SOUL MESSAGE (PRESTIGE)

RICHARD “GROOVE” HOLMES (1965/8/3)

SOUL MESSAGE


【パーソネル】

RICHARD "GROOVE" HOLMES (org) GENE EDWARDS (g) JIMMIE SMITH (ds)
【収録曲】

(01-03) GROOVE'S GROOVE / DAAHOUD / MISTY
(04-06) SONG FOR MY FATHER / THE THINGS WE DID LAST SUMMER / SOUL MESSAGE

【解説】 (2008年1月14日更新)

 その昔、歌のうまい相撲取りがいました。力士としては大関まで昇りつめ、歌手としてもレコードの売り上げが130万枚を記録したこともあるというのだから、文武両道というか、歌相撲両道というか、とにかく多才な人でありましたが、その名を “増位山” と言いました。四股名は兵庫県姫路市にある山の名前から取ったそうですが、ちなみに僕は子供の頃、大きくなって、もし自分が相撲取りになるようなことがあれば、四股名は “走井山(はしりいざん)” にしよう!…とか思っておりました。桑名にあるんですよね、そういう名前の山が。 ま、結局のところ、大きくなっても相撲取りにはなれなかった、というか、端からそんなものになる気など無かったので、この名前は結局、使われる事がないまま現在に至っているわけなんですが、とまあそれはそうと増位山。歌手としては 「そんな女のひとりごと」 に続いて 「そんな夕子にほれました」でもヒットを飛ばし、3作目の 「出直さないかもう一度」 でちょっとコケて、出直しを図った 「今度逢えたら」「お店ばなし」 といったところもあまりぱっとせず、ここはやはり原点に戻って、 “そんな” やろ?…とでも思ったのか、 “そんなシリーズ” の第3弾として 「そんなナイト・パブ」 などという歌をリリースしたりしておりますが、とまあそんなことで、今日は 『麻酔と増位山』 というテーマでお届けしたいと思います。いや、増位山の話はこの先、出てくる予定はないんですけど。

 相撲取りに怪我はつきものなんですが、もし怪我をして手術ということになった場合、麻酔というのが必要となってきます。どうしてかと言うと、麻酔無しでいきなりメスで体を切られたりすると痛いからなんですが、ちょっとカッターで指を切ったりしただけでも、かなり痛かったりしますもんね。その昔、板井という名前の相撲取りがいて、彼の張り手は非常に痛いことで有名だったんですが、一発張られただけで脳震盪をおこすことも珍しくなかったようです。相手の意識がないのをいい事に、どさくさに紛れて手術をするというのはなかなかいい方法だと思うんですが、麻酔というのは張り倒す変わりに医学的な手段で相手の意識を奪うという、ま、そういう行為であると言っていいかも知れません。 意識喪失を伴う麻酔のことを “全身麻酔” と呼ぶわけですが、1804年に世界で初めての麻酔手術を成功させたと言われる華岡青洲の場合、チョウセンアサガオを使ったそうです。この植物は別名、曼陀羅華 (まんだらげ) とも呼ばれ、人の肉体をダラけさせる効果があるようですが、ただダラけさせるだけでは効果が弱いので、トリカブトの抽出液などもブレンドして用いていたようです。ちょっと匙加減を間違えると意識がトリップしたまま、こっちの世界に二度とは戻ってこれなくなるので、なかなか難しいものがあったのではないかと思うんですが、実際のところ、青洲クンのおかんは人体実験が元で死んじゃったみたいだし、奥さんは失明させられているんですよね。山男に惚れた娘さんは若後家さんになるという心配をしなければならんのですが、麻酔医に惚れたりしても、なかなか大変そうですなぁ。サザエさんも失明するのが嫌で、麻酔医はやめて、マスオさんにしたみたいですしー。

