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【アルバム名】
BACK TO THE TRACKS (BLUE NOTE)
【リーダー名】
TINA BROOKS (1960/9/1,10/20)
【パーソネル】
BLUE MITCHELL (tp) TINA BROOKS (ts) KENNY DREW (p) PAUL CHAMBERS (b)
ART TAYLOR (ds) JACKIE McLEAN (as)
【収 録 曲】
BACK TO THE TRACKS / STREET SINGER / THE BLUES AND I / FOR HEAVENS SAKE /
THE RUBY AND THE PEARL
【内   容】
 この原稿がUPされる頃、僕は伊那谷におります。食われると痒そうですなぁ。 。。…って、それはイエダニ。伊那谷というのはですね、諏訪湖に源を発して長野県中 南部を流下する天竜川沿いに開けた、中央アルプスと南アルプスの間に挟まれた地域の ことでございます。北は辰野から伊那、高遠、南は飯田あたりまでを言うのではないか と思いますが、ちょうど中央道が走っているのがこのルートですよね。JRだと言い出 せん…って、違いますね。JRだと飯田線というのが走っているわけですが、そう言え ばスタンダードの「いいだしかねて(言い出しかねて)」を漢字変換しようとすると、 よく「飯田市かねて」になっちゃうんですが、21日に仕事で伊那市へ行くことになっ ておりまして。ちょうど前日が春分の日でお休みなので乗鞍あたりで今シーズンの滑り 納めを果たし、温泉に浸かり、安曇野に足をのばしてワサビ田を愛で、スイス村でショ ッピングを楽しんでから伊那に戻り、時間があれば高遠にも足をのばして高遠城址公園 でも散策しようかなと思ってるんですけどね。名高いコヒガンザクラが咲くにはまだ時 期が早いんですが、“モヒカン枕”くらいは売ってるかも知れませんしね。
 
 で、夜はやはりこの地方の名物を食べたいところですね。伊那谷の名物と言えば ““ソースかつ丼”でありまして、名古屋でトンカツを頼むと問答無用で味噌カツが出 てくるように、この地でカツ丼を頼むとまず間違いなくソースかつ丼が出てくるという システムになっております。トンカツと言えば先日、仕事で養老町というところへ行っ たんですけどね。養老町の養老の滝の近くに養老院があって、その隣にあるポンプ場へ 発電機の修理に行ったんですが、お昼には養老ミートというお肉屋さん直営のレストラ ンに入ってみました。“ステーキ&イタリアン”とか書いてありまして、なんだか高級 そうなお店だったんですが、中に入るとこれがまた、テーブルの上にはナプキンとナイ フとフォークがセットされ、ワイングラス風のものまで置かれておりました。何だかギ ャルとデートするのによさそうな感じのお店なんですよね。そういうところにオッサン と2人で作業服を着てやってきたわけなんですが、その日のランチは「養老山麓豚のト ンカツ」という、おじさんにも正体の判りやすいメニューだったので、ちょっと安堵し たんですけどね。パンorライス、スープor味噌汁の好きな組み合わせを選べるのも よかったです。もちろん僕たち2人はご飯と味噌汁のセットをチョイスしたんですが、 養老町の養老の滝の近くにある養老院の隣のポンプ場に仕事に来て、養老ミートの直営 店で養老山麓豚を食べるとは、実に養老らしいランチタイムでございますな。
 
 膝にナプキンをかけ、ちょっぴり“おすまし”してワイングラス風のコップに注 がれた水を飲み、メニューの到着を待っていると、まず最初にサラダが出てまいりまし た。たかだか980円のランチではありますが、さすがにこのあたりではまあまあそこ そこ有名な養老ミートの直営店だけあって、なかなか本格的なんですよね。そしてしば らくして、本日のメイン・ディッシュである養老山麓豚のトンカツがライスと味噌汁を 従えてやってまいりました。ライスは茶碗ではなく皿に盛られていて、ここらあたりも 高級指向の表れであると言えるでありましょう。もっとも、最近はめっきり行かなくな った『赤い風船』の“ちくわの磯辺揚げ定食”だってライスはお皿に盛られて出てきた から、一概に必ずしも“ライスが皿=高級”とは言えないんですけどね。ちなみに『赤 フー』ではライスの皿の端っこに、ほとんど意味もなく福神漬けが添えられていて、何 ともいえないチープな味を出しておりました。うっとぉしいだけだから、真っ先に排除 してましたけどね。おまけに皿に盛られているくせに割り箸で食べるシステムでしたし ね。
ちなみに養老ミートの直営店ではもちろんフォークとナイフがセットされていたん ですが、味噌汁もある為、割り箸も用意されておりましたが、さすがに福神漬けはあり ませんでした。
 
