TOTAL ECLIPSE (BLUE NOTE)

BOBBY HUTCHERSON (1968/7/12)

TOTAL ECLIPSE


【パーソネル】

HAROLD LAND (ts,fl) BOBBY HUTCHERSON (vib) CHICK COREA (p)
REGGIE JOHNSON (b) JOE CHAMBERS (ds)

【収録曲】

HERZOG / TOTAL ECLIPSE / MATRIX
SAME SHAME / POMPEIAN

【解説】 (2007年09月17日更新)

 やあ、みんな!実りの秋だね、おこめだね!おこめおこめおこめおこめおこめおこめおこめおこめ・・・。 ということで、実りの秋がやって来ましたなぁ。 あ、冒頭に書いたのは今を遡ること3年前、いや、5年前、あるいは7年ほど前だったかも知れませんが、ある日、うちの掲示板に突如として現れた “農本能主義者(?)” と名乗る謎の人物の書き込みの冒頭部分なんですが、この後、 “おこめおこめおこめおこめ・・・” というのが、ただひたすら続いておりました。 途中から “おこめ” の “こ” と “め” の順番がひっくり返ったりしてたんですが、そういえば昔、社会科の授業で “COMECON”(経済相互援助会議) という言葉を習ったりしましたよね。 女の子に、 「 “COMECON” の最初と最後の文字を取ると?」 …と質問して、答えさせるという遊びもありましたが、いや、関西地区以外の人には何のことだか分からないかも知れませんけど。 とまあそんなことで、実りの秋がやってきましたが、秋には “おこめ” だけでなく、果物だって実ります。たわわに実ります。タワシとかチワワが、たわわに実ったりはしませんが、ぶどう、梨、栗、リンゴ、柿、イチジクといったあたりが秋にはたわわに実ります。 これはもう、狩りに行くしかないね♪…と、今年の春、突如として狩りに目覚めて狩人になってしまった僕は思ってしまったんですが、僕はこれまで、4月にイチゴ、6月にはサクランボと、次々に獲物を仕留めてきた実績があります。 7月のブルーベリー狩りは猫のクロたんが危篤になってしまったため、残念ながら中止ということになってしまいましたが、こうなったらもう、秋の果物を狩ってやるぅ! 2種類くらい狩ってやるぅ! …ということで、いろいろと計画を立ててみることにしたんですが、先ほど列記した秋の味覚の中では、まず最初に柿が脱落しました。 僕は柿も牡蠣もあまり好きではなくて、ま、 “柿の種” というのはわりと好きだったりするんですが、わざわざ自分でお金を出して、さほど好きでもない果物を狩りにいくというのも何だかアホらしい話ですからね。

 で、続いてイチジクが脱落したんですが、ちなみに僕はイチジクが嫌いではありません。 ま、それほど好きというわけでもなくて、僕の心の中では基本的にどうでもいい果物やな。…といった位置付けにあるわけなんですが、よく考えたら僕は以前、イチジク狩りというのを体験したことがあるんですよね。 いつの事かというと、小学校の5年生頃でしたか。 どこでかというと、日進小学校の裏手あたりなんですが、民家の庭先にイチジクがたわわに実っている木があったので、2個ほどもぎ取って、食べました。 狩り本来のスリルを味わえるという点では、なかなか貴重な体験でありましたが、どうせなら一度も狩ったことがない果物にチャレンジしてみたいところですよね。 となると、ぶどう、栗、梨、リンゴの4種類に対象が絞られることになるんですが、この中で選ぶとなると、やっぱり “ぶどう” ですかね? 栗は狩ってもその場で食べることが出来ないし、梨やリンゴにしたところで、切ったり皮を剥いたりしないと食べられないのが難点です。 リンゴをかじると、歯茎から血が出ますからね、僕。 柔道や剣道が得意な果物はなーんだ? 答え : ぶどう (武道)。…というナゾナゾもあることだし、いや、答え : ぶどう…って、武道が得意とも不得意とも、何とも言ってないような気もするんですが、とまあそんなことで、ぶどう狩りの出来るスポットをいくつか当たってみることにしました。 前回の さくらんぼ狩り が “ハイジの村” とのセット企画だったので、今回は チロルの森 と絡めることにして、長野県の塩尻市というところに行ってみることにしました。 いいですよね、塩尻。 舐めるとちょっぴり塩味がしそうな尻だねっ♪…といった感じで。 どちらかというと “桃尻” のほうがもっとよさそうにも思えるんですが、ま、今回は桃狩りではなくて、あくまでもブドウ狩りなワケだしぃ。