 華岡青洲の麻酔手術よりも前に、外国では “亜酸化窒素” の麻酔作用に関する研究が行なわれていたようですが、この物質は別名を “笑気ガス” と言って、何だか笑っているうちに手術が終わってしまいそうな感じがして、ちょっとソソられるものがありますよね。ただ、笑っていると言っても顔の筋肉がひきつって傍目にはそのように見えるだけで、当の本人はちっともハッピーではないという話を聞いたこともあるし、1845年、アメリカ人歯科医師のウェルズという人が公開で笑気麻酔をやってみたところ、見事、失敗に終わったという記録が残っております。笑い事ではありません。 ま、その後、改良が加えられて、現代でも他の麻酔と併用する形で用いられているそうなんですが、当の本人の意識がどうあれ、傍目には笑いながらメスで切られているように見えるわけで、なかなか楽しそうな医療現場であると言っていいかも知れません。 で、笑気ガスと平行して開発が進められた麻酔薬に “硫酸エーテル” と呼ばれる物質もあります。 “ジエチルエーテル” とも呼ばれ、痔を散らすにはなかなかよさそうな気もするんですが、ただこのクスリは効き目が遅い上に目覚めも悪く、発火の危険性もあって、おまけに取り扱いが難しいという欠点があるんだそうで、麻酔の効果が出始める濃度と限度を越えて死に至っちゃう濃度とが、ほんの紙一重なんだとか。手術にスリルとサスペンスを求める人なら、イチかバチかの勝負に出るのもアリかも知れませんが、たかが痔の手術ごときで命を落とすというのは、ちょっとやりきれませんよね。 そこで今度は “クロロホルム” というのが使われるようになるんですが、この薬はアレですよね。ハンカチに数滴しみ込ませて背後からギャルの鼻と口に押し当て、意識が無くなったところで略取誘拐したりする場合などにも活用されますよね。ま、実際のところ、ちょっとクロロホルムを嗅がせてみたところで、頭が痛くなったり吐き気がしたりする程度で、意識喪失までは至らないそうなんですが、板井の張り手ほどにも効果がなかったりするものなんですなー。 で、大した効き目がないわりには毒性が強く、血圧低下、呼吸困難、心拍数の低下を引き起こし、最悪の場合は死に至ることもあるそうなので、ゆめゆめ、軽はずみにクロロホルム・プレイなどするものではありません。 クロロホルムはやめて、ケロロ軍曹プレイとかにしておいたほうが賢明ではないかと思います。

 とまあこうして見ると、昔の麻酔薬にはロクなものが無さそうなんですが、最近は薬物の世界もかなり進歩してきているようで、安全性が高くて副作用の少ない麻酔薬がいろいろと開発されているようです。僕は一度も全身麻酔の経験が無いんですが、寝ている間に手術が終わるというのは有り難いですよね。吸入式の麻酔の場合はほんの数秒、静脈麻酔の場合でも数10秒くらいで意識がなくなっちゃうんだそうですが、極めて寝付きのいい僕でも意識がなくなるには数分程度の時間を要したりするので、やはりクスリの力というのは大したものです。 ところで、麻酔で眠らされている時というのは夢を見たりするんですかね? 僕は先日、みのもんたが公園のようなところで講演のようなことをしているのを近くで見ているという夢を見たんですが、何やら画期的な肩こり治療法があるとか、そういう話だったんですけど。 で、いよいよ、その秘策が明かされる!…というところで目が覚めてしまって、その続きが気になって気になって仕方がないんですが、もし全身麻酔の時に夢を見て、しかもその内容をリクエスト出来るというのであれば、僕は是非、続・みのもんたの夢を見させて貰おうかと思っております。麻酔がぜんぜん効かなくて、意識もはっきりしているのに手術を始められてしまって、メスで切られて、うぉぉぉぉぉぉぉぉ!…とか、そんな悪夢はあまり見たくはありませんなぁ。

