INTRODUCING THE FABULOUS TRUDY PITTS (PRESTIGE)

TRUDY PITTS (1967/2/15,16)

INTRODUCING THE FABULOUS TRUDY PITTS


【パーソネル】

TRUDY PITTS (org,vo) PAT MARTINO (g) BILL CARNEY (ds)
ABDU JOHNSON (conga)
【収録曲】

(01-02) STEPPIN' IN MINOR / THE SPANISH FLEA
(03-05) MUSIC TO WATCH GIRLS BY / SOMETHING WONDERFUL / TAKE FIVE
(06-08) IT WAS A VERY GOOD YEAR / SIETE / NIGHT SONG
(09-10) FIDDLIN' / MATCHMAKER

【解説】 (2008年1月20日更新)

 その昔、治らない肩こりに悩んでいるジャズ・マンがおりました。ジョン・コルトレーンというのがその人の名前なんですが、コルトレーンを漢字で書くと “不治肩凝” となりますからね。油井正一センセイの作とされるこのジャズマン漢字表記は山下洋輔のエッセイに紹介されていたんですが、先日、ふと思うことがあって、久しぶりにヨースケ君の本を読み直してみました。捨てたとか、処分したといった記憶はないので、家の中をくまなく探せばきっとどこかにある筈なんですが、くまなく探すというのが苦も無く出来るとはとても思えなかったので、新しく買い直すことにしました。熊は無くしたものをくまなく探すと言われておりますが、僕にはそこまでの根気はありません。根気がないので婚期を逃して現在に至っているわけなんですが、山下洋輔の古いエッセイの文庫本って、既に世の中からは消え去ってしまっているんですな。新品では手に入らないことが分かったので中古で我慢することにしたんですが、僕は中古の本ってあまり好きではないんですけどね。フケが挟まっていたり、みかんの汁が付いていたり、鼻クソが付着していたり、あるいは怪しい汁で頁がパリパリになっていたりといった、そういった状況が頭に浮かんでしまうからなんですが、いや、さすがにヨースケの本で怪しい汁が飛び散るようなことはないと思うんですけど。 ま、多少の汚れは安さに免じて許すとして、ところで “Amazon” の中古市場を見ると、1円という値段を付けているところが結構あったりするんですが、アレはいったいどういうことなんですかね? おそらく配送料とかで稼いでいるんだと思うんですが、何だかあまりにも安すぎてちょっと怪しいような気もします。やっぱり怪しい汁が付着しているのか?…とか。それはちょっと嫌なので、 “@古本市場” というところで買うことにしたんですが、ここは文庫本が94円とかで売られていて、ま、これは納得のいく値段設定ですよね。お買い上げ2000円以上は送料無料ということで、まとめ買いする場合も安心です。

  『ピアニストを笑え!』 『ピアニストを二度笑え!』 『ピアニストに手を出すな!』 の3冊を買ったんですが、これらがすべて94円。ついでに買った 『筒井康隆 自選短編集1・近所迷惑』 がちょっとお高くて200円。このペースではなかなか送料無料の金額に達しないので、 『クリスタルキング・ベスト』 というCDを買って、これで合計2506円。クリスタルキングのほうは 「大都会」 「蜃気楼」 「処女航海」 の冒頭3曲しか知ってる歌がなかったんですが、7曲目に入っていた 「セシル」 というのが泣かせる作品で、なかなかよかったです。やっぱり、怪しい汁よりもセシルだよねっ♪…と思わずにはいられませんが、残念ながら、ぱらぱらとチェックした限りでは、今回買ったヨースケ本3冊の中にジャズマン漢字表記のネタは無かったんですけど。腰椎麻酔の話はありました。 『〜手を出すな!』 の中にありました。腰椎穿刺という表記になっておりますが、何でもヨースケ君は小学4年の時、ガケっぷちを自転車で走ってゴミ溜めに落ちて、破傷風になったんだそうで。破傷風に関しては、ま、 ここ を見て貰うといいんですが、この病気に掛かると強直性痙攣が起きて、体が逆エビ状に反り返っちゃうらしいんですよね。今、その状況を写真で見て、わー、めっちゃ反り返ってるやん!…というのをビジュアルとして実感することが出来たんですが、一方、腰椎穿刺の際には体を順エビ状に丸める必要があると。破傷風の病人はその姿勢を取ることに物凄い苦痛をおぼえるそうなんですが、ま、確かにそれは何となく分かるような気がします。注射の最中に痙攣がくると背骨が反り返って針が折れる恐れもあるので、ヨウスケ君は大人3人程で順エビに固めたそうなんですが、なるほど。僕が本で読んで非常に怯えていた腰椎麻酔は、そういうかなり特殊な状況のもとで行われたものだったんですな。僕の場合は脚の骨折治療とバッテイ手術で、むしろ順エビ状に丸まっているほうが楽だったりしたので、条件的にはラッキーだったのかも知れません。

