JAZZ’N SAMBA (IMPULSE)

MILT JACKSON (1964/8/6,7)

JAZZ'N SAMBA


【パーソネル】

JIMMY HEATH (ts) MILT JACKSON (vib) RICHARD DAVIS (b) CONNIE KAY (ds)
TOMMY FLANAGAN (p) <#1-4>
BARRY GALBRAITH (g) <#5-9> HOWARD COLLINS (g) <#5-9>
LILLIAN CLARK (vo) <#5,8> JOE E.ROSS (vo) <#6>

【収録曲】

BLUES FOR JUANITA / I GOT IT BAD AND THAT AIN'T GOOD
BIG GEORGE / GINGERBREAD BOY
JAZZ 'N' SAMBA / THE OO-OO BOSA NOOVA / I LOVE YOU
KISS AND RUN / JAZZ BOSSA NOVA

【解説】 (2007年09月09日更新)

 “飴と鞭” という言葉がありますよね。一般にドイツ帝国の鉄血宰相ビスマルクによる政策を評価したものであると言われておりますが、 “飴” には利益、 “鞭” には暴力、強制といった意味が込められていると言われております。いやあ、 Wikipedia の丸写しですな。 ここでは “飴” が楽しいこと、嬉しいことの代表とされ、一方の “鞭” はツライこと、嫌なこと、苦しいこと、痛いことの象徴とされているわけなんですが、世の中には飴が嫌いな人だっているだろうし、鞭で打たれることに快感を覚える人もいるそうですが、かつて、“鞭” というのは教育に欠かせないものだと思われておりました。「教鞭を振るう」 という言葉からも、教えるためにはやっぱり “鞭” やろ?…という思想が感じられるわけですが、確かに “飴” ばかりを与えて甘やかして育てると、将来、ろくでもないワガママな大人に成長しちゃいそうですもんね。 虫歯にもなりそうだしー。 ま、砂糖の変わりにキシリトールを使った飴なら虫歯の心配はあまりないのかも知れませんが、キシリトールには一度に多量に摂取すると、 お腹がゆるくなるという副作用があります。 ま、ゆるくなるくらいなら、いっかぁ。…と思って、僕なんかついつい一度に多量に摂取してしまって、案の定、急性の下痢に襲われたりするんですが、それならそうと、「 お腹がゆるくなる。」 などといったソフトで婉曲な表現はやめて、はっきり 「めっちゃ下痢します。」 と書いて欲しいところですよね。 ちなみに僕は大量にモナカを食べても、お腹がゆるくなったりします。 普通のモナカは大丈夫なんですが、アイスモナカは駄目です。 普通のアイスは冷たいから用心してあまり食べ過ぎることがないから大丈夫なんですが、アイスモナカの場合は、なまじ皮の部分があまり冷たくないものだから、ついつい油断して一度に多量に摂取してしまうんですよね。 羊の皮を被った狼というか、飴の皮を被った正露丸というか、最初、甘い言葉ですっかり油断させておいて、後で強烈なしっぺ返しを食らわされることになる “正露丸トーイ” みたいな奴がいちばん始末が悪いと思うんですが、 ということで今日は “” について考えてみたいと思います。題して、“雨の日は飴チャンをしゃぶって♪” 。 ま、別に晴れてようが雲っていようが、飴チャンなんてのは天候に関わらずしゃぶっていいものだとは思うんですけど。