 出来れば寝ているうちに手術をして欲しいところなのに、起きたまま切られちゃうことになるのが “局部麻酔” です。僕が左脚を骨折した時に経験したのがこのタイプだったんですが、脚に埋めたプレートを抜く手術の時も同じでした。 “腰椎麻酔” というヤツですな。 「夢の中へ」 というのは井上ヨウスイの歌なんですが、ヨウツイ麻酔の場合、夢の中に誘われることなく、意識が非常に鮮明なままメスで体を切られたりすることになります。腰のあたりの背骨にブスっと針を刺されて、ブチュ〜と薬液を注入されるんだから、何となく全身にクスリが回りそうなものなんですが、下半身だけ感覚がなくなるところが何だか不思議です。ま、血管ではなく、背骨の中の髄液にクスリを入れるのだから、全身には回らないのかも知れませんが、そもそも僕は背骨の中に髄液などというものが入っているとは、今まであまり深く考えたことがありませんでした。髄液は正式には脳脊髄液と呼ばれ、脳室系とクモ膜下腔を満たしている無色透明の液体なんだそうです。クモ膜下というと、クモ膜下出血という病気のイメージから頭の中だけにあるようなイメージがあるんですが、脊髄にもあるんですな。脳や脊髄は全部で3つの層で覆われているそうなんですが、外側から順に、硬膜クモ膜軟膜と名前が付けられております。硬膜は硬い膜で、軟膜は柔らかい膜なんやろな。…というのは何となく分かるんですが、ではクモ膜はどんな膜なのかというと、クモみたいな膜。…って、いや、これは恐らく、この膜を発見したクモ博士とか言う人の名前にちなんだものなのではないかと思っていたんですが、調べてみたら違ってました。小柱の入り組んだ様子がクモの巣みたいだから、クモ膜。そういうことなんだそうです。意外とそのまんまなんですな。ま、小柱の入り組んだ様子と言われても、ぜんぜん見当が付かないんですが、クモ膜は外側の硬膜とは接しているものの、内側の軟膜との間には無数の小柱が伸びていて、そこが広い空間になっているんだそうです。その空間のことをクモ膜下腔と呼ぶわけですが、その部分が脳脊髄液で満たされているというワケですな。脳や脊髄本体を保護する為のクッションの役割を担っているワケです。

 で、腰椎麻酔というのは一番外側の硬膜を突き破る形で針を刺して、クモ膜下に薬液を注入することになるんですが、 このサイト が写真と図解入りで分かりやすいですかね? 脊椎麻酔と書いてありますが、同じことです。チクリとする程度で、脊髄に直接あたらない限り、あまり痛くありません。…などと書いてありますが、嘘はいけませんなぁ。ま、耐えられないほどの痛みというワケではないんですが、普通の注射に比べるとかなり嫌なものなので、それなりに覚悟を決めなければなりません。ま、2回目の時はそれなりに覚悟を決めていたので、わりと大丈夫だったんですけどね。 クモ膜下に注入された麻酔液は、どうやら全身に回るということはなく、注入された付近にジワジワと広がる程度のようなんですが、このクスリはおそらく、下半身から発信された 「メスで切られて、めっちゃ痛っ!」 …という信号が脳に伝達されるのを阻害する働きがあるんでしょう。下半身のどのあたりまでの感覚を麻痺させるかは、薬品の注入量や頭の上げ下げによって調節するようです。頭を少し上げ気味にすると麻酔薬は下がって麻酔の効く範囲が狭まり、反対に頭のほうを下げてやれば、より上半身に近いほうまで効果があらわれると。なるほど、よく考えられておりますなぁ。腰椎麻酔では絶対に上半身を起こしてはいけないと言われるんですが、そんなことをすればクスリが下がって、太股あたりまでは痛みを感じるようになったりするのかも知れません。 で、この腰椎麻酔の場合、針を刺したところからどうしても髄液が漏れちゃうんだそうでありまして、髄液が漏れるとどうなるのかというと、頭が痛くなるんですよね、これがまた。脳脊髄液が不足することにより、脳圧が下に引っ張られてそこらの神経を刺激することによるものらしいんですが、寝ている時は仰向けでも、うつ伏せでも、右向きでも、左向きでも、ぜんぜん大丈夫なので、脳が頭の中で前後左右にシフトする分には問題がなさそうなんですが、上半身を起こしたり、立って歩いたりして脳が下半身に下がってくると駄目なんですよね。やはり人間の二足歩行という姿勢は、動物としてかなり無理があるのではないか?…という事を実感させられました。

