REEDS AND DEEDS (MERCURY)

ROLAND KIRK (1963/2/25,26)

REEDS AND DEEDS


【パーソネル】

ROLAND KIRK (ts,strich,manzello,fl,siren)
VIRGIL JONES (tp) HAROLD MABERN (p) WALTER PERKINS (ds)
CHARLES GREENLEA (tb) <#2,5-8> ABDULLAH RAFIK (b) <#2,5-8>
TOM McINTOSH (tb) <#2,5-8> RICHARD DAVIS (b) <#2,5-8>

【収録曲】

REEDS AND DEEDS / HAY RO / THIS IS ALWAYS / SONG OF THE COUNTRYMEN
LIMBO BOAT / LONESOME AUGUST CHILD / LAND OF PEACE / WALTZ OF THE FRIENDS

【解説】

 初滑りに行ってまいりました。毎年、百日紅(さるすべり)の花が咲く頃になると、今年の初滑りはどこにいこうか?…と気もそぞろになり、鶏のそぼろを食べたりすることになるんですが、いや、百日紅の花というのがいつ頃に咲くものなのか、園芸に興味のない僕にはよくわからんのですけどね。真夏の花なんすかね?ま、それはともかくとして、今年の初滑りは軽井沢プリンスホテルスキー場ということになりました。で、ついでに鹿沢スノーエリアというところに行って、富士の裾野のスノータウン・イエティというところまで足を延ばしてみたんですが、ま、詳しい話はスキー場ガイドのほうに書くことにして。で、今回はですね、北軽井沢にある ブルーベリーYGH というところにお泊りすることにしたんですけどね。 “YGH” というのは “ヤンキー・ギャル・ホステスさん” の略ではなく、えーと、確か “ユース・ゲスト・ハウス” か何かの略だったと思うんですが、ま、早い話がユースホステルがゲストハウスになったものというか、料金はちょっと高めなんだけど、その分、設備のほうが充実しているというか、ペンション並みに立ちションをしてはいけないというか、いや、普通のユースなら立ちションをしてもよいというワケでもないんですが、とにかくまあ、そういうものであるわけですな。そもそもユースホステルというのはどういうものなのかと言うとですね、若くてヤングで健全な青少年のための相部屋を原則とした会員制宿泊施設といったものなんですが、最近では若くてヤングで健全な青少年のみならず、“元・若くてヤングで健全な青少年だった人達” の利用も増えているんだそうです。あ、ここで言う “元・若くてヤングで健全な青少年だった人達” というのは、グレて不良に走って健全ではなくなってしまった青少年という意味ではなく、相変わらず健全ではあるものの、若くもヤングでも無くなってしまった中高年という意味でありまして、ま、言うなれば、人前でヤングジャンプとかヤングマガジンを読むにはちょっと抵抗を感じるようになって、でも “ぺヤング・ソース焼きそば” は好きっ♪…という、微妙な年頃の人達であります。かく言う僕も36歳にして突如としてユースに興味を持つようになったんですが、ま、ソースもユースも似たようなものだと思うしー。

 そもそも僕が初めてユースを利用しようと思ったきっかけについては、ま、 ここ を見て貰うとして、で、今回の “ブルーベリーYGH” が2回目のユース利用でありました。いやあ、ここはよかったですな。ヤンキー・ギャル・ホステスさんこそおりませんでしたが、とっても可愛いヤング・ガール・ヘルパーさんがおりましたし、料理もとっても美味しかったです。このユースのオフィシャルHPには “ブルーベリーの御飯” という記事があって、僕は初めてそれを見たとき、 “栗ごはん” とか “豆ごはん” なんかの類型で、ブルーベリーを炊き込んだ御飯なのか?…と思って一瞬ひるんでしまったんですが、あ、ブルーベリーというのはユースの名前なんですよね。いかにも北軽井沢らしいラブリィでキュートなネーミングだと思うんですが、ただオッサンが口にするにはちょっぴりこっ恥ずかしいような気がしないでもありません。「ぼく、昨日、ブルーベリーに泊まったのぉ♪」…と、目をキラキラさせながら熱く語るようなオッサンがいたとすれば、そういう人とは一緒に 「赤い風船」 のAランチ (ちくわの磯辺揚げ定食) を食べたくはねーな。…と思ってしまいますが、ちなみにブルーベリーの外観とお部屋の中はこんな感じでありました。

