AT THE FIVE SPOT CAFE (BLUE NOTE)

KENNY BURRELL (1959/8/25)

AT THE FIVE SPOT CAFE


【パーソネル】

KENNY BURRELL (g) BEN TUCKER (b) ART BLAKEY (ds)
TINA BROOKS (ts) <#2,4,5> BOBBY TIMMONS (p) <#2,4,5> ROLAND HANNA (p) <#3,6>
【収録曲】

(01-03) Introduction by Kenny Burrell / BIRK'S WORKS / HALLELUJAH
(04-06) LADY BE GOOD / LOVER MAN / 36-23-36

【解説】 (2008年1月27日更新)

 春のセンバツ高校野球大会の出場校が決まりました。桑名の高校が選抜される可能性は端から皆無だったので、明治神宮大会枠だの、21世紀枠だの、希望枠だの、いろんな枠を作って貰ったところで、さほどワクワクしなかったんですが、桑名西高校がベスト4まで勝ち進んだのは、今から14年も前のことになりますか。ちなみに僕は中学3年生の時、西高ではなく桑高 (編集部注:くわこう。桑名高校のこと。) を受験して、見事に落っこちたんですが、高望みせんと、大人しく西高にしとけばよかった!…と今でも後悔しております。高望みをしたばかりに結局は海星高校に通う羽目になって、刈り上げ頭の男子生徒とスペイン人の牧師に囲まれて、暗い青春時代を過ごすことになってしまったんですが、西高には可愛い女子生徒もいたんですけどねー。○○子ちゃんとか。 (編集部注:当時、西高に在籍していた女子生徒は各自、伏字部分に自分の名前を入れて読んで下さい。)  そもそも僕は中学時代、学年でもトップクラスの成績を誇る優秀な少年であったわけなんですが、普段の中間テストや期末テストは丸暗記だけで高得点を上げることが可能だったものの、受験となると出題範囲が広すぎて、覚えきれへんやん!…ということになって、あまり好成績を収めることが出来ませんでした。神頼みや縁起担ぎをしなかったのも、よく無かったのかも知れません。ま、神サマにすがってみたところで、急に頭がよくなるとも思えないんですが、やるべきことはすべてやったという安心感が与える精神的な効果というのは、決して皆無であるとは言い切れないような気がしないでもありません。やはり白子の子安観音にお参りしておくべきでしたなぁ。もっとも子安観音というのは安産に効くので有名なところなので、果たして受験に関してどれほどの御利益があるのか、ちょっぴり心許ない部分もあるんですけど。特に名古屋にある南山高校を受ける場合は安産ではなく、難産に効く神社に行ったほうがよさそうなんですが、ここにお参りすればそれまで普通の状態だった胎児が、瞬く間に逆子になっちゃうという。ま、僕は端から南山高校など受ける気はなかったので、そんな嫌な神社に行かずに済んだわけなんですが、縁結びの神サマとかにはお参りしておいたほうがよかったかも知れません。そうすれば夢枕に 大国主命が立つなどして、 「桑高はアカンで。落ちるで。落ちて海星高校になって、スペイン人地獄やで。西高にしとけば大好きな○○子ちゃんとラブラブになれるかも知れんで。」 などという、適切なアドバイスが得られていたかも知れません。ま、僕の場合は今ひとつ信心が足りないので大国主命の代わりに元横綱の大乃国が出てきて、 「一緒にスイーツ食べに行こ♪」 と誘われて、それで終わりだったりするかも知れませんけど。