 手術をしてくれた先生が、しきりに僕の頭痛の状況を心配してくれたんですが、いや、患者思いの優しい先生でありますな。…と善意に捉えることも出来るんですが、僕はそうは思いません。腰椎麻酔、失敗したんや!針を刺しそこねて必要以上に髄液を外に漏らしたという自覚があるから、それを気にしてるんや! いや、人間、体調が悪いとどうも性格がひねくれてしまっていけませんが、で、この先生、頭痛治癒の対策として、どんどん水分を採って、どんどんオシッコ出してくださいね!…などと言っておりましたが、これは半分正解で、半分は間違っていると思います。この先生は恐らく、体内に麻酔薬が残っている影響で頭が痛くなると考えているんだと思うんですが、原因はそこではなく、髄液が漏れたことによるものなので、いくらオシッコを出しても駄目です。そもそも、髄液に注入された麻酔薬はオシッコとしては排出されないような気もしますよね。もしそうだとすれば、クスリと一緒に髄液も便器に流れ出てしまって、ますます頭痛がひどくなってしまいます。麻酔の後、何時間もオシッコが出ないとヤバいと言われるのは、クスリを早く外に出すためだと思っていたんですが、あるいは尿毒症とかを心配してのことだったのかも知れません。 一方、水分をたくさん採るというのは適切な対処法であるようですが、これはおそらく、ガバガバ飲んだ水が材料となって髄液が製造されるということなんでしょう。どうせなら普通の水やお茶を飲むよりも、髄液と同じ成分を含んだ “ポカリ髄液” みたいな健康飲料を開発して摂取したほうが効果的なような気もするんですが、あと、理由はよくわからんのですが、カフェインも効果的なんだそうです。水よりもお茶のほうがいいんですな。 ちなみに髄液の量というのはだいたい 150ccくらいなんだそうです。毎日、頭の中で 500ccくらい生産されて、脳から脊髄に降りてきて、また頭に上っていって、静脈から吸収されていくそうなんですが、つまり1日のうち、3.33333回くらい入れ替わることになります。それだけいっぱい作られるのなら、たとえ腰椎麻酔で 10ccくらい漏れちゃったとしても、ものの30分くらいで元の量に戻ってもよさそうなものなんですが、あるいは針を抜いた後もしばらく硬膜に穴が空いていて、髄液が生産量と同じくらいずつ漏れ続けたりするんですかね? 考えれば考えるほどワケがわからなくなって頭が痛くなっちゃうんですが、つまりまあ、あまり深く考え過ぎないことが頭痛の治癒にはいちばん大切だったりするのかも知れません。

 腰椎麻酔後の頭痛は1週間くらい続くんだそうです。最悪の場合、1ヶ月くらい苦しめられる人もいるそうなんですが、僕の場合、1週間経っても駄目でした。これはもしかして、長期化するかも?…という嫌な予感がしたんですが、会社が始まる1月7日になったら、今までの体調不良はいったい何やったんや?…と思ってしまうほど、急速に治癒してしまいました。12月25日の手術から数えて、13日目ということになりますか。 ちなみに腰椎麻酔をすれば誰でも頭が痛くなるのかというと、発症確率は10〜20%程度と、さほど高くはないようです。細い注射針を使って、テクのある医者が絶妙の角度で刺せば、概ね大丈夫ということらしく、ただ、かなり患者の個体差にも依存するみたいですけどね。どちらかというと若い人で、性別でいうと女の人のほうが圧倒的に頭が痛くなりやすいんだそうです。 ということは、アタシってこう見えて、意外と若いギャル体質だったりするのかも?おほほほほー♪ いや、麻酔をしてくれた先生が下手クソだっただけのような気もするんですけど。切ったところを縫うのも何だか妙に時間が掛かっていたし、もしかして、針仕事がめっちゃ苦手なタイプ? 今後、医師の国家試験には家庭科の実地試験も実施することを提案しておいて、今日のお話はおしまい♪