 バッテイ手術後の抜糸も終わって、約2週間。切って縫ったところの状況を見て、骨のレントゲンを撮って、それで大丈夫そうなら、もう病院には来なくていいよ。…というところまでこぎつけた日の朝、その事故が起きました。僕は病院に行くためにリビングのところから外に出たんですが、これには少し説明が必要でしょう。僕の家には4畳半の座敷に通じる玄関の他、台所には勝手口があります。ところがこの勝手口というのがですね、なかなか勝手には出入り出来ないようになってしまっているんですよね。その要因のひとつはその設置場所にあるんですが、家が火事で燃えて建て直した時なのか、あるいはその後で部分的に改築した時なのか、とにかく台所の部分を隣家との敷地ぎりぎりのところに作ってしまったんですよね。そこのところにウチが勝手に勝手口を作っちゃったものだから、そこから外に出ようとすると、どうしても隣家の敷地の一部に踏み入れることになってしまいます。ま、隣近所で仲良くしていればそれでいいんですが、悪いことにウチの親父と隣家のオッサンとは非常に険悪な関係にありました。その為、隣のオッサンが僕の家の勝手口のところに物置を設置するという嫌がらせに走ることになるんですが、おかげで勝手口のドアは5分の3くらいしか開けられない状況になっております。隣のオッサンは桑名寿司で酒を飲んでて倒れて救急車で運ばれ、そのまま若くして帰らぬ人となってしまったんですが、物置のほうは彼が生きていた証として、そのまま残されております。ドアの隙間から何とか出入り出来ないことはないんですが、荷物を持っていたりすると通行困難で、日常、あまり使われることはありません。 となると玄関から出入りするしかないんですが、それも何だかちょっと面倒なので、家に誰かいる時にはもっぱらリビングの窓から出入りしているんですよね。窓と言っても庭に面した部分は床まである掃き出し窓になっているので簡単に出入り出来るわけなんですが、窓の外には縁台のようなものが置いてあって、とりあえずそこを経由するというシステムになっているんですけど。