 神頼みや縁起担ぎというと、甲子園に出場が決まった高校球児なんかもよくやってます。試合の前日、テキにカツ(敵に勝つ)!…とか言って、夕食に ビフテキトンカツを食べたりするのがそれです。個人的には、そんなに肉ばかり食べたら、短期的には急性の下痢、長期的には痛風の発作が起こるなどして、かえって逆効果ではないかと思うんですが、栄養学的に見てもビフテキとトンカツという組み合わせはあまり誉められたものではありませんよね。それに、肉というのは高価なものだから、贅沢してあまりたくさん食べ過ぎると、罰が当たるという懸念もあります。同じ “テキにカツ” でもビフテキとトンカツはやめにして、トンテキトンカツにしておいたほうがいいような気がするんですが、いや、一緒やん!…とか、両方とも豚やん!…とか、いろいろと突っ込まれるのは覚悟の上なんですが、何故牛を豚に変えたのかというと、平成生まれの高校球児にビフテキと言っても、おそらく奴らには意味が分からないと思うんですよね。牛のステーキはビーフステーキ、もしくは、単にステーキ。ちなみにビフテキというのはビーフステーキから “ー”×2個と “ス” の字を捨て去ったものではなく、 “bifteck” という、れっきとしたフランス語から来たものなんだそうですが、もはや死語となりつつありますよね。その点、豚のステーキのほうはトンテキとしか言いようがないので、ナウでヤングな高校球児にも受け入れやすいと思うんですよね。豚のステーキにはポークステーキという言い方もあるやん。…などと、余計なことを言う人は、とりあえずどこか遠くに行って貰うことにして、牛が豚に変わることにより値段的にもかなり節約することが出来て、罰が当たることが軽減されるという効果も期待されます。ただ、下痢と痛風の問題は未解決のままになってしまうんですが、プリン体の含有量は牛も豚もほぼ同じみたいですしね。ここはやはり肉類に頼らないで “テキにカツ” ことが求められることになるんですが、となると、えーと…、テキーラカツオの叩きとか。これなら下痢のほうはさほど心配しなくてもよさそうなんですが、ただ、カツオには牛肉・豚肉の倍くらいプリン体が含まれているらしいので、単品でもトンテキ&トンカツのペアに 肩を並べることになってしまいます。豚には肩ロースと呼ばれる部位があり、一方のカツオには肩というのは無さそうなんですが、それでも肩を並べることになります。ま、プリン体をたくさん摂取したところで、急に痛風の発作に襲われたりするものではないので、翌日の試合にはあまり影響が無いと言っていいかも知れませんが、問題はテキーラですな。集団で酒を飲んだことがバレたら速攻で出場辞退に追い込まれることは間違いなく、いやあ、敵に勝つ前に、自分に負けちゃったね♪