 ということで、今日はリチャード・グルーヴ・ホルムズです。この人はアレですよね。ラズウェル細木のジャズ漫画に出てくることで有名ですよね。…と、僕はずっと思っていたんですが、その絡みで検索をかけてみてもうちのサイトくらいしかヒットしないので、あるいはこの人、ラズウェル細木のジャズ漫画に出てくることでは、さほど有名ではなかったりするのかも知れません。その素性に関しても僕はあまり多くのことを知っているわけではなく、好きなカーペンターズのメンバーはリチャード・カーペンターで、好きな海峡はホルムズ海峡というくらいしか分かっていません。ま、好きなカーペンターズのメンバーと言ってもリチャードか、カレンか、どちらかしか選択肢がないんですけどね。僕は断然、カレンのほうが好きだったんですが、拒食症が原因で早世しちゃいましたよね。もっとソーセージとかたくさん食べていれば早世せずに済んだと思うんですが、残念でなりません。 一方、カーペンターズとは何の関係もないリチャード・グルーヴ・ホルムズはというと、食べ過ぎというのは考えられても、拒食は絶対に有り得ない体形をしてるんですが、いや、ごっついオッサンですよね。こういうオッサンとはあまり一緒に桶風呂とかには入りたくないところなんですが、ちなみにうちの事務所のウエダ君は、一人用の桶風呂で寛いでいたらそこにナガナワ所長代理が無理矢理入ってきて、非常に嫌だったと供述しておりました。非常に嫌どころの話では無い!…と、僕は思います。それならまだ、多少窮屈な思いをしてもホルムズ君と混浴したほうが全然マシだと思うんですが、そんなことでまあ、今日は 『ソウル・メッセージ』 というアルバムを紹介しようと思います。 この人のリーダー作では 『ミスティ』 というのがいちばん有名で、僕なんか間違えてこのコーナーで2回も取り上げてしまったんですが、ま、そういう過去の過ちは綺麗さっぱり忘れるとして、で、この作品はですね、シンプルなオルガン・トリオの編成になっております。ギターがジーン・エドワーズで、ドラムスがジミー・スミス。無論、あのオルガンのジミー・スミスとは別人であるものと思われ、英語の綴りも “JIMMIE SMITH” となっております。紛らわしいので日本語表記は “ジミエ・スミス” にしておいたほうがいいかもしれませんが、それはともかく、とまあそんなことで、では1曲目から聴いてみることにしましょうか。

 まず最初はホルムズのオリジナルで、 「グルーヴズ・グルーヴ」 という曲です。このリチャード・グルーブ・ホルムズという人は名前の真ん中にわざわざ “GROOVE” と付加している事からも分かるように、グルーヴには並々ならぬ感心があるようなんですが、 「グルーヴのグルーヴ」 。ちょっぴり意味不明ですね。これがもし 「黒帯のグローブ」 とかであれば、柔道や空手の有段者の手袋なんやろな。…というので、何となく理解出来るんですが、ま、グルーヴそのものが日本語に訳すのもちょっと難しいような雰囲気を現す言葉だったりするので、何となく気分が分かればそれでいいということなのかも知れませんけど。 で、これはアレです。タイトルに2回も書いてあるだけのことはあって、ゆったりしたテンポのなかなかグルーヴィな作品に仕上がっているわけなんですが、ま、テーマそのものはよくあるリフ系のブルースだったりするんですけど。ソロ先発はホルムズのオルガンなんですが、この人はアレですな。見掛けによらず、意外と繊細な演奏スタイルの持ち主だったりして、いたずらに下品な騒音をまき散らすでなく、いたずらに教室の入口のドアに黒板消しを挟んだりするようなこともなく、ま、そういう磯野カツオみたいないたずらはもう卒業したということなのかも知れませんが、出だしはとわりと抑え気味に淡々と演奏しておいて、中盤、短いフレーズを畳みかけるようにリピートしながら何度もしつこく繰り返すなどして、古典的な手法で盛り上げを図ったりもするんですが、最後はやっぱり落ち着いて、でもって、続いてはジーン・エドワーズのソロでありますか。この人に関しては僕はまったくよく知らなかったりするんですが、わりと太い感じのギターを弾く人でありますな。あまりお上品とは言えないんですが、その分、とっても品がなくて、微妙にウエス・モンゴメリーっぽかったりするオクターブ奏法もなかなか迫力があります。 で、その後、ホルムズが出てきて再びソロを取って、テーマに戻って、おしまい。 ま、オルガン・トリオとして、模範的なプレイであったと言えるのではないでしょうか。

