EXTENSION (BLUE NOTE)

GEORGE BRAITH (1964/3/27)

EXTENSION


【パーソネル】

GEORGE BRAITH (ss,as,ts) BILLY GARDNER (org) GRANT GREEN (g) CLARENCE JOHNSTON (ds)
【収録曲】

NUT CITY / ETHLYN'S LOVE / OUT THERE
EXTENSION / SWEETVILLE / EV'RYTIME WE SAY GOODBYE

【解説】

 桑名発観光ガイド を再検証する』 というのが今日のテーマでございます。観光ガイドのコーナーは “jazz giant” に次ぐ古い歴史を誇っているんですが、2001年4月24日を最後に更新が滞っております。 “桑観(クワカン)” は死んだと思ってもらって間違いないわけでありますが、 同様の旅ルポねたは “ONE FINGER SNAP” 、もしくは “column-index” あたりに引き継がれておりますので、そこんとこヨロシク。で、問題のクワカンのほうなんですが、執筆からかなりの歳月が経過して内容的に古くなったものが生じてまいりました。ここらでひとつ、内容を再検証するべきではないか?…と思った次第でありますが、いや、他に特に書くようなネタも思いつかなかったしぃ。

 えーと、インデックスの上のほうにある “ハイパー広域編” というのは無視してください。問題は真ん中あたりにある “桑名周辺観光ガイド” のところなんですが、えーと、まず最初は 『しぐれ城・桑名城跡(九華公園) ですか。 “しぐれ城” というのはですね、 “貝新(かいしん)” という屋号の時雨(しぐれ)ハマグリ屋さんが経営していた時雨ハマグリのお店であります。桑名の殿さん、時雨で茶々漬け、ヨイトナ〜♪…という俗謡にちなんだのか、お城の形をしておりました。当時、お城の形をしている建物といえば本物の城か、すけべホテルくらいしかなかったので、天守閣を模った時雨ハマグリ屋というのは全国的に見ても珍しかったんじゃないですかね?というか、時雨ハマグリ屋などという営業形態自体、桑名以外にはあまりないのかも知れませんが、とにもかくにも建設当時、地元では「貝新の会心作や!」…と、ずいぶん評判になったものでございます。いや、多分。

 が、この店、ある日突然、 「百万石ラーメン」 というのに変わっちゃったんですよね。桑名というのは十一万石の城下町だったにも関らず、百万石ラーメン。サバの読みすぎや!…というので市民の評判もあまり芳しくはなかったんですが、経営母体の移譲に伴って、お城の名前も “しぐれ城” から “はまぐり城” に変わりました。“しぐれ城” のほうが何だか格調があって、なかなかシグレ物のネーミングだったのにね。…と、この改名も市民からは歓迎されなかったようですが、それが災いしたのか、この店はぜんぜん流行らなくて、あっという間に “九州どんたくラーメン” というのになっちゃいました。こうなってくると、もはや天守閣の形をしている必然性はまったく無くなってくるわけでありますが、そういうわけで、いつまでもつかなあ、しぐれ城の九州ラーメンは。 …というところで、当時の原稿は終わっております。で、その後の経過はというとですね、あっという間に潰れちゃいましたなぁ、九州ラーメンは。いっそのこと、 “すけべホテル・はまぐり” とかに商売換えすべきだったのでは?…という気がしないでもないんですが、ま、近くにあった “ホテル湖城” というのも潰れちゃったし、あのロケーションで商売を続けるのはちょっと難しかったのかも知れません。で、現在、 “しぐれ城” の建物自体がなくなってしまいました。伊勢湾岸道路の湾岸桑名ICに通じる道路が新たに作られ、それと国道23号線が交差する地点に建っていた “しぐれ城” は、邪魔や!…というので取り壊されちゃったんですよね。歴史的建造物を後世に残そう!…という市民運動はまったくありませんでした。もともと、歴史的に見て何の価値もない単なる時雨はまぐり屋でありますので、それも当然でありましょう。無くなってしまえば景観的にもすっきりして、むしろ清々しい限り。いやあ、よくぞ取り壊して下さいました。

