幹事クリタのコーカイ日誌2008

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2月15日 ● 映画が途中でわからなくなる人。

 久しぶりにMっちゃんの話です。最近はナンパ稼業もお休み中で、暇を持て余して文化的活動に精を出しているMっちゃんですが、相変わらず映画やドラマはよく見ているようです。いまMっちゃんが一番ドラマではまっているのが『あしたの、喜多善男』。ただこのドラマの難点はサスペンス風味なところ。と言うのも、Mっちゃんはストーリーが少しでも複雑になってくると理解できなくなるという悲しい弱点があるのです。

 先日放送された映画『デスノート』はさっぱりわからないそうですし、『パイレーツ・オブ・カリビアン ワールドエンド』はもちろん、同『デッドマンズ・チェスト』も理解不能。『オーシャンズ13』はなんとかわかったけど『オーシャンズ11』はわからなかったし、『マトリックス』は1だけ辛うじてわかっただけで後はダメ。ジブリ作品でも『ハウルの動く城』『千と千尋の神隠し』はなんだかよくわからなかったそうです。

 Mっちゃん曰く「最近の映画はよくわからない。20世紀の映画だったらわかった」そうで、『フォレストガンプ 一期一会』までは理解できたとか。もっともあの映画にわからないところなんてないと思いますが。そうそう、ちょっと話が込み入っていても『バック・トゥ・ザ・フューチャー』はわかったそうで、「スピルバーグはオレにもわかるように映画を作ってくれるから偉いんだよ」と誉めていました。とは言え『スターウォーズ』シリーズは後半になると怪しいみたいです。

 Mっちゃんに何がわからないかいろいろ聞いてみたところ、まず登場人物が多いと関係がわからなくなってダメだそうです。だから同じ推理ものでも『刑事コロンボ』とか『古畑任三郎』なら刑事と犯人しか出てこないからわかるわけで、これが『オリエント急行殺人事件』のようになってしまうともうお手上げです。「わけがわからなくなって、誰が犯人でも関係ねぇやって気分になってくる」そうです。

 また、最初に時代やら設定やら世界観が提示される作品もダメで、オープニングで「21××年、銀河辺境の○○星系にある△△星の〜」なんて設定が紹介されても、それをずっと覚えていられません。もちろん、伏線が張ってあってもわからないので、途中からストーリーがさっぱり理解できなくなってしまうらしいのです。脚本家にしてみれば張り合いのない客です。

 結局、いろいろなことが同時に覚えていられないので、単純なストーリーじゃないとわからないということみたいです。さらに登場人物やセリフや設定を理解し覚えることだけに必死なために、ストーリーにちょっとでも飛躍があったり、あえて見せないで飛ばしているところがあると、その隙間を埋める作業までできないらしいのです。特に展開が速いと数学の授業についていけない子どもと一緒で「もうボーっとしちゃう」そうで、『木更津キャッツアイ』なんて「全然ダメ」だというのもわかります。

 このMっちゃんの話というのは、広告制作者としては実に参考になります。最近「続きはWEBで」とか言って、複雑なバックストーリーのある広告を展開している企業が多いですが、あれを面白がっている人は頭の良い一部の人だけで、多くのMっちゃんタイプの人には全然伝わっていない可能性があります。もちろん、ターゲットが理解度の高い人たちだけなら良いのですが、オールターゲットの広告であまり複雑な構造の広告表現を見せても、制作者の自己満足に終わっている可能性が大です。

 もっともMっちゃんの問題は、彼自身が広告を発信していく立場にあることで、なのにこれだけ理解力がないというのも少々困るのではないかと思いますけど、相変わらず本人は「自分にわからないことは一般の人もわからないから大丈夫」と胸を張っています。