幹事クリタのコーカイ日誌2023

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8月5日 ● ファーストボレーへのポーチ。

 テニス系のYouTubeチャンネルを頻繁に見ます。いろいろなチャンネルがあって、それぞれに参考になることも多く、コートで実際に試すこともよくありますし、動画を見ているだけでもイメージトレーニングとして有効です。昔はテニス雑誌くらいしかメディアがなかったので、今は本当に情報を得るには恵まれた環境だと思います。

 そんな多くのテニスYouTubeチャンネルを見ている僕が、不思議と見たことがないのが「ファーストボレーへのポーチ」について解説している動画です。サーブ&ボレーの解説動画はあります。またリターンに対するポーチの解説もあります。ところがファーストボレーへのポーチについて解説をしている動画は見たことがありません。もちろん僕が見ていないだけで、どこかのテニスチャンネルの中にある可能性は十分にあるでしょうが、ファーストボレーの解説でも、それをポーチされることについての説明がほとんどないので、やはり近年はファーストボレーをポーチするという意識が低いのではないかと思います。

 そもそもサーブ&ボレーが全盛だったのは1980〜90年代。ダブルスに限らずシングルスでもプロの世界はサーブ&ボレーをする選手がたくさんいました。マッケンロー、エドバーグ、ラフター、サンプラス、ヘンマンなど、懐かしいサーブ&ボレーヤーの名手の顔がすぐに思い浮かびます。我々愛好家レベルでもシングルスでは難しくても、ダブルスではサーブ&ボレーは基本でした。猫も杓子も前に突進していたものです。

 その頃はみんなファーストボレーをしているのですから、当然リターンする側も考えます。リターンは前に出てきたサーバーの足元に沈めるのが基本、そして足元に沈むと見てとるや、リターンの前衛はセンターに詰めてファーストボレーをポーチするのです。足元に沈んだファーストボレーはどうしても浮いてきますし、ボールの勢いもありませんからポーチは簡単です。前衛の足元でも相手ペアのセンターでもとにかく叩き込んでしまえばポイントが取れました。

 このファーストボレーのポーチを防ぐには、ひとつはファーストボレーが沈んだらストレートに流すというポーチに出てくる相手の逆を突くテクニック。さらに大事な役割を果たすのがサーバーのペアの動きです。前衛でリターンにプレッシャーをかけて簡単に足元に沈むリターンをさせないことと、さらにリターンにポーチに出るぞと思わせることで、リターン側の前衛に守備をさせるようにすれば、ファーストボレーのポーチに簡単に出てこられません。こうして前衛同士も駆け引きをするのが、サーブ&ボレーが主体のダブルスの基本でした。

 ところが、この一連の流れを解説している動画を見たことがないし、もっと言えば最近サーブ&ボレーをしているダブルスの愛好家たちも、あまりファーストボレーへのポーチを意識していないように思います。これはどういうことなのでしょうか。プロの世界でサーブ&ボレーを主体にする選手がほぼ絶滅したことと関係があるのかも思いましたが、プロも男子ダブルスは相変わらずサーブ&ボレーをしますし、彼らは前衛同士でセンターの奪い合いかというほどプレッシャーをかけあっています。

 と言うことは、プロではない愛好家レベルでサーブ&ボレーをする人が減っているのかも知れません。アマチュアと言えども全国大会経験があるようなトップレベルは今でもサーブ&ボレー主体のダブルスをしているようですが、草トーにちょこちょこ出ていますという中上級クラスでは、雁行陣でベースラインでのラリーが中心で、サーブ&ボレーは時々試みるオプションのひとつという扱いなのかも。それならファーストボレーはクロスに普通に打ってもファーストボレーに向かってポーチに出てくるような相手は少ないから、駆け引きもないでしょう。

 プロでも愛好家でもサーブ&ボレーが減っている大きな原因はラケットの進化だと言われています。ラケットが良くなったせいで、リターンの精度も威力も上がりました。昔は丁寧に返すだけだったリターンが、今ではちょっとでも甘ければ叩けるようになりました。そのせいでファーストボレーの難易度が上がり、サーブ&ボレーよりもベースラインでの打ち合いを選択する機会が増えました。当然ファーストボレーをポーチするという機会も少なくなってきたと考えれば、解説動画を見掛けないことも納得できます。以上は僕の仮説なので、本当にそうなのかどうかはわかりませんが、少なくともファーストボレーにポーチに出ると、結構な確率で成功するなぁというのは、最近の実感です。



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