 このアルバムでは日本人にはちょっと嬉しい感じのジャズ・オリジナルが何曲も取り上げられているんですが、その手始めはクリフォード・ブラウンの 「ダフード」 。あまり高級ではないお菓子のことを駄菓子と言ったりしますが、ダフードというのは駄な食べ物、すなわち駄フードを意味するんでしょうか? 駄な食べ物というと僕の場合、切り干し大根を煮たのとか、ひじきを煮たのとか、そういう “煮たの系” の食べ物があげられます。いわゆる “おふくろの味” を否定するのか?…と言われても、あまり好きになれないのはどういようもないわけでありまして、もし僕のおふくろが 切り干し大根を煮たの、どこかの知らないおばちゃんがマルシンハンバーグを持って来たとしたら、僕は迷わずおふくろのほうは無視します。 そんな駄フードをテーマにしたこの曲は、ファンキーというよりハード・バピッシュと呼んだほうがぴったりする感じで、そこのところが僕はあまり好きではありませんでした。わざとらしいくらいに黒っぽい曲のほうが僕は好きですからね。が、改めてこうして他人の演奏で聴き直してみて、認識を新たにした次第なんですが、意外といい曲だったりするんですよね、これがまた。 ここでのホルムズ君はボサノヴァっぽいリズムも交えて、オリジナルよりも気持ちゆったりとしたテンポでグルーヴィに料理しておりまして、で、ソロ先発はジーン・エドワーズでありますか。この、当初は期待度0%だったギタリストは、なかなか切れ味の鋭いプレイを聴かせてくれて思わぬ拾い物だったりするんですが、僕が知らないだけで、わりと有名な人だったりするのかも知れません。続くホルムズのオルガンは1曲目同様、最初のうちは軽く流すと見せかけておいて、実はこっそり “流し満貫” を狙っていたりして、なかなか油断がなりません。中盤以降のグルーヴィな盛り上げはなかなかだと思うんですが、アドリブからテーマに戻るところのつながり具合が、やや強引な気がしないでもありません。間に地味にベースのソロを4小節だけ挟むとか、そういう工夫があってもよかったかも知れません。ネギマでも、間のネギの部分が意外と効果的だったりしますからね。

