メルボルン特別合宿レポートその4
〜金欠破綻篇〜


その3〜暴走絶頂篇〜へ

Jan.23(fri)

9:30 やっぱりマックで朝食

メルボルンの朝は早くない。少なくともバカ四人にとっては。昨日よりもさらにのんびりと起き出して、昨日に続いて朝マック。こんなに遠くまできてもう少し行くところはないのか、という気がしなくもないが、安くて安心朝マックの魅力には勝てない。

とは言え、今日は店内が混んでいて、二人ずつに離れて座る。カウンターに座り壁に向かって密談するエドちゃんとうみりんの二人組は、まるで怪しいドラッグを売買している中国系マフィア、もしくは食い詰めたバックパッカーのようだ。しかも、この二人、チラチラと栗田と川上の方を見てはニヤニヤ笑っている。感じわる〜!普通にボックス席に向かい合って座り、爽やかに歓談している二人にいちゃもんをつけるとは、チャイニーズギャング困ったモノアルヨ。

おっ、怪しい中国系ブローカーが近づいてくる。なんだなんだ?「こちらから見ているとですね、二人は社長と新入社員のようですよ。栗田さんがふんぞり返っていて、背を丸めてうなだれている川上さんが怒られているように見えておかしかったです」だって。なるほど、そっちはそっちで色々思っていたんだね。お互い様ってことで。


10:30 全豪オープン会場

昨日よりも30分遅く全豪オープンの会場へ。さすがに三日目ともなると、勝手知ったわが家のようだ。はいはい、皆さん、何かわからないことがあったら、何でも僕たちに聞いてくださいね〜。すぐに調子に乗るあたりがバカのバカたる所以である。

とりあえず予定通りにお土産ショップに直行。金曜日のせいか、人出が多いような気がする。ショップの中も混雑していて、Tシャツなどを見るのも結構大変。四人はそれぞれにお買い物。栗田とエドちゃんは、まさちんに買っていくTシャツの選択に迷う。迷っているのはデザインよりもサイズ。日本のサイズよりはワンサイズ大きそうな上に、まさちんの縦横奥行きのサイズを頭に思い浮かべて、ああでもないこうでもないと考える。

しかし、こんなに我々が悩んでいるというのに、リーダーときたら全く無関心。自分のお土産選びに熱中している。昨日すでにTシャツを3枚(お値段は4枚分)買ったのに、さらに何を誰に買うと言うのだろう?スクールの可愛いアシスタントコーチ以外に買っていく相手なんかいないだろ、リーダー?

まさちんのTシャツはエドちゃんが立て替えて払うことにして、栗田も家族や会社へのお土産などをいろいろ購入。Tシャツ、キャップ、ソックス、タオルなどを自分用にも買い込み、さらにボールペンとかマグネットとかヨーヨーとか細かいグッズも買い揃える。さて、支払い。100ドルちょっとくらいかな、と思ってレジで数字を見たら何と140ドル超!ボールペンが1本5ドルもする。6本も無造作に買っちゃったよ。9枚あった20ドル札が、あっという間に1枚になってしまった。ゲゲゲ、これってやばいんじゃないの?財布の中には残り30ドルしかないぞ。まだオーストラリアには三日いるのになぁ。

ショップの外に出ると、昨日と同じようにエドちゃんとうみりんが待っていた。つまりリーダー川上は相変わらずのんびり店内でお買い物中。なにをそんなに迷うほどお土産を買っているんだか。待っている時にふと見ると、横の階段のところで遠藤愛がカメラに向かって話をしていた。WOWOWだな。今日の見どころを解説していたみたいだ。なんたって今日はエナンとアガシでしょう。誰が見たってそうだよ。ところで、タカはまだ?いつになったら買い物が終わるの?とうとう痺れを切らしてまたもエドちゃんがショップに入って「川上さん、みんな待ってますよ。早く買ってください」と催促に。全く手がかかるこった。

急いで杉山/フーバー組のダブルスを見るためにショーコート2番へ。朝一番の試合なので、まだ観客席は余裕がある。杉山は昨日のシングルス敗戦から気持ちを切り替えることができたのだろうか?フーバーはダブルスプレーヤーらしいけど、どんなプレーをするんだろうか?興味は尽きない。あ、その前に川上くん、水買ってきてくんない?ちなみに僕はもうお金ないから払っておいてね。3ドルそこそこなんて大金持ちの川上さんにはどってことないでしょ?