 その縁台というのは高さ40センチくらいのものなんですが、おそらくミスタートンカチあたりで一番安い特価品を買ってきたんでしょう。非常に安定感が悪く、普段からよくコケそうにはなっていたんですが、その日、リビングから出た僕は庭に降りようとしてバランスを崩し、あっ!…と思った次の瞬間には、全身が強く地面に叩きつけられておりました。後から見たら縁台の脚を支える真ん中の棒の部分がポッキリ折れていたんですが、いや、頭を強打してアホになったり、治ったばかりの自分の脚のポッキリ折れたりしなかったのは不幸中の幸いでありましたな。その代わり、右の肩から肘にかけてのあたりを強打して、ジンジンするような痛みが残ってしまったんですが、ま、腕を曲げ伸ばしすることは可能なので、まさか骨が折れているということはないでしょう。 脚の骨がもう大丈夫かどうかを診察して貰う日の朝に、大コケして、今度は肩を痛めたというのも何だかマヌケな話なので、主治医の先生には黙っておきました。 が、夜になるにつれて、次第に激しくなって来たんですよね、肩の痛みが。ぷらんと下に垂らしていると大丈夫なんですが、腕を上げようとすると激しい痛みに襲われます。クルマの運転は左手だけで何とか大丈夫なんですが、ウインカーを出す時と、ハンドルを左に切る時が辛いです。字も書けないし、パソコンのマウスを動かすのも辛いので、その日はさっさと仕事を切り上げて家に帰ることにしたんですが、問題の縁台はすでに処分された後でありました。壊れる前に、グラついてる時点でさっさと捨てればよかった!…と自戒の念に駆られてしまいますが、でもまあ、壊れるまではいつ壊れるものなのか、よく分からなかったしー。 で、家に戻ったのはいいんですが、そこでも数多くの試練が待ち受けておりました。服を着替えるのがもの凄く苦痛だし、箸を持つ手が上がらないからゴハンを食べるのも楽しくないし、右側を横にして寝れないし、起きたら起きたで顔もろくろく洗えないし、便所にいってもうまく紙で拭けないしー。 ま、最後のはウォッシュレットと左手の併用で何とかそれなりには処理したんですが、これはもしかして、思ったよりもかなり重傷だったりするとか? 肩甲骨の骨折…とまではいかないまでも、肩甲骨が健康でないことだけは確かで、あるいは、ひびくらいは入っちゃっているかも知れません。パソコンのキーボードも左手だけでは打ちにくいので、今週の “jazz giant” はお休みするしかありませんなぁ。 で、病院に行ったらやっぱり骨が折れていることが判明して、即入院、即手術? 今度は場所からして部分麻酔は難しそうなので、いよいよ全身麻酔の初体験ということになるかも知れません。このコーナーの復帰第1作目は、全身麻酔ネタ? いろんな思いが渦巻く中、コケてから2日目を迎えているわけなんですが、幸い、痛みのほうは徐々に薄らいでは来ております。今のところ、ちょっと重篤な肩凝りといった程度でしょうか? 僕は今まで肩凝りには一度も悩まされたことが無かったんですが、コルトレーンはこんな苦しみと常に戦っていたんですなぁ。いや、名前が不治肩凝なだけで、実際にはぜんぜん大丈夫だったのかも知れませんけど。

 そんなことでまあ、今日は肩凝りの治療法について考えてみたいと思うんですが、特に女の人の場合は肩凝りに悩んでいる人が少なくないようですね。特に巨乳ギャルは肩が凝るそうなんですが、なるほど、確かにそれはちょっと分かるような気がします。が、貧乳であれば肩は凝らないのかと言うと、そうとも言い切れないようで、肩凝りの原因は肩に掛かる負担の大きさだけでは計り知れないようです。やはり血行の問題なんすかね?子供の頃、 「けっこう仮面」 が結構好きだった僕は、血行がわりといいほうだと思うんですが、長時間同じ姿勢を続けていると筋肉が緊張して血液の循環が悪くなって、肩が凝っちゃうんだそうです。長時間のデスクワークなんかがよくないみいたいですな。あまり長い時間デスクにかじりつくのではなく、たまにはラスクをかじったりするといいかも知れません。美味しいですからね、ラスク。ま、机に座ったままの姿勢でラスクをかじってみたところで、あまり効果はないような気もするんですが、ま、そういう場合はムスクの香りでリラックスするとか、モスクで祈りを捧げて心の安らぎを求めるとか、モズクを酢の物にして食べるとか。さほど美味しくはないんですけどね、モズク。 デスクワークの場合、机と椅子のバランスが悪かったり、前かがみの状態になっていたりすると、より血行が悪くなるんだそうですが、足を組むというのもよくありません。足を組むかわりにお茶をくむというのは、男女共同参画社会の考えからするとちょっと問題かも知れませんか、オッサンに茶をいれてやるのではなく、自分で飲むためのものであるなら、適度な運動とリラックスという両面から効果的であるかも知れません。自分で美味しいコーヒーでも入れて、おやつに “LOOKチョコレート(ハッピー・スプリング・ア・ラ・モード)” でも摘んだりすれば、心の底から春めいて、ハッピーで、あら、どうも♪…といった気分になれるのではないでしょうか。責任感が強く、真面目で几帳面。…といった完璧主義的な性格も心因性ストレスからくる肩凝りの原因になるので、あまり思い詰めるのもよくありません。桔梗屋の “信玄餅詰め放題” も賞味期限が当日限りのものなので、あまり思い詰めて思いきり詰め過ぎると、その日のうちに信玄餅を18個も食べなければならなくなって、胸焼けすることになります。 ま、僕は信玄餅が大好きなので、それくらいなら何とかなるような気もするんですが、後で机の上に散らばったきな粉を片付けなければならないことを考えると、やはり14個くらいで抑えておきたいところです。

