大豊泰昭氏が亡くなりました。51歳。まだまだ若いです。大豊と言っても、もう若い人にはわからないかも知れません。中日の４番で背番号55。松井より先に「王を超えたい」と55番をつけたのが大豊です。郷里台湾の偉人である王を崇拝し、王と同じ一本足打法でひたすらホームランを追い続けた男。本塁打王のタイトルは一度だけでしたが、確かにその打球の凄さは驚嘆すべきものがありました。

　ナゴヤ球場に通っていた僕は何度も大豊のホームランと、それ以上に三振を見ました。本当に不器用な選手で、当たれば確かにでかいけど、４番に置いておくには不安だらけ。６番くらいがちょうどいいと思っていました。とは言え、ファンに愛されていたことは間違いありません。とにかく真面目で努力の人。それが見ているファンにも伝わってきたのです。

　だから阪神の関川・久慈と大豊・矢野のトレードは残念でした。ナゴヤドーム対策で機動力と守備力を重視するという考え方はわかりますが、阪神入りしてからの矢野の開花もあって、中日ファンとしては損した感は強く残りましたし、何より大豊は中日の顔の一人でしたから。

　引退後に始めた「大豊飯店」は、同じく引退後に開業した同僚の郭源治の店よりもうまいと評判でしたが、どちらも今は名古屋市内にはありません。最初の奥さんは急死してしまったし、本人もこんなに早く亡くなってしまうとは、あれほどの選手だったのに、なんだか寂しい晩年になってしまったのかなと思うとちょっと不憫です。