 塩尻でブドウ狩りが出来る農園というのは、ざっと これくらい あるようです。 この中で独自のHPを持っていて、情報を収集しやすいのは 土田園 宮坂園 フモンヂ観光園 原農園 といったあたりでしょうか。 いろいろと比較した結果、名前が今ひとつオシャレで無いという理由で、まず最初に “フモンヂ観光園” が脱落して、最終的には “原農園” というところが残りました。予定日の9月8日(土)の時点で、ブドウと梨の2種類を狩れるというのがポイントだったんですが、僕はどちらかというとリンゴよりも梨のほうが好きだったりするので、ブドウとリンゴの2種狩りではなく、梨のほうを選んだわけなんですけどね。 通常、巨峰狩りではないブドウ狩りの料金は500円で、2種狩りの場合は300円追加との事なんですが、その日はトクトクサービスということで、2種狩りも500円というお値打ち料金になっておりました。 HPの割引券をプリントアウトして持っていけば更に50円引きということで、450円でブドウと梨が食べ放題というのは、めっちゃリーズナブルやん♪…といった感じですよね。 さくらんぼ狩りの時みたいに、料金分の元は取るぞぉ!…と、やっきになって無理に食べる必要もなさそうで、時間制限なし、飲食物持込可、1日ゆっくりとピクニック気分でおこし下さい。…と原農園のサイトにもあるように、割とのんびりしたレジャーであるようです。 ということで、ブルボンのプチシリーズの “えびマヨネーズ” などを持って、塩尻まで行ってみることにしました。

 長野自動車道の塩尻インターを降りるとすぐ、原農園の大きな看板が目に入って来て、まったく道に迷うことなく現地に到着することが出来ました。 山梨の南アルプス市のさくらんぼ農園のように、周囲はのどかな果樹園地帯なのかと思っていたら、塩尻の桔梗ヶ原というところはわりと町中 (まちなか) だったりしたんですが、農園に到着してまず最初に目に入ったのは、大型観光バスも余裕で駐車出来るスペースに設えられた、バカ高い棚の上からぶら下がっている夥しい数のブドウの実。 え? も、もしかしてブドウ狩りって、あんな高いところにある実を狩るんけー? こ、こりゃどうみても地面から5mくらいあるやーん! こんなん、絶対ハシゴから落ちるやーん! 落ちたら脚の骨が折れるやーん! ブドウ狩りというのは高所恐怖症の僕に対する挑戦、もしくは嫌がらせとしか思えないようなレジャーであったのかぁ。…と、愕然としてしまいましたが、450円を払って案内されたのは、逆に腰を屈めないと頭をぶつけそうな低い棚でありましたので、心の底から安堵したんですけど。 入口で黒と赤がツートンになった、デザイン的に今ひとつ意図が掴めないハサミを借りて農園の中に入っていくと、おおっ、ブドウたん、めっちゃいっぱい生ってるやーん♪

ナイヤガラたわわ状況♪

 これは塩尻特産の “ナイヤガラ” という品種なんだそうです。 僕はブドウの中ではデラウエアというのがあまり好きではないんですが、何だか安っぽいですからね、デラウエア。 「でら、ウエアだでかんわー。」 と、名古屋人の間でもあまり評判はよくないそうなんですが、9月の初旬というのはブドウ狩りとしてはちょっと時期が早く、もしかしたらデラウエアしか狩れないんじゃないか?…という懸念があったんですよね。 めずらしい品種を狩ることが出来て、なによりなんですが、特にこのナイヤガラというブドウはすごく香りがいいんですよね。 僕は可愛いだけであまり愛想のないカオリちゃんより、花沢さんのほうが好きだったりするんですが、香りのいいブドウというのはいいですよね。 ブドウ園に入った瞬間、ほわ〜んと幸せな気分になってしまいましたが、それはそうと、ブドウ狩りというのはアレですな。非常に迷いの生じるものでありますな。 いちご狩りなら40個、さくらんぼ狩りなら100個は食べれるので、1個くらいハズレを引いてもすぐに取り戻せるんですが、ブドウの場合は2房くらいが限界ではないかと思われます。特に今回は後で梨狩りも控えているので尚更なんですが、吟味に吟味を重ねて最良の逸品をチョイスしなければなりません。 香りがよくて美味しくて、しかも可愛くて愛想のいい娘を見つけることが出来れば言うことはないんですが、正直、僕ら素人にはどれが美味しいんだか、食べて見なければ分かりません。目安として、ナイヤガラの場合は、色が黄色いほど美味しい。…というようなことが張り紙に書かれていたんですが、色弱の気がある僕には、どれも同じくらいの黄色さにしか見えないんですよね。 こうなればもう、見た目の可愛さで勝負するしかないんですが、ざっと見渡して愛想のよさそうな娘を手にとって、赤黒のハサミで、ちょきん♪