 とまあそんなことで、高校球児のお話はおしまい。ビフテキとトンカツに変わる縁起担ぎの問題に関して、何ら解決策が示されなかったわけなんですが、甲子園に出場するような高校球児というのは、世の中でもほんの一握りですからね。そんな少数の奴らのために、貴重な紙面をそうそう裂いてはいられないわけで、とまあそんなことで、続いては受験生の縁起担ぎグッズについて考えてみたいと思います。世の中に受験生というのは多いです。少子化でその数が減ってきているとは言え、それでも甲子園に出場する高校球児より遙かに多いことは間違いありません。貴重な紙面を裂くに値する重要なテーマであると言えるわけなんですが、受験生というのはいろいろなお守りを手に入れて、縁起を担いだりするものなんですよね。例えば、エリンギを担いでみたりとか。ま、茸の類にさほど大きなパワーがあるとも思えないんですが、受験生というのはもっぱら、 「落ちない」 ということにこだわる傾向があります。試験というのは落ちたらそれでおしまい。…という点で、鳶職と共通するものがあったりするんですが、最近、僕がニュースで耳にした受験のお守りに “コアラのウンコ” というのがあります。もともとウンコ系というのは、ウン(運)が付くというので喜ばれる傾向にあるんですが、これは更にコアラとの相乗効果が期待されているようです。どうしてコアラなのかと言うと、コアラは木の上で寝ていても絶対に落ちないからなんだそうですが、木の上で寝ていても落ちないというのであれば、ナマケモノなんてのもそうなんですけどね。ただ、 “ナマケモノのウンコ” などというお守りでは世の中の青少年に、怠けていても受かるんや!…という、誤ったメッセージが伝わる恐れがあるので敬遠されたのではないかと想うんですが、ま、コアラなんてヤツも、たいがい怠け者だという気がしますけどね。ただコアラの場合はユーカリの葉っぱしか食わないのでウンコがミント系の香りになって、リラックス効果をもたらすという利点がありますよね。せっかくのお守りもウンコ臭かったりしては、集中力を削がれることになってしまいます。 もうひとつ、僕が最近ニュースで耳にした合格祈願のお守りに “トンネルの石” というのもありました。トンテキ、トンカツに続いて、今度はトンネル。甲子園での勝利を目指す高校球児には、特に守備の弱いチームとかにはあまり喜ばれそうもありませんが、このトンネルの石はトンネルの石といっても、ただのトンネルの石ではありません。税込で500円もします。この前、話題になっていたのは中日本高速道路が発売した 「石貫徹(いしかんてつ)」 という名前の石の缶詰なんですが、これは飛騨トンネルの貫通点で採取したものなんだそうです。両側から掘り進んでいって、最後の発破で、ドカンとトンネルが貫通するわけなんですが、この貫通点の石というのは昔から “石(意志)を貫く” というので、縁起物として重宝されていたらしいんですよね。難関突破という意味もあって、受験のお守りにする人がいるそうですが、その他、安産にも効果があるんだとか。尿道結石の治癒とかにも使えそうですよね。こりゃ、縁起のいい石だ。…というので、細かく砕いてオブラートに包んで飲んだりすると、かえって逆効果なような気もするんですけど。

 どうせ縁起を担ぐんだったら、楽しく美味しく担ぎたいところなんですが、そういう需要に応えたのか、最近では合格祈願のお菓子というのが多く見られるようになりましたよね。ことの発端は2002年に福岡で売りに出された “キットカット” だったと言われております。キットカットを食べて、きっと勝つと。 ま、そういうワケですな。どうして福岡なのかと言うと、きっと勝つと。…というのが何となく博多弁っぽいからなんだそうですが、きっと勝つと言ってるだけなので、キットカットを食べれば必ず勝てるというわけではありません。きっと勝つと思ったのに、負けた。そういうことはよくあります。というか、きっと勝つなどと中途半端な自信で物事に挑んだりすると、思わぬところで足下をすくわれることにもなりかねないんですが、どうせなら、絶対勝つと!…という強い自信を持つか、あるいは、どうせ負けるしぃ。…と、最初から弱気になってたほうが、本当に負けた時にあまりショックを受けずに済んで、気分的には楽かも知れません。その意味で、キットカットはやや中途半端な気がしないでもないんですが、ま、最初から洒落を狙って付けられたネーミングではないので、仕方のないところではあるんですけど。普通に美味しいですしね、キットカット。 セコイヤチョコレートと似ているんですが、セコイヤほどセコい感じがしないところがいいですよね。  で、そのセコイヤチョコレート。 ライバルのキットカットが受験シーズンに飛躍的に売り上げを伸ばしているというのに、手をこまねいて、黙って見ているだけでいいんですかね? とか思っていたら、ちゃんと手が打たれておりました。セコイヤチョコレートで、成功YEAR! そんな商品が売りに出されておりました。この洒落を思いついた時、フルタ製菓の人は心の中でガッツポーズをしたに違いありません。今まで散々、セコイヤチョコレートはセコいや。…と言われて馬鹿にされ、一度は改名も検討したんだけど、ずっとセコイヤのままにしておいて、よかった! 嬉し涙も滲んだに違いありません。 ちなみに合格祈願バージョンのセコイヤは、味を “さくら味” にしたり、五角形のパッケージを作ったりといった工夫も施されているんですが、サクラサクというのは、おめでたい知らせですからね。で、五角形というのは何なのかと思ったら、ライバルと互角に戦えるように…ということではなく、五角=合格という意味合いなんだそうですね。確かにライバルと互角というのでは、かならずしも合格につながるわけではなくて、もしそのライバルがもの凄くアホだった場合、共倒れという事態も考えられます。その点、五角=合格というのは非の打ち所がないんですが、サクラサクの戦術はキットカット陣営も同じ事をやっているので、ちょっとインパクトが薄いですかね?ライバルと互角ではなく、出し抜くためには、セコイヤチョコレート出汁巻き味とか、そういう斬新なアイデアが求められるところです。