ぶるーべりーの外観っ♪ ぶるーべりーのお部屋っ♪

 ああん、ブルーベリー色をしていて、とってもキュートなのぉ♪…と思ってしまいましたね。ブルーベリー色というのは実際はもうちょっと濃い色なのかもしれませんが、そこまでリアリティを追及する必然性はまったく無いわけなので、このくらいの色でちょうどいいと思います。あ、そうそう。 “ブルーベリーの御飯” のところで書くのを忘れておりましたが、アツアツの白いゴハンの上にブルーベリージャムをのせて食べるというのは意外に悪くないかも知れませんね。少なくとも、見た目としては海苔の佃煮のようなものだと思うしー。で、お部屋の中もですね、たいへん小奇麗にまとまっておりました。YGHの場合、個室や家族部屋を設けているところが多く、このブルーベリーにもそういう部屋はあるんですが、僕が泊まったのはドミトリーでありました。ドミトリーというのはあれですよね。水洗ではない便所のことであります。…って、それはドミトリーではなくて、汲み取りですな。ドミトリーというのはあれです。相部屋のことです。ドミトリーのどの部分が“相”で、どの部分が“部屋”なのかはよくわからんのですが、ニワトリだったらニワの部分が“庭”で、トリの部分が“鳥”だから、わかりやすいんですけどね。とまあそれはともかく、僕が泊まったのは4人部屋でありまして、オシャレなベッドが4つと3人掛けくらいのソファが1つ、それに椅子が1脚とテレビとビデオというのが主な備品でありまして、そして各部屋にはユニットバスが完備されておりました。これであと、藤山寛美さえ完備されていれば完璧だったんですが、4人部屋なのに藤山寛美を完備したりすると、残り3人分しか寝るところがなくなってしまうので、やむを得ないような気もするんですけどね。ま、藤山寛美はソファで寝てもらうことにすればいいだけの話なんですけど。ちなみにドミトリーではありますが、部屋の便所は汲み取りではなくて水洗でありました。ま、ユニットバスで便所が汲み取りというのは、あまり聞いたことはないんですけど。

 ちなみに僕がチェックインして2階に上がっていくとですね、廊下のところのソファーに1人の青年が腰を下ろして本を読んでいるところでありました。何かこう、相部屋というシステムに溶け込めない、そういうキャラの青年なのだろうか?…と思いつつ指定された部屋に入っていくと、そこには先客のおっさんが1人おりました。いや、ああ見えて意外と実年齢は若いのかも知れませんが、とにかくまあ、そのような微妙なお年頃の人がいたので、型どおりに挨拶を交わして、ま、ユースでまず最初に話すことと言えば、「どこから来ました?」というのと、「(交通手段は)何で来られました?」という2点くらいのものでありまして、それに補足して、「今回はスキーの初滑りにやってきた。」…ということを告げて、その時点で話すべき会話はすべて終了してしまいました。いや、なんだかこういうのって、ばつの悪いものでありますなぁ。先客のほうも居たたまれなくなったのか、やがて部屋を出て行ってしまったんですが、それと入れ替わるようにして例の読書青年が入ってまいりました。話を聞くと、部屋に入ったら先客のおじさんにいきなり“おねえ言葉”で話しかけられ、しかも4つあるベッドのうち、いきなりすぐ隣のベッドに来られたので、貞操の危機を感じてしまった。…とのことでありまして。「ユースというのは、ベッドは奥から順番に詰めるシステムなんですかね?普通ならなるべく間を空けたいと思うんですけど。」…と質問されたんですが、ユース経験が極めて浅い僕にはそのあたりの事情はよくわかりません。そういうシステムであるような気もするし、あるいは微妙な年頃のおじさんに何らかの下心があったような気もするし。とりあえず僕がやって来て、そのおじさんと2人きりで一つの部屋で一夜を過ごすという事態だけは避けられて、心の底から安心した様子でありましたが、その後、バイク青年もやってきて、その部屋の定員はけっきょくのところ満員ということになりました。この部屋に限らず、この日は全般的に盛況でありましたな。夫婦者やら家族連れなどもいて、とっても賑やかなのでありました。宮川旅館のぜんぜんユースらしくない放置主義も悪くはなかったんですが、ここに来て初めて、これがユースなんだぁ♪…ということを実感した次第であります。