 その他、内臓疾患や目・鼻・耳の病気、骨や筋肉の異常、歯の病気、もしくは、うつ病などの心の病によっても肩凝りが引き起こされるこのもあるので、その場合は原因となっている病気のほうから治療しなければならないわけですが、そうでない場合はとりあえず、肩もみ、肩たたき、ストレッチなどが有効なようです。ツボを押さえるというのが効果的だったりするんですが、 “飾っておくだけで肩凝りが解消する壷” などというのは、馬鹿高いばかりで効果のほどは甚だ疑問だったりするので、あまり手を出したりしないほうが賢明なのではなかろうかと。 “ピップエレキバン” などの磁気の力に頼るというのはどうなんすかね? 肩凝りの原因は体内に蓄積された砂鉄によるもので、磁石でそれが引っ張られるから治るんや!…というのならそれなりに説得力もあるんですが、ま、確かに血液の中には鉄イオンがたくさん含まれてはいるんですけど。ただ肩に磁石なんか貼ったりすると、そこに鉄イオンが吸い付けられて、血の流れが余計に阻害されちゃうんじゃないかという気もするんですが、それはそうと、 “四十肩” というのは、アレはいったいどういうものなんですかね? 僕はあと2ヶ月ほどに40歳になっちゃうんですが、大台に突入した瞬間、激しい肩の痛みに襲われることになるんでしょうか? ちょっと気になるので簡単に調べてみたところ、どうやら四十肩というのはその昔 “五十肩” と呼ばれていたのが、40代やけど、めっちゃ痛いやん!…という患者が増えてきた為に名称の見直しが行われたものであるようなんですが、通常の肩凝りがもっぱら筋肉が原因で起こるのに対して、四十肩・五十肩というのはどちらかというと関節にくるんだそうで。肩の関節にはそれを支える “ローテーターカフ” と呼ばれる筋肉のようなものがあるんですが、その柔軟性が加齢と共に低下して肩関節の動きのバランスが悪くなって、肩が痛くなって、そのうちに腕が上がらなくなっちゃうという。四十肩と言っても運悪く30代で発症することも十分あり得るわけなんですが、もしなっちゃった場合はですね、患部を温めたり冷やしたりして、で、安静にすることと、運動することも必要となってきます。どっちやねん!…と言いたくなっちゃいますが、急性の場合には患部を冷やして安静にするのが大切で、慢性的なものは肩を温めて腕を適度に動かしてやるのが大切なんだとか。 なるほど、温泉治療なんてのがよさそうですな。ちなみに僕の現在の症状は四十肩とかなり似ているような気がするんですが、肩を強打してローテーターカフが損傷し、まだバリバリの30代だというのに四十肩みたいになっちゃったんですかね? 昨日までは手をちょっと動かすだけで激痛が走って、適度な運動など、とんでもないっ!…という感じだったんですが、痛みも少しずつ和らいできたので、ちょっとずつ動かしてみたほうがいいのかも知れません。四十肩の場合、腕が上がらないのと同時に、腕を後ろに回すのも困難になるんですが、服を脱ぐという動作はこの2つの点に関して、あまり過度の負担を掛けずに可動域を拡大することが出来て、けっこう効果的かもしれません。四十肩に悩むギャルの皆さま、痛みを克服するため、 “温泉治癒の旅(野球拳オプション付)” 、僕と一緒に行きませんか???

