幹事クリタのコーカイ日誌2007

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9月15日 ● 阪神はウッズと勝負した。

 白熱するセ・リーグ首位攻防の阪神vs中日戦。勝負を分けたのは阪神が敢えて中日の主砲ウッズと勝負したところでした。4対3と阪神リードで迎えた7回表中日の攻撃2死2塁。バッターはウッズ、マウンドには久保田。この場面、ほとんどの場合ウッズは敬遠です。一塁が空いているのにウッズと勝負する必要はないですから、はっきりした敬遠か臭いところを突いての四球かの違いはあれ、大抵のチームはウッズと勝負をしません。

 この場面でも阪神バッテリーはそうするんだろうなと思って見ていたら、なんと真っ向勝負です。久保田の投じた内角への直球は決して悪い球ではありませんでしたが、ウッズは窮屈なフォームながらもそれを見事にセンターのスタンドに放り込みました。逆転2ラン。さすがウッズです。

 そして同点で迎えた9回表中日の攻撃は2死2、3塁でまたもウッズ。投手は抑えのエース藤川球児。ここでも阪神バッテリーはウッズと勝負です。しかも直球一辺倒。変化球一切なし。ウッズはその直球をひたすらファールしながらタイミングをはかり甘い球を待っていました。そしてついにセンター前にクリーンヒット。2点タイムリーとなり中日が阪神との死闘を制しました。

 どちらの場面でもウッズと勝負するのは勇気が要ります。歩かせるのは簡単です。しかし阪神ベンチは自分たちの投手を信じてウッズと勝負させました。そして打たれました。負けました。それでも僕は阪神ベンチを称賛したいと思います。お客さんが見たいのはエースと4番の激突です。己の力を信じてぶつかり合う勝負を見たいのです。そういう意味では久保田対ウッズ、藤川対ウッズ、どちらも十分に合格点をつけられる素晴らしい見応えのある勝負でした。

 こういう野球を見せられると、日本のプロ野球もまだまだ捨てたもんじゃないなと思います。「負けたら何にもならない」と怒るファンもいるかも知れませんが、そんなことはありません。野球の面白さをファンに、特に子どもたちに示すことで、より豊かな野球環境が育つからです。1つの負けが多くの収穫を将来にもたらすのです

 それに姑息な手段を使っても負ける時は負けます。疲れがピークに達しているであろう久保田と藤川にとって、この1敗はむしろカンフル剤になったのではないかと思います。第2戦以降、リベンジに燃える2人のピッチングは要注目です。