目を奪われがちなんですが、この時期、梅の花を愛でるというのも悪くありません。梅宮辰夫と梅見や♪…とか、けっこう楽しいかも?

 といいつつ、やはり桜の花の咲く頃が待ち遠しい次第でありますが、今年は梅の開花が遅れ気味であることからして、 桜の開花もやや遅れ気味なんすかね? ちなみに僕は今年、奥琵琶湖の海津大崎の桜を狙っているんですが、こんな 遊覧船のお花見プラン もあったりして、ああん、何だかとっても楽しそう♪ 過去の開花情報 からして、4月12日頃がちょうど満開?…と当たりをつけて予約の電話を入れてみたんですが、誰しも考えることは同じであるようで、2月13日の時点で、既に長浜港発お昼の便は既に満席となっておりました。ああん! 仕方が無いので4月5日の便を押さえておいたんですが、桜、咲きますかね? 2002年のように4月5日がちょうど満開だった年もあるようなので、まったく可能性が無いとは言い切れないんですが、ここ の予想を見ると、今年の開花は今のところ4月7日ということになっております。ああん、ああん!! こうなったらもう、どんどん二酸化炭素を排出して地球温暖化を促進して、桜たんに頑張って早く咲いて貰うようにするしかないんですが、先生、僕、これから毎日、三ツ矢サイダーを3本ずつ飲むよ! 1日3回、玉姫殿でドライアイスのスモークの中から出没するよ! 地道な努力が実を結び、皆さまに綺麗な桜の花の写真を披露出来ることに期待しつつ、今日のところは、おしまい♪

 とまあそんなことで、今日はチャーリー・バードなんですが、ジャズ・ギター界でも屈指の華のないキャラであります。華がない上に毛もなくて、ルックス的には気のいいオッチャンになるか、あるいは気むずかしい職人になるか、どちらかしか選択の余地がなかったりするんですが、この人の場合、生涯を生ギターだけで全うした頑固さを持ち合わせている一方、ブラジル生まれのボサノヴァをいちはやくアメリカに紹介するという柔軟さも持ち合わせていて、ま、要するに根っからのギター好きという、そういうタイプであるようなんですけど。クラシック音楽の素養も持ち合わせていて、その分、スイングジャーナル誌のレビューでは、 「彼にジャズはやれないのである。」 と、手厳しい評価を下されたこともあるようですが、とまあそんなことで、 『ザ・ギター・アーティストリー・オブ・チャーリー・バード』 。  「チャーリー・バードのギターの芸術性」 とでも訳すのか、いかにもこの人らしいタイトルの1枚を紹介したいと思うんですが、ギター・ベース・ドラムスというシンプルな編成で、スタンダードや彼の敬愛するギタリスト、ジャンゴ・ラインハルトゆかりのナンバーなどを演奏するという、そういう趣旨の作品であるようです。佐藤ゆかりゆかりのナンバーは1曲も取り上げられてない事から、あるいはこの人、野田聖子派だったりするのかも知れませんが、うちの会社と取引のある電気屋が同じビルに入っているので、何度か行ったことがあるんですけどね、岐阜市の野田聖子事務所。去年、放火されましたけど。ちなみに彼岸花を庭に植えると火事になるという迷信もあるんだそうで、それはやはり、あの燃えるような赤い色に起因するのだと思うんですが、僕の家の庭には1本も彼岸花が生えてなかったにも関わらず火事になったので、逆もまた真なり。…とは言えないようなんですけど。 とまあそんなことで、では1曲目から聴いてみることにしましょうか。

 まず最初は歌物ナンバーの 「テイキング・ア・チャンス・オン・ラブ」 なんですが、 「恋のチャンスを」 などという邦題が付けられたりもしております。演歌の世界にはパワフルな歌唱力と甘美なハスキーヴォイスを持つソウル出身の歌手、チャン・スーなどという人がいたりしますが、チャンスというのはアレですよね。恋に限らず、一度それを逃してしまうと、二度とはつかめないものだと言われております。チャンスの神サマというのは前髪がフサフサで、後頭部はツルツルなんだそうですが、前も後ろもツルツルで、横の部分だけ髪が残っているチャーリー・バードの場合、どのように恋のチャンスを語っているのでありましょうか?非常に興味のあるところなんですが、聴いてみたら、ま、ごく普通だったんですけど。 キュートで飛び跳ねるようなこの曲のメロディが好きなので僕としては大いに楽しめたんですが、確かにこれがジャズなのかと言われると、ちょっぴり疑問ではあります。いかにも生ギターらしいナマナマとした素朴な響きは鳥そぼろ的な味わいがあるし、ちゃんとギターのソロ・パートもあるし、短いながらもベースとの絡みもあって、これが本当にジャズと言えるのか?…という疑問に対しては、ま、一応、そのように呼べないことはないという気がしないでもないんですけど。ただやはり1分55秒という演奏時間はちょっと物足りなく思えなくもなくて、とまあそんなことで、次です。  「ムーンライト・イン・ヴァーモント」 。 日本ではもっぱら 「ヴァーモントの月」 という名前で知られているんですが、どうしても甘口のカレーが頭に浮かんでしまうところがネックであります。タイトルを知らずに聴けば、普通にしみじみとしたバラードだったりするんですが、いざ曲の名前を知ってしまうと、どうしても頭の中が 「ヒデキ、感激!」 になってしまって、いけません。カレーの影響力というのは何とも凄いものがあるわけなんですが、ちなみにサバ家では子供の頃からジャワカレーの中辛というのが定番となっておりました。バーモントカレーは子供の食うものだと子供心にも思っておりましたが、それはそうとこの 「ヴァーモントの月」 、生ギターの音色とよくマッチするメロディであることだけは間違いありません。

