幹事クリタのコーカイ日誌2021

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7月18日 ● 照ノ富士の平常心と白鵬の執念。

 今場所の見どころは照ノ富士の横綱昇進と、進退をかけた白鵬の土俵でした。ひとつ間違えれば来場所横綱不在という危機に瀕していた大相撲ですが、なんと両者ともに14戦全勝で千秋楽全勝相星決戦という理想的な展開になりました。結果としては白鵬が勝って全勝での復活優勝、照ノ富士も横綱昇進を決めて来場所はめでたく東西に両横綱が並び立つことになります。相撲協会としては万々歳です。

 照ノ富士は綱取り場所だというのに14日目まで見事に普段通りの相撲を取り続けました。平常心ということをよく言われますが、実際にこういう場所で平常心を保ち続けることはとても難しいだろうことは想像に難くありません。大関から序二段まで陥落して、そこから這い上がってきた照ノ富士だからこそできたことなのかと思います。手垢のついた表現ながら「地獄を見た」男の強さを見た思いです。

 「進退をかける」という言葉の意味を学んだと言っている白鵬は不安定だった序盤を乗り越えると徐々に調子を上げてきました。それとともに勝負への執念を前面に押し出すような相撲ぶりを見せました。最初は半信半疑だった自分の力に自信を取り戻すとともに、勝つこと、優勝することで完全復活を証明しようとしてきたのでしょう。14日目の正代戦では変則的な立ち合いをあえてしたように思います。正代に勝つためというよりは、千秋楽の照ノ富士に対して立ち合いで迷わせるための「撒き餌」だったのかも知れません。白鵬としては実力では照ノ富士には分が悪いと感じているはずだからです。

 千秋楽結びの一番で激突した両者。案の定、照ノ富士は立ち合いに迷っているような表情を見せていました。白鵬の様子を窺っています。それを見て取った白鵬は前日の撒き餌が効いていることを確信したのでしょう。さらに照ノ富士を挑発するように立ち合いで左手を顔の前に出し、そこから右肘のかち上げ、というよりはエルボーを叩きこみます。これまでどれだけ批判されてもやはりここぞで頼るのはこのかち上げです。

 照ノ富士はこのかち上げで頭に血が上ったのでしょう、さらに白鵬の張り手による挑発に応じてしまいます。顔を真っ赤にして張り返す照ノ富士は今場所保ってきた平常心を失ってしまいました。その隙をついた白鵬は十分な組手に持ち込み、さらに渾身の小手投げです。腕をきめての投げは決まらなければ一気に不利になりますが、白鵬の執念が勝りました。照ノ富士は常に白鵬に心理戦で先手を取られて完敗。ガッツポーズの白鵬と悔しさに唇をかむ照ノ富士。大相撲史上に残るような激しい一番でした。

 白鵬の凄さはこれほどの記録を残してきた大横綱でありながら、未だに勝ちに拘り執念を燃やすことができることです。横綱としての品格など微塵も感じられない相撲ぶりに恐らく批判は高まるばかりでしょうし、それもわかっていてなおこういう相撲を取るのが白鵬です。ブレがありません。古い相撲ファンとして決して感心はしませんが、それが白鵬なんだということを強烈に感じた一番でした。



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