観客席にはトーマス嶋田も来ていた。昨日と逆だな。試合は杉山組が快調に立ち上がる。昨日と違って杉山のネットでの動きも鋭いし、サービスもきちんと入ってくる。目を見張るのはフーバーのショートクロス。フォアでもバックでもキュッとスピンをかけて自在にショートクロスを放ち、相手を振り回している。3本続けて同じコースに打った時はビックリした。

ゲームは杉山/フーバー組(→)が6-3、6-2と完勝。この調子ならベスト4くらいまでは堅いだろう。準決勝で第1シードと当たるから、そこが山場かな、なんて思っていたら、リーダーの姿がない。なんと杉山のサインを貰いに行っていたのだ。まだ色紙は残っていたのか。まさか小畑の色紙の裏に書いてもらえば、と朝マックの時に言っていた冗談を真に受けてはいないだろうな?

勝った試合の後だけに杉山も気持ちよくサインをしてくれたようで、リーダー川上ついに3枚目の色紙をゲット。後は森上から貰えば完全コンプリートだね、と言ったら「もう色紙残ってないんです」だって。ダメじゃん、四次元リュック。もう限界か?

 

ロッドレーバーアリーナに戻ってサフィンの試合を見る。才能に溢れていながら、昨年は全く勝てなくなってしまったサフィン。ロディック、フェデラー、フェレーロと比べても力は遜色ないはずだが。生来のむらっ気が克服できればチャンピオンに返り咲けると思うんだけどなぁ。そう思って見ていたのだが、結構苦戦している。相手はトッド・マーティン。くせ者だな。

(←)サフィン頑張れ、と心の中で思いながらも、栗田はまたひとりグランドコートに戻ってしまった。やっぱりこっちの方が選手の息づかいまで聞こえて好きだな。めぼしい試合はないかと思って回っていたら、13番コートでコンチタ・マルチネス/マグダレナ・マレーバ(↓)の女子ダブルスをやっていた。マルチネスは1994年のウィンブルドンチャンピオン。グラフ全盛時だけにその価値は高い。マレーバは美人三姉妹の末っ子。こちらもすっかりベテランになってしまった。昔からテニスを見ているファンには嬉しいペアだけに、ついついじっくり見てしまったが、さすがにこの二人はダブルスがうまい。6-1、6-4で勝利した。

そのまま13番コートでは浅越/小畑のダブルスが始まる。相手は中国ペア。向こうはシードされているとは言え16番目だからどってことはない。昨日の調子でガンガンいけば勝てるかも。日本のファンも集まってきていた。期待の大きさが窺える。今日は二人お揃いのウェアだ。ともに170cmと日本人としては長身でスタイルが良いだけにウェアも映える。川上くんも大好きな小畑だけに応援にも力が入る。

しかし、試合は予想外に一方的な展開に。中国ペアは荒削りながらパワフルにどんどん攻撃してくる。浅越/小畑組は押される一方で受け身なテニス。瞬く間に6ゲームを連取されて第1セットは完敗。2セット目に入っても中国ペアの勢いが止まらない。途中で浅越/小畑はサービスダッシュするなど、何とか流れを変えようとしたが効を奏さず、逆に浅越の悲鳴が響きわたるだけ。打つ手がないままに負けてしまった。見事なまでの完敗である。いやぁ、リーダーは昨日サイン貰っておいて良かったよ。コートから出てきて控えに戻る二人と少しの間だけごく近くで歩いたが、やっぱり悔しそうな顔をしていた。勝負に生きる人間は辛いな。

 


ところで今回ダブルスを見ていたわかったことだが、基本的に声をかける時は英語。相手に任せる時は「you!」(正確にはyoursか)、自分が打つときは「mine!」と言っていた。杉山もフーバーとはそうやって声をかけ合っていたが、浅越と小畑はさすがに日本人同士、日本語だった。ただ小畑が浅越に「お願いします!」と言っていたのはいかにも長い。相手が先輩だと「お願い!」だけでは怒られるのだろうか?

