幹事クリタのコーカイ日誌2014

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2月7日 ● 物語込みの感動。

 「現代のベートーベン」と称された作曲家、佐村河内守が実は作曲を他人に依頼していたという今回のニュースに「あー、やっぱり」「怪しいと思っていた」などという意見がネットなどで散見されます。正直、僕もかつてNHKスペシャルで見た時に「すごい人だな」「でも話ができすぎじゃないの?」という感想を持ちました。と言うか、なにより「これだけキャラが立っていれば売れるだろうな」と真っ先に思ったのです。

 「全聾」で「広島被爆二世」という経歴でありながら平和への祈りを込めた交響曲を作曲、しかも東日本大震災の後になって売り出せば、誰だって注目します。クラシックとしては異例の大ヒットというのも、これほどプロモーションが成功すれば当然です。売るためのお膳立てが素晴らしく出来上がり過ぎていて、肝心の音楽はなんでも良いというのが正直なところ。そういう意味では佐村河内は秋元康に負けない名プロデューサーだと思います。

 本来なら芸術と言うのはクレジットなしでも成立すべきものでしょう。それは音楽だけではなく文学であれ絵画であれ工芸であれ同じ。ただ実際には「マーケット」が存在する以上、そんな理想論通りにいくわけではないというのも大人なら理解できます。まして芸術作品が高度になればなるほど、一般人は「解説」や「評価」や「価格」と言ったわかりやすい物差しがないと理解も感動もしづらくなっています。様々な物語込みで我々は芸術に感動しているのが正直なところです。

 今回の事件で、単純に佐村河内を「詐欺師」と非難するのをちょっと口籠ってしまうのは、我々もマスコミも専門家も揃って皆が一旦はその「物語」に乗せられてしまったという忸怩たる思いがあるからでしょう。そして佐村河内の音楽だけではなく、他にも自分たちが「感動した」と言っていた芸術作品が、本当に感動していたのかどうかも怪しい気がするからではないでしょうか?評論家が良いと言っているから、マーケットで売れているから「良いものだ」と思っていただけではないのか?さて、どうなんでしょうか。


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