 で、続いては 『鬼頭商店・ますお駅』 について触れてみたいと思うんですが、鬼頭商店ギロチン工場は今でも健在です。もしこの工場が壊されるようなことになれば、猛烈な反対運動が巻き起こるに違いありませんが、鬼頭社長の経営手腕はなかなか確かなようでありまして、今日も元気にギロチンの製造に励んでおられる模様です。で、このギロチン工場。全国的にもかなり知名度が高くなっているようですが、店の名前を 「亀頭商店」 にすべきではないか?…という要望もなかなか根強いものがありますな。ここはひとつ、桑名の観光産業発展のためにも鬼頭社長の御英断に期待したいところであります。ちなみにここ、熱田神宮と伊勢神宮を結ぶ全日本大学駅伝のテレビ中継で写る可能性が非常に高いので、要チェックでありますな。今年(平成16年)は11月7日でありますか。時間は確か9時前後ではなかったかと。で、いっぽうの “ますお駅” でありますが、こちらのほうも健在です。以前は近くにサンジルシの工場があるくらいで閑散とした感じだったんですが、最近は駅前にマンションも建ったりして、少しは開けてきたような気もします。が、まだ今ひとつ地味な感じではありますので、ここはひとつ、マスオさん(実写版)を一日駅長に任命して、全国のサザエさんファンを呼び込むのがいいのではなかろうかと。ま、一日駅長が無理なら、近くの 「キャバレー花園」 (←まだある?) で、 “一日浣腸ショー” をやらせるとか。栗林観鳥センセイとのコラボレーションが実現すれば、かなり盛り上がると思うんですけどねぇ。いや、僕は見たくありませんけど。

 続いて 『桑名パル・マイカル桑名』 。えー、“桑名パル” のほうは何度かお知らせしている通り、ブチ壊されました。目障りな駅前幽霊ビルがなくなって、“しぐれ城” ともども、うーん、すっきり♪ 跡地には18階建てのマンションが建つようなので、駅前の閑散感も少しは解消されるのではなかろうかと。ま、マンションではあまり賑やかな人通りとかは期待出来ないんですが、桑名の駅前って時雨ハマグリ屋と “はまぐり食道” くらいしかありませんからね。“はまぐり” しか取り得はないんかい?…という感じなんですが、だからこそ “ギロチン” と “マスオさん” で町おこしを計るべきではないかと思うんですけどね。いっそこと、この2つをジョイントして、 「マスオさん、ギロチン断頭ショー♪」 でもやってみますかね? いや、あまりにも非人道的で、1回きりの刹那的なイベントではあるんですけど。でもまあ、プラナリアあたりと組ませれば、 “切っても切ってもマスオさん” みたいなイリュージョンな世界も期待出来るのではなかろうかと。で、一方、 “マイカル桑名” でありますが、こちらはすっかり影が薄くなりましたな。開業当時は日本でも2番目くらいに売場面積の大きいショッピングセンターらしい。…というので地元のワクワク感も最高潮だったんですが、マイカル自体、潰れちゃったしぃ。ま、幸い、イオングループの支援によってなんとか食いつないではいるようですが、東海地方ではここよりもっと大きなショッピングセンターが続々とオープンして、今さらマイカルかい。…という感じになってしまいました。レストラン街なんかも閑散としているようですが、ちょっぴり明るい話題も入ってきました。先日、何気なく ZAKZAK を見てたらですね、 「その手はクワナの…ラーメン街道」 という記事が載っておりました。ま、要するに、ナムコは三重県桑名市の複合商業施設 「マイカル桑名」 に11月26日、全国のラーメン店を集めた 「桑名ラーメン街道」 を開くと発表した。…ということでありまして、何故、ナムコがラーメン屋?…という気がしないでもないんですが、ま、早い話が横濱の “ラー博” の二番煎じのようなものを作ろうという魂胆でありますな。んなもん、流行るんかい?…という気がしないでもないんですが、意外と物好きが押し寄せるかも知れないし、あるいは “九州どんたくラーメン” の二の舞を踏むだけのような気もするしー。ま、今後の動向を注意深く見守っていきたいと思いますが、それにしても 「その手はクワナの…ラーメン街道」 …って、あまりにも見出しに工夫が無さ過ぎぃ。。。