 僕の記憶に残っている最古の飴は “有平糖” ということになるでしょうか? 小学校でマラソン大会などの苦行系の行事が行なわれた場合、その参加賞が “有平糖2個” とかではなかったかと思うんですが、まさに昔の小学校というのは組織ぐるみで “飴と鞭” の教育を実践していたと言えそうです。 組織ぐるみと言えば、これは組織的なものではなく、とある教師の個人的な行為だったと思うんですが、僕が小学3年生だった頃の担任は出口先生という名前のオバチャンでありました。 このオバチャンは何だかちょっと怖くて、児童の間では不人気だったんですが、「出口先生はちょっと怖いから嫌や!」 …と、父兄にチクられるという事態を恐れたんでしょうか、父兄参観日の直前になって、児童に “乾燥クルミ” のお菓子を振舞うという行為に出たことがありました。 組織ぐるみが駄目なら、今度は乾燥クルミで。…という魂胆なんでしょうが、この行為によって、「出口先生はちょっと怖いけど、わりとエエところもある。」 と好感度がアップして、父兄参観のほうも荒れることなく平穏に執り行われることになったので、その懐柔効果は絶大であったと言えるでしょう。いやあ、世の中、やっぱり “飴” ですなぁ。 ちなみに参加賞の有平糖のほうは、ただ甘いだけで大して美味くもないやん。…というので、人気のほうは今ひとつだったんですが、大して美味しくもないのに、何だか懐かしい味と言うことになると、僕の場合は “カンロ飴” ということになりますか。 婆ちゃんが好きだったんですよね。 相撲取りの麒麟児が大好きだったこの婆ちゃんと名古屋まで相撲を見に行ったりすると、おやつは決まって “カンロ飴” 一辺倒だったんですが、今でも元麒麟児の北陣親方の顔を見ると、口のなかにカンロ飴の味が蘇ってきたりします。 飴なのにあまり甘くない独特のフレーバーだったりするんですが、アレは一体、何を表現しようと目論んでいるんですかね?…というのが気になったので、ちょっと調べてみたんですが、 オフィシャルサイトの商品案内 を見て、愕然としました。醤油味やったんかいっ!!

 そんな僕が最近ちょっとハマっているのが明治の “チェルシー” なんですが、いや、子供の頃からけっこう好きだったんですけどね。「けっこう仮面」 と同じくらい好きでした。 小学校の遠足のおやつと言えば、明治のチェルシーに、ロッテのグリーンガム、明治のカルミン、アポロチョコ、それに全珍の “イカの姿フライ” というのが定番でしたなぁ。 メーカー別でいうと明治の割合が60%を占めていて、かなりの明治党であったことが分かるんですが、 “ヨーグレット” とかも好きでしたしね。 ヨーグレットを食べ過ぎると、ようグレると言われたりもしましたが、これまでグレることもなく、真面目なままオトナになる事が出来ました。有り難いことです。 そんな僕もコドモの頃は、チェルシーはヨーグルトスカッチに限るよね♪…とか思っていて、バタースカッチとコーヒースカッチは頑なまでに拒み続けて来たんですが、ちょっとクドかったり、苦かったりしますからね、バタースカッチとコーヒースカッチ。 苦味を楽しむには苦味ばしった中年になる必要があるし、クドさを受け入れるには、自らがクドい性格のおっさんになる必要があるので、コドモのうちはなかなか難しかったりするわけなんですが、お陰さまでそんな僕も少しはオトナになりました。 コーヒーとまではいかないまでも、“強い子のミロ” 程度には苦味だって出てきたし、クドさのほうだって同じネタを2度、3度と使うだけでは飽き足らず、9度くらいは使い回しちゃうほど、クドいキャラへと成長することが出来ました。キシリトールの下痢ネタとか、かなりしくこく書いてますもんね。 そんなこんなで最近は、チェルシーのバター味やコーヒー味もけっこうイケるよね?…と思えるようになって、もっぱら3つの味が楽しめる袋入りの “チェルシーミックス” のほうを買って楽しんでいるわけなんですが、この袋入りチェルシーには各季節ごとの限定バージョンがあるというのも嬉しいところです。 先日、マックスバリュ輪之内店で “秋のデザートミックス” という新作を見掛けたのでさっそく買ってみたんですが、今度のは “洋なしのコンポート” “モンブラン” “巨峰のムース” という3つの秋のスイーツが楽しめるようになっております。

