幹事クリタのコーカイ日誌2015

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9月12日 ● セレナの重圧。

 今年の全米は男子の話ばかり書いてきましたが、それは女子がほぼ9割9分セレナが優勝すると思っていたからです。セレナは昨年の全米から全豪、全仏、ウィンブルドンとグランドスラム4連覇。自身2度目の「セレナスラム」を達成していました。そしてあのグラフ以来の年間グランドスラムをかけてニューヨークに戻ってきました。セレナが一番得意としている地元のグランドスラムだけに、もうよほどのことがない限り大記録達成だろうなと思っていました。僕だけではなく世界中のテニスファンが予想していたと思います。

 セレナを止められるとしたら姉のヴィーナスか、それとも若手の第2シードであるハレプか、それとも実績のあるクビトバか。シャラポワは調子が悪そうだし、セレナには相性が悪いから無理だろうなと。実際、準決勝までのセレナは重圧からか時折手こずることもありましたが、きっちり勝ち上がってきました。そして、他のシード選手は結構シードダウンしていき、なんと準決勝の対戦相手はイタリアのビンチ。ダブルスが得意なノーシードの32歳。これまでセレナには4戦全敗で試合で競ったことすらありません。

 この2人のオッズは300倍だっととか。1回戦ではありません。グランドスラムの準決勝でその倍率はないだろうというほどですが、僕がオッズをつけたら1000倍でも不思議はないと思います。それほどビンチに勝ち目があるどころかセットを取れる可能性すらあるとは思えませんでした。しかし、それほどのカードであっても番狂わせが起きるのが勝負なのです。

 セレナは予想通り第1セットを6-2と取りました。順調なスタートです。ところが2セット目に入るとビンチのしぶとさと粘りが効果を発揮してきます。ダブルス巧者らしい片手バックのスライス、ネットプレー。セレナが焦って強打のミスを連発します。セレナが負ける時のいつものパターンです。落ち着いて普通に打ち合えば負けるはずはないのに、力で押して自爆して自壊していくのです。

 結局セレナは50本のウィナーと40本のアンフォーストエラーで独り相撲をして自滅してしまいました。もちろんビンチのプレーが素晴らしかったことは言うまでもありませんが、それにでもやはりセレナが負けるはずはない相手でした。ビンチの「負けてもともと」という伸び伸びしたプレーと、セレナの大記録達成を前にしてプレッシャーで硬くなりいつものテニスができなくなった様子は、本当にメンタルの差がこれほどの実力差をひっくり返してしまうのかという驚きを与えてくれました。

 セレナももう33歳です。年間グランドスラムに挑戦するチャンスは2度と巡ってこないかも知れません。それは何より本人が感じていることでしょう。それだけにこのチャンスを前にしていつもの状態ではいられなかったのだろうと思います。決勝は第2シードのハレプを下した、これもイタリアの32歳ペンネッタ。まさかのイタリア対決になりました。競馬で言えば万馬券どころではない大きな番狂わせです。


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