 ということで今日はトゥルーディ・ピッツなんですが、それはそうと、いよいよ “ノーズマスク・ピット” の季節が近付いてきました。杉の花粉が飛び始めるにはまだ1ヶ月余の猶予があるんですが、鼻の穴に直接挿入するタイプのこのマスクは人気商品のため、花粉が飛び始めてから慌てて買おうとしても、既に売り切れになっている恐れがあるんですよね。これを一度使ってしまうと、2度と手放せない…というか、鼻放せなくなってしまうので早めに注文することにしたんですが、今回、僕が利用したのは このショップ なんですけど。4セット以上買うと送料無料とのことなんですが、余裕を見て5セット買うことにしました。1セットに8個の鼻マスクが入っているのでトータル40個ということになるんですが、杉花粉の飛散期間は概ね2ヶ月なので、1日1個のペースで消費すると3月下旬で在庫が尽きることになってしまいます。が、これまでの経験からして、1個あたり3〜4日程度は使い回し出来ることが判明しているので、これだけ押さえておけば余裕でありましょう。鼻に詰めて数時間もすると鼻水まみれになっちゃうので、本来なら1日3回くらいは取り替えたいところなんですが、1個176円ちょっともする高価な品なので、そんな贅沢も言ってられません。装着していても、さほど息苦しさを感じないところがいいんですが、鼻に詰めたまま寝ると無意識のうちに鼻息で吹き飛ばしてしまうようで、朝起きると行方不明になってるところがちょっとネックだったりします。布団をひっくり返しての捜索を余儀なくされることになるんですが、それさえ乗り切れば、つなぎの部分が劣化して取れちゃうまでは使用することが可能です。ま、3日もすると全体的に薄汚れてきて、衛生的な観点からは、どうか?…というのがちょっと心配だったりはするんですけど。 とまあそんなことでトゥルーディ・ピッツなんですが、この人に関して僕の知っていることは、何ひとつとしてありません。何も知らなくて何も書くことがないので、ぜんぜん関係ないノーズマスクピットの話を引っ張ったわけなんですが、CD屋で背中の部分を見て、プレスティッジ盤だというのでとりあえず手に取ってみたところ、和田アキ子みたいな顔のお姉さんだったので、ちょっとビビりました。いや、ギャル系だとは思わなかったんですよね。演奏している楽器がオルガンというのもちょっと意外だったんですが、ま、この世界にはシャーリー・スコットという偉大な先人がいたりもするんですけど。 で、家に帰って日本語ライナーを読んだところ、どうやらこの 『イントロデューシング・ザ・ファビュラス・トゥルーディ・ピッツ』 が彼女の初リーダー作ということになるようで、その後、3枚ほど自己名義のアルバムを残しておりますが、それらを含む計7回のレコーディング・セッションを終えたところで、活動状況が解らなくなってしまったようです。パット・マルティーノ『アルハンブラ』 というアルバムにも参加しているようですが、そんなの言われなければ誰も気付く筈もなく、ま、言われてみれば確かにこの初リーダー作にはマルティーノがサイドマンとして参加したりしているわけなんですが、とまあそんなことで、では1曲目から聴いてみることにしましょうか。

