幹事クリタのコーカイ日誌2008

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11月2日 ● 遺産争い。

 生涯独身で過ごし先頃亡くなった伯父がいました。伯父は一流企業に勤務する傍ら、アーティストとしても活動していてその収入もあったため、随分と裕福でした。博打や女に金を使うこともなく、好きな創作の世界に没頭している人生だったので、かなりの遺産がありました。

 ところが死んでわかったことなのですが、伯父には「女」がいました。と言っても、そういう意味の女ではなく、両親に先立たれた不幸な少女A子さんを幼い頃から長年経済的に支援していて、そのA子さんが成人したら養女縁組をするつもりだったというのです。しかも、それだけならまだしも、A子さんの唯一の肉親である祖母のB江さんの面倒まで見るつもりで、B江さんを妻として入籍するつもりだったと言うのです。A子さんはもうハタチで、養女にするのは1ヶ月後の予定だったそうです。

 それらのことが親戚にわかったのは、伯父が死んでからのことで、伯父の死を看取ったA子さんとB江さんがその縁組の話を親戚にして、当然のことながら親戚一同はパニックです。A子さんの存在は近しい人間は知っていましたが、まさか養女にする話があるなどとは知らなかったし、ましてB江さんと結婚するなんてことは誰一人聞いたことがなかったからです。

 伯父の遺産は先に書いたように莫大です。億単位です。もしA子さん、B江さんと正式に縁組が終わっていたら、その遺産は2人のものです。しかし、まだ2人は現時点では法律的には他人です。伯父は突然死だったので遺書もありません。となると、伯父の遺産は兄弟のものになるはずです。しかし、当然A子さんとB江さんも黙ってはいないでしょう。伯父の葬式を出したのもA子さんとB江さんだし、親戚としても「あんたたちは他人だ」と2人を追い出すのはさすがに良心が咎めます。

 と言って、伯父の遺産は兄弟で分けても宝くじが当たったくらいありますから、そうそう簡単に放棄できるものでもありません。そもそも血を分けた兄弟が築いた遺産を、どこの馬の骨ともわからない他人に取られたくないと思うのは人情でしょう。かといって、裁判をしたら全面的に勝てるのかどうかもわからないし、これからどういうことになるのか、みんなドキドキしています。

 以上の話は実はフィクションです。僕に遺産を残してくれるような伯父さんなんていません。でも似たような話が実際に先日亡くなった知人でありました。葬儀の後に「こりゃ揉めるぞ」と参列した無関係な人々は囁いていましたが、当事者にとってはとってもイヤな気分でしょう。亡くなった本人もそんなつもりはなかったのでしょうが、罪作りなことをしたものです。