 あ、 『桑名パル・マイカル桑名』 の最後のところに、ちなみに敷地面積がマイカルの倍くらいあるらしい 「桑名パワーセンター」 というのも現在計画中です。…という記載があるんですが、この計画は結局、立ち消えになったみたいですね。んなもの作ってみたところで、とても元が取れるとは思えないしぃ。…と思っていたら、いつの間にやら出来ておりましたがな、 「桑名パワーセンター(仮称)」 。敷地面積がマイカルの2倍という当初の計画通りのものかどうかはサダカではないんですが、一応、それらしい複合商業施設は出来ておりました。今まで仮称だった名前のほうも正式に決まって、どうやら “サンシパーク” ということになったみたいですな。サンシーパークに、いらっしゃーい♪…ということではなく、四日市のスーパーサンシというところが経営母体になっているからなんだと思いますが、それにしても、その名前はないやろ!…と思わずにはいられません。もうちょっとオシャレなネーミングは考えられなかったんですかね? 例えば、えーと、 “キンシパーク” とか。いや、一緒やん!…という気がしないでもないんですけど。で、後は小ネタなので軽く流すことにしておきますが、 『エバーランド・インターホテル』 。えーとですね、 “インターホテル” は潰れました。すけべホテルであるにも関らず、見た目がまったく普通のビジネスホテルっぽいところが敗因でありましょう。何だか今ひとつ、すけべ心をくすぐられないと言うか。いや、中に入ったことはないのでよくワカランのですけど。ホテルのすぐ裏が火葬場である。…というロケーションもよくなかったのかも知れません。すけべホテル火葬場だから、基本的に営業時間がバッティングする恐れはないし、 “昇天” という意味では相通ずるものがあるような気もするんですが、万一 “腹上死” という事態に陥ってもすぐ隣で焼いて貰えるので、便利だと言えば便利だったんですけどねぇ。。。

 ということで、今日のお話はおしまい。

 ということで、本日はジョージ・ブレイスでございます。

 ・ 秋深し 隣は情事プレイ する人ぞ

   > すごくノーマル。

 いやあ、いかにも秋らしい、何のひねりもない1句でありますな。秋なんだから “松茸ぷれい” とか “栗ぷれい” とか、他にも試してみることがいくらでもあるような気がするんですが、そこを敢えて控えめな “情事ぷれい” に抑えておくところに日本人らしいワビサビの心が感じられ、秀逸です。で、このジョージ・ブレイスという人は管楽器を2本くわえてプレイしちゃうという “ダブル尺八状態” というか、いや、くわえる楽器は尺八ではなくてサックス系のものだと思うんですが、ま、とにかくそのような特技を持つテクニシャンとして知られております。が、日本での評価や人気は今ひとつでありますな。どうしても、“ローランド・カークのエピゴーネン” と捉えられちゃう傾向にありますよね。しかしなんですな。エピゴーネンというのは何だか、いかにも海老がゴネているような印象を与える言葉でありますな。海老グラタンにして食べてやろうと思っていたら、「どうしてもカニクリームコロッケにしてくれなきゃ、やだ!」…と、ワガママを言ったりして。こういう身勝手な海老は甘やかすとロクなものにならないに違いないので、ひとつ “ヤキ” を入れて、海老の塩焼きにしちゃったほうがいいかも知れませんね。いや、個人的には海老グラタンのほうが好きなので、その処遇に悩むところではあるんですけど。で、ブレイス君が今ひとつ日本では評判がよろしくない原因として、不真面目である。…という点が挙げられようかと思いますが、同じようなことをしていても、カーク君のほうは何故だか妙に持ち上げられたりしてますからね。カーク君もさほどノーマルなキャラではないんですが、グロに走っても、R&Bに靡いても、ありゃ、黒人の魂の叫びだぎゃ。…と評価されたりして。一方、ブレイス君は 『ラフィング・ソウル』 (日本名 「お笑い魂」 )なんてアルバムを作ったりして、それはそれでそれなりにペーソスを感じさせるキャラを確立しているんですが、そのペーソスが軽率さを感じさせるとことがなんとも不憫でありますなぁ。ということで、ブルーノート盤の 『エクステンション』 、いってみましょうね。