  いいですよねぇ、洋なしのコンポート。 コンポートというのがいったいどういう食べ物なのか、今ひとつよく分からんのですが、僕がコーンポタージュがけっこう好きなので、コンポートだってきっとイケると思うんですよね。 で、もうひとつの巨峰のムースだって悪くありません。 ムースというのがどういうものなのか寡聞にしてよく知らないんですが、僕はけっこう “天むす” が好きなので、巨峰のムースというのも大丈夫だと思います。 名前からすると、巨峰を蒸すんですかね? ま、モデルになったスイーツの正体がいかなるものであろうと、チェルシーになった状態ではどちらも大変に美味でありましたので、細かい詮索はヤメにしておきますが、ここで問題になってくるのは “モンブラン” でありますな。 こちらのほうの素性は既に明らかになっていて、スポンジ台の上に生クリームとスパゲティを乗せて、最後に栗の甘露煮をトッピングするという、そういう作りのケーキであるわけですが、君はモンブランが好きかな? 僕はですね、まあまあです。 誰かがお土産に買ってきたケーキが “モンブラン” オンリーだったりすれば、気の利かないyたっちゃな。…と思いつつ、食べてみるにヤブサカではないんですが、モンブラン以外にも選択肢があれば、絶対に選択はしない。 僕にとってはそういう位置付けのケーキだったりします。 洋菓子なのに、上に麺類が乗っているというのがいいよね♪…というところがセールスポイントであるにも関わらず、食べてみたらちっともスパゲティではなくて、ただの栗のクリームみたいなものであることが判明して、愕然としちゃうところがどうも好きになれません。 ま、わりと聡明な僕は、ウニャウニャの部分が栗のクリームみたいなものであるというのを既に学習してしまったので、最近では愕然とする度合いも徐々に薄らぎつつはあるんですが、それにしても栗のケーキを飴チャンにしちゃうという発想はどうなんすかね? 栗味の飴なんて、あまり聞いたことがないような気がするんですが、ま、醤油味の飴もあるくらいなので、それよりはマシなような気もするんですけど。

 で、結果的にどうだったのかと言うと、いや、意外と美味でありましたな、モンブラン味。 口に入れた瞬間、こりゃ、栗やな!…としか言いようのない味がして、続いて、じわーっとミルクの風味が広がってきます。スパゲティの味はしません。 秋チェルシー、3つともイケるぢゃん♪…ということが判明したわけですが、同じように季節ごとに限定品を出してくる飴チャンがあります。 ロッテの “小梅” のシリーズがそれなんですが、春に出てくる“小春”だとか、夏に出される“小夏”なんてのがあります。 同じ名前でも毎年違った味で出ているようなんですが、ちなみに今年の “小春” はあんず味、 “小夏” のほうは早摘みレモン味でありました。 いいですよねぇ、早摘みレモン。何だか凄くフレッシュで、瑞々しいイメージがあるんですが、青い果実という感じがロリ好きにはたまりません。 いや、熟女フェチ向けの “遅摘みレモン” というのも悪くないとは思うんですけど。 で、春と夏はこのネーミングでいいとして、秋と冬はどうするんだ?…というのがちょっと気になっていたんですが、 “小秋” や “小冬” というのは、ちょっと語呂が悪いですからね。 で、どうやら冬のほうは “小雪” という名前に逃げたようなんですが、そして先日、マックスバリュ養老店で、今年の秋バージョンを発見しました。 “小彩” という名前でした。 ちょっと苦しいような気がしないでもないんですが、数年前からそうと決まっていたようなので、今さら僕の力ではどうすることも出来ません。 黙って受け入れようと思っているんですが、オフィシャルサイトに 商品情報 が掲載されておりますな。

 みんなが食べたい味アンケート第1位の “洋なし味”! いや、これはちょっと意外ですな。 イチゴとか、ミカンとか、メロン、パイナップルといった回答ならまだ分かるんですが、“洋なし” というのはちょっとマニアック過ぎやしませんかね? 果物業界の順列で言うと、イチジクや、ザクロや、アケビよりはちょっと上?…といったレベルではないかと思うんですが、秋の味覚に限定しても、ブドウやリンゴ、あるいは柿といったところに負けているように思われます。 ま、旧バージョンが “蜜入り林檎味” みたいだったのでそれは除外するとして、書き味のいいボールペンというのはあっても柿味の飴というのはあまり聞いたことがないし、となると、ブドウと梨と洋梨くらいしか選択肢が無かったのかも知れませんけど。 かつて洋梨などという果物は、お菓子や飲料水の業界ではチェリオの “梨洋(なしひろし)” というジュースくらいしか見かけなかったような気がするんですが、今年はチェルシーの “秋のデザートミックス” にも採用されているし、“大人のトッポ・キャラメルムースのラ・フランス風味仕立て” なんてのもあるし、最近はちょっとしたブームだったりするんでしょうか? ロッテの場合、多量の洋なし果汁の不良在庫を抱えるような事態に陥ってしまったとか。 ちなみに僕は日本の梨はかなり好きなんですが、洋物の梨というのはさほど好きではありません。 皮を剥いて八等分した状態だとリンゴだか何だか分からなかったりするんですが、リンゴだと思って食べたら、歯応えも何もないグニャっとした食感だったりして、拍子抜けしてしまうところが好きになれません。 ま、最初から洋梨だと自分に言い聞かせて食べるのであれば、ちょっと桃みたいな味がする梨やな。…といった感じで、それなりに美味しいとは思うんですけどね。