 さて、一方のトンカツ。これは洋風のオシャレなお皿に新鮮な生野菜と共に、と っても“ぎゃる風”な装いで盛り付けられておりました。“養老山麓豚のトンカツ”と いうより、もっと横文字が似合いそうな感じでありまして、例えば、そうですねぇ…。 “養老”という言葉は何だか年寄り臭くってヤングなフィーリングに欠けるので“ヨー ロピアン”と言い換えることにして、いや、“ヨーロー”と“ヨーロピアン”なら最初 の3文字まで一緒なので、特にどこからも文句は出ないと思うんですけどね。で、“山 麓豚のトンカツ”のほうは“マウンテン・フモート・ポークのカツレツ”。これであり ますな。“山麓”が“マウンテン・フモート”というのは何だか実に嘘っぽい感じがし ますが、養老あたりの人間は心が鷹揚なので、そういう細かいことは気にしないわけで ありまして。で、その“ヨーロピアン・マウンテン・フモート・ポークのカツレツ”、 長ったらしいので省略して“YMFポークのカツレツ”はその優雅な名称にふさわしく 、とんかつソースにどぼっ!と浸けて、コロモを真っ黒にして口に放り込む。といった 下品極まりない食べかたをするのではなく、上品に一口大にカットされたカツレツの上 には、何やらとってもヨーロピアンなブラウン系のソースがかけられているのでありま して。さすがは高級なレストラン♪と僕は深く感動したわけなんですけどね。
 
 あ、ところでさっきの“YMFポークのカツレツ”という略称なんですが、“Eur opean”なら頭文字は“E”とちゃう?という意見もあるかとは思いますが、養老あた りの人間は心が鷹揚なので、そういう細かいことは気にしないわけでありまして。で、 僕はその、とってもヨーロピアンなブラウン系のソースのかかったカツレツを口に入れ 、そしてある重大な事実認識の過誤に気付き、愕然として叫びました。「味噌カツやん !!」
 
 早春の山麓の町での出来事でした。そんだけ。
 
 @ ということでティナ・ブルックスです。『バック・トゥ・ザ・トラックス』 です。タイトルやレコード番号はもちろん、曲順とジャケットまで決まり、ブルーノー トのカタログやレコードの内袋にも「近日発売!」と宣伝されたにもかかわらず、結局 のところ発売が見送られてしまった“幻の名盤”として名高い1枚ですね。えーと、こ のアルバムについて言いたいことはそんだけです。気分はもう、伊那のソースかつ丼屋 に飛んじゃっているので、今日の後半は簡単に済ませちゃいましょうね。さきほどビー ルをコップに1杯半ほど飲んで、まだ半分へべれけ状態なので、あまりマトモな解説が 書けそうもないですしね。で、このアルバムは60年9月の吹き込みが1曲、10月の 吹き込みが4曲という構成になっているわけですが、9月のほうのセッションはマクリ ーンの…、えーと、まだ半分へべれけ状態だからすぐに名前が思い出せないんですが、 『ジャッキーズ・バッグ』。そう、そのセッションからの1曲でありまして、残りの4 曲がその7週間後にティナ・ブルックスのサード・アルバムとして吹き込まれたもので ございます。ちなみにファースト・アルバムは『マイナー・ムーヴ』というタイトルで 、これも録音当時はオクラ入りになっちゃいました。続いてフレディ・ハバードの『オ ープン・セサミ』にサイドマンとして参加し、その1週間後に吹き込まれた『トゥルー ・ブルー』は何とか無事に発売されて、そのあと『ジャッキーズ・バッグ』のB面のセ ッションに参加という流れになるわけですね。うん、まだ半分へべれけのわりには割と 整然とした解説だったと思います。で、この『ジャッキーズ・バック』というアルバム についてもう少し詳しく説明すると、
 
http://www.mirai.ne.jp/~yinaba/jazz10/jazz1023.html
 
ここ(↑)を読んでみてくださいね。当時、募集中だった“なおちゃん”はまだ売 れ残っております。“さばちゃん”のほうもまだ大丈夫です。ちなみにこの(↑)原稿 を書いた時はワインを一口飲んで半分へべれけ状態だったようですが、では『バック・ トゥ・ザ・トラックス』のほうを聴いてみましょうね。
 
 1曲目はタイトル曲の「バック・トゥ・ザ・トラックス」。ブルックスのオリジ ナルなんですが、彼らしい哀愁のマイナー調メロディを期待するとちょっとがっかり。 。。という気がしないでもない、シンプルで平坦なメロディのナンバーであります。テ ーマに続くブルックスのソロも随所に彼らしさが出てはおりますが、全体的にはちょっ ぴり平坦なムードですね。続くブルー・ミッチェルもまあまあですかね?ソロ3番手の ドリューはなかなかブルージーな味があって悪くないんですけどね。で、最後にもう一 度ティナのソロがあって、タラーっとした感じのテーマに戻るんですが、最後まで聴い てみて思ったんですが、これってもしかしてモード曲なんですかね?60年の録音とい うことをを考えると、彼らなりの「モードに挑戦してみました。」というチャレンジ精 神の表れではないかと思うんですが、完全に成功しているとは言い切れないところがご 愛嬌ですな。
 