 園内にはベンチとゴミ箱替わりのバケツが設置させているんですが、そこに腰を下ろしてナイヤガラを一粒房からちぎって、皮なり口の中に入れてみると…、ああん、甘くて、おいちい♪ 特に皮と身の境目あたりが美味しいような気がするんですが、皮は食べられないと思われるので、外に出してバケツに捨てるとして。 で、実の部分だけをじっくりと味わってみると、ああん、酸っぱい。。。 中に小ぶりな種が3〜4粒ほど入っているんですが、それを排除しようとすると、口の中に酸味が広がってくる感じです。 欧米人はブドウの種を外に出さずに、そのまま食べちゃう。そうしたほうがブドウの酸味を感じずにすんで、おいちい♪…という話を何かの本で読んだことがあるんですが、確かにそれは正しいような気がします。 が、僕には無理です。子供の頃、ブドウの種を飲む込むと盲腸炎になるという話を聞いたことがあるし、それが迷信だったとしても、飲み込んだ種は消化されないそうなので、排出される際、出口付近のデリケートな粘膜に傷が付いちゃう恐れがあります。切れ痔になったらどうしてくれるねん!? また、排出させずに胃の中に留まって、そこで発芽するという恐れも考えられなくはないですよね。 来年の春あたりに口の中から葉っぱが出てきて、ドカベンの岩城みたいになったらどうしてくれるねん!? …といった懸念があるので、僕は律儀にブドウの種を外に出して食べていたんですが、途中で面倒になって3粒くらいは飲み込んじゃったんですけどね。 とまあそんなことで、ナイヤガラは完食♪ 続いて、濃い紫色をしている “キャンベルアーリー” という品種を食べてみました。赤黒のハサミで、チョキンと切って、ベンチに腰を下ろして一粒房からちぎって、皮なり口の中に入れてみると…、ああん、甘くて、おいちい♪ けどやっぱり、種のあたりは酸っぱい。。。 でもまあ、ただ甘いだけのブドウというのは味覚的に飽和して、すぐに飽きちゃうような気がしないでもないので、適度に酸っぱいブドウのほうが量は食べれるかも知れませんね。 ただ、いずれにせよ、甘いか酸っぱいかのどちらかであるには違いないので、ここで気分を変えてブルボンの “えびマヨネーズ” を食べてみることにしました。 久しぶりの塩気が実に新鮮で、ああん、めっちゃ美味しい♪ “ブドウと海老マヨ” というのは、 “ウナギと梅干” や “カニと氷水” に取って代わる新しい食べ合わせとして定着するのではないか思うんですが、味付けや食感の違うせんべいを間に挟んだお陰で、ブドウ、もう一房イケるかも?…という気がしてきました。

キャンベルアーリーかレッドナイヤガラか、どっちか忘れた♪

 農園の中を見回すと、またちょっと違ったタイプのブドウが実っておりました。 “レッドナイヤガラ” という品種なのではないか?…というのが、棚から吊り下げられた張り紙によって確認されたんですが、その紙にはちょっと気になることも書かれておりました。 「まだ食べられません」 。 えーっ、そうかぁ? どう見ても普通に食べられそうやーん。 どうせ高い品種のブドウで、450円の料金で食べ放題されたらかなわんというので、そうやって書いてるだけなんやろ!? 39歳になって、すっかり性格が疑り深くなってしまった僕は農園の人の目を盗んで、こっそりレッドナイヤガラを狩って食べちゃったんですが、デラウエアと巨峰を足して2で割って、ちょっと酸っぱくしたような味わいでありまして、ああん、美味ちい♪ こりゃ絶対、食べれらないなどという事はありません。 勇気を出して狩ってみて、本当によかった♪ …ということで、“ブドウの部” のほうはすっかり満足したので、続いては “梨の部” に移動することにしました。