 成功YEAR!なんてのはあまりにもセコ過ぎて、さすがはフルタやな。…と思わずにはいられませんが、大手だって負けてはおりません。まずはロッテ。 “めざせ合格!コアラのマーチ” なんてのを発売しております。どうしてコアラなのかと言うのは、ウンコのところで説明しました。ウンが付かないだけ、効果のほうはやや希薄なような気もするんですが、ちなみにパッケージが六角形なのは元々の 「コアラのマーチ」 もそうなので、あまり深い意味は無いのではなかろうかと。元々はユーカリの木をイメージしてあの形にしたらしいんですけどね。 で、ロッテからはもうひとつ、 “めざせ合格!キシリトールガムハンディボトル” というのも出ております。キシリトールで、きっちり通る!そういうことなんだそうですが、キシリトールというのは一度に大量に摂取すると、お腹がゆくるなることがあるので注意が必要です。ま、お通じのほうは確実に、きっちり通ることになると思いますけど。ロッテからはもうひとつ、トッポの特別バージョンで “トッパ” というのも出ておりますが、続いては明治製菓。それにつけてもおやつはカール♪…の合格記念バージョンが、 “ウカール” 。 ウカールで試験に受かーる。軽いコーンスナックだけに、発想もめっちゃ軽い。うすあじ、カレーあじ、チーズあじの3つのタイプがありますが、一番人気はカレー味。カレー味で試験に受かれーという相乗効果が期待出来ます。 明治からはもうひとつ。 “ハイレモン” で志望校に入れるもん♪ 志望校には入れんもん…と紙一重なところがちょっと心配なんですが、カレー味のウカールと一緒に食べればきっと大丈夫。カールとハイレモン、一緒に食べると不味そうではあるんですけど。 続いてはハウス。 “桜咲ック” というのが出ております。 “さくらさっく” ではなく、 “オー・ザック” と読みます。受カルボナーラ味で、受かるボナーラ♪…です。グリコからは “ポッキー” が合格祈願バージョンとして出されております。業界用語で逆さまに読むと “キッポー(吉報)” となります。サクラサクの吉報が待たれるところです。 最後は東ハト。お馴染みの “キャラメルコーン” が合格祈願パッケージとなっております。 キャラメルコーンで、願いをカナエルコーン。 この洒落を思いついた時、東ハトの偉い人は心の中でガッツポーズをしたに違いありません。と同時に、東ハトのあまり偉くない人は、いくら何でもそれはちょっと。…と思ったに違いありませんが、偉い人には逆らえずに企画会議を通っちゃったんでしょうな。独断専横、ここに極まり! ま、カナエルコーンと片仮名で書くからちょっと無理があるように思えてしまうだけで、 “Caramel Corn”“Canael Corn” と英語表記にすれば、普通にパチモンとして通用するレベルだとは思うんですけど。