 ブルーノートにリーダー作が3枚という経歴は立派なものだと思います。河童を見た人や、クッパを食べた人よりも立派だ。…と言ってもいいかも知れませんが、その3枚がいずれもオルガントリオをバックにしたものであるところが彼の評価を低くしているという論評を展開する人もいます。それはまあ、そうかも知れないね。…という気がしないでもないんですが、個人的にはグラント・グリーンとの絡みは悪くないと思うし、辛味大根というのは消化を助けるのに極めて有効であると思います。辛いんですけどね、辛味大根の大根おろし。で、この 『エクステンション』 というアルバムはBN3部作のうちの最終作にあたるわけなんですが、さして期待もせずに聴いてみたところ、いや、意外と悪くないんですよね。3枚の中ではいちばんオーソドックスなプレイが展開されておりまして、吹いている楽器もアルトとテナーとソプラノくらいなのではなかろうかと。例の “ダブル尺八” も控えめでありまして、そういうギミックに走らない姿勢は市井の人にも広く受け入れられるのではないかと思います。ということで、まず1曲目は 「ナット・シティ」 でありますか。僕は納豆というのがどうにも好きになれなくて、こういう好き嫌いの分かれる食べ物を旅館の朝食に出すというのは、どうか?…と、いつも納得のいかない思いをしております。納豆を出すくらいなら、有平糖を出せよ!…みたいな。いや、朝食のおかずにそんなもの出されたところで、対処に困るだけのような気がしないでもないんですけどね。ただ無意味に甘ったるいだけで、さほど美味しいものでもないしー。で、日本で “納豆シティ” と言えば茨城県の水戸市ということになるわけですが、この曲はもともと 「アトランティック・シティ」 というタイトルだったようでありまして、それがブレイスの意向によって、 「ナット・シティ」 に変更されたそうであります。あ、原文ライナーの日本語訳を見ると、 “ナット” ではなくて “ナッツ” となっておりますな。ということは、ボルトの合方ではなくて、ミックスナッツのほうのナッツということになるようですが、何でも、この町のある愉快な側面が彼に曲のタイトルを変更させたんだそうでありまして、いや、愉快だとどうしてナッツなのか、日本人である僕には今ひとつよくワカランところではあるんですけど。 “nut” には俗語で “たまきん” という意味もあるようなので、あるいはそういうところが愉快なのかも知れませんな。

 で、曲のほうはというとですね、さほどタマキン的というわけでもなくて、ごく普通の新主流派作品?…といった感じで、ちょっぴり変拍子的なリズム・パターンが特徴的でありますな。で、ブレイス君は持ち楽器をテナー1本に絞っております。AABA形式のテーマの “Bの部” がギターとのユニゾンになるので、一瞬、2本吹きか?…と思ってしまったんですが、そうではなさそうです。で、ソロ先発はG.グリーンのギターですな。これがまた何とも言えずよく歌っておりまして、グリーン好きの僕としては何だか嬉しくなってしまいますが、グラント・グリーンよりも国土地理院のほうが好きな人にとってはそれほどでもないかも知れません。で、ソロ2番手がブレイスのテナーなんですが、何というか、あまり彼らしくない吹きっぷりでありますな。わりとシリアスで真面目風ですもんね。スタイル的にはモードと言ってもよくて、コルトレーンの影響なんかも感じ取ることが出来ます。捉えどころのないフレージングは相撲甚句を思わせるようなところがぜんぜんありません。ま、ぜんぜん無くて当然なんですけどね。で、続いてはオルガンのソロでありますな。このアルバムでオルガンを弾いているのは、えーと、ビリー・ガードナーという人ですね。プレイの特徴としては、ま、普通ではないかと思います。オルガン・ソロのバックでは時折ブレイス君が茶々を入れたりして、でもって、テーマに戻って、おしまい。ま、わりと分かりやすい部類の演奏ではあったな。…と、それなりに評価してもいいのではないかと思われます。

