幹事クリタのコーカイ日誌2015

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6月8日 ● 最強の片手バックハンド。

 全仏男子シングルス決勝はキャリアグランドスラムを目指すナンバー1のジョコビッチを、勢いに乗るバブリンカが見事に粉砕してしまいました。まさに「粉砕」という言葉が似合うパワフルなテニスでした。

 バブリンカは「強い時はデタラメに強いけど、弱い時は呆れるほど弱い」という波のある選手です。弱い時には日本の伊藤竜馬にも負けてしまいますが、強い時は4強と言えども相手にしないほどの無類の強さを発揮します。今大会もフェデラーとジョコビッチという現在の世界ランキング1位、2位を叩きのめしてしまいました。

 バブリンカの武器はパワフルな片手バックハンドです。これまで最強の片手バックハンドの使い手と言えば、レンドルとフェデラーでした。レンドルには力強さ、フェデラーには切れがありました。バブリンカの片手バックハンドはパワーでも切れでもその2人を完全に超えています。いまや世界一の両手バックハンドとも言われる錦織以上です。ファオを上回るような強烈な片手バックハンドというのは見たことがありません。

 昔は片手バックハンドが主流で、両手バックハンドというのは1970年代のコナーズ、ボルグ、エバート時代に脚光を浴びるようになった比較的新しい技術でした。当時はまだ異端だった両手バックですが、時代が進むにつれて片手バックとの比率は逆転していき、今ではすっかり両手が主流で、片手バックを使う男子選手はベテランばかり。テニス愛好家を見ても片手で打っているのは40代以上、それ以下の世代はほとんどが両手バックです。

 簡単にパワーが出せる両手バックの方が理に適っていると考える現代テニスにおいて、片手で両手以上のパワーを生み出しているバブリンカはちょっとおかしいのですが、もしパワーで負けなければ片手バックは実はぐっと有利になってきます。片手の方が守備範囲は広いし、打点が後ろになっても返せるので、ディフェンスには片手の方が向いています。またスライスが打ちやすく、ドロップやロブも簡単に打てます。ネットプレーへの移行も容易です。難しい技術だけに、得られるものも大きいのが片手バックハンドなのです。

 僕も数年前に一瞬「両手に変えようかな」と迷った時期がありましたが、山本麻友美プロから「そんな時間があったら片手を練習した方がいい」と言われて、確かにその通りだなと思い直したことがありました。ちゃんと十分な練習もしていないのに両手に転向するなんて単なる逃げに過ぎません。バブリンカの片手バックハンドを見ていたら、まだまだ片手バックにも可能性があると感じたので、自分ももっと技術を磨こうと改めて思いました。


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