梨たんの実り状況♪

 赤黒のハサミを返却して、その替わりにあまり切れなさそうな果物ナイフを借りて、梨園のほうに入っていくと、おおっ、こちらもたわわに実っておりますなぁ♪ ちょうど前日に台風9号が関東地方を直撃した影響で梨の実がいくつか落ちていて、ちょっと可愛そうな気もしたんですが、狩人に情けは禁物です。 450円も払ったんやから、問答無用で狩ったるでぇ! 「食べられません。」 と書いてあっても、食ったるでぇ! ま、幸いにも梨園のほうにはそのような張り紙はなかったので、袋をかぶせてないヤツであれば自由に狩って食べてもよさそうなんですが、梨というヤツは熟れているのかそうでもないのか、今ひとつ見分けのつかない果物でありますなー。 見るからに実がちょっと小さめで、手で触ってみてもかなり硬かったりするので、これ、食べれるのか?…と、ちょっと心配になってしまったんですが、とりあえず狩ってみることにして。 梨というのはちょうど手の届くあたりに生っていて、何の道具も使わずに簡単にもぎ取ることが出来るんですが、そうして自分の手で収穫した梨たんを、葉っぱのついたままテーブルの上に置いてみると、ああん、可愛いっ♪ めっちゃ可愛いっ♪ 何だか食べちゃうのが可愛そうになってしまうんですが、でも食べちゃうんだもんねー! おまけにナイフで切っちゃうんだもんねー!

葉っぱのついた可愛い梨たん♪

 農園で貸してくれたナイフは安全性に考慮したのか切れ味が今ひとつでありまして、梨を切らずに皮だけ剥いて丸かじりしている人が多かったんですが、そんなこともあろうかと思って、僕はマイ・ナイフを用意しておりました。(←銃刀法違反?) まだちょっと硬い梨たんに刃を立てて、エイっ!…とばかり力を入れると、スパン!…と綺麗に2つに切れるんですが、その時、かなりの水分が滴ります。 あ、そうそう。この農園ではマナ板の貸し出しサービスが無かったので、切らずに皮だけ剥いている人が多かったんだと思うんですが、僕はそういう事態を想定して、“おしゃれキャットマリー” のランチマット (?) のようなものも用意していたんですよね。 さすが、さば君♪…といったところでありますが、それにしても採りたての梨というのは、えらく水気があるものなんですなー。 宇能鴻一郎風に言うと、あたし、たちまち感じてしまって、ジュンとあふれてしまったんです。…みたいな? まだちょっと硬そうに見えたんですが、十分に食べ頃であると言えそうですね。 そんな梨たんを八つに切って、皮を剥いて、口の中に入れてみると…、ああん、美味ちい♪ ちょっと生ぬるいところが難点なんですが、ま、“人肌” だと思っておけばいいわけで、もう甘くって、瑞々しくって、めっちゃ美味ちい♪ 僕はすっかり味をしめて、2人目にまで手を出してしまったんですが、今度のは少しばかり未熟な感じでありましたな。 水分だけはたっぷりあるんですが甘さのほうは控えめで、まだ “青い果実” といった感じだったんですよね。 あなたが望むなら、私、何をされてもいいわ、いけない娘だと、噂されてもいい♪…って、いや、そこまで覚悟を決めているんだったら、僕は遠慮なく食べちゃいますけどー。