 とまあそんなことで今日のお話は以上です。特にオチはないんですが、受験生には落ちないのが一番!…ということで。

 えー、オルガン編、まだ手元に3枚ほどネタがあることはあるんですが、前回を持って終了ということにさせて貰おうかと。だって、飽きたしー。 それに何より、オルガンではギャルを呼べないというのがツライですよね。ということで、今週から “ギター編” をお届けしようと思うわけなんですが、いや、ギターでギャルが呼べるのかというと、それも甚だ疑問だったりするんですけど。ロックの世界では花形楽器であるギターも、ジャズに持ってくると左門豊作になっちゃいますからね。左門クンはとってもいいヤツで僕は大好きなんですが、ルックス的にはやはりギャルの間での人気は今ひとつでありまして、そんなギター編はさっさと終わらせてしまおうと思うわけなんですが、とりあえず手始めはケニー・バレルです。かなり男前なので、男前豆腐好きの主婦とかにも人気がありそうなんですが、日本料理のプロというわけではありません。男前なんだけど板前ではない。そういうキャラであるわけなんですが、演奏のスタイルも決して “いてまえ” ではなく、どちらかというと左前だったりするんですが、今日はそんな彼のライブ盤を紹介しましょう。題して 『ケニー・バレル・ウィズ・アート・ブレイキー・オン・ビュー・アット・ザ・ファイブ・スポット・カフェ』 。タイトルだけで、ケニー・バレルがアート・ブレイキーと一緒にファイブ・スポット・カフェにいる姿が見られるのであるな。…ということが判明して、非常に重宝なんですが、あまりにも長ったらしくて面倒なので、世間ではもっぱら 『ケニー・バレル・アット・ザ・ファイブ・スポット』 という略称、もしくは 『ファイブ・スポットのケニー・バレル』 という日本語名で呼ばれております。いいですよね、ファイブ・スポット。その昔、伊勢のほうにそういう名前の “すけべホテル” があったので、一度でいいから行ってみたいと思ってたんですけどね。いや、すけべのほうは別にどうでもいいとして、中でエリック・ドルフィーやブッカー・リトルが熱演を繰り広げていそうなネーミングにソソられるものを感じてしまったんですが、結局、一度も訪れる機会に恵まれることがないまま、そこは “きゃんきゃん” という名前に変わってしまいました。無念です。ま、名前だけで実際のところジャズ的な雰囲気は皆無で、ただスケベなだけのところだったとは思うんですが、このバレルのアルバムは伊勢ではなく、ニューヨークにあるほうのファイブ・スポットで録音されております。昼の部と夜の部の演奏がごちゃまぜになって収録されているんですが、若干のメンバー・チェンジも見られます。バレル以下、ベースのベン・タッカーとドラムスのアート・ブレイキーは固定なんですが、昼と夜とでピアノが変わります。ローランド・ハナボビー・ティモンズ。夜の部には哀愁のテナーマン、ティナ・ブルックスも加わって、面子的には非常にソソられるものがあるんですが、問題はローランド・ハナですな。ローランドゴリラとハナ肇の合いの子のようなこのピアニスト、見た目のむさ苦しさも相俟って、日本ではまったくといっていいほど人気がなかったりするんですが、いや、個人的にどうも好きになれないだけで、日本にも物好きなファンはいたりするのかも知れませんけど。ま、収録曲のすべてが名曲・名演といったアルバムはほとんどなかったりするわけなので、最初から半分はハズレだと悲観的な観測をした上で、では1曲目から聴いてみることにしましょう。