 で、スタッフのギャルを含めてみんなで楽しく美味しいお食事を頂いたあと、希望者を集って 「近くの温泉に行く集い」 という催しも行われました。先述のとおり、各部屋にはユニットバスが完備されているんですが、便器のすぐ横でパンツを脱ぐというのはちょっと。…と抵抗を感じる人が多いのか、かなりたくさんの人が参加を希望しました。ま、どうせ便器の前で、というか、便器の上で用を足す際にはパンツを脱がないと大変なことになってしまうので、たとえ便器のすぐ横でパンツを脱いでみたところで、さほど大きな問題ではないような気もするんですが、せっかくだから僕も温泉ツアーに参加させて貰うとして。もう少し人数が少ない時はちょっと遠くの温泉まで行くこともあるようですが、この日は希望者が多かったので近くの “地蔵川温泉” というところに行くことになりました。どういうところなのかと思ったら、要はこれ、ホテルの温泉の外来入浴なんですな。ユース宿泊者は100円引きになるとは言え、入浴料金は通常800円と、決して安くはありません。ユース利用で宿泊費を安く済まそうと思っている人は、便器の横の湯船で我慢しておいたほうが無難でありますな。ただ温泉入浴の後には、天気さえよければ 「星空を見るツアー」 というのも行われるので、700円くらいはケチらないほうがいいかも知れませんね。いや、実際、こんなに綺麗な星を見るのは、小学校の頃にテレビのアニメで 「巨人の星」 を見て以来?…というくらい、実に綺麗に見えてましたからね。ギャル連れの人には是非ともお薦めしたいところでありますが、ただ時期によっては半端じゃないくらい湯冷めするので、注意が必要ですけどね。もっとも地蔵川温泉の効能は絶大でありまして、その夜はかなりの冷え込みだったにも関わらず、ぜんぜん大丈夫だったんですけど。

 で、夜の9時半からはお菓子や手作りデザートなどを食べながらの “お茶会” でありますな。シャイで無口は僕はもっぱら聞き役に徹しておりまして、ヤング・ガールなヘルパーさんと、もうちょっと親密になりたかったなぁ。…と、ちょっぴり残念な思いはしたものの、ま、ビジネスホテルの部屋にこもって、ただひたすら “すけべビデオ” を鑑賞しているよりは有意義だったかな?…と。何だかこう、青春してるって感じがしましたもんね。とまあそんなことで、設備・お食事・ヘルパーさんの質などを含め、全般的にはかなり満足のいくユースだったんですが、唯一残念だったのが “お茶会” の時の品揃えでありましょうか。 「うまい棒」 が “めんたい味” しかないやん!次回は是非、“サラミ味”と“テリヤキバーガー味”も取り揃えておくことを所望して、今日のお話はおしまい。

