若い社員によく「昔は携帯もなくてよく仕事できましたね」と言われます。確かに仕事で携帯がないと連絡が即座に取れず不便なものですが、でも実際にそう言うほど昔は困っていたかというと、別にそんなことはありませんでした。

　同じことはパソコンについても言えます。メールがないと仕事にならない、なんてことはこの数年の話で、１０年前はパソコンすら使える人はごく限られていました。ましてや僕が会社に入った頃はワープロもなくファックスだってコピー機だってオジサンたちは近寄らず、企画書だって全部手書きだったのです。

　いまパソコンも携帯も取り上げられて、黒電話と紙と鉛筆だけで仕事しろと言われたら、若い社員はお手上げになるかも知れませんが、中高年社員は逆に張り切ってしまうかも。便利な道具がない部分は足でカバーすればいいんだ、とか言いながら。もちろん、昔は今ほどの即時性は要求されなかったし、全体にのんびりとしたペースで仕事していたものでしたからね。

　話は仕事に限りません。友達付き合いもサークル活動もデジタル機器が普及したお陰ですぐに連絡が取れるようになり本当に便利になりましたが、逆にすぐに連絡が取れるはずなのにリターンが来ないとかえって余計不安になってしまいます。本当に慌ただしい時代になりました。

　もっとも僕は基本的に気が短い方なので、のんびりと返事を待っているのが苦手です。すぐに返事が来ないとイライラしちゃうので、今くらいのスピードの方が性にあっています。だから今さら昔に戻すとか言われても困りますけどね。