 ということで、3曲目。 「スピーク・ロウ」 。これまたお馴染みのスタンダードでありまして、ラテンのリズムで演奏されることが多い作品なので、バードくんのボサノヴァ的なアプローチに期待が持たれるところなんですが、聴いてみたら、ま、それなりの仕上がりにはなっていたので、一応、空気は読めてるタイプのようではあります。ギターの響きそのものがあまりジャズ的でないのはご愛敬として、中盤以降はコーダルなアプローチになかなか興味深いものが合ったりして、で、終盤、バディ・デペンシュミットのタイコと絡んだりするところも、普通にハードバップ的で悪くないと思います。更にその後、ベースのキーター・ベッツとの絡みもあったりして、辛味大根好きの人であれば、けっこう楽しめるかも知れませんな。僕はちょっぴり苦手なんですけどね、辛味の強い大根おろし。 で、次です。4曲目は 「ヌアゲス」 という曲です。正確な発音はよく分からんのですが、日本人には 「雲」 と言ったほうがピンとくるに違いありません。ジャンゴ・ラインハルトの代表作でありますな。ジプシー的な哀感を感じさせる日本人好みのマイナーな楽曲なんですが、バードにしてみれば敬愛するジャンゴの作品だけに、それこそ雲の上にいるような気分で演奏していたのではなかろうかと。僕の場合、雲の上というとどうしても、高木ブーの雷サマがいるところ。…というイメージが強かったりするんですけどね。 で、続いてはロジャース=ハートの作品で、 「エブリシング・アイブ・ガット・ビロングス・トゥ・ユー」 。 日本語にすると 「私が持っているすべてがあなたのものです。」 ということになるのではないかと思うんですが、私のタワシもあなたのもの♪これでどんどん焦げたお鍋を磨いてネ♪…とか言われても、あまり嬉しくはなかったりするんですけど。よくカボチャとかを焦がすギャルというのは、けっこう好きなんですけど。 とまあそれはそうとコレ、ブロッサム・ディアリーが歌ってましたよね?…と思って調べてみたところ、やっぱり これ に入っておりました。タイトルが 「エブリシング・アイヴ・ゴット」 と、ちょっぴり省略系になってはおりますが、紛うことなく同じ曲です。ブロッサムの 「すりーぴん、すりーぴん、すりーぷ、すりーぷ、ああん♪」 というロリ声が強く印象に残っているんですが、ハゲたおっさんバードのバージョンもなかなか小粋で悪くありません。ベースのソロもフィーチャーされているし、ギターのソロもあるし、デペンシュミットのブラシも冴えているし、これなら鍋磨きも気持ちよく捗りそうな気がします。けっこうタフで使えますからな、ホーミングタフ。

 次、6曲目、 「メイキン・ウーピー」 。 僕の場合、この曲名を目にすると、何故だかウーパールーパーの姿が頭に浮かんできたりするんですが、別名アホロートルとも呼ばれる、ちょっぴりアホっぽいトラフサンショウウオ科の両生類ですよね。正確にはアホロートルのうち、アルビノ個体の色の白いヤツがウーパールーパーということになるようですが、ウーパーとウーピー。似ているのはそこだけだったりするんですけど。 ちなみに 「メイキン・ウーピー」 には 「作成のお祭り騒ぎ」 という、ちゃんとした立派な意味があるようなんですが、ウーピーというのがお祭り騒ぎなんですかね?なかなかよく感じの出ている英単語だと思いますが、演奏のほうはかなりゆったりしたテンポの設定がなされていて、トンチャン焼いてドンチャン騒ぎというより、グルーヴィな雰囲気のほうが強くなっていたりします。キーター・ベッツのベースがよく効いています。 で、続いてはジョン・ルイスがジャンゴ・ラインハルトに捧げた名曲、 「ジャンゴ」 。 この曲を取り上げるところに彼のジャンゴへの敬愛の念が強く感じられるわけなんですが、もともとギターにはよくマッチする曲調だったりしますしね。発想はかなりベタなんですが、演奏の出来そのものは悪くないと思います。 で、8曲目。ガーシュインの 「ナイス・ワーク・イフ・ユー・キャン・ゲット・イット」 。 いかにも歌物らしい小粋な演奏が展開されております。