 とまあそんなことで、今日はローランド・カークです。今日は 『リーズ・アンド・ディーズ』 というアルバムを紹介したいと思います。僕の持っているCDは国内盤なんですが、これにはちょっと余計なことがしてありますな。余計なことというのはアレですよね。例えば、せっかく人通りのない暗い夜道でギャルにガバっと襲い掛かろうとしているのに、夜警が出ていて、余計やん!…みたいな。いや、ギャル側の立場からしてみれば、ぜんぜん余計なことではないんですけどね。で、このCDに施されている余計なことというのは、曲順を勝手にいろっているということなんですが、いや、もしかしたら “いろう” という言葉は方言なんすかね? “さわる” というのとは微妙にニュアンスが違っていて、要するに “いろう” わけなんですが、 “いらう” と言う場合もありますな。で、このCD、オリジナルのアルバムとは曲順を入れ替えてあるようなんですが、いや、よく見たら 「オリジナルのLPでは、 1-4side-A に、 5-8side-B にそれぞれ収録されています」 …と書いてあるだけで、曲順自体は全然いろってなかったみたいなんですが、今さら修正するのも面倒だしぃ。ということで、1曲目はアルバム・タイトル曲の 「リーズ&ディーズ」 であります。レス・ディヴィスという人が書いた原文ライナーによると、タイトルはローランドが影響を受けた先輩に感謝を表する意味で付けたらしいんですが、影響を受けた先輩というのは、やっぱり月の家円鏡なんすかね?…って、いや、たぶん違うとは思いますけど。カークが “エバラ焼肉のたれ” のコマーシャルを見ていたとは思えないしぃ。で、影響を受けた先輩問題はとりあえず棚上げして演奏の解説のほうに入りたいと思いますが、それにしてもこのアルバムは唯我独尊的なイメージの強いカークにしては、ちょっぴり珍しい作りになっていますよね。その要因はトランペットとトロンボーンを入れてアンサンブルに力点を置いたところにあるんですが、力点というのはイカ天と同じくらい、生きていく上では重要な問題ですからな。イカ天なくして、何のための“さつま揚げ”や?…みたいな。いや、話の論点がまったくずれているような気もするんですが、この曲はアレですな。かなりオーソドックスな感じのする作風でありまして、若干スイング・ジャズっぽい雰囲気もあるんですが、カークが提示する主旋律に2本のブラスが絡む形でテーマ部が演奏されております。改めてパーソネルを確認して驚いたんですが、これ、リズムセクションの3人を含めて総計6名で演奏されているんですな。レス・デイヴィス君は、6人で、控えめに見積もっても50人やそこらの人数に匹敵するサウンドを作っている…などと書いておりますが、いくらなんでも50人は多く見積もり過ぎやろ!…と思わずにはいられません。それでもまあ、8人分くらいの演奏には聞こえますよね。カーク君の “ひとりアンサンブル” はジョージ・ブレイス君のそれを遥かに凌駕しておりまして、まさに完璧にして鉄壁で、岸壁の母のかっぱ巻きって感じぃ?

 で、その先発はバジル・ジョーンズです。バジルというのはアレですよね。馬の汁です。んなもの何につかうねん?…という気がしないでもないんですが、ま、上手に利用すればそれなりに便利なのかも知れません。で、バジル君のトランペット・ソロはなかなか流暢でありますな。もう、古今亭流暢という名前の落語家としてもやっていける感じでありまして、でもって、続くトム・マッキントッシュのトロンボーン・ソロもなかなかいい感じに仕上がっております。で、ソロ3番手はカークのフルート・ソロでありますか。フルートを吹きながら鼻歌を歌っているような独特の奏法でありまして、もう、世の中を舐めきっているとしか思えませんが、そこのところがあの “なめ猫ブーム” にもつながっていくわけでありまして、しかしまあ、今から思えばどうしてあんなものが流行ったんですかね?今となっては“たまごっちブーム”にも匹敵する、若かりし頃の過ち。…といった感じでありますが、続いてはハロルド・メイバーンのピアノ・ソロですか。バックではフロント陣がムーディなアンサンブルを奏でて気分を盛り上げて、でもって、テーマに戻って、おしまい。フルートが鼻歌まじりである以外、全体的にわかりやすい演奏に仕上がっているので、カーク入門者にはよい1曲かも知れません。