 続く 「エスリンズ・ラブ」 はソプラノ・サックスによる物静かなバラードでございます。ソプラノという楽器は使い方によっては都会的な哀愁を奏でることが出来るんですが、ひとつ使い方を間違えると妙におマヌケ風になったりして、何せ相手がジョージ・ブレイスだけに、そうなっちゃう危険性は多分にあるな。…と思っていたんですが、その心配はまったくご無用でありました。意外と都会的なんですよね、これがまた。ここでのブレイスのプレイは、ひとつ間違えればウエイン・ショーター風?…といった境地まで肉薄しておりまして、いや、全般にフレーズがやや単調でタンチョウヅル的になっちゃったところが少し残念ではあるんですけど。頭のてっぺんだけ赤いですからねぇ、タンチョウヅルは。いや、まったくどうでもいい話ではあるんですけど。で、ここで注目すべきはビリー・ガードナーのオルガン・ソロでありまして、いや、それほど大したものではないんですが、しみじみとした弾きっぷりは哀感に満ちあふれていて、満ち足りた一時を僕たちに約束してくれることでありましょう。続くG.グリーンのソロもヒューマンですなぁ。少なくとも星飛雄馬よりは人間的ですよね。眼から火がメラメラと燃え上がったりして、とても僕たちと同じヒューマノイドとは思えませんからね、飛雄馬クン。

 …と、ここまでの演奏を聴いた上での感想が、意外と悪くないぢゃん。…ということだったんですが、ブレイス君の健闘もここまででありました。3曲目の 「アウト・ヒア」 はですね、ちょっと変な曲です。オーネット・コールマンを彷彿させる作風とでも申しましょうか、じっくりと耳を傾ければそれなりに気の利いたメロディであることが判明するんですが、ちょっと聴いた限りでは、ただのヘンな曲やん。…といった感じで、一般ウケしないことこの上なし。で、テーマ部は基本的にテナーとオルガンのユニゾンで演奏されておりまして、それがまた何とも得体の知れない世界を醸し出しております。後半はオルガンがコンピングに回って、まだ少しはマシな感じにはなっているんですけどね。で、ソロ先発はブレイスのテナーでありますか。サックスを1本だけ咥えさせている限りは割りと普通っぽい演奏をするんですよね。ま、ハード・バップとは一線を画しているんですが、ま、それなりに人間的な表現であるな。…という一定のレベルは確保しているように思われます。で、続くG.グリーンのソロは複雑で前衛的なテーマに触発されたのか、あるいは托鉢僧に誘発されたのか、何だかアバンギャルドなフレーズを展開しておりますな。おそるべき托鉢僧の影響力!…といった感じなんですが、托鉢僧というのはただボーッと町中に立っているだけでお金が貰えたりして、実にいい商売ですよね。修行なら座禅とかしろよ!…と思わずにはいられませんが、今まで托鉢僧にお金を出している人というのは見たことがないので、実入りのほうはさっぱりなのかも知れません。世の中、それほど甘いものではねーな。…ということを身を持って感じ取る、そういう修行なのかも知れません。ということで、オルガンのソロがあって、テーマに戻って、おしまい。