 と、ここまでがレコードでいうとA面ということになります。全12曲中、3分の2が片方に固まっていて、ちょっとバランスが悪いような気もするんですが、軽めの前半と、じっくり系の後半とで、はっきり性格を変えたコンセプチュアルなアルバムであると言えるかも知れません。 で、そのB面の最初を飾るのは 「ザ・ハウス・オブ・ザ・ライジング・サン」 、日本名 「朝日のあたる家」 という曲だったりするんですが、いや、これはいいですな。原曲はアメリカ民謡とのことなんですが、何というか、凄くウイスキーを飲みたくなってくるような演奏です。僕はアルコールにはめっぽう弱く、下手にウイスキーを飲んだりすると前後不覚に陥るだけでなく、左右にも斜めにも不覚になっちゃう恐れがあるので、普段はもっぱら梅酒の水割りを飲んだりしているんですが、こうも家に朝日が当たってしまっては、ここはひとつウイスキー、いっちゃいますかね? 50倍くらいに水で薄めてやれば、あるいは大丈夫かも知れません。いやあ、アーリー・アメリカンですな、こりゃ。アドリブがどうのこうのというより、雰囲気だけでいっちゃいそうな感じですが、中盤に聴かれるデペンシュミットのドラム・ソロも、打楽器なのに妙にメロディアスだったりします。それに続くベッツのベース・ソロは、そこだけ朝日が当たってなくて日陰になっている感じなんですが、家の中には直射日光を避けて保存しなければならない食材とかもあったりしますからね。ジャガイモとかあまり日に当てたりすると発芽して大変だしー。 とまあそんなことで、テーマに戻って、おしまい。 次、 「リング・ゼム・ハーモニスク」 。 これはアレです。ベース弾きのキーター・ベッツのオリジナルのようです。僕は別にベッツくんには特に思い入れがあるわけではないんですが、スインギーで、なかなかいい出来映えだったりしますよね。ギターとベースとの絡みも必要十分にジャズしているし、ギター・ソロの盛り上がり具合も、現段階では本アルバムで屈指のものと言えるでしょう。とまあそんなことで、テーマに戻って、おしまい。

 続いては誰もが知ってるエロい曲、 「タブー」 でありますかぁ。 日本ではもっぱら、 「ちょっとだけよ。アンタも好きねぇ♪」 のテーマとして知られているわけですが、タイコをフィーチャーしたイントロ部はちょっと変な感じになってしまっておりますな。こんなの 「タブー」 じゃない!…と思わずにはいられませんが、続いて登場するテーマは普通にしっかりお馴染みのメロディだったりするんですけど。 が、やはりペレス・プラード楽団でないとこの曲の妖しさは表現しきれないところがあって、ギター版の 「タブー」 は意外と哀愁に満ちたものだったりしているんですが、根はジプシー系だったんですな、これ。 9分40秒と、かなりクソ長かったりするので、ギターのソロもベースのソロも飽きて嫌になるくらい堪能出来ることになるんですが、とまあそんなことで、テーマに戻って、おしまい。…と思ったら、その後も結構しつこく 演奏が続くことになるんですが、ということで、さ、残すところあと1曲ということになりました。バードのオリジナルの 「トゥ・ジニー」 。 最後の最後でコケると、アルバム全体が台無しということにもなりかねないんですが、自作曲を持ってきて大丈夫なんすかね?果たしてバードなどという鳥みたいな名前の男に、トリを務めるだけの力量があるのかどうか、僕は大いに疑問に思ったりしたんですが、それは取り越し苦労というものでありました。このトリ君、わりと普通に作曲の才能もあったりするようなんですよね。この曲を捧げられたジニーというのがどういう人なのかはよく分からんのですが、少なくともこれが原因で辞任に追いやられるようなことは無いものと思われます。綺麗なメロディのバラードなので、あるいはジニーちゃん、若いギャルだったりするのかも知れません。ハゲの癖に生意気や!…という気がするんですが、僕はギターを弾けなければ、曲もまともには作れませんからね。ここは潔く負けを認めなければならないかも知れません。…とか言ってるうちに演奏のほうはテンポが速くなって、あまりキュートなギャルっぽくは無くなってきたりもするんですが、途中、長めのベース・ソロもフィーチャーされて、いや、立派にジャズしてますな、こりゃ。 で、最後に再びスローなテンポに戻って、とまあそんなことで、今日のところは以上です。

【総合評価】

 イージー・リスニングな前半はポピュラリティーに富んだ選曲と耳当たりのよさで軽く流しておいて、で、演奏時間がぐっと長くなる後半はウイスキーのグラスなどを傾けながら、バードとベッツのソロにじっくりと耳を傾ける。そういう使い分けの出来るアルバム構成となっております。 あまりハードではないんですが、その分、ソフトで、生ギターの素朴な音色が耳に優しいです。普通の春巻よりも生春巻のほうが好きっ♪ そういうタイプの人にお薦めしたい1枚でありますが、いや、僕は普通の春巻のほうが断然好きなんですけど。 とりあえず 「朝日のあたる家」 の1曲を聴くためだけでも、押さえておいてさほど大損はしないような気がしないでもありません。


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