 で、2曲目は 「ヘイ・ロー」 という曲ですね。“ヘイ・ロー”というのは何か簡単にボケを思い付きそうで、いざとなったら何も頭に浮かんでこないんですが、ローランドが余りに速いテンポでプレイし始めた時、お手上げになったサイドメンが、しばしば発するコトバ。…なんだそうです。ハッスル、ハッスル!関係ありませんね。で、言ってるわりにはそれほど速いテンポの演奏でもなくて、なんというか、ほのぼのとしたムードの漂う作風のナンバーであります。テーマの後、メイバーンのピアノ・ソロになるんですが、この辺りからかなり素早いテンポになって来てはおりますな。その後バジル・ジョーンズのソロがあって、続くトロンボーン・ソロはチャールス・グリーンリーでありますか。曲によってベーシストとボントロ奏者が入れ替わるんですよね。で、ソロの最後を締めるのはカーク君でありますな。わりと普通にストリッチ1本で勝負しているんですが、この時点ではかなりヘイ・ロー的な超アップ・テンポになっていて、サイドマンは着いて行くのがやっと…といったところでしょうか。で、最後にドラムスと3人のフロント陣との2小節交換があって演奏は大いに盛り上がって、で、テーマに戻って、おしまい。

 さ、ではここで一息入れて、心地よいスタンダードに耳を傾けてみましょう。 「ディス・イズ・オールウェイズ」 。3管アンサンブルによるイントロに続いて、カークがフルートでしっとりとテーマを歌い上げます。後半、ホーンが絡んでくる辺りになると次第にフルートのトーンも濁ってきて、やや“なめ猫”的な展開になるんですが、クドくなる直前のところで何とか踏みとどまっているので、ま、それなりに品格は保たれているのではなかろうかと。ま、演奏の後半、テンポがミディアムに近付くにつれて、ソロのほうもかなりヤバくはなりかけているんですけどね。アレンジはベニー・ゴルソンが担当しているようですが、いや、さすがだと思いますね。エンディングの部分は完全に世の中を舐めきっていますけどー。で、4曲目は 「ソング・オブ・ザ・カントリーメン」 という曲です。出だしの部分など、ギル・エバンスと組んだマイルス・デイヴィスって感じぃ?そのまま 「フラメンコ・スケッチ」 あたりの世界へ入っていきそうでありますが、ちなみにカーク自身は 「ミンガスが好んでとり上げるタイプの曲だね」 …といってるようです。なるほど、そういう捉え方も出来ますか。で、演奏のほうはバラードで始まり、アドリブ・パートに入るとミディアム・ファストに転じるんですが、まさにカークの一人舞台といった感じですな。最初に吹いているのはテナーでありましょうか、出だしの部分こそわりとオーソドックスでありますが、途中から “ひとりアンサンブル” が始まって、2本のブラスも絡んで、混沌とした栗きんとん。…といった感じのカオス世界が展開されます。いや、カオスというほど無茶ではありませんか。ま、せいぜい、カボス(大分特産)といったところかも知れませんが、とにかくまあ、ソロ2番手はバジル・ジョーンズですね。で、ソロ3番手はトム・マッキントッシュですか。個人的にはけっこう好きなんですよね、マッキントッシュのキットカット。夏に野外に放置したりすると、融けてドロドロになっちゃうのがネックなんですけど。ということで、スロー風・重厚調のテーマに戻って、おしまい。