 まずはドラマーとして演奏にも参加しているビル・カーネイという人のオリジナル、 「ステッピン・イン・マイナー」 でありますか。このカーネイ君こそがピッツちゃんをジャズの世界に導いた張本人ということなんですが、何でもフィラデルフィアでのクラブ・ギグの際、オルガン奏者に欠員が出たので、彼女を誘ってみたんだとか。当時のピッツちゃんはクラシック系のピアニストとしてそれなりの実績はあったものの、ジャズを演奏するのは、ほぼ初めて。オルガンも子供の頃、教会で遊び半分に弾いたことがある程度だったというのだから、無茶な話ですな。が、それなりに順応したというのだから、見た目によらず意外と起用なギャルであるようですが、とまあそんなことで 「ステッピン・イン・マイナー」 。 マイナーというのは短調のことではないかと思うんですが、いいですよね、短調。日本人は短調が大好きです。単調なのはそれほどでもなかったりするんですが、丹頂鶴はそれなりに人気です。その短調にステッピン・インするというのはどういうことかと思って翻訳サイトにかけてみたところ、 「未成年者では、踏みます。」 という訳が出てきたんですが、なるほど、マイナーにはそういう意味もあったんですな。道端に犬のウンコが落ちている場合、大人ならそれに気付いて適切に避けることも可能なんですが、未成年者では、踏みます。 そういう日常生活におけるちょっとした悲劇をテーマにした曲なのではないかと思われますが、ゆったりしたテンポのマイナーでグルーヴィな仕上がりでありますな。ピッツちゃんのフワフワしたオルガンもなかなかいい雰囲気で、なかなかやるな、この和田アキ子!…と、僕の中での好感度が一気にアップした次第でありますが、ずっと和音で弾いていたのが、途中ですーっとシングル・トーンに転じるあたり、一瞬、違う楽器が出てきたのかと思ったりもして、ああ見えてオルガンというのは意外と多彩な表現が可能な楽器だったんですな。ちょっと見直しました。 で、この人目当てで買った人も多いと思われるパット・マルティーノのソロに期待が集まるところですが、結局のところ彼はまったく表に出てくることがないまま、テーマに戻って、おしまい。ま、僕はあくまでもオルガンが目当てだったから別にいいんですが、ゆったりと、くつろいだ気分になれるオープニングなのでありました。

 続いては 「ザ・スパニッシュ・フリー」 。 これはアレですな。ハーブ・アルパート&ザ・ティファナ・ブラスのヒット曲ですな。NHKのラジオ第1放送で時間つなぎによくかかるんですよね、ティファナ・ブラス。 あと、 「誇り高き男」 というのもよく出ます。びょびょびょびょ、びょんびょびょ♪…という間の抜けた口琴の音を聴くと、朝からガクっとヤル気を喪失してしまうんですが、一方のティファナ・ブラスは明るくて活気のあるサウンドですよね。あまりにもベタ過ぎて、僕は嫌いなんですけど。 で、この 「ザ・スパニッシュ・フリー」 というのはスペイン人のフリチン男をテーマにしたものではないかと思うんですが、よく見ると英語の表記は “FREE” ではなくて “FLEA” なんですよね。となると、 「スペインの蚤」 ですかね? 何だかとっても痒そうでちょっと嫌なんですが、ま、フリチンの男よりは遙かにマシなんですけど。 曲そのものはあまりにも能天気過ぎで、マイナーな短調が好きな僕の趣味とは合い入れないものがありますが、演奏そのものは軽快で快調で調子がよくて、よくも悪くもポップな仕上がりだったりしております。 とまあそんなことで、テーマに戻って、おしまい。 次、 「ミュージック・トゥ・ウォッチ・ガールズ・バイ」 。 音楽見る少女買う? ライブ会場でギャルをナンパして援助交際…みたいな? ちょっぴり意味不明なタイトルでありますが、翻訳サイトでは 「少女を見る音楽」 という邦題が出ました。よく見たら “BUY” ではなくて “BY” なので、買うわけではないんですな。ま、少女を見る音楽というのも今ひとつよく分からなかったりするんですが、曲そのものはアレです。ゆったりしたテンポのマイナーでグルーヴィな仕上がりで、なかなか悪くありません。コンガのチャカポコがちょっぴり耳障りなのは減点材料ですが、その不満を補って余りある、リアルな海女の素潜りショー。ま、そういったところでしょうか。ピッツのオルガンはソロが進むに連れて次第に速度と熱度が増加していくことになるんですが、ギャル系だけに極度な泥臭さや品の無さに活路を見出すのではなく、洗練された暖簾。そういう路線を模索しているように見受けられます。 で、続いてマルティーノの待望のソロがフィーチャーされることになるんですが、概ねオーソドックスな出来映えなので、変態性とかにはあまり過度に期待しないほうがいいかも知れません。普通に楽しむ分には問題のないノーマルなプレイが展開されています。 ということで、テーマに戻って、おしまい。