 とまあそんなことで小彩ちゃんの洋なし味なんですが、いや、意外と美味しかったです。 この “小梅” のシリーズは飴の真ん中にペーストと呼ばれるグニャっとした食感の物体が入っていたりするんですが、そのグニャっとした感じがいかにも洋なしライクでいいよな♪…という気がしました。 ところで君は飴チャンを最後まで舐めきる派かな?それとも途中で噛んじゃう派かな? 僕は断然、途中で噛んじゃうほうの派閥でありまして、飴を舐めていて体積にして5分の3から7分の4くらいになると、ええい、噛んだれ!…という加虐的な気分に駆られて、思わずバリバリと噛み砕いてしまうんですが、何個か続けて食べる場合は次第に面倒になってきて、口の中に入れた途端に噛んじゃうこともあります。 飴にもいろいろな種類があって、例えばチェルシーなんかはわりと脆い感じで、噛むと気分よく断片化してくれるんですが、中には噛むと歯のほうが欠けちゃうものとか、ミルキーみたいに奥歯の詰め物が取れちゃうようなものもあったりして、注意が必要です。 そこへいくと、この “小梅” のシリーズは中のペーストを飴の殻で囲ったような外骨格構造をしているので、噛んだときの食感が独特で、楽しいんですよねー。 さすがに、いきなりというのは歯に与えるダメージが大きいので危険なんですが、しばらく舐めて、殻の部分が薄くなってきたところで、おもむろに奥歯に力を入れて噛むと、パリっと割れて、中のペーストがグニャっと出てきて、ああん、おいちい♪ 主なターゲットは、女子高校生〜主婦を想定…ということで、39歳のおっさんが食べることはまったく想定されてないようなんですが、そんなことはお構い梨に、いや、お構い無しに、めっちゃおいちい♪ で、この小彩ちゃん、通常の小粒タイプの他に、1袋に2つだけ大玉タイプの小彩ちゃん (大彩ちゃん?) が入っているんですが、これがまた嬉しいんですよね。 39歳のおっさんが食べても口の中がいっぱいになっちゃうくらいの大玉なんですが、「ああん、大き過ぎて、お口に入らないのぉ♪」 と声に出しながらナメナメすると、より一層、趣が深まります。女子高校生〜主婦の皆さま、是非一度、お試しのほどを♪ とまあそんなことで、今日のところはおしまい。

 ということで、今日はミルト・ジャクソンです。前回に紹介した M.J.Q. でもヴァイブを叩いておりましたが、 M.J.Q. のミルト・ジャクソンと、それ以外のミルト・ジャクソンとは、別物。…というのが定説となっているので、このコーナーでも分けて取り上げることにしております。  M.J.Q. のアルバムが前回分を含めて3枚目のレビューだったのに対して、ミルト・ジャクソンのほうは今回が5枚目ということで、僕はどちらかと言うと “それ以外” のほうが好きだったりするんですが、こちらのほうが彼本来のソウルフルな持ち味がよく発揮されていますからね。 よく、 M.J.Q. のほうは“タキシードを着た演奏”などと表現されるんですが、それに対して自分のリーダー作では “フリチンのプレイ” を堪能出来ると言われております。 あ、フリチンというのはちょっと行き過ぎですか。 “普段着のプレイ” でしたかね? さすがに普段着がフリチンというのはちょっと問題なので、せめてパンツくらいは穿いて欲しいところなんですが、とまあそんなことで、今日は 『ジャズ・ン・サンバ』 という1枚を紹介したいと思います。 いいですよねぇ、「ジャズとサンバ」 。 少なくとも 「ジャズとサンマ」 よりはいいよな?…という気がするんですが、僕は秋の味覚の代表格とされているサンマというのがあまり好きではないんですよね。いくらアンケートの結果が第1位になったとしても、来年の “小彩” はサンマ味とかにはして欲しくないところなんですが、ちなみに最近、事務所にいる時に誰かと一緒にランチを食べに行く店が、中華料理の 「一番楼」 か 「さんま」 かに限定されつつあります。 「さんま」 というのは正式な名称ではなく、本来は漢字四文字の何やら難しい名前が付けられているんですが、誰もそれを覚えてはいなくて、メニューにサンマ定食とかのある店なので、「さんま行こか?」 みたいに使われていたりするんですよね。 そう言われても、サンマがあまり好きではない僕はあまり気乗りがしなかったりするんですが、変に反対意見を述べて、職場環境に波風を立ててもいけないし、サンマ定食以外にも豚のしょうが焼き定食とかがあったりするので、別に大きな問題ではないんですけど。

