今月の話題2001年3月  “サルにもわかる”ステロイドの副作用

作成 たらお皮膚科

ステロイド使用前の軟性線維腫 ステロイド使用後の軟性線維腫
(同じ患者さんの別の部位)

皮膚萎縮、赤み、びらんがみられます
左から40日経過後、びらんは治癒するも赤みは残存


ステロイド外用剤(リンデロンVG)を使用したために、皮膚萎縮(皮膚が薄くなり赤い)、びらんが発生しています。このタイプの副作用は誰にでも起こりますが、使用を中止すれば、次第に回復します。これは誰でも理解できます。

初診時 初診より2週間後


初診の前日まで口唇の“荒れ”に対し、ステロイド外用薬を使用していました。初診時からステロイド外用薬を中止したら、今まで皮疹がなかった周辺にまで炎症が拡大しています。ステロイドの全く入っていないリップクリームを塗布した時は炎症(かぶれ)を起こしても、中止すれば使用する前の状態にもどりました。ステロイド外用薬を使用すると、一旦は炎症が治まった様にみえても徐々に周辺に炎症が拡大し、中止した後さらに悪化するのが特徴です。かぶれと違って、すぐにはもとにもどりません。
これは、口唇に限った現象ではなく、アトピー性皮膚炎のいずれの場合、部位にもあてはまると思います。

この現象が難治性アトピー性皮膚炎ステロイド皮膚症リバウンド現象を招くものと考えます。
なぜこの様な現象が起こるか、治すにはどうしたらよいかは、
を読んでください。必ず解決法がみつかります。
決して薬の説明書には書いてありません。長年の臨床経験に基づき、患者さんから学んだ真実です。

顔面にみられる汁と紅斑
(ステロイド中止後3ケ月以内にみられることが
多いが数年経って突然出ることもある)
顔面の持続性紅斑
(“赤鬼様紅斑”)

この中では一番難治性
ステロイド使用前には無かった1〜2cm
くらいの円形の紅斑・浸潤の局面

これらの症状はアトピー性皮膚炎にステロイドを使用した場合のみに認められる独特の症状で、ステロイド皮膚症に次いで治りにくい症状です。治すには正しい理解と時間、忍耐が必要です。正しく理解するためにはを読んでください。

私見

日本皮膚科学会のガイドラインでステロイドが有効な治療薬と記載されていますが、診察の時点から1〜2週間後に皮膚炎が一時的に改善するという事実(悪化も多いですが)に基づいていると思います。また1ケ月くらいの入院の期間での効果判断の結果で判定しているからだと思います。大学に何年も通う方はあまりありませんから、それで改善、治癒したと思い込んでしまわれるのではないでしょうか?それに診察する患者さんの数が圧倒的に少ないですね。開業医の1週間分以下の患者さんを、大学では1年かけて診ている程度だと思います。こんなところにステロイドに対する誤解の本当の原因があるのではないでしょうか?

アトピーにステロイドを1週間使用した際の写真入りの改善結果を、製薬メーカーが薬の宣伝のために持って来たので、“なるほどきれいになっていますね。でもそれを長く続けても問題は起こりませんか?”と質問したところ、そうですね・・・と言って慌てて逃げ帰って行かれました。以後2度と私のところへはステロイドの宣伝に来なくなりました。この手の宣伝方法で若い医師が“洗脳”されてみんながステロイドを処方するのが実態だと思いますが如何なものでしょうか?