  「イントロダクション・バイ・ケニー・バレル」 。これはアレです。単なるバレルの挨拶なんですが、何故かCDでは1曲目という扱いになっています。 「さんきゅー・べりーまっち」 と謝辞を述べて、 「ばーくす・わーくす」 と演奏曲を紹介しております。そんだけ。バレルという人が基本的に無口なキャラであることが伺えますが、男と “のっぺらぼう” は無口なほうがいいですからね。特に “のっぺらぼう” の場合、口も無いのにあまりペラペラ喋るな!…と言いたくなってしまいますが、バレルの場合、ギターで自分の思いを伝えるということになりますか。カッコよろしいなぁ。僕の場合、無口な上に何の楽器も出来なかったりするので、思っている事の10%も外に吐き出すことが出来なくて、体の中にプリン体が蓄積される一方なんですが、とまあそんなことで2曲目…というか、実質的な1曲目は 「バークス・ワークス」 。ディジー・ガレスピー のオリジナルなんですが、この曲はタイトルがいいですよね。前も後ろも “○ークス” と韻を踏んでいるところが絶妙です。出来ることならあまりウンコは踏みたくないと思っている僕も、韻だけは大いに踏んでみたいと思っているんですが、日本語にすると 「バークの作品」 。 バークというのはいったい誰のことかと思ったら、ガレスピーの本名、ジョン・バークス・ガレスピーの真ん中部分から来ているようなんですが、となると 「バークの作品」 ではなく、 「バークスの作品」 というのが正解ということになりますか。バークススでは頃が悪いので “ス” をひとつ省略しちゃったようなんですが、料理の世界で酢というのは、かなり大切な調味料なんですけどね。例えばウドの酢味噌和えから酢を抜いちゃうと、ただのウドの味噌和えになってその魅力は半減しちゃうし、スイカから “ス” を取ると、イカになっちゃいます。これはいかん事です。でもまあ、曲名からひとつくらい “ス” を抜いたところで、あまり大した問題ではないので、さっさと先に進みたいと思うんですが、これ、ジャム・セッションの定番といっていい曲のひとつだったりしますよね。と言っても、ただ演奏しやすいだけのシンプルで単純なものというわけではなく、ファンキーな味もあるなかなかの佳作だったりするんですが、冒頭で聴かれるティモンズのブルージーなピアノが何とも言えずにいい雰囲気ですな。続いてギターが出てきてテーマのメロディが演奏されるんですが、こりゃ、オクターブ奏法なんすかね? ギターの弦の響き具合が何とも言えずに高山厳で、心凍らされる思いでありますが、アドリブ・パートに入ってからはシンプルにシングル・トーンで弾いておりますな。あまりテクに走り過ぎると 「走れメロス」 みたいになっちゃうので、なかなか賢明な措置だったと思うんですが、渋く淡々とフレーズを紡いでおいて、でもってソロ2番手のティナ・ブルックスにバトンタッチ。 この際、バトンタッチの代わりに、 「ボインにタッチ♪」 とかをやっちゃうと、いや〜ん、まいっちんぐぅ♪…ということになって、 演奏が破綻してしまうことになるんですが、そこはさすが紳士なバレルくん。そんな破廉恥な狼藉に走ることもなく、でもって、ここでのティナのテナー・ソロは何とも枯れた味があって絶妙ですな。せっかくのライブなんだから、もうちょっと気合いを入れても。…という気がしないでもないんですが、そういう周囲の状況はお構いなしに、どっぷりと自分の世界に入り込んでおります。テンションの低いジャッキー・マクリーンがテナーを吹いてるような彼のスタイル、僕は好きです。 続くティモンズのソロはタイコがブレイキーということもあって、ちょっぴり 「モーニン」 を彷彿させたりするところがご愛敬で、その後、バレルとティモンズの絡みでセカンド・テーマみたいなのを演奏するパートがあって、本テーマに戻って、おしまい。何だかちょっと地味なんですが、後になってジワっと効いてくる執拗なボディブロウのような仕上がりと言えるかも知れません。