 で、この 「ジャズとサンバ」 なんですが、その名の通り、ジャズとサンバが演奏されております。 ジャズとサンバが演奏されているというか、ジャズとサンバを融合したボサノヴァっぽい音楽が演奏されているというか、もう少し正確に言うと、レコードで言うA面のほうは純ジャズが演奏されていて、B面のほうがジャズとサンバの融合風だったりするんですが、どちらのサイドにもテナーのジミー・ヒースが参加したりしております。 どうしてジミー・ヒースなどという地味な人が出てくるのかというと、恐らくジミー君がパーシー・ヒースと兄弟だからなんだと思うんですが、ミルトとパーシーは M.J.Q. で同じ釜の飯を食った仲なので、その兄弟とも仲良くなったということなんでしょう。 そのパーシー君のほうはこのアルバムには参加していなくて、恐らくこれは M.J.Q. 色をなるべく払拭しようという意図ではないかと思われます。 無論、ジョン・ルイスなんかは仲間に入れてあげないわけなんですが、何となく仲が悪そうな感じがしますもんね、ジョン・ルイスとミルト・ジャクソン。 人畜無害そうなコニー・ケイだけはとりあえず取り込んでおいて、でもって、ピアノにはトミー・フラナガン、ベースにはリチャード・デイヴィスを持って来たという、なかなか興味深い布陣が組まれております。…というのがA面の “ジャズの部” のメンバー。 で、B面ではとりあえずトミ・フラだけを仲間外れにして、その変わりにバリー・ガルブレイスハワード・コリンズという2人のギタリストを引き入れて、ボサノヴァ色を強めようとする意図の感じられる構成となっております。曲によってはリリアン・クラーク、もしくはジョー・E・ロスという人のヴォーカルもフィーチャーされているようです。 とまあ、いかにもメジャー・レーベルらしい商業主義が感じられて、硬派なジャズ・ファンからは思いきり馬鹿にされそうな1枚ではあるんですが、とりあえずまあ、1曲目から聴いてみることにしましょうか。

 まずはミルトのオリジナルで 「ブルース・フォー・ホアニータ」 という曲です。 レコーディングの日が姪の誕生日だったのでミルトが彼女のために書いた曲。…と、大村幸則クンが日本語ライナーに書いておりますが、そうですか。ミルトのおじちゃん、誕生日プレゼントに曲を書いてくれましたかぁ。「ミルトのおじちゃん、ナルトしかくれなかったのぉ。。。」 というのに比べれば、たいへん記念に残る贈り物ではないかと思うんですが、貰ってもあまり嬉しくはないですからね、鳴門巻き。 で、このホアニータちゃん。名前から推測すると、ほあ〜んとしていて、ニタっと笑う。そんなタイプの女の子ではないかと思うんですが、曲のほうはごく普通のシンプルなスロー・ブルースとなっておりまして、ま、曲名なんか別にどうだってよかったんでしょうな。 たまたま姪っ子の誕生日だったから、こりゃ、ちょうどいいやぁ。…みたいな軽いノリではなかったのかと思われます。フラナガンの弾くブルージーなピアノのイントロが絶妙でありまして、ヴァイブとテナーのユニゾンで演奏されるテーマ部も実にいい感じの仕上がりとなっております。 僕は泥臭いブルースとか、かび臭いズロースというのがあまり好きではないんですが、ヴァイブという楽器だとわりと都会的に聞こえたりしますよね。トミ・フラのあまり黒くはないけど真っ白でもない、ねずみ色のピアノ・スタイルも適役だと思います。ちなみにサバ家では猫のクロたんが死んでしまって以来、天井裏に潜んでいたネズミが人前にまで姿を表すようになってしまったんですが、先日、階段の下のところで遭遇したネズたんは、確かにネズミ色をしておりました。ピンクとかだったらちょっとラブリーかな?…という気もするんですが、ネズミ色のねずみというのはあまり可愛くなくて、いけません。 で、ソロ先発のミルトがブルージーでスインギーなアドリブを展開して、続いてはジミー・ヒースのテナー・ソロでありますか。 この人はアレですよね。粘り気のないデクスター・ゴードンみたいなスタイルの持ち主で、フレージングが実に教科書的だったりするところに特徴があるんですが、という話はクドい性格の僕が今までにも9度くらいは書いたことがあるような気もするんですが、ここでの彼は幾分ワイルドだったりして、悪くありません。 で、最後はフラナガンが手堅く綺麗にまとめて、でもって、テーマに戻って、おしまい。 ぜんぜんサンバちゃうやん!…と言いたくなるような、ノーマルなハード・バップでありますな、こりゃ。

