幹事クリタのコーカイ日誌2007

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8月4日 ● 阿久悠の歌は青春ど真ん中にあった。

 阿久悠が亡くなりました。70才。もうそんな年齢になっていたのかと思います。僕たちが中学生から高校生だった1970年代がまさに彼の全盛期。ランキングに何曲も彼の作詞した歌が並び、そのどれもを歌うことができました。沢田研二、ピンクレディー、岩崎宏美、石野真子、都はるみ、八代亜紀、石川さゆり、フィンガー5、桜田淳子、西城秀樹など、まさに「ザ・歌謡曲」。

 彼の詞はとにかく印象に残るフレーズがあって、それがピシッと決まるのが特徴でした。「あなた変わりはないですか」「お酒はぬるめの燗がいい」「地球の男に飽きたところよ」「あなたも狼に変わりますか」「この世はわたしのためにある」。どれもこれも決めの歌詞が強烈です。

 とは言え、あの『瀬戸内少年野球団』を書いた小説家でもあるわけですから、決してワンフレーズだけの人でもありませんでした。『時代おくれ』『熱き心に』『街の灯り』などの沁みるような歌も多く残しています。だから演歌にも名曲が多いのですが、やはり彼のケレン味たっぷりの歌詞がきらめいたのは山本リンダ、沢田研二、ピンクレディーでしょう。彼らの強烈なビジュアルと下品なまでの華やかさに負けない強いフレーズは阿久悠ならでは。他にも西城秀樹やフィンガー5なども同系列ですが、とにかく一発で記憶に残るような強い歌詞を書けることが、阿久悠を稀代のヒットメーカーにしたのだと思います。

 阿久悠の顔を有名にしたのは、もちろん「スター誕生」でした。森昌子、桜田淳子、山口百恵、岩崎宏美、片平なぎさ、ピンクレディー、石野真子など、次々とアイドル歌手がデビューしていくこのスカウト番組で、特に大きな顔をして存在感を示していた審査員が阿久悠でした。作曲家の都倉俊一や森田公一らとは全く違う観点から批評するところがまた独特で、僕は彼を決して好きではありませんでしたが、目を離せない人だと思って見ていました。

 僕が新入社員時代、会社のエレベーターでいきなり阿久悠と乗り合わせたことがあります。思っていたよりも小柄で、顔が異様に大きくて、しかも顔色が病気かと思うような土気色をしていて、見ただけでこれはとんでもない人だなぁと思ったものです。

 僕にとっての阿久悠ソングベスト5。5位・あべ静江『みずいろの手紙』 、4位・八代亜紀『舟唄』、3位・河島英五『時代おくれ』、2位・沢田研二『カサブランカ・ダンディ』、1位・森田健作『さらば涙と言おう』。うーん、ちょっと無理矢理5曲選んでみました。それぞれについて語りだしたら、また大変なので割愛します。ご冥福をお祈り申し上げます。