さて、再びロッドレーバーアリーナに戻る。途中でランチを買って食べながらの観戦。エナン(→)の試合が始まった。しかし、せっかくここまで来ていながら眠くて仕方ない。昼下がり、お腹もくちて連日の疲れと重なって、試合を見ながらついまどろんでしまう。拍手が起きるとコートを見るのだが、またしばらくするとウトウト。結局終わるまであまり試合を覚えていなかった。なにしにメルボルンまで来たんだか。自称不眠症のリーダーだけはしっかり起きて見ていたと言っていたが。

それにしても上の小畑の写真と右のエナンの写真を比べてもらえればわかるけど、これだけ距離があると、やっぱりグランドコートの方が良いと思うよ。小畑なんかちゃんとおへそまで写っているんだから。エナンは顔もわかりません。

エナンの試合後にショーコート3番へ。シャルケン(←)のシングルスを見る。オランダ応援団が凄い勢いで応援している。ウェーブも何周もまわったりして、大いに盛り上がっている。そして、我々の陣取る正面にかのフラッグおじさんがいた!今日は弟子のような若者を連れていて、彼がポイントごとに国旗を掲げる。リーダーに「川上くんも日本の弟子にしてください、って言ってきたら」とみんなで勧めたのだが、リーダーは「僕じゃできませんよ」と言って照れていた。

盛り上がるシャルケンの試合を見ている間にショーコート3番は満席になってしまう。座れない人がコートの外で待っている。次はオージーたちのダブルスの至宝ウッドブリッジがスタッブス(↓)とペアで出るミックスダブルスがあるからだ。我々もせっかくなので、ミックスも見ていこうとそのまま陣取っていた。

直射日光がまともに当たって暑いのだが、我慢してじっと座って見ていた。プロのやるミックスも基本は我々と変わらない。いかに女性を攻めるかがポイントのようで、決してなめたボールは打たないし、女性へのストレートもガンガン打っていく。なるほど、と感心しながら見ていて、はっと気づいた!「アガシの試合が終わってしまう!」

ロッドレーバーアリーナではアガシが試合をしているはずだ。いくら何でも5セットマッチだから大丈夫だろうとは思いながらも、急いで戻ろうとした途中、広場にある大きなオーロラビジョンにまさにアガシの試合が映し出されていた。スコアは?セットカウント2-0でアガシ。ゲームカウント5-3でアガシ。終わってしまうよ!今からロッドレーバーアリーナに戻っても間に合わないじゃん。後はここからアガシが逆転を喰らうしかないんだけど。そんな我々の願いも虚しく、あっさりアガシはこのゲームも取って試合を終わらせてしまった。早い。強すぎるぞアガシ。うみりんが「これでもうアガシを見ることもないかな」と呟いた。

19:00 メルボルン・セントラル

今日の試合もあらかた終わってしまった。まだ少しは残っているようだが、さすがにずっと見ているのも飽きてきたし、直射日光を浴びすぎてグロッキー気味だ。タクシーに乗って帰ろう。しかし、エドちゃんが元気だ。「メルボルン・セントラルで買い物しましょう!」

栗田とうみりんはそれほど買い物に興味はなかったのだが、メルボルン・セントラルはメルボルンの中心にある巨大ショッピングセンターで、円錐型の吹き抜けの屋根の下には「ショットタワー」というレンガ作りの建物がすっぽり収まっているというユニークな観光名所でもある。仕方ない、熱射病で頭が痛いけど行ってみますか。

タクシーを降りて建物の中に入ると、確かにそこにはレンガ作りのショットタワーがあった。現代的な建築と古典的な建築が融合している。カメラを構えている川上くんに、例によって「僕たちも入れて写真撮ってよ」と頼む。最初は普通にカメラを構えていた川上くんだが、栗田が「もっとしゃがんで下の角度から撮らないとタワーが入らないじゃん」と言ったら、中腰になりしゃがみこみ、少しずつ前に出てきながら低い姿勢をとり始める。

ここはメルボルンの中心部。駅もあるので通勤客なども多い。たださえおのぼりさん風に記念写真なんて撮っているのが恥ずかしい場所なんだから、どうでもいいから川上くん早く撮ってよ、というこちらの思いとは裏腹に、どんどん近づいてきてもぐりこんでくる迷カメラマン・タカ。集中力が高いから周りの状況なんて見えていないようだ。