 続く2曲目はデューク・エリントンの 「アイ・ゴット・イット・バッド・アンド・ザット・エイント・ゴッド」 という曲です。この人はアレですな。 「イット・ドント・ミーン・ア・シング・イフ・イット・エイント・ゴット・ザット・スウィング」 といい、どうやら韻を踏んだ長いタイトルを付けるのが好きなタイプの人のようなんですが、いちいち 「アイ・ゴット・イット・バッド・アンド・ザット・エイント・ゴッド」 とフルネームで書くのはあまりにも面倒なので、 「アイ・ゴット・イット・バッド」 までで、以下は省略されることのほうが多いです。 「スウィングしなけりゃ意味ないね」 みたいな分かりやすい邦題がないので日本での知名度は今ひとつなんですが、直訳するなら 「私はそれを悪くしました、そして、それは良くはありません。」 ということになりましょうか? ほら、悪くしたんなら、良くはないやろ。…という気がするんですが、この内容を的確に表現する邦題というのはちょっと思いつきませんね。 「アイ・ゴット・イット・バッド」 をそのまま音訳して、 「愛子と伊藤、罵倒」 とでもしておきますかね? …といったタイトルの問題はさておいて、何とも言えない綺麗な旋律を持った曲なので、僕はけっこう好きだったりするんですけど。 フラナガンの弾くブルージーなピアノのイントロに続いて、ミルトが優しくテーマを演奏するわけなんですが、激しいだけがヴァイブじゃないんだね♪…ということを改めて感じさせてくれる彼のバラード・プレイが僕はけっこう好きだったりします。 そのままアドリブ・パートへと流れていって、で、最後にテーマの再現部に戻ったのか戻らないのか、よく分からないまま終わってしまうんですが、2分40秒という、ほんのちょっとした小品でありますな。ここではジミー・ヒースはお休みとなっていて、かなり M.J.Q. 色の強い1曲であると言えるかも知れません。

 ということで、次です。ミルト・ジャクソンのオリジナルで、 「ビッグ・ジョージ」 という曲です。 「偉大なジョージ」 というのは誰のことなんすかね? 普通に考えれば山本譲二あたりが最有力候補ではないかと思うんですが、ライナーノートによると、どうやらジョージというのは義父の名前らしいんですけど。 義父がジョージで、義母が宜保愛子。そういう家族構成なのかも知れません。 2曲目で愛子と伊藤を罵倒したと思ったら、3曲目では義父を偉大だと持ち上げたりして、複雑な家族関係が窺われる曲の構成となっておりますが、ジョージ君のほうはスウィンギーなナンバー。モーダルな部分とコーダルな部分との対比を生かした印象的な曲で、ジミーの滑らかなフレイジングが光る。…と、日本語ライナーに書かれているような作品に仕上がっております。 対比というのは大切な概念ですよね。 おいしい農産物には堆肥が欠かせないように、素敵なジャズには対比が必要です。 で、このジョージ君はというと、確かに大村幸則クンが指摘している通り、テーマ部はマイルスの 「ソー・ホワット」 をそっくり裏返して、ちょっぴり御陽気にしたような感じで、なかなかモーダルだったりしますよね。 で、これはAABA形式の作品なんですが、 “Bの部” に入ると急にコーダルになったりして、なるほど、確かにこれは対比だよな。…という気がしますよね。 で、ソロ先発のミルトのプレイはまるっきりコーダルだったりするんですが、続くヒースは意外とモーダルだったりして、ここでも対比の精神は活かされております。 で、最後はフラナガンが手堅く綺麗にまとめて、でもって、テーマに戻って、おしまい。 ま、無難な出来ではなかったかと評価していいのではないかと思われる、そんな1曲ななおでありました。