 続いては 「ハレルヤ」 でありますか。ヴィンセント・ユーマンスが1927年にミュージカル 『ヒット・ザ・デック』 のために書いたナンバーなんだそうですが、はっきり言ってヘンな曲です。これならまだ 『魔法陣グルグル』 のオープニング曲 「晴れてハレルヤ」 のほうがマシなんですが、肩が痛い時、自分で湿布を貼れるや?…というと、これがなかなか難しいものがあって、ちょっぴり苦労しましたな、先週の今頃は。 で、これ、ティモンズ&ブルックス抜き、ローランド・ハナ入りのカルテットによる演奏でありまして、曲があまり好きでない上に、メンバーもソソられないとなると、ハズレの確率が非常に高いですよね。何も期待せずに聴いてみたところ、思ったほどは悪くなかったのでちょっとガッカリしてしまいましたが、 「マイルストーンズ」 を中途半端にしたような4つの音からなるフレーズがバックでしつこく反復られる中、バレルが軽やかにテーマを奏でる様は1バレル=96ドル21セントくらいの価値はあるのではなかろうかと。アドリブ・パートに入ってからも軽快な弾きっぷりは持続することになるんですが、こうして聴いてみると彼もなかなかのテクニシャンだったんですな。少なくとも 『探偵!ナイトスクープ』 でやってた97歳のマジシャンよりはテクニシャンだと思いますが、剣刺しマジックでは助手のオバハンから思わず、 「痛たたっ!」 という声が漏れたりしてましたからね。 で、続いてはハナ君のピアノなんですが、顔だけで毛嫌いしていた自分のことをちょっぴり反省してしまったほど、演奏のほうは普通に大丈夫でした。このハナ君、けっして華のあるほうではないんですが、のっぺらぼうと違って鼻はちゃんとあるし、でもって、出てくる音はかなりパウエルっぽいです。硬派です。少なくともオロナインH軟膏よりは硬いのではないかと思うんですが、柔らかいですからね、軟膏。 後半はちょっぴり前衛っぽくなりかけたりして、油断しているとどこに行っちゃうのか分からない危うさはあるんですが、最後は何とかもとの鞘におさまって、で、続いてはブレイキーのソロですか。じわじわとアフリカの原住民が近寄ってくるような不気味さの感じられる仕上がりとなっていて、 一体いつまでやってるねん?…といいたくなるほど、かなり長くて、しつこかったりもするんですが、ま、ライブだけに思わず彼も張り切っちゃったんでしょう。その割に、ソロが終わった時の拍手が今ひとつまばらなのが気になるんですが、とまあそんなことで、テーマに戻って、おしまい。

 次、 「レディ・ビー・グッド」 。ガーシュインのナンバーなんですが、さほど歌物歌物はしてなくて、どちらかというとぶっきらぼうな感じなんですが、そういうところが逆にウケて、ジャム・セッションではよく取り上げられる事になる曲だったりします。ティナ・ブルックスの入ったクインテットによる演奏なんですが、ユニゾンによるテーマ部ではテナーの音はあまり聞こえなくて、もっぱらバレルのギターが中心になっています。で、ソロ先発もバレル。僕は感情がすぐ顔に出るタイプで、嘘を付くとすぐバレることになるんですが、ここでのバレルは誰にも真似ることが出来ない独自の世界を演じております。どういうところが真似ることが出来ないのかというと、バレルと真似るで韻を踏んでみたかっただけの話で、そこまで深くは考えていなかったんですが、えーと、そうですなぁ。何というか、ギターの響きにエレクトリックなものが感じられるというか…、とか言ってるうちにティナ・ブルックスのソロになりましたが、テンポがかなり速くなっているために、ここでのティナは彼の持ち味であるブルージーさがあまり発揮されているような気がしないでもありません。続くティモンズは黒っぽさを極力抑えて、パウエル派のハード・バッパーとしてこの曲と対峙している感じなんですが、好きな風景画家は原田泰治。そんな素朴さも伺えます。ソロの後半はブレイキーの煽り立てるようなドラミングもあって、オアリイカ的な盛り上がりをみせることになるんですが、その後、バレルがもう一度登場して短いソロを聴かせて、でもって、テーマに戻って、おしまい。