 続いては 「サムシング・ワンダフル」 という曲なんですが、ここではピッツたんのヴォーカルが披露されることになります。ま、見た目が和田アキ子だから歌はお手のものだと思うんですが、マルティーノのアコースティックなギターによるイントロに続いて登場する彼女の歌声は何ともいえずジャジーな雰囲気があって、悪くないですな。オルガンのほうは控えめに、ほとんど歌に専念している格好なんですが、単なる余技では終わらせないプロとしての仕事は十分になされていると思います。少なくとも 「NINJIN娘」 を歌う田原俊彦よりは素質があると思います。バックで聴かれるギターの伴奏も、素敵っ♪ ということで、次。 レコードで言うとA面の最後を飾ることになるこの位置に、 「テイク・ファイブ」 を持ってきましたか。僕がちょうどジャズを聴き始めた頃、アリナミンVのコマーシャルでブルーベック・カルテットのこの曲が流れていたんですよね。 「好きです。元気でいてください」 っていうヤツ。確かに自分の嫌いなヤツであれば、盲腸と脱腸と痛風を併発して、もっと苦しめ!…とか思ってしまうんですが、好きな人にはずっと元気でいて欲しいですよね。にもかかわらず、脚の骨を折ったり、腰椎麻酔で頭が痛くなったり、縁台から落ちたりして、ゴメンよぉ!…と、とりあえず謝っておきたいと思いますが、オルガンで聴く 「テイク・ファイブ」 というのもなかなか悪くありませんな。コンガのチャカポコが相変わらずちょっと耳障りなんですが、テーマからアドリブに持っていくところの処理など、なかなかうまく考えられていると思います。ソロの展開も何だかえらくモーダルだったりして、いや、意外とやってくれますな、この女。残念ながらマルティーノのソロはフィーチャーされておりませんが、その分、ピッツのオルガンを存分に堪能することが出来るので、内臓の中では胆嚢がいちばん好きっ♪…という人であれば、それなりに楽しめるのではなかろうかと。

 6曲目、 「イット・ワズ・ア・ヴェリー・グッド・イヤー」 。   「それは非常に良い年でした」 。 僕にとってよいトシと言えば、それはやっぱり敏いとうとハッピー&ブルーかな?…という気がするんですが、ハッピー&ブルーって、幸せなんだか憂鬱なんだか、今ひとつ判然としないグループ名ではあるんですけど。 で、この曲はアレです。ギターとオルガンの絡みでテーマが演奏されることになるんですが、なかなかカッコいい感じの仕上がりになっておりますな。渦巻くようなフレーズで始まるトゥルーディのソロの出来も群を抜いて抜群でありまして、そのままうまい具合に後テーマまで持っていって、とまあそんなことで、おしまい。素晴らしい演奏だったにも関わらず、解説のほうはほんの数秒で終わってしまいましたが、ということで7曲目です。ドラマー、ビル・カーネイのオリジナルで、 「シエテ」 。 口笛はなぜ、遠くまで聞こえるの、あの雲はなぜ、私を待ってるの♪…って、それは 「シエテ」 ではなくて、 「おしえて」 。 相当のロリ声の持ち主でないと、大人でこれを歌いこなすのはかなり難しいものがあるんですが、ま、無理な場合は 「ケロッ!とマーチ」 でもぜんぜん大丈夫だったりするんですけど。 で、一方 「シエテ」 のほうは、ちょっぴりミステリアスなムードを持った不思議な世界が展開されることになるんですが、このビル・カーネイという人、黙ってタイコを叩かせているのがもったいないほど、メロディ・メーカーとして卓越した才能を持ち合わせていますよね。これならもしジャズの世界で食っていけなくなったとしても、不二家の工場でメロディチョコを作って生きていけるのではないかと思われます。僕としては、どちらかといえばLOOKチョコのほうを作って欲しいところではあるんですけど。 演奏のほうは、出だしからマルティーノ君がけっこう頑張ってくれるんですが、ズ太いトーンのギターと軽快なオルガンとの絡み具合が絶妙です。ピッツのソロはピッツバーグの空を思わせるような変化の激しいものとなっておりまして、ソウルなようでもあり、モーダルでもあり、蟻の門渡り (とわたり) のようでもあり、多才で多彩な一夫多妻制。…といったところでしょうか? で、続いてマルティーノのソロも聴くことが出来るんですが、これは極めて短いものとなっておりまして、とまあそんなことで、テーマに戻って、おしまい。

