幹事クリタのコーカイ日誌2012

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8月8日 ● テニスにおけるオリンピック。

 テニスにおけるオリンピックというのは微妙な位置づけにあります。バスケットやサッカーなどと同じく、参加しているトップアスリートは普段は別の場でプロとしてしのぎを削っているわけで、オリンピックは一種のお祭りであり、真剣勝負の場ではあるけれど公式戦ではないのです。サッカーにおいてはW杯が頂点であるように、テニスにおいてはグランドスラムこそが最高の檜舞台であり、中でもウィンブルドン選手権こそがその頂です。1ヵ月前にそれが終わったところでの今回のオリンピック、しかも舞台だけは同じウィンブルドンというのは選手にしてみれば捉え方が難しい大会だったと思います。

 今はオリンピックでもポイントは付加されますし、今回の参加選手の顔触れを見てもツアーの格付けとしてはグランドスラムに準ずるものだと考えられますが、モチベーションにおいては各選手によって異なることでしょう。実際ナダルは全米に備えて体調回復を優先して欠場しました。今回決勝でマレーがフェデラーに完勝しましたが、フェデラーも1ヵ月前のフェデラーではありませんでした。明らかにコンディションが悪く心身ともに疲弊していることが見てとれました。

 フェデラーの疲労の直接的な原因は準決勝におけるデルポトロとの熱戦にあることは間違いありません。「3-6、7-6、19-17」という3セットマッチにおける最長時間試合を終えて中一日での決勝戦は31才になるフェデラーには酷でした。また1ヵ月前と違って今回は屋根が空いたままでした。インドアになると無類の強さを発揮するフェデラーにとって条件はひたすら悪くなるばかりでした。

 ただ、フェデラーの完敗の裏にはそれだけではないモチベーションの低さを感じざるを得ませんでした。「2-6、1-6、4-6」というスコアはフェデラーの芝における敗戦としては酷すぎます。負けるにしてももっと競り合えるはず。1ヵ月前にマレーを下してイギリス国民の悲願を打ち砕いたフェデラーとしては、再びここで同じ仕打ちをマレーにするだけの気持ちの強さをもう持てなかったのではないかと推察されます。手を抜いたという意味ではなく。そして、それがテニスにおけるオリンピックの位置なんだろうと思います。

 世界1位に返り咲き数々の記録を塗り替えたフェデラーにとって、オリンピックにおけるシングルスの金メダルは彼が持っていない数少ないタイトルです。ただすでにダブルスの金メダルは4年前に取っているので、今回は銀メダルでもいいかとどこかで思ったような気がします。アガシ、ナダルに続く男子3人目の「生涯ゴールデンスラマー」の称号は得られませんでしたが、それはフェデラーの輝かしい経歴の傷になるものではありません。

 それより今回は誰よりも強い気持ちで臨んだマレーの優勝を祝いたいと思います。4強と言われながらも実績では他の3人に大きく水をあけられていたマレーが、ついに結果を出しました。もちろんグランドスラム無冠なのは金メダルを取っても変わりませんが、地元オリンピックでジョコビッチ、フェデラーを連破しての優勝は大きな成果です。来たる全米オープンへの大きなステップになるでしょう。マレーの覚醒が本物かどうか、全米オープンが楽しみです。

 


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