遂にタカは僕たちの足元に寝転がってしまった。犬コロのように腹を出して寝転がり、カメラを覗いて「ああ、この角度ならいけますよ!ちゃんと上まで入ります」と足元から叫んでいる。一体彼は何をしているんだ?我々三人はリーダーのあまりのご乱行ぶりに呆れてしまい、腹を抱えて笑い出してしまった。だって、だって、あなたは都庁の真ん前で通路に寝転がって記念写真を撮ろうとしている人を見たらどう思いますか?都庁じゃなくても梅田スカイビルでも名古屋のタワーズビルでも良いんだけど。カメラマン・タカのあまりの迫力に笑い転げながら、なんとか写真撮影に付き合った三人。しかし、それで撮れた写真がこれではねぇ。何を撮ろうしたんだか、リーダー。
 

その後はずっとウィンドウショッピング。しかし、いくらメルボルン有数のショッピングセンターと言ったところで、やはり日本に比べれば寂しいもの。商業集積度では日本とはレベルが違う。結局メルボルン・セントラルでは何も買わずに、歩いてチャイナタウンまで戻る。

ホテルに向かう途中にある「ターゲット」というスーパーで買い出し。と言っても栗田は水を2本買っただけ(なにせ現金をあまり持ち合わせていないということもある)、うみりんは何も買わずに店を出て、店員に万引きの疑いをかけられて(?)チェックされてしまった。ところがエドちゃんと川上くんはここでも大量にお菓子を買う。エドちゃんはともかく、リーダーはそのお菓子をどうするつもり?まさか自分で食べるんじゃないだろうね?リーダーの買い物には謎が多い。

20:00 日本レストラン「百合屋」

そろそろ日本食が恋しくなる時期。ホテル近くには日本食のレストランもいくつかあるが、その中で最も怪しくて安っぽい「百合屋」という店に入る。店内は中華レストランを無理矢理に改装したような雰囲気。ちょうちんがぶら下がり、ふた昔前のようなテーブルと椅子。店内に流れる音楽は古い歌謡曲。ある意味、いま日本で流行のレトロな町並みを再現した風で、最先端かも知れない。

メニューは日本食だけではなくいろいろ雑多なものが載っているが、そのあたりも含めて日本の古い食堂か。栗田・工藤・海野は「札幌ラーメン」の文字に惹かれて、ラーメン・餃子・ライスという定番。店の雰囲気に合ったオーダーだ。しかし、場の空気を考えないリーダーは、なんとここで「うな丼」を注文。チャレンジャーだ。

さて、そのラーメンだが、どこからどう見ても醤油ラーメン。札幌ラーメンの定義そのものから問い直さなければ。それにしてもこのラーメン、醤油の味が濃すぎる。スープはとても飲めたものじゃない。栗田は熱射病で食欲がイマイチだったので、餃子にほとんど手をつけられずに、水を買ってくれた川上くんにプレゼント。これで水代はタダってことで。

何とか全員がこの奇妙な日本食を平らげる。支払いは76ドルくらいだったが、栗田がカードで支払う。そして、各自の分を豪ドルでもらうことにした。手持ちがなかった栗田としては、これで一気に復活。合計60ドル以上も持っている「小金持ち」に出世した。

明日の朝はヒロさんがピックアップに来るので、のんびり朝マックしている時間はない。と言うことで、朝食は各自買い出しして部屋で食べることに。栗田とうみりんは「百合屋」の近くにあったパン屋でパンを購入した。エドちゃんと川上くんはセブンイレブンで買うつもりらしい。

23:00 エド部屋で打ち合わせ

恒例のエド部屋打ち合わせ。明日はもうテニスを見に行かないので、パソコンでスケジュールを確かめる必要もない。ただ、先ほどホテルのフロントで恐ろしいものを発見してしまった。それは翌日の全豪オープンのスケジュール表をプリントアウトしたもの。本当はそのシートを出かける時に貰っていけば、楽々だったわけで、毎晩わざわざ電話料金をかけてまでスケジュールチェックなんてする必要はなかったのだ。今ごろ知っても本当に遅いよ。

現時点での手持ち豪ドル。最下位うみりん45ドル。そろそろ黄信号だよ、うみりん。3位エドちゃん60ドル。2位栗田65ドル。そして栄えある優勝は、もちろんリーダー川上。なんと110ドル。さすが常にお金を数えているだけあって倹約家ナンバー1、小金を貯める男である。しかし、そんなに余らせておいて、最終日までに使い切れるのか、川上。

と言うことで、今日は早めに解散した。この後、エドちゃんが夜の街へ出撃したかどうかは、みんな個室に入ってしまったので定かではない。手持ち60ドルでは多分足りないだろうと思うのだけど。

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