幹事クリタのコーカイ日誌2011

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10月21日 ● 落合野球の限界。

 中日が優勝を決めた翌日、本拠ナゴヤドームでの最終戦。先発したのは川井でした。ところがリードをもらって4回まで無得点で抑えていた好投の川井は突如降板させられて、5回から吉見が登板。2イニングを投げてリードを保ったまま次の投手に引き継ぎました。中日がそのまま勝ったので勝利投手の権利は吉見に転がり込み、最多勝を確定する18勝目をあげました。要は吉見に最多勝を確実に取らせるために落合監督が仕組んだことです。

 試合後のインタビューを読むと、吉見はこういう姑息なやり方での勝利に内心忸怩たる思いがあるのが窺い知れますが、落合監督はもちろん悪びれた風は全くありません。そして、こういうところが落合の嫌われる原因なんだよなぁと僕は思いました。徹底した現実主義者なのはわかりますが、結果が全てで過程を一切考慮しない。しかしファンは結果だけではなく過程も楽しむために野球を見にきているのです。結果だけで良いなら、わざわざスタジアムに足を運ばなくても良いし、テレビで観戦する必要すらありません。吉見が最多勝を狙うなら最初から先発して5回を投げきれば良いのです。しかも本拠最終戦です。優勝が決まった後の消化試合に来てくれたファンの前で堂々とした姿を見せてこそのエースでしょう。

 何かと話題になる2007年の日本シリーズでの山井-岩瀬の完全試合リレー。これは逆に個人記録よりもチームの勝利を優先して物議を醸しましたが、一見逆に見えて実は同じ思考法です。ファンが見たいものよりも、記録に残る結果を優先するという落合流は、勝っても「つまらない」野球だと言われても仕方ありません。

 現場の監督は「勝つこと」が仕事だし、プロスポーツは結果が全て、という言い訳は間違いです。プロスポーツはファンを喜ばせることが一番の優先事項です。監督と言えどもそれは変わりません。ファンは贔屓チームの勝利を喜ぶからもちろん勝利を追求すべきですが、「勝つこと」以上に「勝ち方」が大事なのです。大金をはたいて他球団のエースや四番をかき集めて勝とうとしたチームはずっと人気が下降しています。勝つことは短期的には人気の上昇につながりますが、その勝ち方がファンの支持を得ない限り、たとえ勝ち続けていても人の心は離れ人気は徐々に失われていきます。

 落合監督の下、中日は常勝球団になりましたが観客動員はずっと下り坂を続けています。チームを引き受けた最初の3年は「勝つこと」にこだわっているだけでも良かったと思いますが、強さが定着してきた後は「勝ち方」をもっと意識して采配を振るっていれば、今頃はどうなっていたことか。その4年目があの日本シリーズでした。振り返ってみれば、あれが良くも悪くもやはり「落合野球」の象徴的な出来事であり、限界だったんだなと思います。まあ「勝つこと」もなかなかできない監督はいくらでもいるわけで、落合に求めていることは随分とハードルの高い要求だとは思いますが、白鵬だって内村航平だって「勝ち方」に拘っているからこそ真の王者なのですから。




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