 5曲目は 「リンボー・ボート」 です。ローランドは昔から 「ロウ・ロウ・ロウ・ユア・ボート」 を吹いていたが、この曲をリンボー・ビートにのせて演奏したのが「リンボー・ボート」。…だそうです。何というか、おもろい曲ですな。ドライブの利いたロンド形式が、ヤケにキマってる…とレス・デイヴィスが指摘しているとおり、ドライブの利いたロンド形式が、ヤケにキマってます。「ろ〜、ろ〜、ろ〜♪」と鼻歌まじりで歌いながらボートを漕いだりするんでしょうな。いいことだと思います。で、ここでの聴き物は何といってもカークの得意技のひとつ、 “循環呼吸奏法” でありましょう。普通の人間は息を吐いてしまうと今度は吸わなければならんのですが、この人の場合、息継ぎなしで延々と息を吐き続けることが出来るんですよね。どういうシステムになっているのか常人には窺い知ることが出来んのですが、ま、おそらく、肛門から息を吸って口から吐いているのではなかろうかと。コモンセンス(常識)では考えられない肛門でありますな。僕には到底、真似は出来ません。いや、真似をしたいとも思いませんけど。ということで、次です。6曲目は 「ロンサム・オーガスト・チャイルド」 ですか。 満員は満員だけれども、彼らの演奏にろくすっぽ注意を向けようともしない客の前でプレイした時、ローランドの心に浮かんだ曲なんだそうですが、ちなみに “8月” というのはカークの誕生月なんだそうで。いや、その気持ち、よくわかりますね。アクセス数は、ま、そこそこなんだけど、何を書いてもまったく何の反応も無かったりすると、心の底からロンサムですからねぇ、3月生まれのマーチ・チャイルドな僕としても。で、この曲にはとってもロンサムな感じが出ているわけでありますが、物悲しいアンサンブルがテーマを奏でた後、チャールス・グリーンリー、バジル・ジョーンズと短めのソロが続いて、でもって、カーク君はテナー・ソロでありますか。わりとオーソドックスなプレイに終始しておりますな。どうせ、何をやってもウケないわけだしぃ。…と、イジけているのでありましょうか?そんなカーク君がちょっぴり可愛いと思います。

 はい、7曲目。 「ランド・オブ・ピース」 評論家で時に曲も書くレナード・フェザーが、ローランドのために書き下ろした曲…なんだそうですが、いや、フェザー君にこんな才能があるとは知りませんでしたな。ま、せいぜい、フェザーの剃刀で剃毛プレイをするくらい?…と、タカをくくっていたんですが、何ともストレート・アヘッドな佳曲なんですよね、これがまた。で、演奏自体も実にストレート・アヘッドで、正統派ハード・バップと言っても何ら問題はないでしょう。で、ソロ・オーダーはチャールス・グリーンリー、バジル・ジョーンズ、そしてカーク君ですか。カークはもっぱらテナーを吹いているみたいですね。で、自らアレンジもこなしているようなんですが、ソロとアンサンブルの絡み具合など絶妙で、アレンジャーとしても赤レンジャー並みの才能は有しているみたいですね。…って、赤レンジャーと比べられてもさほど嬉しくはないと思いますけど。で、ソロの最後はハロルド・メイバーンがきっちりと締めて、アンサンブルとドラムスの4バースなんかもあったりして、で、テーマに戻って、おしまい。いや、悪くないですな、 “地上の平和” 。

 ということで、ラストです。 「ワルツ・オブ・ザ・フレンズ」 はカークのオリジナルですな。何と言うか実にワルツな曲でありまして、なかなかおしゃまな感じに仕上がっております。可愛いいいですよねぇ、おしゃまな女の子って。個人的に少なくともオカマな女の子よりも好きですね。オカマなのか女の子なのか、はっきりしろ!…と言いたくなっちゃいますもんね。で、ここではカークがマンゼロを吹いております。えーと、マンゼロ、マンゼロ…。ここで何かいいボケを思い付いたら、それで原稿を終わりにしようと思ったんですが、特に何も浮かびませんでしたので先を続けますが、えーと、まあ、わりと分かりやすい部類の演奏だと思いますね。各自のソロがあって、最後にフロント陣の3人で4小節交換が行われるんですが、カーク君はマンゼロのリードの出し入れによってトランペット風のトーンとトロンボーン風の音色を使い分けているんだそうでありまして。いやあ、芸が細かいですな。いや、ぼーっと聴いている分にはあまりよくわからんかったんですけど。ということで、おしまい。

【総合評価】

 わかりやすい作風の中に、ひとりアンサンブル、鼻歌フルート、早吹き、キャラブキ…と、カークの持てる技がバランスよく配置されているハイチ人好みの小品でありますな。ま、カーク入門にはいいかも?…という気がします。


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