 たった450円で “禁断の援助交際気分♪” まで味わえる、そんな楽しいレジャーなのでありました。 おしまい。

 とまあそんなことで今日はボビー・ハッチャーソンなんですが、何でもいいけどハッチャーソンって、ちょっと変わった苗字ですよね。 アメリカにも、あまり同姓の人はいないんじゃないですかね? 日本なら似たようなのに “あばれはっちゃく” というのがいるんですが、暴れ者で、はっさくが好き。…といった感じの “あばれはっちゃく” に対して、ハッチャーソンのほうはわりとクールな印象がありますよね。 日本ではもっぱら “ボビ・ハチ” という略称で呼ばれているんですが、ハッチャーソンだけに子供時代のあだ名はおそらく “はっちゃん” だったのではないかと思われます。あるいは “みなしごハッチ” とか。 僕はハッチに出てくる “キザタローくん” というキャラがけっこう好きだったんですが、とまあそんなことで、今日は 『トータル・エクリプス』 というアルバムを紹介したいと思います。 顔が具志堅用高なハッチャーソンが煙草をくわえているヤツ。…と言えばピンとくる人もいるかもしれませんが、あまりブルーノートらしくないデザインのジャケットが災いしてか、日本での評価は今ひとつのような気もします。 チック・コリアハロルド・ランドが入っているというのも、ちょっと微妙だったりしますよね。 何となくギャルにウケがよさそうという、ただそれだけの理由で僕はチック・コリアを毛嫌いしているんですが、一方、ハロルド・ランドのほうはかなり好きな部類のテナーマンだったりするんですけど。 ただ、ランドという人はバリバリのハード・バッパーというイメージがあって、ボビ・ハチの新主流派風のスタイルとは今ひとつマッチしないような気がしないでもなくて、そこのところがちょっぴり懸念材料だったりするんですが、とりあえずまあ、1曲目から聴いてみることにしましょうか。

 まずはハッチャーソンのオリジナルで、 「ハーゾグ」 という曲です。 “HERZOG”。 変なタイトルですな。こういう変なタイトルの曲に関しては、ライナーノートに何らかの言及があるはずなんですが、えーと、どれどれ。英語なので、何だかよく分かりませんな。輸入盤を買うとこういうところが不便だったりするんですが、とりあえずググってみたら、ハルツォク・ジャパンという精密機器メーカーや、ジャック・ヘルツォーグという建築家の名前が出てきたりしたので、 「ハーゾグ」 ではなくて 「ハルツォク」 、もしくは 「ヘルツォーグ」 と発音するのが正解なのかも知れません。そういえば原文ライナーには “German duke” という文字も見られたので、あるいはドイツの公爵の名前なんすかね? 公爵というのはすぐに講釈を垂れたりするので、僕はあまり好きではなかったりするんですが、小癪なヤツだったりする場合も少なくないですしね。 が、このハルツォク公爵、もしくはヘルツォーグ公爵というのはわりとクールでモーダルなキャラだったようでありまして、テナーとヴァイブのユニゾンで演奏されるテーマは、いかにも新主流派っぽくて、悪くありませんな。 決して分かりやすい作風ではなく、かなり込み入ったメロディ・ラインだったりするんですが、いかにも60年代やん。…といった感じがするところは大いに評価してもいいと思います。 で、ソロ先発はチック・コリアなんですが、いや、これはアレですな。 今までロクに聴いたこともない癖に、イメージだけで馬鹿にしてたりしていて、ゴメンな!…と、思わず謝りたくなってしまうほど、なかなかの出来でありますな。 ピアノのタッチにまったく黒さは感じられないんですが、フレーズそのものはマッコイ・タイナーに近かったりしませんかね? 単なる思い付きだけの発言なので、もしかしたら、 「しねえよ!」 の一言で切り捨てられてしまうかも知れませんが、僕にはなんとなく、そんな風に聞こえました。 で、続いてはハッチャーソンのソロなんですが、この人のプレイというのはアレですよね。 ミルト・ジャクソンとは対照的にソウル臭が希薄だったりしますよね。 そういう点では、チックとの相性も結構いいかも?…という気がしないでもないんですが、クールでありながら、けっこうテクニシャン。 そういうところに都会のギャルはコロっとイカレちゃうのかも知れませんね。