 で、続いては 「ミスティ」 でありますか。普通にスタンダードと言っていい程、たくさんのジャズマンによって取り上げられている曲でありますが、作曲したのはちょっぴりエロいピアニストのエロール・ガーナーなので、本来はジャズ・オリジナルであると言ったほうがいいでしょう。ま、そんな線引きは大した意味があるわけではないんですが、線引きに大した意味がないからと言って万引きしたりするというのは、もっとよくない事だと思うんですけど。 で、この曲、おそらく僕が間違えて2回レビューしてしまった 『ミスティ』 というアルバムでも演奏されているものと思われますが、彼にとっての愛奏曲だったんでしょうな。ちなみに僕の愛奏曲は 「葬送行進曲」 …って、楽器を何も演奏出来ないのにそういう嘘を言ってはいけませんが、 「葬送行進曲」 なんて、そうそう簡単に弾けるものではないですからね。 で、一方 「ミスティ」 の場合、ちょっとくらいミスっていい?…という軽い気持ちでやると、割合うまく弾けると言われておりますが、元来、バラードでしっとり演奏されることの多いこの曲を、ホルムズ君の場合、ミディアム・ファストくらいのテンポで軽快に料理するというのが常であります。 いかにもオルガンらしい、ぴゃ〜〜〜っ♪…という超ロングトーンをバックに軽快にフレーズを紡いでいくところがなかなかいい感じなんですが、 ここでの彼は終始ノリノリですよね。僕、 「ミスティ」 のことが 「鱒ティー」 よりも好きなんだ♪…というのが聴いているほうにも伝わってくる感じなんですが、何だかちょっと生臭そうで、あまり飲みたくはないですからね、 “鱒ティー” なんてお茶。 “鮭ティー” というのも出来れば避けたいところですし。魚類でなくて水棲哺乳類なら “マナティー” なんてのがおりますが、あれは別にお茶の一種というわけではないですよね。 で、愛しているもの、自分の好きなものは、他の誰にも渡したくない!…と思ってしまうのが人情というものなんですが、ここでのホルムズ君は、ここまでの貢献度が決して小さくないエドワーズ君にソロを回してあげることなく、最後まで独り占めにしておいて、でもって、テーマに戻って、おしまい。図体はデカくても、意外と度量の小さな男であるようですな。ま、そういう僕も大好きな “うまい棒” とか、いくら多量にあったとしても、絶対、人には分けてあげませんけど。

 で、4曲目はホレス・シルバーの 「ソング・フォー・マイ・ファーザー」 。 これを演奏してくれるなんぞ、日本人には何とも嬉しい趣向ですよね。シルバーがポルトガルの血を引くとされる父に捧げたラテン・フレーバーの名曲なんですが、ちなみに僕の場合、乳は大好きなんですが、父のことは嫌いなので、もし曲を捧げるような機会があるとすれば、世にも恥ずかしい変な曲にしようかと思っております。ホレス父はいい曲を捧げて貰って幸せ者でありますが、ここでのホルムズはオリジナルに比べるとかなりゆったりしたテンポで、グルーヴィに仕上げております。 前の曲で冷たくしてしまった、せめてもの罪滅ぼしのつもりなのか、ここではソロ先発にジーン・エドワーズを起用しておりますが、エド君のほうも誰かに怒りをぶつけるかのような激しいプレイで、それに応えております。中盤、シルバーがピアノで弾いたアドリブ・フレーズをそのままコピったりして、演奏のほうは大いに盛り上がるわけなんですが、そのバックに被さるようにして登場するオルガンのバッキングはちょっと空気を読めてない感じで、やや耳障りだったりします。ま、オルガンの場合、ピアノと違って鍵盤を優しく押したところで、ぴゃ〜〜っ♪…という下品で大きな音しか出せないので、元来、コンピングにはあまり向いていないのかも知れませんが、それにもメゲず、エドワーズは最後まできっちり自分の仕事をこなして、そしていい感じのままオルガンのソロへとつないでおります。 続くホルムズに大きな期待が持たれるところなんですが、ここでの彼はアレです。ちょっぴり神懸っています。…という程のことではないんですが、峠の茶屋で釜飯買ってるくらいのテンションは感じられ、ま、釜飯くらい、それほど気合いや予算が無くても普通に買えるような気もするんですが、それなりに頑張って盛り上げて貰ったところで、テーマに戻って、おしまい。いや、知ってる曲を演奏してくれると、それだけで何だか嬉しいよね♪…という、それだけの理由でけっこう楽しめちゃいますよね。