 8曲目の 「ナイト・ソング」 はアレです。 「夜の歌」 です。夜の歌、略して、ヨルウタ。 ま、略してみたところで何がどうなるわけでもないんですが、ボサノヴァっぽいリズムに乗った、何とも可憐でキュートな仕上がりになっていたりします。オルガンでこんな星空みたいな音を出せるものなんですな。ちょっぴり見直しました。 「ハナコアラの見直しマンボ」 のCDは、何故だか “Amazon” では財津一郎&タケモットの 「タケモトピアノCMソング」 とあわせて購入することを推奨されたりしておりますが、 「帰ってきたケロッ!とマーチ」 を、小倉優子とデュオで歌ったりしてますけどね、財津一郎。 などと、ぜんぜん関係ないことを書いてるうちに演奏のほうは終わってしまいましたが、続く9曲目の 「フィドリン」 は、本アルバムで3つ目のビル・カーネイ作品でありますな。今までの曲に比べるとかなりシンプルな感じなんですが、何とも日本人ウケのする曲調に仕上がっておりまして、もしかしたらこの人には半分くらい日本人の血が流れていたりするのかも知れません。あるいはビル金井 (かねい) という名前の日系2世だったりするとか? テーマの後、ピッツのオルガン・ソロがあって、再びテーマに戻って、おしまい。 わりとあっさりした、短いプチ演奏やな。…と思ったら、2回目のテーマの後、しばらくオルガンのソロが続いていて、最初のアドリブ・パートよりもむしろ、こっちのほうが盛り上がっていたりするんですが、とまあそんなことで、最後にもう一度テーマが出てきて、今度こそ、おしまい。 で、アルバムの最後を飾るのは 「マッチメーカー」 という曲です。近年、ライターの普及によって、日本でマッチメーカーと呼べるのは桃印の兼松日産農林株式会社くらいになってしまいましたが、本来、地盤改良とかそういう事業を手掛けている会社らしいんですけどね。 で、ここでのピッツはお得意のヴォーカルを披露しております。マルティーノのブルースっぽいギターもなかなか興味深く、きっちりピッツのオルガン・ソロも披露されていて、まさにアルバムの最後を飾るに相応しい出来であるわけなんですが、とまあそんなことで、今日は以上です。


【総合評価】 ジャズ・オルガン奏者としてのキャリアが浅いことが幸いしたのか、ソウル色が希薄であまり泥臭くもない、聴きやすい作品に仕上がっております。 じゃ、純粋にジャズとして聴くには物足りないのか?…というと決してそんなことはなく、ピットのソロは十分傾聴に値するレベルに達しているんですが、ただ、パット・マルティーノが目当てとなると、かなり物足りない思いをすることになるんですけど。ここはひとつ、素直にリーダーの演奏に耳を傾けようではありませんか。選曲的にも 「ザ・スパニッシュ・フリー」 がちょっぴり場違いである以外は、非常によく練られていて、ビル・カーネイのオリジナル3曲も非常に魅力的です。2曲でフィーチャーされるヴォーカルも雰囲気があって、全体として、思わぬ掘り出し物であると言っていいでしょう。日本盤CDは税込1000円という、ノーズマスクピットよりもお値打ちな廉価版なので、是非とも買っておきましょう。いや、もう新品は販売中止になっちゃってるみたいですけど。


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