 で、続いてはテナーの出番ということになるんですが、ソロが始まった瞬間、僕は、ん!?…と思ってしまいました。 『完全ブルーノート・ブック』 のレビューには、コルトレーン・イディオムを見事に消化したベテラン、ランド…などという記載が見られたりするんですが、確かにコレはアレですね。 ここでのランドは見事なまでにコルトレーン・イディオムを消化していますよね。 僕の胃や腸はコーンや “ひじき” を消化しきれずに、たまに原形を保ったまま排出されたりすることがあるんですが、そこへ行くとランドは立派ですよね。よっぽどコルトレーンをよく噛んでから飲み込んだんですかね? けど僕は、ブラウン=ローチで活躍していた頃の純正ハード・バッパーなランドのほうが好きだな。…という意見もあろうかとは思いますが、僕はバビハチやチッコリと共演してもまったく違和感のない、おっさんながらに頑張っているランドの姿勢を評価したいと思います。 とまあそんなことで、テーマに戻って、おしまい。 次です。2曲目です。アルバム・タイトル曲の 「トータル・エクリプス」 です。 “ECLIPSE” というのは確か日蝕や月蝕なんかの “” という意味ではなかったかと思うんですが、虫が食うと書いて、むしばむ。わかりやすいですよね。食べることを“食む (はむ)” とも言いますもんね。 ハムを食む。…とか。 僕はハムが好きなので、ハムを食む食むするとムハムハな気分になるんですが、 “トータル・エプリプス” というのは総合的に蝕まれるわけなので、“皆既食” とか、そういった意味になるんでしょうか? 皆既食だけに怪奇色の強い、かなり陰気な感じの作品だったりするんですが、ハロルド・ランドがスローなテンポで陰々鬱々とテーマ・メロディを吹いていたりします。いやあ、これは何だか気が滅入りますなぁ。。。

 が、影に隠れた月や太陽もやがては姿を表すことになるわけで、ランドのブロウは次第に力強さとガッツ一抹の希望の光を感じさせるものへと変化していって、いや、これはアレですな。 コルトレーンのスピリチュアルさと、ウエイン・ショーターのミステリアスさとが、ないまぜになったような世界でありますな。 ちょっぴり小難しくはあるんですが、そういうところがいかにも60年代やん。…といった感じがして、個人的には嫌いではありません。 続くハッチャーソンのソロは、ヴァイブの無機質な響きがなんとも言えずに宇宙的でありまして、音を色で表現するなら、まるで真空世界へと吸い込まれていきそうな、深い深い群青色。…といったところでしょうか? 続くチックはソロは、色で例えるならビリジアン。 お前、足が遅いから、かけっこでいつもビリじゃん。…と、少年時代の悲しかった思い出が蘇ってくるような色だったりするんですが、絵の具を見ながらいつも、普通に “緑” でエエやん。…とか思ってましたけどね。 それにしてもチックの弾くピアノって、何だかエレピみたいなトーンだったりしますなぁ。 ま、それはそれで、別にいいとは思うんですけどね。 とまあそんなことで、最後に再び陰鬱なテーマに戻って、月や太陽がまた雲隠れしてしまったような雰囲気になったところで、おしまい。

 3曲目はチック・コリアのオリジナル、 「マトリックス」 です。 「アソビックス」 なら、朝日町にあるレジャー施設だよね。…というので何となく意味が分かるんですが、映画のタイトルにもなっている “MATRIX” というのは、分かっているようで、よく分かってない単語ですよね。 ということで、調べてみました。 「マトリックス」 。 片仮名に変換されただけでした。いまひとつ使えませんな、Excite 翻訳 。 仕方が無いので普通に辞書で調べてみたら、母体、基盤、鋳型、数学でいうところの “行列”、もしくは配列といった意味のようなんですが、なるほど。言われてみれば確かに、ちょっと行列っぽい感じの曲だったりしますよね。 ヴァイプとテナーのユニゾンに、ピアノが絡んでくる感じで演奏されるテーマは、さほどモーダルというわけではなく、斬新なように聴こえて、根っこは結構オーソドックスだったりするのかも?…といった気がしないでもなくて、何とも表現しにくい作風だったりするんですが、悩んでいる間もなく、すぐにアドリブが始まってしまうほどシンプルで短いものだったりするので、あまり深くは考えないことにして。 チックの代表作 『ナウ・ヒー・シングス・ナウ・ヒー・ソブス』 でも演奏されているようですが、僕は持っていないので、よく分かりません。 いずれにせよ、こちらのハッチャーソン盤のほうはソロ先発がハロルド・ランドなんですが、相変わらずのモーダルな吹きっぷりで、おっちゃん、なかなか気を吐いておりますなぁ。 あまり張り切って気を吐かれるのも、ちょっとウザくて迷惑だったりする場合もあるんですが、ま、ゲロを吐かれるよりは遥かにマシなので、ここはひとつ温かい目で見守ってあげようではありませんか。 で、続いてはハッチャーソンのソロでありますか。 かなりのアップ・テンポなんですが、その一糸纏わぬマレット捌きは見事の一言でありまして、いや、“一糸纏わぬ” ではなくて、“一糸乱れぬ” ですか。 いくらテクニシャンだとは言え、最低限、パンツくらいは纏うのが社会人としての礼儀ですからね。 いずれにせよ、ソロの終盤、ボビハチのヴァイブとジョー・チェンバースのドラムスが激しく絡み合うシーンが壮絶にしてエキサイティングだったりするんですが、続くチックのソロもなかなかのハイ・テンションだったりします。 ま、最後のほうは結構、お間抜けなフレーズも出てたりするんですが、とまあそんなことで、テーマに戻って、おしまい。 いやあ、なかなか強烈な “行列” でありました。

