例えば１００億円でも１０００億円でも良いのですが、とにかく一生困らないだけのお金が手に入ったとします。残りの自分の人生はもう仕事に縛られることもなく、何かを我慢する必要もない（子どもの教育とか嫁姑の問題とか介護問題とかも考えなくても良いとして）、自由に好きなことをしても良いと言われたら、果たしてあなたは何をしたいですか？

　これはあなたの人生の夢は何ですか？という質問に近似しているかも知れません。もちろん、プロ野球選手になってイチローのように活躍したいとか、女優になって黒木瞳のようにお洒落に暮らしたいとかいうのはダメです。それはいくらお金の悩みから解放されても才能の問題なので無理な相談ですから。あくまでもお金さえあれば解決できる夢。

　そう聞かれてしばしば最初に思いつくのは物欲や性欲を満たそうとすることでしょう。豪華一戸建てと高級リゾートに別荘を持ちたいとか、ハリウッド女優と付き合いたいとか、ドルガバの服を端から端まで全部買いたいとか、ハーレムを作りたいとか。

　しかし、そんな夢はすぐに叶えられてすぐに飽きてしまうに違いありません。欲求レベルとしては一番最初に思いつくだけに一番下等という気がします。で、もう少し上等な夢となると、自己実現というか、自分の好きなことを存分にするためにお金を使おうとすることです。

　僕ならテニスの世界ツアーを見て回りたいと思います。自分がプレーヤーになってツアーを回ることはできませんが、例えばツアーを丸ごとスポンサードして、世界中のテニス大会を特等席でいつでも自由に観戦できるというのは最高です。もちろんどこの街でもそこの一番高級なホテルに泊まって、その土地の美食を楽しみながらテニスを観戦し、時にはツアー選手にテニスの相手もしてもらう。テニスバカにとってはまさに「夢のような話」です。

　しかし、これでもまだまだだと思うのは、所詮これも自分の欲望を満たすためにお金を使っていることには代わりはないわけで、ハーレムを作るという夢と結局五十歩百歩です。本当に高等な夢とは、自分のことよりも他者の幸せを願うことです。例えばもし同じようにテニスのためにお金を使うとしても、テニスというスポーツを通じて社会の健全な発展に寄与したいと思い、そのために投資をするのなら、それは真に素晴らしいことだと思います。

　実は、こういうバカ話を本当にランチタイムにしていたのですが、その時に会社の同僚のＮ島さんが「僕の夢は世界平和かな、だってもうお金これ以上いらないから」と言ったのです。冗談ではなく真剣に言っていたのでさすがにみんな度肝を抜かれました。確かに僕も世界平和は強く望んでいますが、それを自分のお金で実現しようとは思いつきもしませんでした。いやぁ、びっくり。ところでお金で世界平和は実現するのでしょうか？いくら必要なのか見当もつきませんが。