 続いてはバラードの 「ラバーマン」 でありますか。神サマの怒りに触れ、馬とロバと合いの子にされちゃった男、その名も “騾馬マン” 。…って、いや、ラバーマンというのはそういうことではなくて、素直に “恋人” ということでいいと思うんですけど。いつもこの曲が出てくると “ゴム男” というネタになってしまうので、今日はちょっと変化球を投げてみたんですが、個人的にこの歌はけっこう好きです。切ないところがいいです。百均で買ってきたハサミがあまり切れなかったりすると、ちょっぴり切なかったりするんですが、ま、安いから仕方がないんですけどね。 で、このケニー・バレルの 「ラバー・マン」 。 彼がこの曲を演奏したこの晩、とっておきの彼女をファイブ・スポットに連れてきた男たちは皆、彼の音楽のオーラに大いに助けられたに違いない。…などと原文ライナーには書かれておりますが、いいですよね、とっておきの彼女。僕も一度、とっておきの彼女を連れてお洒落なジャズ・クラブとかに行ってみたいと思っているんですが、どうしてもとっておきの彼女を調達出来なかった場合は、 “取っ手付きの鍋” か何かで我慢するとして。 「お客様、鍋のお持ち込みはちょっと。」 …と、やんわり注意されるかも知れませんが、鍋が駄目ならクラスの渡辺くんを連れていくとか。松本ちえこの隠れたヒット曲ですよね、 「クラスの渡辺くん」 。いや、隠れているなら、あまりヒットしているとは言えないような気もするんですが、ティモンズのピアノによるイントロが何とも言えず、いいムードですね。続いてバレルが出てきてテーマを演奏することになるんですが、ギターによるバラードというのはアレですな。バターによるポマードと違って、なかなか雰囲気がありますな。ポマードが底をついたからといって、代用品としてバターを頭に塗ったりするのはあまり賢明な行動とは思えないんですが、ギターでバラードを弾くというのは普通に悪くないです。ただ、ここでのバレルはややテクに走り過ぎている嫌いがないわけでもなくて、もうちょっと訥々とした訥弁スタイルで仕上げたほうがよかったかも知れません。走り幅跳びなんかでも、あまり調子に乗って走り過ぎたりすると、踏み切り線を越えてファールになっちゃいますからね。はやる気持ちを抑えるというのも時には大切なんですが、そこへいくとソロ2番手のティモンズはいいですな。この人も、あまり走り過ぎるとすぐに 「モーニン」 になっちゃう傾向があるんですが、ここでは得意のブロックコードを極力封印した節度のあるプレイに終始していて、秀逸です。ブレイキーのあまり前に出過ぎないドラミングもいいですな。その後、再びバレルのソロに戻るんですが、バックにかすかにティナ・ブルックスの存在が感じられる中、オクターブ奏法を巧みに駆使したプレイは悪くありません。ということで、最後にカデンツァがあって、おしまい。いや、後半は悪くなかったです。

 ということで、ラスト。 バレルのオリジナルで 「36-23-36」 という曲です。何とも意味あり気で、胸毛・鼻毛・耳毛なタイトルなんですが、原文ライナーには、誰がインスパイアしたか詮索したくなるタイトルと演奏…などと書かれていますけどね。僕には何のことやらさっぱり分からんのですが、あるいは “三郎兄さん36歳” みたいな、恐ろしくつまらない意味合いだったりすることも考えられます。 で、曲のほうはすごくシンプルなブルースだったりするんですが、これがなかなかいいムードだったりするんですよね。結局のところ、ジャズというのはブルースに帰着するのかと、改めて実感させられた思いでありますが、ローランド・ハナのピアノも必要十分にブルージーです。3分45秒と、無駄に長くないところも正解でありまして、とまあそんなことで、今日のところはおしまい。


【総合評価】 ライブ盤のわりには何だか地味で渋めなんですが、ま、それだけ出演者も観客もオトナだということなんでしょう。ティモンズ好調、ローランド・ハナ大健闘、バレルは、ま、こんなもんで、ブレイキーは 「レディ・ビー・グッド」 のソロが長過ぎ。が、それ以外のところではきっちりサイドマンに徹していて、さほど耳障りというわけではありません。全般としては、落ち着いたオトナ向けの作品ですな、こりゃ。


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