幹事クリタのコーカイ日誌2011

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12月23日 ● 森田芳光とその作品と。

 映画監督の森田芳光が亡くなりました。まだ61才。早すぎると思います。今年はどんどん個人的に思い入れのある著名人が亡くなっていきます。森田も日本の映画監督の中でも五指に入るくらい好きでした。もっと映画を撮って欲しかったのに残念でなりません。

 森田の映画を最初に観たのは『の・ようなもの』でした。当時は大学生で映画館に入り浸っていて、上映している映画で少しまともそうなものは全部見るというくらいフリークでした。年間に100本以上の映画を劇場で見るなんてことは、今の僕には考えられません。『の・ようなもの』は映画評で高く評価されていたので遅ればせながらという感じで見に行きましたが、まだ10代の僕には正直それほどピンとはきませんでした。

 次に見たのが『家族ゲーム』です。これにははまりました。松田優作を単なるアクションスターじゃないなと思ったのも、伊丹十三を見直したのもこの映画からです。ATGの映画としても独りよがりになっていない作品として素晴らしいと思います。続けて『メイン・テーマ』も見ました。ATGから角川映画という落差に森田芳光という映画監督の融通無碍さを感じました。

 そして『それから』です。夏目漱石の世界が森田監督独特の非現実感とうまくマッチしていて、これも面白いと思いました。その後『おいしい関係』とか『未来の思い出』とか僕は好きだったんですが、あまり評価されない作品が続きます。『キッチン』なんて興行的に大失敗でした。数年、森田は映画を撮らない時期が続きました。

 そんな中で黎明期のパソコン通信を描いた傑作『(ハル)』が発表されました。当時パソコン通信にはまっていた僕は、パソコン通信上でこの映画を絶賛していました。この映画は本当に青春映画としてもデジタル世界を描いた映画としても傑作です。当時まだ新人だった内野聖陽と深津絵里の初々しい演技も見事でした。

 森田監督作品はその後も『失楽園』『阿修羅の如く』『間宮兄弟』『サウスバウンド』『武士の家計簿』など話題作が続きましたが、結局僕には『家族ゲーム』と『(ハル)』です。この2本があるだけで、森田芳光は日本映画史に残ります。森田の映画はどんな原作、どんな脚本、どこの配給会社であっても森田らしさが常にありました。「なにを描く」かよりも「どう描くか」を追求した監督だったと思います。まさに映画における監督の力を感じさせる人でした。ご冥福をお祈りします。



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