 4曲目はアルバム・タイトル曲の 「エクステンション」ですな。これまたあまり一般ウケのしない小難しいタイプの作品でありまして、原文ライナーでジョー・ゴールドバーグが、彼は平均以上の作曲者であるようだ。…と、ま、それほど高くは評価していないような口ぶりで書いているのも何となく納得がいきますね。ライナーノートだからご祝儀相場で “平均以上” とは書いておいたものの、ま、ぶっちゃけた話、40点くらいのレベルやな。…というのが本音ではなかろうかと。本音と建前を使い分ける、なかなか日本人的な心を持ったおっさんでありますな、ジョー・ゴールドバーグ。もし本人から日本への帰化申請が出されたら、僕は許可してやるべきだと思いますね。彼だったらきっと日本でもうまくやっていけるに違いありません。名前がゴールドバーグだから、ハンバーグの店とかをやっても成功するかも知れませんな。で、この曲、イントロの部分がテナーとオルガンのユニゾンで演奏されておりまして、それがまた何とも意味不明なムードを醸し出しているんですが、オルガンがコンピングに回ったテーマ部自体は、意外とまともな感じでありました。別にそれほど意味不明でもねーぢゃん。…みたいな。基本的には変則ビ・バップといった感じですかね?でもまあ、最初のところで小難しいと断定して、ゴールドバーグの帰化申請の問題にまで踏み込んでしまった以上、いまさら修正することは出来ません。この曲は小難しいです。ま、幸い、テーマ部に付随するオマケの数小節みたいな部分がソプラノとギターのユニゾンになっていて小難しい感じがするので別にいいんですが、その後はギターのソロになるわけですな。…と思っていると、ここで再び“小難しいユニゾン”があって、そしてしばらくギター・ソロとユニゾン連合との小競り合いが続きます。で、結局はギターのソロになって、んなことなら最初から素直にギター・ソロにしておけばいいぢゃん。…と思わずにはいられませんが、その後はブレイスのテナー・ソロでありますな。ここでの彼は割りと素直なハード・バップ・プレイに徹していて、悪くありませんね。ソロの後半、ところどころグリーンのギターが絡んできて、おおっ!ここでついに “サックス2本吹き” に踏み切りましたか。とうとう我慢しきれなくなった。…という感じでありまして、ま、ギターやドラムスやオルガンとの4バースの部分なので、それほどあざとくはないんですが、せっかくここまで得意技を封印してきたわけなので、最後まで耐え忍んで欲しかったような気がしないでもありません。ということで、テーマに戻って、おしまい。

 はい、次。 「スイートヴィル」 はソプラノによるコルトレーン風の演奏です。原文ライナーにもはっきりとそう書かれておりますので、これはもう、間違いなくそういう演奏であるに違いありません。…と思っていたら、案の定そんな感じの演奏でありました。 「ミスター・シムス」 とか、何かそういう名前の曲がアトランティック時代のコルトレーンにありましたが、その辺りに近い感じが致します。…と思っているとグラント・グリーンのギターが出てきてトレーン世界とはちょっぴり違った感じになりますが、えーと、その後はオルガンのソロでありますか。このあたり、あまりラジカルでないラリー・ヤングの参加したG.グリーンのアルバムといった雰囲気になって、で、再びブレイスが登場してモーダルなソプラノ・ソロを披露して、テーマに戻って、おしまい。いや、意外といい演奏だったではありませんか。で、アルバムの最後を飾るのはこのアルバムで唯一のスタンダード、 「エブリタイム・ウイ・セイ・グッドバイ」 でありますか。しっとりとした大人のバラード。…というのを個人的には期待していたんですが、アップ・テンポかいっ!しかもいきなりサックス2本吹きかいっ!何かこう、最後はヤケクソという感じでありますな。しかたないぢゃん。便所が火事になっちゃったんだからさぁ。…と、ブレイス君は開き直るかも知れませんが、ま、こういうアホなところが彼の魅力ではあるんですけどね。とまあ、そういうことで、おしまい。

【総合評価】

 意外と悪くないぢゃん。…と思っていたら、最初の2曲だけかい!…というのが当初の評価だったんですが、じっくりと耳を傾けてみると、後半もそれなりに傾聴に値する演奏がないわけでもねーな。…という気がしないでもありません。特に 「ウイートヴィル」 はよろしいですなー。ま、最後の1曲は余計ですけど。


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