 4曲目はジミー・ヒースの有名なオリジナル、 「ジンジャー・ブレッド・ボーイ」 でありますな。 タイトルは 「生姜パン少年」 ではなくて、何か特別な意味があったような気がするんですが、以前に一度、調べたことがあったような気もするんですけどね。 が、既にすっかり忘れてしまったので、もう一度調べてみることにしたんですが、ありました。 こんなん でした。何か以前に調べたものとは違った結果が出たような気もするんですが、僕はこの曲がさほど好きではなかったりするので、あまり深くは考えないことにして。 そもそも、どうして僕がこの曲のことをあまり好ましく思っていないのかというと、ちょっぴり前衛風で、意味不明だからなんですが、ブルースなのに不思議とブルース臭のない曲…などと日本語ライナーには書かれているんですけどね。 本当にブルースなのかという点については、僕はちょっぴり懐疑心を抱いているんですが、曲の出来はどうあれ、さすがは自分で作った曲だけのことはあって、ソロ先発に抜擢されたヒースのテナー・プレイはなかなかのものでありますな。 スインギーでドライブ感があって、 “さばぴょんのうきうきドライブ・秋の味覚狩り編♪” といった感じなんですが、あ、昨日、塩尻のほうまでブドウと梨を狩りに行ってきたので、来週はその話をしようと思っているんですけど。 で、続くトミー・フラナガンのソロもなかなかにノリがよかったりするんですが、最後はソウル・ブラザーのミルト君がきっちりと締めてくれて、でもって、テーマに戻って、おしまい。 以上で “ジャズの部” は終わりです。

 ここでムードが一転して、5曲目はアントニオ・カルロス・ジョビン作曲の 「ジャズ・ン・サンバ」 でありますか。 いいですよねぇ、ジョビン。 少なくとも尿瓶 (しびん) よりはいいよな。…という気がするわけなんですが、いかにもボサノヴァやな。…といった感じがするギターのイントロに続いて、リリアン・クラークというお姉さんの歌が登場するという仕掛けになっております。 ところでジョビンに 「ジャズ・ン・サンバ」 なんて曲、あったっけ?…と思っていたら、何のことはない 「ソ・ダンソ・サンバ」 と同じ曲だったりするんですが、ただ、歌詞のほうは違います。 「そ、だんそ、さんば、そ、だんそ、さんば、ばいばいばいばいばい♪」 にあまりにも慣れ親しんだ身には、 「あ、じゃずんさんば、あ、じゃずんさんば、へいえうああんあら〜ん♪」(後半はかなり適当。) という歌詞が違和感アリアリで、どうもピンと来ないんですが、ま、慣れてしまえばこれはこれで、こういうものだと思えるようになるのかも知れませんけど。 で、ヴォーカルに続いて登場するジミー・ヒースのテナーがあまりにもスタン・ゲッツなので、思わず笑ってしまいましたが、いや、改めて聞きなおすと、確かに普通にジミー・ヒースだったりするんですが、で、続いてミルトのごく短いソロがあって、お姉さんの歌に戻って、おしまい。 ジャズとして聴くにはあまりにも物足りないと言わざるを得なくて、ま、ボサノヴァだと思って聴けば、なかなか豪華なメンバーによる伴奏やな。…というので、それなりに楽しめると思うんですけど。

 で、続いては 「ジ・ウー・ウー・ボサ・ヌーヴァ」 という曲です。 名アレンジャー。マニー・アルバムの書いたユーモラスなボサ・ノヴァ。…ということなんですが、そうそう、そういう名前の人、いますよね。 僕はマニー・アルバムのアルバムは1枚も持っていないんですが、そういう名前の人がいるというのは知識として持ち合わせております。 で、この曲、テーマ・メロディをジミー・ヒースが吹いているんですが、先ほどはスタン・ゲッツだったヒースが今度は思いきりデクスター・ゴードンになっていて、めっちゃ笑えますなぁ。これほどまで脱力したヒースというのは、そうそう聴けるものではありません。 で、曲の途中に 「ウーッ、ウーッ!」 という、たいへん耳障りな声が入るところが曲名の由来なんですが、マンボでも岐阜の長良川でもないのに 「ウーッ!」 というのが何とも場違いなので、出来ればやめて欲しかったと思います。アルバム君の猛省を求める次第でありますが、AABA形式のテーマの “Bの部” を2人のギタリストに委ねるなど、アレンジにはそれなりに工夫の跡も窺えますし、ミルト、ヒースと続くソロも、短いながらもそれなりに悪くない出来だとは思います。とまあそんなことで、テーマに戻って、おしまい。 ちなみにこのアルバムに参加しているジョー・E・ロスという人は、「ウーッ、ウーッ!」 という奇声と、最後に聴かれる喋りみたいなパートだけが担当部署だったようで、それ以外の出番はありません。今日も一日、お仕事、お疲れさまでしたー♪