 2曲目の「ストリート・シンガー」もティナのオリジナル。『ジャッキーズ・バ ッグ』のB面と同じセッションでありまして、CDにはオマケ曲として収録されていた ので、そっちで聴いたことのある人も多いでしょう。『ジャッキーズ・バッグ』ではマ クリーン、ミッチェル、ブルックス、ドリュー、チェンバース、テイラーというメンバ ーでアルバム1枚分に相当する6曲が吹き込まれたわけでありますが、ドナルド・バー ド、ソニー・クラーク参加のセッション3曲とのカップリングになっちゃったので、テ ィナ参加のセッション3曲がオクラ入りになっちゃったんですよね。で、その吹き込み から7週間後、ティナがリーダーとなってマクリーンを除いたそっくりそのままのメン バーでこの『バック・トゥ・ザ・トラックス』のセッションが持たれたわけであります が、「デヴィッド・キング」という曲がリリースできるクオリティに達していなかった ので、急遽マクリーンのセッションから一度ボツにした演奏を引っ張ってきてアルバム 1枚をでっちあげようとしたんでしょう。が、そういう“ちょっとしたごまかし”が完 全主義者のアルフレッド・ライオンの心に引っ掛かり、それで結局のところ販売が見送 りになっちゃったのではないかと。いわば逆らえない運命に翻弄された1曲ということ が言えると思いますが、二度もボツの憂き目を見ることになったのが不思議なくらい、 曲、演奏共に素晴らしい出来でありますな。曲のほうは、これぞティナ・ブルックス! といった感じの哀愁のマイナー調ナンバーでありまして、ブルックス、マクリーン、ミ ッチェル、ドリューと続くソロも、どれも完璧であります。酔っ払っているから多少ソ ロ・オーダーに間違いがあるかも知れませんが、しかし何ですなぁ。ここまで書いて読 み返してみて思ったんですが、今日の後半部分はまったくボケがありませんな。なんせ 僕は根が真面目だから、酒を飲むとつい地が出て、ついでに痔も出て、もぉ大変。
 
 はい3曲目です。「ブルースと私」は「そよ風と私」のタイトルをもじったもの と思われるティナのオリジナルです。どうせなら、もうひとひねりして「ブルースとタ ワシ」にしたほうがよかったのではないか?という気がしないでもないんですが、そん なことガイジンであるティナ君に言っても無駄ですよね。で、曲自体は哀愁の「ストリ ート・シンガー」とはうって変わってシンプルなシフ・ブルースで、日本人ウケすると いう意味では今ひとつではないか?という気がしないでもないんですが、ガイジンであ るティナ君に日本人ウケのするメロディを求めても無駄ですよね。いや、黒人と日本人 は同じ“白くない人種”ということで感性の面で共通することも多いんですが、無論、 大きく異なる点もあるわけでして。ま、この曲もサビのフレーズはちょっぴり“ブルー ”入っておりまして、もぉ、ブルーレット置くだけで、奥さん入れるだけ?いや、奥さ んは入れられるほうですかね?…って、何を言ってるんですかね。で、ブルースなんで すがティナのソロ自体は1曲目と同じくちょっぴり平坦でありまして、今ひとつ印象が 薄いので4曲目に参りましょう。ここでバラードです。スタンダードの「フォー・ヘブ ンス・セイク」。
たまに「神サマ、お・願・ひ♪」という邦題がついていることがありますが、ブル ックスがワン・ホーンでしみじみと歌い上げるテーマ部は、いかにも彼らしい哀感に溢 れていて、とってもいいです。テーマのあと、そのままティナのソロに入っていきます が、ここでテンポが少し早くなって、吹きっぷりも少しクドくなってきますね。が、す ぐにブルー・ミッチェルにスイッチするので大丈夫です。で、このミッチェルの歌心に 富んだソロがいいですね。ドリューのソロも短いけど流麗です。で、後テーマはティナ のテナーにミッチェルが絡む形になって、これもまた悪くないです。
 
 ということでラスト。「ザ・ルビィ・アンド・ザ・パール」はウェイン・ショー ターも演奏していたナンバーですな。『セカンド・ジェネシス』でしたっけね?ショー ターのミステリアスな嗜好にぴったりの曲であるな。。。と感心して聴いていたもので すが、このブルックスのバージョンも悪くありませんな。特にイントロの思いっきり中 近東なムードには、思わずカレーが食べたくなっちゃいますね。インドは中近東ではな いですけどね。ソロ・パートはわりときっちりした4ビートでありまして、各自のソロ もまずまずです。ということで、そろそろ酔いも醒めてきたので今日はこれにて。。。


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