 で、取り上げて貰って嬉しいという点では、続く 「ザ・シングス・ウイ・ディッド・ラスト・サマー」 も同様でありまして、個人的にはかなりお気に入りだったりするんですよね、 「去年の夏」 の邦題で知られるこのスタンダード。 この歌の歌詞は このサイト の真ん中のところに日本語訳があるんですが、娯楽場の中道での楽しみ、キユーピー人形を獲得したよね。ベルの音が僕の腕力を示してくれたっけ♪…というところが今ひとつ意味がよく分からなくて、個人的には好きです。ゲーセンでクレーンゲームをして、キユーピー人形を獲得したんやろな。…というところまでは何となく想像出来るんですが、腕力を示してくれるベルの音というのは、やはりハンマーゴングでありましたか。うちのサイトでもかつて、この歌詞について検証したことがありましたよね。いや、 ここ なんですけど。これを読んだ昆布青年がベルのくだりに関して、掲示板で、ハンマーを降りおろすとその反動で鉄の重りが跳ね上がって、上に取り付けられたゴングを鳴らす仕掛けのものではないか?…という旨の発言をしていたんですが、やはりそういうものだったようです。 結構ガキっぽいことをして遊んでたんやな、コイツら。…という気もするんですが、 「あなたのそういう子供っぽいところが嫌い!」 とか言われちゃったのかも知れませんな。2人がラブラブだった頃は、 「あなたのそういう少年みたいなところが大好きっ♪」 とか言ってくれてたやん!…と思わずにはいられないんですが、乙女心というのは秋の空のように変わりやすくて、冬が来る頃にはすっかり飽きられちゃったんでしょう。相手に、自分には無い部分を見つけて好きになって付き合い始めた2人が、最終的には “性格の不一致” を理由に分かれたりするわけですからね。だから僕は自分と似たような性格のギャルが好きっ♪ちょっと子供っぽいところがあったりするコが好きっ♪ で、そのコが大の猫好きだったりすれば、もう言うことなしっ♪ で、演奏のほうに話を戻すと、これはアレです。しみじみとしたバラードで料理されております。6曲中、もし1曲だけバラードを入れるなら、やっぱり2曲目か5曲目やろ?…と僕は思うんですが、その意味でホルムズ君とはけっこう仲良くなれるかも知れませんね。いや、一緒に桶風呂に入りたくは無いんですけど。 オルガンでも、こんな優しい演奏が出来るんだぁ♪…と、改めて再認識させられた思いでありますが、きっと根が優しい人だから、それも可能になってくるんでしょうな。聴いているほうも優しい気持ちになれるような気がします。去年の夏、どうしても夏みかんを食いたい!…とか、そんなワガママを言ったりして、ゴメンなぁ! 思わず謝りたい気持ちになったりもするんですが、夏みかんと言っておきながら、収穫時期は春先だったりするんですよね。夏には意外と無かったりします。

 ということで、最後です。ホルムズのオリジナル、 「ソウル・メッセージ」 。 日本語にすると 「魂の伝言」 ということになりますか。 駅の伝言板にはよく、 「たまには椎茸を食いたい!」 という魂の伝言が残されていることがありますよね。…って、いくらネタに困ったからと言って、そういう嘘を付くのはよくありませんが、そんなに食べたくはないにも関わらず、けっこう食べたりしてますからね、椎茸の煮たの。僕にとっては駄フードのひとつだったりするんですが、タイトルからして、かなりアーシーな曲なのかと思って警戒していたら、ゴスペルっぽい仕上がりの作品となっておりました。オルガンにはお似合いですよね。教会音楽にオルガンとくればこれはもう、鬼に金棒というくらいお似合いなんですが、ウニに “うまい棒” というのも意外とお似合いかも知れませんな。 牛タン塩味に続いて、今度は是非、ウニ味を作って欲しいところなんですが、いや、僕はあまり好きではないんですけどね、ウニ。 とまあそんなことで、今日のところは以上です。


【総合評価】 シンプルなトリオ編成、オリジナル2曲でジャズ・オリジナルと歌物をサンドするという、大変に的を得た選曲とその配置具合、癖のないホルムズのオルガン・スタイル、意外と頑張ってたジーン・エドワーズのギター。 オルガン・ジャズの入門編としては、けっこう取っ付きやすい部類であると言えるかも知れません。ただ、ホルムズくんのルックスがあまりにもマニア向けであるところが唯一にして最大の欠点であります。ギャルは買わんでしょうな、恐らく。


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