 で、次。コール・ポーターの 「アイ・ラブ・ユー」 。 本来、これはボサノヴァの曲ではないんですが、ジャズの世界ではラテンのリズムで料理されることが多く、で、このミルト君のヴァージョンは実に見事なジャズ・ボッサへと変貌を遂げておりますな。 もうちょっと下品な感じのラテンにされることが少なくないんですが、こういうしっとりとした持って行き方というのもあったんですね。ブラジルにもこんな上品なギャルがいたのか!…と、目からうろこが落ちた思いでありますが、ブラジリアン・ビキニとか、おしとやかなギャルにはあまり似合いそうもありませんからね。 そんなお国柄でこのようなスクール水着系のサウンドが聴けるというのは新鮮な感動でありますが、お姉さんの歌やら、おっさんの奇声やらを排除して、おまけにジミー・ヒースもここでは1回お休みとなっているので、ミルトのヴァイブ・プレイを心ゆくまで堪能することが出来るというシステムになっております。いや、いいですな、これ。 で、続いては 「キス・アンド・ラン」 という曲です。 いいですよね、キス。 天麩羅とかフライにするとたいへんに美味なんですが、キスの天麩羅を食べた後にチュウをすると、唇がアブラまみれになったりするでしょうな、恐らく。 アブラぎった中年であると相手に誤解を与える恐れがあるので、キスを食べた後のキスは注意する必要がありますが、何でもいいけど、いい曲ですよね、これ。 ヴァイブによってイントロとテーマの最初の部分が演奏された後、ジミー・ヒースのテナーがそれを引き継いで、その後、再びヴァイブが出てきて、リリアン・クラークの歌に引き継がれるという流れなんですが、ということで、ラストです。  「ジャズ・ボサ・ノヴァ」 。 ミルト・ジャクソンのオリジナルなんですが、何とも取って付けたようなタイトルでありますな。 取っ手のない鍋というのはとっても不便なので、取って付けたような取っ手でも無いよりはマシなんですが、ジャズのオリジナル曲のタイトルというのも無いとちょっと困るので、適当に付けておいたといった感じでありますな。 ま、ネーミングのほうは適当なんですが、曲そのものは実にしっかりしておりまして、ブルースをボサ・リズムに乗せたミルトならではのグルーヴィなボサ・ノヴァ。このアルバム全体を象徴するような1曲だ。…と、日本語ライナーに書いてある通りの仕上がりとなっております。 テーマ部は控えめな感じのテナーと、普通に頑張っているヴァイブとのユニオンによって演奏されておりまして、でもって、ソロ先発はミルトでありますか。 たいへんに馥郁としたプレイでありますが、続いて登場するジミー・ヒースは控えめだったテーマ部からは一転して、かなり自己主張の激しいソロを展開しております。 ま、言いたいことがあったらその場で発散したほうが、鬱憤を内に溜め込んじゃうよりは精神衛生的にも健康的だと思うんですけどね。発散、いい事ダヨ。…と、モロッコのハッサン国王も言っておりましたが、とまあそんなことで、わりと適当な感じのテーマの再現部に戻って、おしまい。 ということで、今日のところは以上です。

【総合評価】

 「ジャズ・ン・サンバ」 ? これまた、何ともショボい企画を。…と、最初はかなり馬鹿にしていたんですが、中身のほうは意外と充実しておりました。 前半がジャズ面、後半がボッサ面と、はっきり区分したところが勝因だよね。…と、吉田松陰も言っておりましたが、思い切ってコンセプトを前面に打ち出したことが、結果的にはよかったように思います。 いいぞぉ、ミルトぉ♪


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