 いやあ、なかなかに熱い演奏でありましたが、 上諏訪の湖畔公園の足湯 も熱かったですな。 ぶどう狩りの帰り、諏訪湖に沈む夕日を見たくてちょっと立ち寄ったんですが、いや、天気が今ひとつで夕日のほうは一瞬しか見れなかったんですけど。 で、この足湯、40人くらいは足を浸けることが出来そうな規模の大きなものだったんですが、なかなかな人気のようで端っこのほうの席しか空いておりませんでした。 みんな、ごく普通の顔をして足を浸けているので、僕もすっかり寛いだ気分になって湯の中に足を入れてみたんですが、熱っ!めっちゃ熱っ!! どうやら、湯が流れてくる一番上流側というロケーションが災いしているようで、かなりの高温だったりするんですよね、これがまた。 僕よりさらに上流側にはあと3人ほどが座れそうなスペースがあったですが、ここにやって来る人たちは皆、嬉しそうな顔をして腰を下ろし、期待に満ちた表情で湯の中に足を入れ、 「熱っ!めっちゃ熱っ!!」 という声を上げて、やがて去っていってしまうのでありました。 どうりでここの席だけ空いているワケなんですなー。 やがて、オバチャン3人組がやってきて、同じように足を湯に浸けようとしたんですが、 「湯、熱いやろか?」 と、かなり警戒している様子だったんですけどね。 隣に座っていた僕は心の中でほくそ笑み、そのオバチャンが 「熱っ!めっちゃ熱っ!!」 という声を上げるのを、今か今かと待ち構えていたんですが、無造作に熱湯の中に足を突っ込んだオバチャンは一言。「あ、大丈夫や〜♪」 え、マジかよ!? その声を聞いたツレのオバチャンたちも次々に湯に足を浸けて、「あ、ホンマや〜♪」 オバチャン、恐るべしっ!! …ということで、4曲目です。 ハッチャーソンのオリジナル、 「セイム・シャイム」 。 いや、 “SAME SHAME” とはこれまた、韻を踏んだなかなかいいタイトルを付けたものですが、“SHAME” というのは “” といった意味なんすかね? 「同じ恥」 ? いずれにせよ、恥ずかしい話というのはよほど厚かましいオバチャンでない限り、あまり大きな声では言えなかったりするんですが、そういう事情に考慮したのか、スロー・テンポの静かな感じの作品に仕上がっております。 テナーとヴァイブのユニゾンというか、微妙にハモっているようでもあるテーマ部に続いて、ハッチャーソンのソロが登場するわけなんですが、微妙にボサノヴァ風だったりするリズムに乗って、なかなか爽やかな世界が展開されておりますな。 演奏が進むに連れてテンポも速くなり、ボビハチのヴァイブ・プレイも次第に熱を帯びてくることになるんですが、足湯というのもこういう感じがいいと思うんですけどね。 いきなり熱湯というのではインパクトが強過ぎるんですが、ま、オバチャンはぜんぜん平気みたいでしたけど。 続くランドのソロもなかなかの熱演ぶりでありまして、で、最後を飾るチック・コリアは、わりとクールな感じだったりするんですが、中盤あたりはそれなりに頑張ったりしていて、とまあそんなことで、最後は静かなテーマに戻って、おしまい。 いや、地味な曲なのかと思っていたら、中盤あたりはなかなか盛り上がっておりましたな。

 盛り上がっていると言えば、諏訪の 間欠泉センター も、まずまずの人出だったんですが、1日に数回、50mの高さまで熱湯と水蒸気が噴き出すんだそうで、いや、それほどの高さまで噴出しているようには見えなかったんですけど。 その日はたまたま、ちょっと体調が悪かったんですかね? 自然の力で噴出するわりには、10時00分、11時30分、13時30分、15時00分、16時30分、17時30分 (4月〜9月のみ) とショーの時間がきっちり決まっていて、今ひとつ素性が怪しいような気がしないでもありません。 僕が行った時はちょうど17時30分の最終回だったんですが、5分くらいの間に、ぶわーっと噴き出しては引っ込み、また噴き出しては引っ込む。…というのを数回繰り返しておりました。 こ、これは写真に撮らなければ!…と思ったんですが、リュックの中からカメラを出すのに手間取っているうちに、すっかり噴出しなくなってしまいました。 建物の中から女の人が出てきて、噴出し口のところを蓋を閉めて、そのまま去っていってしまいました。 あれはおそらく “間欠泉女” と呼ばれる職種の人だと思うんですが、なるほど、必要な時にだけ蓋を開けて噴出させるという、そういうシステムになっていたんですなー。

 とまあそんなことで、いよいよラストです。 このアルバムは全部で5曲しか入っていないので、途中に適宜、観光ネタを入れるなどしてここまで持たせてくたんですが、最後を飾るのはハッチャーソンのオリジナルで、 「ポンペイアン」 という曲です。 「ポンペイの人」 とか、そういった意味ではないかと思うんですが、ありましたよね、ポンペイ。 ナントカ火山の大噴火で埋まっちゃったんでしたっけ? 家も埋まった。人も埋まった。馬も埋まった。…という、何とも悲劇的な話でありますが、いや、この曲が本当にポンペイと関係しているのかどうかは、定かではないんですけど。 ワルツ・タイムの、なかなかプリティなメロディを持った曲なんですが、ハロルド・ランドがテナーではなく、フルートを吹いているところがポイントでありますな。 おかげで何となく牧歌的な雰囲気になっていて、馬が埋まっちゃったような悲劇性はあまり感じ取れませんね。 で、テーマこそちょっぴり童謡風なんですが、ソロ先発のハッチャーソンのプレイはあくまでも硬派にしてクールでありまして、最初は3拍子だったリズムも、途中から病死しちゃいそうなフリー・スタイルに転じてしまったりしております。 ハッチャーソンのアルバムには1曲から数曲、実験的なフリージャズ風の演奏が必ず入っていて、この実験は失敗に終わったな。…と思わずにはいられなかったんですが、今回はそれを最後に持ってきちゃいましたかぁ。 ヴァイブ・ソロの後、チェレスタみたいな音の楽器 (あるいは振動を極限まで抑えたバイブラフォン?)  が出てきて、その後、テーマのメロディが出てきたので、わりとあっさりした演奏やったな。…と、すっかり安心してたんですが、その後はマリンバとフルートとリズム・セクションが縦横無尽に暴れ回る、問答無用のコレクティブ・インプロヴィゼイションと化しておりました。  マリンバが出てくるとヤバいんですよね、これがまた。 とまあそんなことで、最後はまるで何事もなかったかのように牧歌的なテーマに戻って、最後の最後に、またもやしつこく集団即興演奏が繰り広げられて、で、最後の最後の最後にまたテーマ・メロディが出てきて、とまあそんなことで、今日のところは以上です。

【総合評価】 最後の最後でちょっと印象が悪くなってしまったんですが、4曲目までは概ね良好でありました。BN4000番台のウエイン・ショーターとか、フレディ・ハバードとか、ハービー・ハンコックとか、そういう路線が好きな人なら間違いなく楽しめるでありましょう。 クールなチックと、モーダルなランドも悪くありません。 顔こそ具志堅用高になっちゃいましたが、ハッチャーソン、まだまだイケます。


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